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グラッチルート 竜族のゲート

挿絵(By みてみん)



グラッチはなぜ気配を消せるのか、そればかり気になってしまう。


あくまで彼の能力が気になっただけで、好意からではない。


これから彼に張り付いてどんな事をしているか調べてやる。



「なんで追ってくるんだよ」

グラッチは上へ飛んだ。

相手が飛ぶなら私も飛ぶまで。


「……しつけぇなあ」


「昨晩のあれが悔しくてたまらないわ」


気配を探ることには自身があった為、それを看破されてムカムカしてしかたないのだ。



「今は無理でもいつか、あなたのその技について教えてもらうわよ」


「そう簡単にいくかよ」

「貴方は普段から気配がないわね」

「あったら暗殺者には向かないだろ」


グラッチは目の前にいるが、目を閉じるとやはり気配がない。


「……実はゴーストの類い?」

「なわけないだろ」


グラッチに飽きれ半分、腕を差し出された。

指で少し触ってみる。物理的な皮膚だった。



「……わからないわね」


今まで気配のない者に遭遇したことがない。

彼は一体何者か、気になるところだが、こんなことをしている場合ではなかった。


私の目的は人王の首を取りがてら、クラリオンを探すこと。


それには有力な味方を着けなければならない。


目の前の彼、は強いし、人王をサックリ始末できそうだ。


……が、そう簡単には仲間にできそうにない。

弱味を握るか、主のルヴィストスを先に手懐けるか、しかないだろう。



……ルヴィストスを手懐―――――絶対嫌だ。



むしろそっちのほうが難しい気がする。



ルヴィストスは人間だし、グラッチも人間だろうが案外嫌な気がしない。


あ……気配がないからか。



「……なに一人で考えてんだ」

「別に」


人王の命を狙っていることが知られたらまずい。


ここは下手に言いわけはしないで、何も考えずに返事をしよう。



「……ああ、そうだわ。貴方の正体を知るために本を読んで種族について学びたいの

書庫に案内してくれないかしら」


「好きなだけ読め、んで、あんま城内うろつくな」


ハッとして周りを見渡せば、人間等の好奇の視線がある。


仕方ない。グラッチやルヴィストスは、魔族には慣れているだろうからともかく、彼等は魔族を見慣れない筈だ。



本を読んだのはクラリオンに拾われてから。

だから魔城にも書物はあるが、人間の城の本の趣向は、どうなっているのだろう。



取り合えず飛んで、棚の上にある本を取る。


「【大女神エレクティエvsアンラーママン】……おもしろいのかしら」


「ああ、それはな……」

「貴方いまネタバレしようとした?」


というか……意外、グラッチも本を読むのね。


「お前いま失礼なこと考えたよな?」

「そうね、暗殺者も暗殺書くらいなら読むわね」


「そういうことじゃねえよ……」



「婚約パーティー?」


どいつもこいつも、パーティーばかり。

ムカつくったらないわ。


「いつやるの?」

「今夜だそうです」

―――――――――――


「はあ……」

「どうした」


「……わらわ、パーティー嫌いなのよね」

「ファッションワラワは流行らないぞ」


なぜ、こいつがクラリオンとの会話を―――――


「なんで……いえ。まさか、ね」

「実はオレはお前達が話していたときから天井裏にいた」


「なん…ですって……?」

――――――――――


「いやーお美しいですなははは……」


「どこのご令嬢かしらホホホ」

「フォフォ……」


ああ嫌だ、このノリは、魔族と大して差がないわ。



お約束、伝家の宝刀【パーティーバックレール】


「ふー」

「お前、なにやってんだ」

グラッチが現れた。


「その台詞、そっくりそのまま返すわ」

「警備にきまってるだろ」


「ならルヴィストスの近くにいればいいじゃない」


グラッチはルヴィストス直属の部下のようなものなんだろうし。


「あのな、オレはあいつにお前の護衛、頼まれてんだよ」

「そうなの?」


……私よりルヴィストスのほうが弱そうだけど。



「ルヴィストスは他の警備がいるが、お前の警備はいないだろ」

「そうね、人間は群れるものね」


半分魔族だから力で人間より優位でも、さすがに数には勝てない。



「屋敷内も危険だが、外にはもっと出ないほうがいい」

「なら会場に戻るわ」


一応は人間に溶け込まないと、目的を果たせなくなる。


「……どちらに?」

「フォフォ……」


ルヴィストスに訪ねられる。


「ちょっと外を見ていたの」

「フォフォ……」


素直にグラッチと話していた。と言ってもよかったのに、ごまかしてしまった。


「そうですか」

「フォフォ…」


嘘は言っていないからいいか。


「フォフォ……」

ああ、さっきからヴサの笑いがうるさい。


「このパーティーいつ終わるの」

「フォフォ……さあ?」


「……」


なにやらきらびやかな衣服の女たちが私のほうを見てヒソヒソと話をしている。


だからどうした。そんなことくらいで、いちいち腹を立てていられない。


彼女らが去るまでおとなしく部屋にいよう。


――――暇。人国は、本当に何もない。

魔城の庭なら植物が話すのに、ここの植物は何も喋らないのだ。


〔コッチニオイデ~〕

声が聞こえる……金粉が舞った。妖精か、ついていってみよう。


どこかと思えば庭だ。

〔コンニチハ〕


可愛らしい妖精が羽をぱたりぱたりと羽ばたかせ、花の上に乗った。


「いったいどうして妖精が……」

「オレがよんだ」


―――グラッチ。なぜここにいるんだろう。


「なぜ妖精が人国に、というかどうして呼べるの?」


―――そもそもどうして呼んだの?

それも暗殺者が妖精なんてメルヒェンなこと。


「……オレの正体、自分で当てるんじゃなかったのか?」


「……もしかしてグラッチ。貴方は妖精族なの?」

「ああ、半分な」


「……褐色ということはダァクエルフィ?」

「そうだ」


なんだか、拍子抜けしてしまう。


「でも貴方が妖精と人間のハーフであっても

気配が完全に消せることとは繋がりが見えないわ」


「妖精と人間のハーフはまれに、気配を持たない者が産まれることがある」

「……そうだったのね。でもどうして妖精を呼んだの?」


「お前が退屈そうにしていたからな……

オレに出来ることは何か、考えたら妖精を呼ぶくらいだった」

「そう、ありがとう」


私は妖精達が飛んでいるのを眺める。

ふわふんとした空気に、眠気が誘発された。


「おい、フロライナ……寝ちまったのか……」


――――目が覚めると部屋の寝台の上にいた。

あのまま眠ってしまった私を、グラッチが運んでくれたようだ。


ちゃんと肩まで布がかけられていて、表現できない気持ちになった。


ただの粗野な暗殺者だと思っていたが、案外気がきくし、こういうのをギャップ萌えと言うのだろうか。



窓のから外を観れば空は赤く、もう夕方になっていた。


ここは城と繋がった大臣邸。素性の知れたヴサやルヴィストス、グラッチならまだマシだが、顔も知らない人間と一緒にだなんて、食欲がなくなる。

食事は部屋でしたほうがいいわよね。


魔城にいたときは、あまり一人ではなかった。

ロングテーブルの向かいの席にはクラリオンがいて、たまに起きているダフォトスが、私が食事をしているときに菓子を食らう。ディオは立って私たちを見ていた。


やはり、魔城が懐かしい。彼らにとっての10年が短くても、私には人生のほぼ全てなのだ。


「お食事をお持ちいたしました」

ドアが軽くたたかれる。


「どうぞ、入って」

あくまでも、気取られぬように笑顔を作る。


「ちょうど部屋で食べたいと思っていたの」


丁度夕食<ゆうげ>の時間なのか、タイミング良く食事を運んでくれた。

おそらく私が魔族との混血と悟られぬようにだろう。


人間は同じ空間で異なる者が近づいた際、会話や雰囲気で違和感を察知すると聞く。


それは魔族もあまり変わらないが、魔族は死ににくく、長く生きる。そのせいか感覚も鈍ったりする。


人間は野生の本能的に、自分が生き残るためにそういう感覚は敏感だ。


「それでは失礼いたします」

女中が頭を下げて去ろうとする。いけない。つい考えこんでいた。


「ええ」

せっかくの食事だ。冷める前に食べよう。


透き通った薄い茶のスープを一口すくい、味わう。

オニオンスープだ。さすがは大臣邸、味も申し分ない。


ふと、これは特に時間がかかるとディオが言っていたのを思い出す。


食事を終えて、満足した私は、本棚から本を選ぶ。


表紙は何も書かれておらずタイトルはわからないものばかりだ。


手当たり次第に読みたいものを探すことにした。


読んでいる間にうとうととして、次の日になっていた。


翌日、気分転換に外へ出る。


「ご婚約なさったんですって?」

「はい」

「まあ、ルヴィストス様とご婚約だなんて羨ましいですわ」

「一体どこのご令嬢かしら」

「きっと公爵、伯爵あたりね」

「隣国のお姫様じゃないかしら」


―――嫉妬の視線もしかたない。

わかっていて、あてつけに言っているのだ。


大臣の息子のルヴィストスの婚約者となれば、本来は貴族の娘がなるもの。


私は魔城で貴族より優雅で自由な暮らしをしてきたが、本物の貴族ではないし、彼等の基準で、いわゆる下賤な生まれ。


―――――だからどうした。


ルヴィストスとは仮の婚約、その点は痛くもかゆくもないし。

貴族や平民。そんな括り、私には関係ない。

――――――



「おい」

「グラッチ……」

少し怒っている様子。どうしたのだろう。


「ただの嫉妬だ。気にするな」

あれを見ていたのか、抽象的な話をされた。


「……嫉妬なんてしても仕方ないのに」

まあ貴族の娘たちは、ルヴィストスの妻の座を狙っていたのだろうし、この件は人国が滅ぶお詫びだと思っておこう。


「いま何か嫌な気がしたんだが……」

「なんのことかしら?」


自室に戻る。することがなく仮眠をとろうとしていると、使用人がドアをノックした。

ヴサが呼んでいるらしいので、あくびを噛み殺しながら部屋を出た。



「用って?」

部屋にはヴサやルヴィストス、グラッチを除いて誰もいない。

どうやら重要な話のようだ。



「えー森の奥に竜人族の神殿があるそうなのです」

「竜人……」


たしか東ではドラゴンとは異なる龍と呼ばれる神がいると聞くが、何か関係はあるだろうか。


「……その話、私が呼ばれたのと、なにか関係あるの?」


「ええ~一番最初に竜族と会ったものは、何でも願いが叶うというご褒美があるんです」


「何でも?いま何でもって言ったわね?」


「はい。ちなみにわかりやすく言いますと

貴女が勝てば魔王が助かるまたは人国が滅ぶ。ルヴィストスが勝てばそれを阻止できるということです」


「わかった。その勝負、受けて立つわ」


なぜ私とルヴィストスを婚約させたのか、理由はわからなかったけれど、兎に角勝てばいいのだ。



私は颯爽と森を飛び、竜族を探すが、見当たらない。


「な!?」

飛空中にカラスの大群による襲撃にあった。


視界が遮られ、落下する。


―――――――うまく着地できない。


「……!?」

「怪我してないか?」


たまたま下にいたグラッチが受け止めてくれた。


「……ないわ、ありがとう」

サッと彼の上から降りる。


「あら?」

向こうの空間、光るなにかがある。


「あれが竜族の住処か」

グラッチが一瞬目を見開いて、確信しながら言う。


「きっとそうだわ」

私達はそこへ向かう。


「……見つけた」

ルヴィストスも来てしまった。


光へ包まれる。


《――――》

一瞬二人の男の姿が光の向こうに見えた。

しかし、私達はすぐに光から追い出された。

この勝負、見つけた早さではルヴィストスには勝ったけれど――――


人国を滅ぼせるような条件は満たしていないかもしれない。

しかたなく、私はグラッチと城へ戻る。


入る途中でチラリチラリと見られたがいまはいい。

はやくヴサのところへ行かなくては。

====


「ひきわけでーす」

なんとなくこうなる気はしていた。


不思議と残念さはない。たぶん滅ぼし方が不当な感じがしたからだ。


いくらヴサが王座を狙っていて利害が一致していようと、簡単に人国を片付けていいことではなかった。


問題を解決するのはしばらく先になるだろう。そのときまで作戦をねることにしよう。

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