彼の名は『スレール』
よろしくお願いします。
私はいつも不思議だった。髪の色はみんなと同じなのに眼の色だけが違った。家族でさえそうだ。家の者は皆黒色だというのに私の色は蒼く濁りきっている。昔おばぁ様に聞いたことがあった。
「おばぁ様、なぜ私の眼の色は蒼いのですか?」
「それはね だからだよ。」
「またこの夢か。最近多いな。」
コンコン
「どうぞ」
「おはようございます。サイラお嬢様。」
「あぁ、おはようレイ。」
彼女はレイ、私の専属メイドだ。そしてとても綺麗である。ただ、
「サイラお嬢様、窓を見てください!空が見えません!本物の空を私は見たいですサイラお嬢様!なので、さっさと地上に進撃しましょう!」
「レイ、それが出来たらもう地上で住んでいるぞ。それが出来ないからこの地下帝国にいるんだろうが。」
彼女レイは嫌味と願望を同時に私に伝えてくる。初めの頃はイラっときたが、今となっては何とも思わなくなった。
話が変わるが私たちの住んでいる国は日の当たることのない地下なのだ。日の当たることの出来ない者たちが集まった国。奴隷、犯罪者、難民など地上でいい顔されない者たちが集まり築き上げた。なのに早く地上に戻りたいと思う輩が増え始めてきておりいつしかこの国での絶対ルール「弱肉強食」ただそれだけだ。ただ例外もある。それがこの国を築き上げた第一責任者『スレール』とその血を受け継ぐ者(蒼い眼をした者)が絶対強者とされこの国では神のように讃えられ服従している。レイも一見私を馬鹿にしているように思えるが実際は部屋に『スレール』の似顔絵が貼ってあり心酔している。
「元々私たちは地上に住んでいましたし、そろそろ進出してもいいんじゃないですかって、聞いていますかサイラお嬢様?」
「あー悪い。違うことを考えていた。」
「全くもう。また例の夢を見られたのですか。そろそろ私にも教えてくださいよ。スレール様の話を私は聞きたいです。」
「そうだな、レイには教えてもいいかもな。我が家に流れる血とこの眼について。だがこの話をするためにはおばぁ様の認めたものしか話せない。それでもいいか?」
「いいのですか!このレイ今までで一番ちゃんとした報酬ですよ!!」
「はぁ。レイ、おばぁ様の前ではその態度を改めろよ。」
そう、我が家の過去の話になるとそれ相応の知恵、実力、信頼度が必要となる。レイはメイドという場所で知恵と信頼を勝ち得ている。実力に関してもこの国で私たちを除いた中で5本の指にはいるだろう。それほどまでにレイは強いのだ。
「おばぁ様は元気なのか?できればさっさと死んでほしいのだが。」
「ドーリス様なら元気ですよ。あと、年長者は敬わなければなりませんよ。例えトラウマを植え付けた方でも。」
「頭で分かっていても体が拒否るんだ。これはあれだ野生本能だ。というかあばぁ様のところまで相変わらず長いな。かれこれ5分はかかっているぞ。レイ、転移を使ってくれ歩くの疲れた。」
「別にいいですが、私一人しか跳べませんよ?」
「っち」
この世界には能力がある。一人一人違う能力を生まれた時に持つ。レイは空間能力が得意であり、鍛えれば次元さえゆがますことが出来る。私というより我が家の血筋の能力は【対能力】というものだ。簡単に言えば能力はほとんど効かずよほどの実力者でなければこの体を能力だけで傷つけることはできない。しかも常時発動なので不意打ちも意味はない。ただ便利な魔法さえ私は使うことが出来ない。転移能力者が目の前にいるにもかかわらずわたしのわたしの能力のせいで、、、、くそが。
「サイラお嬢様、ドーリス様の部屋に着きましたよ。(コンコン)ドーリス様、サイラお嬢様をお連れしました。」
「入りなさい。あら久しぶりねサイラ。たまには顔を見せに来てもいいと思うのだけれども、まぁいいわ。あとねサイラ、今度の誕生日は太陽が欲しいわ(いつになったら地上に行けるのかしら)(笑)」
「おばぁ様、それはなかなか難しいお話ですわ。そうですねー、進撃できるとしたらレイと同じレベルの人が一万人いれば成功するのではないでしょうか(まだ生きてんのかよ。ここから出たくないので嫌です)(笑)」
「うふふふふ」
「あはははは」
「ドーリス様、サイラお嬢様 その辺にしておきましょう。」
「あらあらレイただのメイドが何を言っているの?一体いつ私に歯向かえる立場になったのかしら。不思議だわ(笑)」
「おばぁ様もうやめましょう、レイがビビってる。それにさっきから目が笑っていない。そんなんだから『冷徹のばばぁ』っていわれるだよ。」
昔、ドーリスに歯向かう馬鹿が現れた。それにきれたドーリスはこの国すべてを能力無力化を謀ったのだ。その影響のおかげで全ての能力で作られた産業がストップし一から作り直しを強いられたのだ。この事件をきっかけにドーリスは「冷徹の魔女」となり孫が出来たことにより「冷徹のばばぁ」となったのだ。
「サイラそれは言わないでちょうだい。 それで何しに来たの?」
「レイにもそろそろ話してもいいかなと思ったから来たが、まだ駄目か?」
「そうならそうと言いなさい、全くもう。えぇ、レイにならいいでしょう。わが祖先『スレール』の正体と蒼い眼の意味を。」
ふと窓に目を向けてみると地上から液体が流れてきた。それは赤黒い血ではあるが私にはその色がとても心地よく胸の奥からこの色を欲しているように感じた。
次回か長くしていきたいです。