選択……2
人を滅ぼそう。
大丈夫。自分にも出来る方法が有る。
スライム。
自分の2番目の種族は擬態スライムだったナ。
しかシ、それは本来擬態軟と言う種族名だっタ。つまリ、本来のスライムとは違ウ。
本来ノ、と言うかこの世界の正式名スライムと言うのは魔物と言うよりも現象に近イ。
生モノを放置すると生ゴミになリ、それはやがてスライムと言うゴミの色の粘土のようなイキモノになル。あア、地球のカビに近い……のカ?
ともかク、スライムはHPは低いが持っている特性は凄かっタ。
感染。
それハ、地球でいう病気を引き起こすようニ、触れただけデ、
『毒』ヲ
『病』ヲ
『呪い』ヲ
引き起こしタ。
更ニ、そのHPの低さから直ぐに討伐されるガ、スライムにも一応の進化先が有ル。
マザースライム。
別名を"疫病"と言っタ。
ここでも魔物と違う所が有るのだガ、スライムの進化はLv100を越えないといけなイ。だかラ、記録でも1000年程前に遡って漸く発生が確認されているはずダ。確カ、その当時は滅多に無い事に『病』にかからないのを良いことに本体で物見遊山に行ったのだっタ。
何処からその燃料を仕入れているかは分からなイ。直径1m程のうん……饅頭ガ、プツリプツリと手のひら程の饅頭を産み出す光景が見られタ。
産み出されたLv1の饅頭は生きていないモノを腐らセ、生きているモノに『病』を与えていっタ。そして腐った物を取り込ミ、成長しLvを上げていタ。数の暴力。自分が見た時には既にあちこちスライムだらけだったガ、やりかたは分かル。
その時のスライムは汚かったからついでに燃やしたガ。
見ていて分かったガ、スライムの成長速度は異常だっタ。それは恐らく食べた物のLvの一部を受け継いでいたのだろウ。簡単に言うト、スライムに高Lvなエサを与えれバ、直ぐにLv100に到達するだろうと言う事。
直ぐにとは言え何体もの魔物を与えなくてはいけなイ。理想はLv90以上。自分には容易イ。
エサを与エ、同時に結界を作ル。それはスライム以外を何も通さない結界。けれど同時にマザースライムを逃がさない檻であル。
そして隠蔽結界。気付かれるのを遅らせる為に装置を周囲から隠ス。
サア、準備は整っタ。始めようカ。
街を覆う結界は魔物ヲ、一応魔物であるスライムも通さなイ。外からの攻撃も通さないガ、人は通ル。
魔導具は通ル。
魔物の死骸は通ル。
そしテ、スライムは唯一結界の内側でも発生する魔物?であル。
後は適当に結界魔導具を設置しテ、魔物の死骸と生ゴミを入れておク。サテ、生ゴミがスライムになリ、真っ先に魔物の死骸に喰らいつキ、マザースライムになる時限爆弾のカンセイ。
大丈夫。実験では成功しタ。装置は10も配置しタ。
……次の街に行こウ。
ここに戻って来るのハ、予定では10年後。装置を次の街へ運ばないト。
唐突に、とある王国で病が流行った。
始めは血の涙の影響で、スライムが例年より多く発生したのだろうと思われた。
しかし、病は広がる。拡がる。
疫病ではないか、と調査が始まり、しかし大量のスライムがあちこちに集まっては居たがマザースライムが見つからない。集まるスライムを駆除しても何処からともなく現れ、腐らせ、病を撒く。
スライムの集団から人を隔離しようが、物は腐りスライムは育つ。駆除しなくては。スライムを駆除する。マザースライムが居る事は疑いようがない。根本が見つからないから対処出来ない。スライムは増え続けた。
『病』は身体の何処かに痛みが走ったり、熱が出て疲れやすくなる。そして、HPが減る。0.数%だろう。しかしLv1の赤子も、Lv101の称号持ちも、等しく。何よりHP、MPの自然回復が止まる。
薬が足りない。回復出来ない者から死んで逝く。
薬が足りない。回復魔法が使えない。
薬が足りない。魔法でのスライム殲滅が叶わない。
武器が足りない。スライムに振るえば耐久は一気に削れる。
ところが、国一つの問題では無かった。数日の差しか無かった。スライムの大量発生は他の国でも起こった。
1日おきに神託が降った。
昨日と数百k離れた場所に魔女が居る。
何処ぞの人は魔女の眷属依り代である。
マザースライムは隠蔽結界に隠されている。
言っては悪いが、疾うに隠されているのは気がついていた。同時にここまでの事が出来る存在も。
過剰に攻撃を加えればマザースライムごと隠蔽結界は壊せた。
けれどそれ以上にスライムが溢れて居たのだ。隠れていないマザースライムも。世界中同時に。
もはや、立て直せない程に物資は不足していた。
召喚された神子は、故意か偶然か、病の効かない者が居た。
薬を扱う者が居た。
低Lvでは話にならなかった。
そして今日もスライムは増えていく。
病に苦しむ人は望む、どうか早く救いが訪れてくれと。