謎と戦争する日9
グルが率いる30名の遊撃隊とも言える戦士達は東西の城壁の上と、北門の上に10名ずつに分かれて待機している。
そして南門の上にはグルが待機していた。
南門には緑光石を持った一般兵が多めに配備されている。
理由としては謎の生物が現れたのが南の方角だからだ。
ジルシンドが来るぞ、と警告をした朝から時間は過ぎ、もうすぐ日が暮れようとしていた。
軍師は城の中で待機していたが、あまりの緊張感に耐え切れず、グルの様子を見に行こうと南門に向かった。
階段を上り南門の上に到着すると、グルが悠然と立っていた。
軍師はその立ち姿を見て、僅かに嫉妬する。
自分にも力があれば、と。
そんな思いを振り払いグルに話し掛ける。
「グル将軍、様子はどうですか?」
「軍師殿か。我は問題ないが周りの兵達があまりの緊張で、随分と疲労しているように見えるな。」
「…そうですか。その気持ちはよく分かります。私も似たようなものですから。」
少しばかりの苦笑を浮かべる軍師。
「来ると思いますか?」
「ジルシンド様がああ言ったのだ、間違いなく来ると我は思っている。」
「やはりそう思いますか。出来れば来ないでいただきたいものですがね…。」
今度はグルが苦笑を漏らした。
「ありがとうごさいました。グル将軍と話して少し元気が出て来ました。それでは私は持ち場に戻ります。」
「我も緊張が良い具合にほぐれた。礼を言う。」
軍師とグルは静かに笑い合う。
「お互い頑張りましょ……」
軍師がそこまで言ったがその先は言えなかった。
グルが唐突に消えたからだ。
いや、軍師はハッキリと見ていた黒い狼の顔をした化け物がグルを連れ去って行くのを。
しかし、どこから現れどこに消えたのか分からない。
周りの兵達も何人かは気づいており、叫んだり鐘を鳴らして襲撃ありの合図を出したりしていた。
軍師はグルと化け物を必死に探す。
「どこだ…どこにいる!!」
激しく首を振りながら周囲を見渡す軍師。
そして、見つける。
「空…だ……と…」
南門から少し離れた上空でその姿を発見した。
翼をバタつかせながら飛んでいる黒い化け物がグルを拘束している姿を…。
「そんな……馬鹿な…。」
軍師は崩れ落ち、両手を地面につけながらそう言い、周りの兵達は飛んでいく化け物を呆然と見つめるしか出来なかった。
翌日の朝、城外にオーク達の姿は全く見当たらない。
皆、城内の至る所で呆然としているからだ。
オーク達の心は完全に折れていた。
あれだけの警備の中、国内最強の戦士を連れ去って行ったのだ。
軍師も例に漏れず、壊れかけていた。
王の自室の前で、平伏しながらぶつぶつと何事かを呟いている。
「王よ…どうすれば……私は………」
ずっとこの調子で呟いているがそれを止めようとする者はいない。
この2日後、人間の軍が到着する。
人間の軍は警戒しながらも南門にたどり着くが、指揮官らしき女騎士が不審に思う。
「人の気配もなければ、争った形跡もない。…一体どういうことなの?」
南門は固く閉ざされているがその横にある通用口は開いていた。
女騎士は部下に命令して通用口から入らせて南門を開けさせた。
警戒しながらも南門を潜り、庭を進んでいくとまた門があったが、普通に開いた。
ゆっくりと門を開け、城内に入る女騎士。
「な、なんだこれは!?」
城内に入った女騎士は驚きを隠せない。
生きてはいるが生気のない目をして座り込んでいる、そんなオークが至る所にいる光景が目に入ってきたからだ。
女騎士は近くにいたオークの両肩に手を置き揺さぶりながら聞く。
「一体なにが…何があったんですか!?」
そう聞くが返事はない。
ただ虚ろな目を向けてくるだけの結果に終わる。
人間達はたった数日で一国の軍をここまで破壊する化け物に、これまでにない恐怖を感じ、身を震わせた。




