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妬む者 ダイタロス

妬む者 ダイタロス


彼の者は発明者、彼の者は罪人、彼の者は追われる者、彼の者はーー


成果が出ない。

それは彼らを焦らせた。

求められている物は作り出せているのだ。

だが。

それは一人の天才が作り出した物の、残りカスに過ぎなかった。

プロメテウス。

彼女を作り出した、組織の名で呼ばれる男。

ダイタロスという、一人の研究者の。


「くそ、また失敗だ」


苛立った声と、落胆のため息が部屋には充満する。

改良を加えたチップを植え付けると、ネズミは不恰好な金属の塊になって動かなくなった。

増殖する金属細胞に身体がついて行かなかったのだろう。


「理論上可能なはずなんだ……どうして」


プロメテウスを作り出して数年。

彼女の特異体質を抜きにしても、その性能は他の機械化兵と比べると群を抜くものだった。

そしてプロメテウスを元に作られた試作機たち。

量産化に成功した以降のチップとは明らかに性能が違っていた。

そして現在。

量産型チップの改良と、プロメテウス以上の性能を持つチップの開発。

この二つが、ダイタロス機関の目下の任務だった。

しかし。

このイカロス計画は前進も後退もしなかった。


「ダイタロスに意見を聞くべきか」

「いや、ダイタロス自身、プロメテウス以上を作り出せていない」

「新たな発想が必要なのでは?」


泥のような金属になったネズミを研究者たちが囲む。


「増殖スピードが速すぎるな」


横からひょい、と覗き込んで、一言。

その言葉に、発言者に、周囲がどよめいた。


「ダイタロス」

「その呼び方は好まない」


いつかのプロメテウスと似たようなことを言って、ダイタロスはくしゃくしゃの頭をかいた。


「これ」


近くの者に紙を渡す。


「理論上可能と思われるチップの設計図」


近くの椅子に座る。

くるくると椅子を回転させて、虚空を眺める。


「プロメテウス以上は無理だ。試作機にも届かない」


研究者たちが見つめる中、ゆっくりと椅子が止まる。


「成功率は、まぁ若干低くなるだろうが誤差の範囲内だ」


今でも失敗する被験体など掃いて捨てるほどいる。

一人生み出すのに、100人だ。100人の失敗が必要だった。


「それでも」


ネズミだった金属の塊を指差す。


「それよりはマシだろう。今の量産型よりも」


長い前髪とメガネで、ダイタロスの目は見えない。

声は平坦で、猫背の姿勢は気負いも何も見えない

だから、何を考えているのかわからない。

呆れているのか、バカにしているのか。不出来な我々を哀れんでいるのか。


「早速取り掛かります」

「うん」


そうして、というと、ダイタロスはそこでくつろぎ出す。


「……くそ」


その小さく小さく吐かれた悪態が、彼に届くことはなく。

若干の歪みを抱えたまま、組織は回っていく。


彼の者は発明者、彼の者は罪人、彼の者は追われる者、彼の者はーー無自覚に傷つけ傷つけられる。

正確には、妬む者 ダイタロス機関

です。


次回かその次で、こう言うことか、と思ってもらいたい……なー

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