謎と戦争する日4
謎の生物は自分を取り囲んでいるオーク達を見渡し、全員が武器を持ち、鎧を着込んでいる事を確認する。
武器は個々で異なっており、剣や槍、弓などの武器を持っている。
逆に鎧は革製の簡素な造りをした物で統一されている。
(何だこいつら、お揃いの鎧を着て…まるでオークの国があって、その国の軍人みたいじゃないか。)
(武器や防具を装備しているという事は、それなりに高い知性を有しているという事ですね。少なくとも貴方よりかは頭が良さそうです。)
(こんな時まで俺を貶めるの!?)
(こんな時だからこそです。これで最後かもしれませんから。)
(そんな縁起でもない事を言うなよ…。)
頭の中でそんな会話をしていると、取り囲んでいるオーク達に動きがあった。
丘がある方角の方にいるオーク達が動きだし、一本の道を作る。
そこから一匹のオークが姿を現わす。
そのオークは、周りを取り囲んでいるオーク達よりも一回り大きく肌が黒ずんでいて、上位者のオーラとも言うべき雰囲気を醸し出していた。
(なんかヤバそうな奴が出てきたな。周りの奴らをオークソルジャーと名付けるならば、あいつはオークジェネラルか?)
そんな事を思っていると上位者たるオーク…オークジェネラルの口が動く。
「異質な力を放つものよ、ここに何用か?」
(…え?その豚顔で喋れるのか!?何だこいつ、マジで危険だ。)
(豚顔で喋れるからといって、それで危険という判断をする貴方の思考回路は謎ですが、何か反応を示した方がよろしいのでは?)
<謎の人格>に言われ、返答しようとする謎の生物だったが、ただ狼が吠えているようにしか聞こえない。
「ふむ。意思なき化け物であったか…。総員、攻撃準備!!相手は未知の魔物だ、弓で距離を取りつつ仕留めろ!」
(何でだよ!!)
思わず地団駄を踏む謎の生物。
しかしそれが功を奏したのか、オークソルジャー達は弓を引いた状態で止まり、オークジェネラルは訝しげな目でこちらを見ている。
(お?も、もしかして意思疎通のチャンスか?)
謎の生物はまず、器用に右前脚で自分を指差し、その後にオークジェネラルを指差す。
(よしよし。そのまま攻撃してくんなよ。後はファイティングポーズをとって、前脚をクロスさせれば戦う意思はないと伝わるだろ。っていうか、伝わってくれないと困るのだが…。)
謎の生物はファイティングポーズをとるため、両前脚を浮かせて二本の後脚で立とうとするが、その時に思いもよらないことが起きた。
両前脚を浮かせた瞬間に、謎の生物から見て右側にいる弓を引いたオークソルジャーがくしゃみをしてしまい、矢を放ってしまったのだ。
真っ直ぐ向かってくる矢を、<謎の魔眼>で視力を強化された謎の生物はしっかりと視認する。
しかし、両前脚を浮かせた直後だった謎の生物は回避行動が出来ない。
(この糞豚がぁぁ!!!)
矢は謎の生物に当たると思われたが、<謎の人格>が翼を触手に戻し、無数の触手で矢を弾き返すことに成功する。
(助かったよ。にしてもあの豚は許さん!)
(咄嗟の事だったので、翼を全て触手に変えてしまいました。1、2本の触手が有れば充分だったのですが…不覚です。)
(気にすんなよ。悪いのはあの豚野郎だ!)
ホッとした後にオークソルジャーに怒りを向ける謎の生物だったが、オーク達は全く別の感情をその身に宿していた。
それは恐怖。
翼が無数の触手に変化するという事態に驚愕し、そのおぞましい姿を見て恐怖した。
それはオークジェネラルも例外ではなかった。
先程まで堂々と立っていたオークジェネラルだが、今は剣を構えている。
しかし、剣は震え、目は恐怖の色で染めている。
そして、感情のままに叫んでしまう。
「総員、弓を放てぇ!!」
その瞬間、数十の矢が謎の生物めがけて放たれる。
(この糞豚共がああぁぁ!!!)
謎の生物の怒りは、油を注がれたような炎のように燃え上がる。
(落ち着いてください。矢は私が防ぎますので、貴方は森の方にいるオーク達を突破して森に逃げてください。)
そう言い<謎の人格>は、尻尾も全て触手に戻し、数百の触手で矢を弾き返していく。
しかし、全方位から射られた矢は触手を突破し、3本の矢が謎の生物の体に刺さる。
激痛に襲われた謎の生物は、更に怒りの炎を燃やす。
だが、僅かに残った冷静な部分がこの場は逃げろ、と言うのに従い、<謎の人格>の言葉通り森に退却する事を決める。
全力で逃げる事を決めた謎の生物はまず<限界突破>を使い、身体を強化する。
その後に、森側にいるオーク達に<謎の魔眼>を発動し、包囲が解かれた瞬間に一気に駆け出す。
強化された謎の生物は、飛んでくる矢よりも早く駆け、森に消えていく。
オーク達を撒いた後も数分の間、森の中を走り続けるが<限界突破>の効果が切れ、身体中の力が抜けていき、勢いで地面を転がってしまう。
謎の生物は矢に射られた痛みと、<限界突破>で酷使した反動の痛みに苛まれながらも、復讐することを心に固く誓う。
(あの糞豚共が!絶対に許さん……。)




