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「いっ―――――た……」
うなじに鈍い痛みがはしる。
じりじりと鋭い音が視界を転がる。どうやら目覚まし時計が落ちてきたようだ。
ロクでもない夢を見た気がするなかで、頭の中に響く雑音を叩いて止める。
ここ数時間、鳴りっぱなしだったみたいだ。おかげで眠りが浅がったのか、くらくらする。
その上うつ伏せに寝てしまったために、息苦しくて呼吸が荒くなっている。
朝はいつでもサイアクな気分で大嫌いだが、今の自分に必要なのはよくわかっている。
カーテンを開け、日光を部屋に取り込む。太陽の位置と強さからして、おそらくはもう朝というより昼前だ。午前中は特に気分が悪いのだが、よく思い出せないヘンな夢のせいでより一層もやもやする。
枕元の錠剤をぷちりと破り、口にほうって噛み砕く。独特の甘さと苦みに安心を思い出す。
口内に広がる味と粉っぽい異物感に唾液が分泌される。飲み下さずに、砕けた錠剤ごと舌下へ押し込み横になる。
……このまま一週間もすれば、餓死でもできるだろうか、などという馬鹿げた妄想が頭の中に降りてくる。
ぐるぐる、ぐるぐると、思考が呼吸の邪魔をする。
本当に、ロクでもない人生だ。だったし、これからもきっとそうだ。
油断をすれば鎌首を擡げてくる不安感に、薬を手放せば頭痛にめまいに吐き気。
会社を辞めてもう一週間になるが、食費による貯蓄の減り以外は何も変わっていない。
好転はしない。
引き金には為ったにせよ、根本的な原因は会社にないのだから当然だ。
ロクでもない。かの文豪をなぞるつもりもないが、本当に、恥ずかしく、ロクでもない人生だ。
薬と、口に溜まってきた唾液を飲み下す。もう横になって三〇分もすぎただろうか。だいぶ思考と気分にも落ち着きが出てきた。
……気分転換に、散歩と昼食を摂ることにしよう。ついでにバイトの求人かなにか見つけられれば幸いだ。半年も生活を続ける貯えのない以上、長続きしなくても先立つものこそ必要だ。
シャワーを浴びて、適当に服を見繕いコートに袖を通す。死にたいとは毎日のように考えるが、冬空にTシャツで凍死する趣味はない。そもそもここはそんな緯度でもないが。
スニーカーを履き、三日ぶりに玄関を跨ぐ。ここしばらくほとんど寝たきりの生活をしていたせいか、アパートの階段を下りる度にふらふらと違和感を持つ。
散歩がてら、一週間ぶりに会社へ行く道を歩く。途中の路地に喫茶店があったのを覚えている。アパートから正面の小道を抜け、公園を通り抜けてミカンの木のある民家を右に曲がる。最寄りのボロ駅のすぐ裏手の、薄暗い喫茶店に辿り着く。会社勤めしていた時には通り過ぎるだけの風景だったその場所で、私の足は歩みを止めた。