次元の管理者
頑張って投稿していきます。
龍一の意識が徐々にはっきりし、目が覚めるとそこは真っ白な世界が広がっており、一瞬何が起きたか
分からなかった。
(ここはどこだ?えっと学校に言っている最中に突然地面が揺れて、ひびが入ってしまいそこに落ちて
しまっただよな?)
身体を起こし、確認しても怪我ひとつしておらず、ますます怪我をしていない理由について龍一は混乱する。
(あの時、確かに落ちた。落ちた感覚も長かったはずだからかなりの高さから落ちたはずなのに怪我一つ
してないのにはどう考えても説明はつかない。いや死んでしまったなら別に関係ないか?)
自分の身体がすでに霊体なら説明はつく?かもしれないがとりあえずこのままここにいても仕方がないかと
思い、龍一は歩き出す。
(本当に真っ白だな。ここは天国かな。だったら父さんや母さんに会いたいなぁ)
しばらく歩いていると遠くのほうからカタカタと音が聞こえる。しかもその方に歩いていると
その音がどんどん大きくなっていく。
(まるでパソコンのキーボードの音だな?まさか天国にパソコンがあるのかな?)
そんなことを思いつつ歩くと、龍一はその場面を見て唖然とする。そこには壁一面にテレビ画面らしき
ものがあり、そこに山や海らしきものを映している。その前に一人の男がすざましい速さでキーボードを叩いていた。
「ああ、もう!今回の揺れは大きいものだったけど、他の場所に影響はなかったかな?いつも小さい揺れなのに。」
そういいつつ男はキーボードを叩いている姿をみて、龍一は声をかけるかどうか迷っていた。
(どうしようか?声を掛けたいけど忙しそうだし、とりあえずもう少し様子をみるかな)
そんなことを思いつつ男の方を見ていると、男の方が何かに気づき龍一の方を見つめ、唖然とした顔をする。
(あ、気づいた。結構若い人だな。20代ぐらいかな)
呑気にそんな事を考えていた龍一をよそに、男の方はそれどころではなく龍一の姿を穴があくほど見つめると
「なんでここに人がいるんだぁぁぁぁぁぁ!?」
と絶叫した。
しばらくの間、興奮していた男の様子に取りあえず落ち着くのを待っていた龍一は徐々に落ち着いたであろう男の様子をみて声を掛けた。
「大丈夫ですか?」
「ああ、大分落ち着いたよ。しかし君の方が冷静になれるなんて普通は逆じゃないかな。」
男はそういいつつ、龍一を見ていると何かに気づくとテレビ画面の方を見つめ、
「まさか、さっきの大きな揺れのせいで?しかしこんな例は今まで無かったし、いったいなぜ?」
しばらくの間、テレビ画面を見ていたがハッと気づき龍一を見て申し訳ない顔をし
「ごめん、ごめん。とりあえず君にも説明しないとね。」
と龍一に声をかけつつ、男は手のひらを床に向けると突如そこにテーブルと椅子が出てきた。
「とりあえずそこに座って。飲み物も用意しよう。」
唖然としていた龍一を椅子に座るよう促し、テーブルに手のひらを向けると2つの湯呑みが出てきた。
湯呑みの中には緑茶らしきものが入っており、それを龍一にすすめる。龍一はおそるおそる湯呑みに口をつけると
(あっ、おいしい。日本の緑茶だ)
その様子を見ていた男は嬉しそうな表情で見ていると、真面目な顔に戻し、
「さて、色々話したいこともあるが、まずは自己紹介しようか。私の名前はエルエム、次元の管理者を
している。」
エルエムと名乗った男を改めて見ると、やはり若く見える。さらさらした金髪の整った顔立ちしており
女性から見てもイケメンの部類だ
「天海龍一です。日本という国から来ました。来ましたというより落っこちたと言った方が正しいですけど。それと次元の管理者ってなんですか?」
龍一はそう伝えると、エルエムはやっぱりとした顔をし
「やはりそうか。今回はそれほど大きかったか。ううむ。」
エルエムは難しい顔をしていたが、ハッと気づき龍一に申し訳なさそうな顔をして
「ああ、すまない。君の質問に答えよう。次元の管理者というのは多種多様な世界を管理し、それを
観察する仕事だ。君が住んでいた世界も一つの世界であり、それぞれいろんな世界がある。例えば
人間と異なる種族が住んだり、科学技術がものすごく進んだ世界とかね。」
「いわゆるパラレルワールドってやつですか?」
龍一がそう答えると、エルエムは頷き
「そう思ってかまわない。簡単にいえば人の願いが具現化した世界の集合体なのだ。その為、願いの数だけ世界があり、それぞれに特徴がある。そして次元の壁に阻まれけっして交わることはない。しかし
時々、何かしらの知識や考えが壁を通り越して人に与えることがある。ゆえに共通する部分は1つや2つはあるんだ。でもそれぐらいなら問題ない。」
しかし・・・とメルエムは続ける。
「たまに小さいものだけど壁に穴が開くことがある。原因は次元震といわれる次元の壁が震える現象だ。
これのせいでたまに壁に穴が開く事がある。ただし今までは5cmの小さいもの、最大でも10cmぐらいしかなかった。」
そう言い、そして龍一に質問する。
「君の世界にオーパーツっていうものがあるだろ」
龍一はうなずく。オーパーツとは場違いな加工品といわれ、出土品が考古学上成立や製造法などが不明とされ、製造が困難ともいわれるものだ。説は色々あり宇宙人が作ったともいわれる。
「実はこれも次元の穴から別世界から来たものなんだよ。次元震は不定期に発生し、その震動の大きさで
穴の大きさが決まる。しかし今回は震動の大きさが異常だった。まさか人が呑み込むぐらいの大きさま
ででかくなり、ましてそこに人が居るなんてね。」
「僕は元の世界に帰る事はできるでしょうか?」
その質問にエルエムは難しい顔をする。
「君を元の世界に戻す事は出来ると思う。ただその為には先ほどの次元震が発生しないとどうにもならな
い。無理に次元の壁をこじあける事は出来ないわけではないが、無茶をすると世界が壊れてしまうから
なぁ。それに私には他の世界も観察しなければならないから君ばかり時間を作れない。」
龍一は考える。次元震が発生すれば元の世界には帰れるが,何時発生するかも分からないものをあてに
するわけにもいかない。ただこのままじっとしているのも時間の無駄だ。しかし他の方法を考えるにし
てもエルエムの協力が必要不可欠だ。
「エルエムさん。なんとしても元の世界に帰りたいので協力していただけませんか?私が出来ることが
あればなんでもしますのでお願いします。」
と言い、龍一はエルエムに頭をあげる。それを見て、エルエムは少し考えた後、
「分かった。力を貸そう。そのかわり・・・・」
ニヤリと笑い
「異世界に行ってくれないかい?」
とそう伝えた。
「異世界ですか?」
龍一が困惑した状態で尋ねると、
「そう。私の仕事は様々な世界を管理し、観察することだが他にもある。それはその世界にまぎれた
異物つまりオーパーツを回収することだ。しかし他にも見なければならない世界がある為、そっちに
力を入れることが難しい。しかし君が異世界に行き、オーパーツを回収し、こっちへ送ってくれば
助かるんだよね。」
エルエムは言葉を続ける。
「それと君が行く異世界はもしかしたら元の世界に帰れる手がかりがあるかもしれない。」
「それは本当ですか!?」
エルエムは頷く。そして腕を振るとテーブルの上に緑と青がきれいに混じった球体が表れた。
「今回の次元震は君がいた世界と同じぐらいの規模がもう一つあったんだ。これが君が行く異世界
名前はアルディア。君のいた世界だと中世のヨーロッパぐらいの文明だが、違うのは魔法というもの
がある。」
「魔法ですか。じゃあ、魔法使いや魔女とかいるわけですね。まるで映画の世界だな。」
龍一は以前映画で観た、杖を持ち悪の魔法使いに立ち向かう少年魔法使いを思い出した。
エルエムは笑いながら
「そうだね。ただしそこでは魔法は別に珍しいものではない。簡単なものなら誰でも使えるし、
鍛えれば強力なものを使えるからね。」
そして真面目な顔に戻す。
「その世界と君が居た世界。この二つの世界に今回の次元震が発生した。しかも今まで例のない
震動があり、時間も同じだった。これは偶然かな?」
エルエムは球体を見つめる。
「もしかしたらこの世界で次元震を発生させる原因があったかもしれない。君はこの世界に行って
その事にについて調べてほしい。そしてもしオーパーツがあれば回収し、こっちへ届けてほしい。
どうだい、手伝ってくれないかい?」
龍一はすこし考えた後、
「分かりました。その仕事引き受けます。」
エルエムにそう伝えると、
「ありがとう。よろしく頼む」
と言い、頭を下げた。