プロローグ
僕は病気で死んだ。
別に後悔はない、未練もない、
むしろ幸いだと思う。
僕は幼いころから病室の外を出たことがなかった。
持病がひどくて酸素呼吸器をつけ、ずっと 過ごしてきた。
今、18歳に死を迎える瞬間まで、ずっとベッドに横になって、ゲームや漫画を見ながら過ごした。
医師は18歳まで生きることができたのも幸運だとしたが……、
正直に言って、一日も早く、痛みから解放されたかった。
ま、その話は後にすることにして、
僕は死んだ。
つまり、僕は死体になったという話だ。
しかし、何か可笑しい。
天国や地獄のようなところに行くと思っていたが、
僕は広くて暗い未知の空間に立っていた。
そして僕の前には不思議なウィンドウが浮かんでいた。
そう。
ゲームをやるとき、よくステイタスとかを表示してくれたそのウィンドウだ。
僕の体はスライムと一緒に半透明の不定型に変わっていて、
前には青色の【キャラクターの作成】ウィンドウが何も無い空間に浮かんでいた。
そしてそこには、【名前】とか【スキル】と言う馴れた単語が記されていた。
ふむふむ。
これ何だろう、とはいっても【キャラクターの作成】ウィンドウとしか言えないのが、
ただウィンドウのみ勝手にうかんでいるだけで、なんの説明も書かれていなかった。
何もしていなくてもしょうがないので一度名前の欄に僕の名前を書いて入れた。
【名前:ちひろ】
僕はオンラインゲームでも本名を使うタイプだから、
こんな所にニックネームを書き入れるのはなぜか拒否感を感じた。
そして種族と年。
【種族:人間】
【年:18】
いつもRPGゲームをして思ったんだが、普通が一番だ。
こんなゲーム感覚で書き入れ手も大丈夫か心配になるけど……。
ステイタスはすでに適當に分配されていた。
STRがひくくてINTがたかいことから推おすと、
たぶん僕は魔法系だろう。
そして【特性】。
【特性】が一番疑問だった。
【特性】の欄には【身体の健康】や【商人の才能アリ】のように普通のものもあったが、【お金持ち】や【疫病の守護者】と一緒に意味のわからないものもあった。
まあ、何かわからない場合は僕が欲しいものを撮るのが普通だろう。
一度健康な体があればいいみたいだから【身体の健康】、
お金に困ったことがなければいいみたいだから【金持ち】、
そして魔法の才能があればいいみたいだから【魔法の才能】など、
あまりにもチートな感じがする【神の祝福】のようなものを避けて、僕は普通のレベルで良いものを選んで入れた。
そして最終的に選んだ5つが【身体の健康】、【金持ち】、【魔法の才能】、【適切な運】、【言語の才能】であった。まあ、この程度なら普通だろう。
最後に2つのボタンがあった。
【スタート】と【キャンセル】。
【キャンセル】を押してみたいとは思ったが、この何もない空間に閉じ込められるのは遠慮したかった。
僕はスタートボタンを押した。
その瞬間、ウィンドウから光が出てきた。
そして、その光は僕を囲み始めた。
同時に僕の心も震えてきた。
これがもしも還生としたら、
ついに健康に走ることができる。
ついに外に出ることができる。
そんな希望に満ちた気持ちでいっぱいになった時、
僕の目に入らなかった小さくて透明な文字が見えてきた。
【性別:女】
【欠点:チビ、私生児、無視され易い、方向音痴、悪筆】
あ。
まだ直す暇もなく、僕の意識はどこかに飛んでいった。