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ブラッド・デス・エスケープ
「貴方がたのおかげで、鬱になりました。……えぇ、はい。ええまぁ……そうですね。では、さようなら」
手にしたスマートフォンの画面をタップする。通話が終了する。
「……終わったか?」
「はい」
ロクでもない奴だと思っていたけれど、人の会話に茶々を出さないだけの理性はあったようだ。なんにせよ、一大決心を必要とした告白だったのだ。それを見守ってくれた。そのやさしさにだけは感謝しないといけない。
「んじゃ、始めるぞ」
ついさっきまで、私の手に握られていた刀をひらと構える。
「……はい」
背を向けて正座をする。風が髪をさらい、出掛けに済ませてきたシャンプーの香りが鼻腔に届く。月光のうつろう刃が私の首にせまる。あと一瞬も経たないうちに、私の視界は反転する。この世界と別れを告げる。
ひゅう、と音が鳴った気がした。