謎と戦争する日6
side オークジェネラル
謎の生物が森に逃げた後、オークジェネラルは混乱しているオークソルジャー達を落ち着かせた後、先程あった事を思い出す。
(一体あの化け物はなんなのだ?…いや、今はそんなことはいい。それよりも我が恐怖を感じるとは…。先程、なぜ我は攻撃命令を出してしまったのか…感情のままに行動するなど未熟者もいいところだ。)
自分の行動に後悔し、頭を抱えるオークジェネラルだったが、部下が小走りで側までやってくる。
「グル将軍、部隊は負傷者の手当てに移っていますが、その後はどうすればよろしいでしょうか?ブヒィ」
「先ずは通信水晶を持ってくるのだ。軍師殿に報告し、この後の行動を相談する。後は森側の警戒を最大限にしろ。」
「了解しました。ブヒィ」
部下に指示を出すとグルはまたもや思考の世界に入る。
(果たしてこの国の兵だけであの化け物を倒せるのだろうか。いや、不可能だな…。力の勝負だけならば我だけでも勝てようが…あの異様な力の波動。
精神攻撃的な何かだろうか?あれさえ防げれば何とかなりそうなのだが。)
そこまで考えたところで、部下が通信水晶を持ってくる。
受け取ったグルは、すぐさま起動する。
『軍師殿、少しよろしいか。』
『その声はグル将軍ですかな?』
『いかにも。…それでさっそくで悪いのですが、報告したい事がある。』
『ええ、構いませんとも。』
グルに軍師と呼ばれた者は声だけで高い知性を持っていることが伝わってくる。
『先日、行方不明になった者達の件は聞いておられるか?』
『ええ、休暇中の5人の兵士が、森で狩猟中に行方が分からなくなった件ですね。』
『うむ。実は今朝がたに捜索隊を組み、私の指揮の元出撃したのだが森の入り口付近で例の魔物を発見したのだ。』
『なんと!!遂にここにも現れましたか。人間の国から狼に似た化け物が絶望の領域の草原地帯で発見されたと聞いていたので、いずれここに来る事は予想していましたが…。』
驚きの声を上げる軍師だが、すぐに落ち着きを取り戻す。
『知性があれば話し合いで何とか解決しようと意思疎通を試みたが、不意の事故で失敗し交戦になった。』
『そ、それでどうなったのですか?』
様々な嫌な予想が頭をよぎり、少しどもり気味になってしまう軍師。
『幸い、死者は出ずあの化け物は森に逃げた。しかし、部隊の士気は最悪だ。』
『そ、そうですか。死者が出なくて良かったです。部隊が壊滅した、とか言われたらどうしようと思いましたよ。』
安堵の息を吐き、冗談混じりにそんな事を言う軍師だが、グルは重たい声で返す。
『良かった…とてもではないが我にはそんな事は言えん。部下達の中には心が折れ、軍を抜けると言い出す者達がいるんだ…。』
『それ程の化け物だったのですか!?』
驚きの声をあげる軍師。
しかし、グルの次の言葉でさらに驚く事になる。
『…我も逃げれるなら逃げたいね。』
周りには聞こえないよう声を出来るだけ抑えて答えるグル。
その答えで計り知れない化け物なのだと、ようやく理解する軍師。
『!!!我が国最強のグル将軍が何を言っているのですか!と、とにかく一度、部隊ごと戻ってきて下さい。王や他の者達を加えて話し合いましょう。』
『…了解した。』
150人により結成された捜索隊が撤退する。
しかし、誰も森に振り返らず早足で行進する。
後ろを見てしまえば奴がいるかもしれない、そんな気持ちから後ろを見れずにいた。
オークの国は丘を越えた先にある。
そして、捜索隊が丘の頂上に来た時、ここで森に振り返る者がいれば気づいたが、誰も振り向く者はいなかった。
森から鳥が、狐や兎が、魔物たちが逃げ出している姿を…




