ベッドおばけ
「トッ、ト○ローーーーーーーーッ!!!???」
一郎がベッドだと思っていたものは、生き物だった。ふかふかしていたのは、その生き物のおなかだったのだ。呼吸に合わせて大きく上下している。
そうだ、俺、回送電車に飛び込んで…てことはこれ死後の世界ってやつ?そういえば、ト○ロも主人公の姉妹は実は死んでるって都市伝説があったような…神様とか信じてこなかったけど、ここ天国?地獄?
「アアアァァァーーーーーーー!」
今までより一際大きくベッドおばけ(仮名)のおなかが盛り上がり、一郎は一歩後退した。
「猫…?」
ベッドおばけは大きくあくびをすると、顔を起こした。ぱちりと開けた大きな目と一郎の目が合う。
「わわっ!」
ベッドおばけの右前肢が伸びてきたので、一郎は反射的に後ろに飛び退いた。手が何か硬いものに触れる。
「コンクリート?これ、駅のホーム?」
一郎が掴んでいたのは、ホームの縁のコンクリートだった。ベッドおばけのおなかと段差がないので、ひょいとホームに飛びうつる。
「ここ、昨日の駅か。昨日?ってか今日?」
ホームは終電で着いた時と同じように、寂しく蛍光灯で照らされているのみだ。相変わらず人気はなく、電車の車両はなくなっている。
「こんなところに客人とは珍しい。」
深みのある優しい声で、一郎は現実に引き戻される。
「でっか…」
ベッドおばけは巨大な猫だった。線路部分でのびをしているが、横幅は線路いっぱいくらいだ。
そのまま二本足で立ち上がると、ホームの上で腰を抜かしている一郎と目線の高さが同じくらいになる。
「こんなところに人の子が何用かな?」
「喋ってるぅ~。」
猫って確か肉食だよね?こんなでっかい猫だと…俺食われちゃうの?