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こんな俺でも生きていける!  作者: 高橋 紫苑
1/3

全ての始まり

キャラの紹介をさせていただきます。


山内望(やまうち のぞむ)…主人公。ラノベによくあるイベントが現実でも起きてくれることをいつも願っている男子高校生1年。文芸部に所属。


深沢京(ふかざわ きょう)…メインヒロイン。黒髪ロングで、平均的な身長。望と同じクラス。コミュ力が高いおかげか、誰とでも気軽にしゃべれる。


浅井喜美(あさい きみ)…望と同じ、文芸部に所属の女子高校生1年。ポニーテールで、身長は高い。クラスは望の隣のクラス。人の感情を読むことに長けている。


大竹月子(おおたけ つきこ)…文芸部所属の女子高生1年。ショートボブで、身長は低い。喜美と同じクラス。オブラートに包まず、ダイレクトに毒を吐いてくる毒舌キャラ。


 季節は秋。葉がひらひらと舞う季節だ。その様子はどこか寂しさを思わせる。現在は夕刻なので、一層寂しさが募る。

 そんな季節、時刻に俺は、

「質問!そこからどうやって主人公はメインヒロイン以外の可愛いヒロインたちと出会っていくんだ?」

他人が作った設定に対して質問をしている。

「人の話をちゃんと聞いていなかったのですか?主人公は孤独に生きていかなければならない呪いをかけられて、孤独に生きていましたが、何故かメインヒロインと接触しても大丈夫で、そこから物語が始まっていきます。この設定が前提なので、他に特に目立ったヒロインは出てきません。一話完結で終わらせる気ですし。」

「それはわかっている。」

「わかっていてそんな質問をしたのですか?なら、あなたはドMなのですね。わざわざ私に、クズ呼ばわりされたいみたいですから。」

「そんなわけないだろ!?」

 簡単に説明をすると、菊花高校1年、山内望である俺は今文芸部の部室にいる。そこではいつも勉強会が行われている。部員同士で討論をし合って、お互いの作品をより良くしていこうということで勉強会は行われている。そんなわけで俺は他の部員の作品をより良くするための質問をしたのだ。

「やっぱり主人公が女の子たちに囲まれるハーレム系の方が主人公も読者も嬉しい、WINWINの関係になると俺は思ったから言っただけで…」

「作者である私は全く嬉しくないのでWINWINになってません、このクズ。」

「本当にクズって言わないでよ!?」

 俺のことをクズと言ったのは、俺と同じく1年の大竹月子。ショートボブで、身長が低いため、見た目は中学生みたいだ。しかし、口から吐くその毒の威力はそこらへんの中学生よりもよっぽど強い。俺の純粋なハートが傷ついちゃう!

「はいは~い!私から望くんに質問!読者側の私は月ちゃんの作品にハーレム系が加わるのは嬉しくないよ?本当にWINWINになる?」

「うっ、そ、それは…」

「それに望くんがハーレム系好きなのって、エッチなシーンが出てくるからでしょ?月ちゃんはそういうの書かないんだから結局望くんもWINにならないよ?」

「いや、だからこそだ!この機会に、大竹にそういうシーンを書く練習をしてもらおうと…」

「セクハラで訴えるよ?」

「すみませんでした。この話は忘れてください。」

 今俺と会話をしていたのは、こちらも同じく1年の浅井喜美。こちらはポニーテールで、身長は高い。また、人の感情や気持ちを読むことに長けているみたいで、俺がハーレム系が好きな理由も俺が何も言ってないのに当ててしまった。俺の純粋なハートが外にさらけ出されちゃう!

 今この部室にいるのは俺も含めて三人だけだ。他にも先輩や同学年の部員はいるが、今日は活動日ではないので、俺たちしかいない。

「喜美は私への質問や意見はないですか?」

「うん、特にないよ!あっ、意見というか感想だけど、今回も月ちゃんの作品は面白くなりそうだね!」

「ありがとう。」

大竹が浅井に微笑む。

「俺も大竹の作品は面白くなると思うぞ!」

「黙れ、クズ。」

「俺への対応ひどすぎじゃない!?」

 なぜ浅井と同じようなことを言ったのに微笑みではなく、侮蔑の眼差しを送ってくるのか…そうか、実は大竹はツンデレで、きっとこの後デレの方が…

「言っておくけど、月ちゃんはツンデレじゃないよ?」

 ですよねー。

 それにしても相変わらず浅井は人の気持ちを読むのが上手いな。実は心を読める超能力とか持ってるって言われても驚かないレベルだ。

「まっ、とりあえず気を取り直して、次は俺の作品のことについて…」

「「やらなくていい。」」

「なんで二人そろってそんなこと言うの!?」

「だって、どうせ望くんの作品って主人公がたくさんの女の子たちと出会って、その女の子たちを主人公の特別な能力で助けるっていうのしかないでしょ?」

「だから、私たちから言うことはもうありません。これまで散々言ってきたので、もう飽き、いえ、もう言うことはないです。」

「もう飽きたって今言おうとしなかった!?俺の作品への質問や意見ってただの暇つぶしだったの!?」

「まあ、その話は置いとくとして、要は、私たちはもう望くんの作品には飽きたってこと。」

「結局飽きたって明言するのかよ!?」

 しかし、この二人の言うことももっともだ。俺はこの文芸部に入ってから同じパターンの作品しか書いてない。

「だが!実は今回は今までの作品とは違うのだ!」

「へぇ?じゃあどこが違うの?」

「フッフッフッ、聞いて驚け…なんと、今回の作品は主人公が男ではなく女なのだ!これで女の子同士であれやこれやをするシーンをたくさん書けば素晴らしい作品になること間違いなし!」

「なるほど、あなたはこれからクズではなく、アホクズと呼んでほしいですね。」

「なんで悪い方向にグレードアップしたの!?」

 良いアイデアだと思ったんだけどな…何がダメなんだ?

 二人に呆れた顔で見られながら俺が真剣に悩んでいると、突然ドアがノックされる音が響いた。

「どうぞー!」

 浅井がドアの向こう側の人に返事をすると、その人はドアを開けた。

「失礼します。」

「あっ!深沢じゃないか!」

 ドアを開けたのは、俺が知っている人物だった。俺と同じクラスの深沢京。彼女は、黒髪ロングで、大竹と浅井のちょうど中間辺りの背丈だ。ちなみに、三人とも学校の中でなかなか可愛い部類に入っている。しかし、同時に三人ともオタクである。大竹は頑として認めようとしないが。

「浅井に何か用か?」

「望くん?私への嫌がらせなの?わざわざ私をこの女としゃべらせようとする、新手の嫌がらせなの?」

「嫌だな~、ほんの軽いジョークに決まってるじゃないか!」

「そう。今度そんなくだらないジョークを言ったら地面に埋められることを覚悟してね!(ニコッ)」

「ニコッとしながらそんな怖いこと言うのやめよう!?」

この会話からわかると思うが、何故だか浅井は深沢のことが嫌いなのだ。本人の前でそれを隠そうともしないぐらいには。

「大丈夫よ、浅井さん。わざわざ人を苛つかせる趣味は私にはないわ。」

「じゃあ話しかけないでくれる?話しかけられるだけで苛つくから。」

「それは残念ね。私は浅井さんともっと話したいのだけれど。」

「そんな嘘をよく堂々と言えるわね、こいつ。」

二人の間に火花が飛び散っているように見えるのは気のせいだろうか。きっと気のせいではないだろうが、気のせいということにしておこう。そういうことにしないと、俺はこの空気に耐えられそうにない…!

「そ、それで、深沢は本当は何の用だ?」

俺はこの空気を変えるために深沢に本題を尋ねることにした。

「あっ、そうでした。浅井さんと遊ぶために来たわけではありませんでした。」

「死にたいんだよね?死にたいからそんなこと言ってるんだよね?」

「深沢!浅井を煽らないで!浅井はお願いだから落ち着いて!」

さっきから全然話が進まないじゃないか!

「ごめんなさい、ついつい。実は山内くんに用事があって。」

「え、俺に?」

「うん。ちょっとそこの廊下まで来てくれない?」

「お、おう。」

 ここで話さないということは、他の二人には聞かれたくない話なんだろうか。俺は戸惑いながらも深沢の後を追って廊下に出た。

 よく考えてみれば、夕日に照らされた廊下で二人っきりってなかなか期待しちゃう展開じゃないか。

 実は俺は深沢のことが気になっている。もちろん、異性としてだ。ただ、深沢は色々な人たちと関わりがあり、その中には俺よりもいい男がけっこういる。だから、俺が選ばれることはないだろうと思って諦めている。

 だけど、まさかの大逆転で、突然の向こうからの告白…なんてあるわけないか…

「実はね、山内くん。突然で悪いけど、私の彼氏になってくれませんか?」

 ほらね、告白なわけ…あれ?

 今、なんて?


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