表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/39

ペルディクス

闇に明滅する光。

世界はただそれだけで、とても居心地が良かった。

このまま深く沈んでいきたいと、そう思ったとき。

強い力で引き上げられるのを感じた。

目覚めたとき、そこには見慣れた背中があった。


「目が覚めたか」


男はそう問いかけてきた。

後ろに目でも付いているのか、いや、付いているのだ。

彼は機械化兵試作機の1人。

360度死角はない。


「フタツか。意外だな」


試作機の中では1番の性能を持つフタツは、その性格に難があった。

人を束ね動かすことにとことん向いていなかったのだ。

戦闘が始まれば、周りのことなど気にも留めない。

基地に戻っても一言も喋らず、一人テントに引きこもる。

要は意思疎通が図りづらいのだ。

彼は部隊を率いる立場ながら、その任は部下に任せ、もっぱら前線で敵を殲滅することに専念している。

そんな彼が、話しかけてきた。

それが意外だった、と言うのが一つ。

そして。


「私の意識を引き上げたのはお前か」


バラバラに霧散しようとしていたこの自我を、繋ぎ止め繋ぎ合わせるという巧緻を彼がやってのけた、というその技術力。


「私の部下に欲しかったな」


過去に思いを馳せれば、後悔などしたりない。


「ごめんだな。仲間に殺される上司など」


その言葉に、やはりと呟く。

自分はすでに、死者なのだ。


「ナナが見つけた時には、お前の体は既に活動を停止していた」

「こめかみを撃ち抜いたからな」

「記憶はあるか」


鮮明に覚えている。撃たれた腹の熱さ、歪んだ仲間の顔。


「私は個人で構想していた計画を実行に移した」

「あぁ。ナナはお前の死骸と、一台のパソコンを回収している。死骸は政府に。パソコンは俺に」

「背信行為ではないかね」

「今からでも政府に渡せるが」

「遠慮しよう」


下手に解体されて消滅するのがオチだろう。


「ナナは自分の手には余ると判断して、俺にパソコンをよこした」

「あぁ、お前は今内地か」

「あぁ」


プロメテウス以外の試作機は、政府と皇族、そして国の守護のための警備に、内地に配属されることがある。

フタツはちょうど内地に配属されていたのだ。


「それにしても、個人の持つ情報全てをネットに移し替えるとは……」

「この端末は窮屈だな。半分は成功したようだが」


自力での自我再形成までが、自分の構想だった。

けれど、煮詰める前に死が訪れてしまったのだ。

人の手を借りての再形成は少し癪だが、まぁ結果は良好だ。


「恐ろしいな、ダイタロス」


その才能が、恐ろしい。


「私はダイタロスに嫉妬され殺された者。ペルディクスの名がふさわしい」

「俺はその辺りの教養はない。好きに名乗ればいい」


なんともつれない返事である。


「それで」


フタツに問う。


「ここまで手間暇かけて、ただのボランティアってわけじゃないだろ?」


何が望みだ。

そう尋ねれば、答えはすぐに返ってきた。


「国家転覆」


にい、と笑うその顔を、恐ろしいと思わなかったのは、既に自分が、人ならざるものだったからだろうか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ