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神への抵抗



ーーダイタロスが死んだ。

その一報は上層部に衝撃をもたらした。

兵器開発の第一人者。機械化兵の生みの親。ダイタロス機関統括長。

その死の影響は計り知れなかった。

そのため、ダイタロスの死は密やかに、限られた人間にのみ周知されることとなる。


「……プロメテウス」


プロメテウスの上官は、一枚の紙を彼女に差し出した。


「訃報だ」


戦死者と行方不明者の一覧の中に、ひっそりとその名は書かれていた。


「……」


その名を目にし、プロメテウスはしばらく黙り込んだ。


「兵の中では、お前が1番の旧知だろうな」

「彼は……機械化兵の生みの親ですから」


初の成功体であるプロメテウスの誕生を、誰よりも喜んだのは彼だった。

その成功はたくさんの犠牲の上にあり、さらなる成果は何倍もの犠牲の上に積み上げられてきた。

その実験を主導した彼は、純粋な科学者だった。

決して無邪気ではなかったが、悪意もなかった。

だから、プロメテウスは彼を、嫌いにはなれなかった。

多くの人間がそうなのだと、勝手に思い込んでいた。

だから。


「内地で、死ぬなんてね」


戦地に立ったわけではない。

敵襲にあったわけでもない。

けれど彼は、死んだのだ。


「私より先に死ぬなんて、おかしな話だ」


そう言って笑おうとしたプロメテウスは、途中でその努力をやめた。

虚しい作業だと、気づいたからだ。


「自殺……とも一部では言われている。詳しい状況はまるでわからない」


情報は、憶測の域を出ないものばかりだった。

死という情報のみが、確かなものだった。


「……他殺にしろ自殺にしろ、ただでは死なない人だとは思ってましたが」

「死は突然で理不尽なものだ」

「そうですね」


どうしようもないこと、というのはあるのだ。

今回そのどうしようもないことが、ダイタロスの身に降りかかっただけのこと。

毎日死と隣り合わせの生活を送っていながら、何を寝ぼけていたのか。


「顔を洗ってきます」

「そのまま休息を取れ。明日も死ぬほど働いてもらわなければ」

「洒落になりませんね、それ」


振り返り、上官に向けた顔は、今度はきちんと笑顔だった。


「あぁ、そうだ」


上官の声が、プロメテウスの後を追う。


「この情報、この部隊では私とお前だけだ」

「情報統制ですね。ご安心を」


彼の死は、士気に関わる。

望まれたとて、その死を誰かに告げようとは思わなかった。

心の内に留めておくうちは、その死が本物にならないような気がしたからだ。


「かっこ悪いな」


そうひとりごちる。

わかっている。彼は死んだ。

けれどこれは。

彼を殺した神への、ささやかな抵抗ーー

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