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戦地 前線にて

おかしなことが起き始めた。

前線で戦うプロメテウス達は、その違和感をいち早く感じ取っていた。


「奴らも、死に物狂いで技術を向上させている、ということか」

「これだけ急に、ですか」


そう口にして、予兆はあったか、と思い直す。

索敵に長けたサイボーグ兵や機械化兵の見張りが、見張りの最中敵に襲撃されることが増えた。

そうして命を落とすものも、必然的に増えて行った。


「見張りを増やす。皆には負担をかけるが……」

「仕方ありません」

「私も見張りに加わります」


プロメテウスは、本来見張りに駆り出されるほどの階級である。

ただ、「英雄」という立場や、戦闘での有用性から、見張りを免除されていた。


「いや……。いや、すまない、頼もう」

「はい」


上官は、少し考えた後、その提案を受け入れた。

現実的に、見張りの人員が不足していた。


「物資の供給も滞っているな」

「増員も」


今前線で戦っている兵達の疲弊が想定を上回っていた。


「プロメテウス」


目尻を押さえながら、上官が名を呼ぶ。

疲弊は何も一般の兵だけではない。

多くの命を預かる彼の心労はいかほどのものだろう。


「お休みになっては?」

「いや、いいんだ。それより」


そう言って言い淀む。


「悪いニュースなら、聞き慣れています」

「色々ありすぎてな」


疲れた顔で、上官が笑う。


「補給部隊と増援部隊のことだがな」

「嫌な予感が」

「襲撃を受けた。補給はいい。予定よりは遅れるが、生き残った者が……まぁ機械化兵が1人だが、運ぶことになった」

「他は…」

「生き残りはその彼だけだと聞いている」

「そうですか」


悪いニュースとわかっていたが、やはり気が重い。


「増援の方は、殲滅された」

「つまり、生き残りもいない」

「あぁ。増援は来ない」

「……そうですか」


つまりは、またしばらくの間、増えることのない戦力で前線を守っていかなければならないということだ。

この前線が崩れれば、帝国は大きく後退を余儀なくされることとなる。


「他の者には」

「まだ伝えていない」

「私より先に伝えるべき上官が数人いるかと思うのですが」

「まぁ、そういうな。立場はそうでも、実情は違う。部下達もプロメテウスのおかげで士気を保っているしな」


「英雄プロメテウス」の存在は大きかった。

立場上彼女の上官にあたる者達も、その影響力を無視できない。

いや、それ以前に上官達がプロメテウスを信奉している節まである。


「買いかぶりすぎです。ここまでこの戦線がもっているのはあなたの采配のおかげですし」

「それはありがたい言葉だな」

「それで」


プロメテウスが上官を見据える。

困ったように上官が笑った。もう少し、この不穏で穏やかな会話を続けていたかった。


「本題は?」


一瞬の沈黙は、嫌な予感を確信に変える。


「未知の武器……装置、かな。が確認された……かもしれない」

「締まらない話ですね」

「あぁ。確証がないんだ」


困ったよ、と上官がため息をつく。


「見えないんだ」

「見えない?」


「視認できる距離まで近づかれないと気づけない」

「機器での索敵ができない、と?」

「あぁ」

「そうであればサイボーグ兵も機械化兵も、生身の人間と同じですね」

「そういうことだ。今回の補給部隊と増援部隊もそれでやられた……らしい」

「なるほど。ここ最近の襲撃も、その装置が噛んでいる、と」


多くの機械に頼る機械化兵たちには天敵となりうる存在だ。


「気をつけろよ。腕のいい狙撃手もいるようだ。やられた奴らは皆頭を撃ち抜かれているからな」

「了解しました。隊の者に伝えます」

「あぁ、頼む」



加速していく。

苛烈に。

過酷に。

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