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真っ白なお皿に真っ赤なソースが強いコントラストを作る。お皿から白、ピンク、赤と層を重ねる毎に色彩とボルテージを高めてゆき、頂のミントの反対色で落ち着きを取り戻す。
淹れたての紅茶に、ミルクと砂糖を少しだけ入れる。粉雪に、季節外れの入道雲を逆さに映したカップの底をかき混ぜる。ミルクと砂糖は控えめが好みだ。
中心を目指すケーキの切り口の円環から、フォークで切り、掬い、口元へ運ぶ。
ひんやりとした感覚が舌に広がる。ふわふわしたフランボワーズの甘いムースが、ウサギの眼を思わせるグロスのようなナパージュに照った真っ赤な上層と雪原を切り取ったようなレアチーズの下層に押し潰されて舌に触れる。舌と上あごにすられて軽やかなクッキー生地がムースと交れば、レアチーズのまったりとした酸味が後を追うようにして甘酸っぱさへと口内を上書きする。
そして、ナパージュに包まれた真っ赤なフランボワーズが姿を現す。
綿のようにやさしい甘味にいたずらっぽくコロコロと転がるアラザン、目の覚めるような酸味。そして一度っきりのミントの爽やかさがケーキの様々な顔を演出する。
二口、三口、紅茶を一口。甘さとの対比に少し渋みを感じるが、その渋さも心地の良い紅茶の香りに包まれる安心感をよりいっそう強調してくれる。
……ケーキにクランベリーソースを掬いとり、名残惜しくも最後の一口が運び込まれる。
甘いものは別腹、とはよく言ったものだと思う。ホットサンドとサラダで膨れていた胃にも、すんなりとケーキの居場所は作られた。
ミルクティーを飲み干すと、深呼吸。
面接……さて、どうしよう。読んで字の如く一息はついたが、突然のこと過ぎて混乱が蘇ってくる。これは、あれだ。
ええい、ままよ!
「す、すみません、準備、できました」
厨房のほうへ声を掛ける。
「お、待っていたよ。それじゃあ……ま、このまま始めちゃおうか。黒部さん、紅茶、二人分おねがいするよ」
「はーいー」
オーナーと店員さん――黒部さんがお盆にカップとポットを乗せて厨房から出てくる。
「あ、どうせなんで、私も面接、参加していいですかー?事務所の先輩として、お話もしたいですしー」
なんかもう合格前提で話が進んでいる気がするが、もし落ちたら、と思うと落ち着けていた不安感が燻ってくる。
「じゃあ、面接を始めます。」
席に着いたオーナーと黒部さん、三人分の紅茶。当たって砕けるので、誰か、どうか骨は拾ってほしい。
「お、お願いいたします」