謎と戦争する日10
視点が変わりますおきをつけください。
時はグルが謎の生物に攫われる日の朝まで戻る。
各部位を動かしながら体調を確かめる謎の生物。
進化した謎の生物の体は様変わりしていた。
まず毛色が白に近い灰色をしていたのが漆黒に変わり、血管が走るように赤毛が生えていた。
次に翼が2対に増え、尻尾も3本から5本に増えていた。
しかし、一番変わっているの脚だ。
黒い脚に黒炎が纏わりつくように燃えていた。
だがこの黒炎、不思議と熱はない。
謎の生物は体調の確認が終わり<謎の人格>に出発の意を告げる。
(準備は出来た。体調もよし。じゃあ行くか!)
(ええ、行きましょう。豚共に地獄を見せに。)
謎の生物は森の中を西に向かって走る。
流石に正面から行く事はしない。
西から回り込み、まずは偵察するつもりだ。
(てかさ、作戦は任せろって言うから黙ってたけど、そろそろ教えてくれない?)
謎の生物はどういう風に攻撃すれば仕返しになるか考えていたが、<謎の人格>に任せてください、と言われ、怖くて何も言えなかっただけなのだが。
(良いでしょう。まずは一撃離脱の攻撃を仕掛け、その時にオークを一匹攫います。そして調教します。貴方でさえ半日しか持たなかったあの調教を…。)
それを聞いた瞬間、謎の生物はあの時の事を思い出し、これから攫われるオークに同情するのであった。
(今ならあの時よりも<吸血魅了>のレベルは上がっていますから、もっと早く片は付くでしょう。)
(そ、そうですね。)
何故か敬語になる謎の生物。
(調教が終わったらオークに送り返して、謎の生物に捕まったらどうなるかを分からせてあげれば恐怖は倍増し、勝手にじわじわと苦しむ事になるでしょう。)
謎の生物は心底えげつないな、と思いながらも走る足は止めない。
(ここまで来ればいいか?)
(ええ、いいと思いますよ。)
謎の生物は充分に西に来たと思い、森から出て丘陵地帯に入る。
森から出る前に<謎の人格>に確認を取ったのは、これ以上怒らせたら自分の身も危険になるかもしれないという思いから自然と聞いてしまったのだ。
自分のスキルに恐怖を抱く、周りから見れば滑稽だが、本人からすれば大真面目だ。
もしかしたらステータスの称号にある恐怖の権化と絶望を創りし者は<謎の人格>に付いているものであって、<謎の人格>がなければそんな称号はなかったのでは…と考える謎の生物。
正にその通りなのだが、今の謎の生物には分からない。
そんな思いを抱きながらも幾つかの丘を超えると東に薄っすらと街が見える。
(あれか?)
(どうやらそうみたいですね。この距離ならばまず気付かれる事はないでしょう。)
(じゃあ頼むね。間違っても墜落はしないでね。)
(貴方と違いますから大丈夫です。)
謎の生物は助走をつけて勢いを付けながら飛び上がる。
飛び上がった謎の生物はまるで空を走るように飛んでいく。
以前ならば空を飛ぶ事は出来なかったが進化して翼が増えた為に飛行が安定してきたのだ。
しかし、それも<謎の人格>の補助がなければ出来ないのだが。
謎の生物は一度、1人で飛べるか試したのだが、5m程飛んだところで墜落する結果に終わった。
そんな事があったので、飛行は<謎の人格>にほとんど任せっきりだ。
謎の生物はどんどん高度を上げ飛んで行く。
そして遥か上空から街に接近し、街の様子を確かめる。
普通なら視認出来ない距離なのだが、謎の生物には<謎の魔眼>があるので細かく確認できる。
(あの時に魔眼を創ったのは正解だったな。こんな高度でも敵がしっかり視認出来るんだから。)
(まぁ結果論ではありますが確かに<謎の魔眼>は役にたっていますね。それよりも豚共の街の様子が少しおかしいですね。)
(ん?……おいおい…なんであんなに警備が厳重なんだよ! あれってやっぱり俺を警戒してあんなに警備を厳重にしてるのか?)
(恐らくそうだと思いますよ。…しかし、面白くなってきました。希望が大きい程それを打ち破られた時の絶望は大きいですから…くふふ…)
オーク達の抵抗の結果、<謎の人格>の残虐心に刺激を与えたようだ。
そんな時に謎の生物は見つける。
黒い肌をしているオークの姿を。
(あの糞豚め…遂に見つけた。)
<謎の人格>に怯えるあまり消えかかっていた怒りの炎が再度燃え上がる。
(獲物は決まりましたね。では一旦戻って夕暮れを待ちましょう。そして陽が落ちたと同時にあの豚を攫いましょう。)
こうして黒い肌をしているオークジェネラルことグル将軍は攫われることになる。
オーク達にとってはこれだけで心が折れ、生きる気力が無くなる程の事件だったが、忘れてはいけない。
謎の生物の復讐はまだ始まったばかりだ。




