選択肢……1
人を根絶やしにしよう。
大丈夫。自分にはその手段が有る。
〈調薬〉
霧状ノ薬。
毒。
無味無臭ノ薬。
毒。
速効性ノ薬。
毒。
秒間ダメージは最大デ、効果時間は短くテ良い。断続的ニ吸い込んでクレ。
毒。
どく。
ドク。
さア、準備は大事ダ。
【等価交換】で素材ハ全て毒の素材ニ。
魔物を殲滅シよう。
自分自身モ素材にしよウ。大丈夫、直ルかラ。
サア、さあ!撒コう!
自分ノ手で!
【無痛】。痛ミは無い。
分カラぬ内ニ死んデ逝け。
まズは、一国。
嫌いナ王国。
……国名ハ……どウデも良いカ。
その日、とある王国では雨が降り、霧が立ち込めた。
この世界では特定地域にしか雨は降らない。
不安がった国民の中にある噂が巡った。
数年前に空からの血の涙が流れたその国は、対して神様の慈悲。血を洗い流す、慈悲の涙であるとまことしやかに噂された。
そうして一つの国は永遠の眠りに包まれた。
数年おきに"慈悲の涙"は何処かの街に、国に、永遠の眠りをもたらすようになった。魔女の涙だと、人々は噂する。
どうしようもない。雨が降り、呼吸を止めても、食べ物は毒に犯される。飲み物は汚染される。傷口から蝕まれる。
静かな死を迎える前に、毒消しを奪い合って殺される者も居た。毒消しが有った所で焼け石に水でしかない。一番、現実を理解出来る薬師は真っ先に自らの毒をあおった。
街の外に逃げる者で溢れた。魔物に襲われて何人も死んだ。次の街について思う。とりあえずは数年安全だ。
1日おきに神託が降った。
昨日と数百k離れた場所に魔女が居る。
何処ぞの人は魔女の眷属である。
……次の(眠りにつく)街は──である。
魔女は転移が使えた。
軍を遣っても既に居ない。
知らず自分が魔女の眷属になっているかもしれない。
眠りは妨げられない。
逃げても別の街が選ばれる。
次の街は生け贄。選ばれ無かった街の生け贄。
召喚された神子は、故意か偶然か、毒の効かない者が居た。
薬を扱う者が居た。
低Lvでは話にならなかった。
そうして今日も降り注ぐ。
HPの削られる痛みの無いそれは、"慈悲の涙"と呼ばれた。