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ダンジョンの同居人  作者: まる
ダンジョンと
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町へ行ってみる

町へ行ってみる





ダンジョン強化という名の第一回ダンジョン改造が、一悶着どころでは無く終了する。


今後の課題である町に行く準備の話し合うために、フェブの部屋に集まる。


そして新たなる問題に直面していた。




「結局、世の中金がすべてという事だ」

『そこまで言わないけど、先立つ物が無いとね・・』


現実的すぎる問題。すなわちお金である。


「いくら田舎か出て来ても、無一文はあり得ないよな」

『装備を揃える位のお金は用意するものよね?』


町へ行くために色々と準備をしてきた訳だが、旅と考えた場合の路銀が無いのだ。


長く留まらないであれば、どんな手段でも問題は無いのだが、この先お世話になる事を考えると、下手に疑われるような事はすべきでは無い。


『幾ら貯まってるのかしら?』

「約700アスだな」

『700アスって不味いの? 宿で一泊すると、64アス位でしょう?』

「銀貨2枚から3枚は持っているとおもう。必要なのは宿代だけじゃないし」


旅には、野宿の準備をするためのお金も用意しておく必要がある。


「今残っているDPは?」

『お金の宝箱出してあげたいけどDP空っぽよ』

「まぁ、あれだけダンジョン拡張すればそうなるか」


二人して溜息を吐くが、問題はこれだけでは無い。


『一人旅って言うのも良くは無いんでしょう?』

「・・・そうなんだよなぁ」


いくら街道を旅したとしても魔物が跋扈するのに、一人旅そのものがおかしい。


更に問題は、身分を証明する物が無い。

通常、村を出る場合は、村長なり村の代表者なりに、身分を証明出来る物を貰うのである。


何かのギルドに登録していれば、身分証は所持しているはずだし、ギルドが銀行的な役割を果たすので路銀についても考える必要は殆ど無い。


身分を証明できず路銀も無い、しかも魔物を連れた一人旅、真っ先に危険人物と疑われるに十分な理由だろう。




悩んでもお金も身分証明書も湧いてこないなら、特攻しかないかと覚悟して準備する。


僅かばかりの路銀、残しておいた保存食、周辺の薬草や実から出来た薬、あまり手を付けなかった酒類、野営に使う物などを纏めて行く。


『なんか夜逃げの準備みたい』

「・・・そう見えるか」


旅をする正当な理由が無ければ、間違いなく夜逃げである。


『一人で持って行けそう?』

「・・・いや無理だな」


荷物はかなりの量で、到底一人で運べる訳が無い。


山道を進むのに馬やロバは適さない。


普通の人が野生の動物を飼い馴らすはずも無く、ましてや魔物を使役するとなれば衛兵に見咎められるだろう。


『召喚士を表には出せないのよね?』

「悪いな・・」

『別に気にする事無いわよ』

「落ち着いて時間が出来たら話すよ」

『別に気にしてないわ』


何があったか話してはいないが、召喚士として高い能力がありながら、何かの理由で隠したがっている事は察しているし、触れる事もしない。


荷物の準備がひと段落したら、荷物運び兼護衛の魔物を【召喚】に外へ出る。


出来るだけ目立たない様に犬系の魔物、グレートバーナードを三体【召喚】する。

護衛一体、荷物運びを二体に分散させて、ローテーションさせる事にする。




『結局なにも浮かばなかったんでしょ? 考え無しで行くつもりな訳?』

「まぁ旅の中で考えるよ」


心配の声が掛かるが、玉砕覚悟とは言えず言葉を濁すしかない。


『戻るのは何日後?』

「上手くいけば10日前後だと思う」

『はぁ・・。止めはしないけど』


フェブは自分のためと分かっているから、止めるに止められない。


「まぁヤバそうなら、逃げ帰って来るよ」

『必ず帰って来なさい。そっから先は何とでもなるわ』

「その時は頼む」


ジャニを見送りながら、自分で出来る事は無いかと考え始める。






魔物たちの情報から進むべき大体の方角は分かっているため、北西に進路を取る。


道中の魔物の情報や薬の素材の自生、人の居た形跡などを調べながら3日程旅をする。


時折、方向に間違いが無いか、鳥系の魔物を【召喚】し、町に近づいている事を確認する。




そして4日目の昼過ぎには町に着く。


いきなり町に入るのでは無く、一日かけて街の周辺を見て周る事にする。


「(町じゃなくて村だな。だいたい50人ほどが暮らしているか)」


流石に魔物からは町なのか村なのか、どのくらいの規模といった情報を得る事は難しい。


村の周囲は侵入除けの策で覆われており、家々もしっかりと作られ急造とは思えない。

村はどこかの中継点では無く、木材生産の村の様である。

道は西にしか伸びているだけで畑も少なく、森の中から木を切る音が聞こえてくる。


「(近くに町があるのか? ここで少し情報を集めるか)」


魔物を森の中で隠れているように指示し、村へと入っていく。




ジャニは村を見るまでは、自分が不審者そのものである事を自覚していた。

旅の間も受け答えのイメージトレーニングを欠かさなかった。


ダンジョンの方では、そんなジャニの事を心配しているフェブがいた。


『そろそろ村に着く頃かな? 自分が不審者だって覚えていればいいけど・・』


今のジャニにとって、その心配は今まさに必要としている助言だった。

村を見た事で、全て吹っ飛んでいる事に気付いていない。




村に入ると辺りを見回し、村人を見つける。

にこやかに挨拶をして近づくと、向こうも挨拶をしてくる。


「旅の者ですが村長さんにお会いしたいのですが、いらっしゃいますか?」

「多分、家の方に居ると思うが・・、行ってみるかい?」

「どちらがご自宅ですか」

「ほれ、あの家だ」


一つの家を指さす。村長の家と言っても周りの家と何ら変わりがない。


「有難うございます。では行ってみます」

「あぁ」




家の前に来ると、扉をノックする。

しばらくして女性が出てくると、挨拶を交わす。


「どちら様ですか?」

「旅の者なのですが、村長さんにお会いできますか?」

「うちの人なら森の方に行っていますが」

「伺っても大丈夫でしょうか?」

「呼んでまいりますので、こちらでお待ち下さい」




村の一番奥にある大き目の家に案内される。集会所に使っているとの事だ。

中で待つように言われ入ると、特に何も無いがらんとした部屋があるだけである。


「お待たせしました」

「ッ!?]


どの位か分からないが、ぼけーっとしている内に村長が戻り声を掛ける。


「私がこの村の代表をしております。驚かせてしまったようで」

「い、いえいえ、こちらこそお呼びたてしまして申し訳ありません」


驚かせた事を謝罪され、挨拶を交わした後、来訪の経緯を尋ねられる。


「どういった用件でしょうか?」 


そこでやっと自分をどう説明するか、すっかり忘れていた事を今更ながら思い出す。


「町からの紹介でしょうか?」

「町からの紹介・・、とはどういう事でしょうか?」


こちらから何か切り出す前に、代表の方から話をしてくる。


「この村はご覧の通り開拓村でして、今回の開拓計画を推進している町から、新天地を求めている人を紹介されるのですよ」


こちらの事情を知らないのに色々と話してくれる。それに合わせてしまう事にする。


「そういうのがあるのですか。

実は三ノ領から旅をして、同じ様に新天地を目指している者なのです。

詳しくお話を聞かせて頂いてもよろしいですか?」

「三ノ領! 隣の領からわざわざ遠距離を・・。それにしては荷が軽そうですが?」


ここがどの辺りかは分からないが、隣という事は方向的に四ノ領だろう。領を超えるのには確かに軽装過ぎるため疑われたのだろう。


「あらゆる資財を売り払いまして、ブリーダーから魔物を購入して旅をしているのです。

いきなり魔物を連れて村の中に入るのは憚れまして・・」

「そういう事でしたか。お心遣い感謝します」


魔物たちを村に入れる許可を取る。

村長が傍にいる事で安心しながらも、村人たちは遠巻きに見ている。


「魔物とは言え大人しいのですね。しかも大きい」

「一応護衛も兼ねていますので。魔物は魔物という事です」


荷姿を見て村長も、どうやら安堵したようである。


「此処から町は近いのでしょうか?」

「道沿いに北西へ進んで行くと、二日程ですがどうしてです?」

「新天地を探しているとお話ししましたが、流石に町とか周辺の状況とか知らずにというのは無理と思っておりますので」

「そうですね。確かに何も分からずでは、住むのも難しいでしょう」


町や村、開拓の環境について詳しく聞くために一晩泊まる事にする。


こういう村は助け合いが強く、旅人にも無償で寝泊まりをさせてくれるのだ。

一晩のお礼と情報料を含め、薬や酒などを分ける事にする。


薬に関しては在庫が殆ど無い喜ばれ、酒はひったくるような勢いであった。

そんな酒は緩かった舌を、ますます緩くさせ、聞かない事まで話してくれる。


それらの情報をしっかりと頭に叩き込んで翌朝、町へ向かってみると村を後にする。




しばらく進んで村が見えなくなると、森に入りダンジョンの方へ進路を変える。


行きとは違い、脇目も振らず一心にダンジョンへと戻る。


「ただいま」

『お帰り! 町はどうだった?』


無事に帰ってきた事に、声が幾分弾んでいる。


「まぁ待ってくれ。風呂と一休みさせてくれ」

『ブーブーブー』


色々と言いたい事はあるのだが、まぁ疲れているだろうしと待つ事にする。




『ちょっと・・。いい加減にしなさい』

「腹が空いたんだよ。保存食ばっかりだったし」


かなり我慢をしたのだろう。ひとっ風呂浴びて、ベッドで一休みして・・、ご飯まで出させた時には流石にキレようだ。




なんやかんやとありながら、頭の中に響く声に適当に相槌を打つ。

一段落してフェブの部屋に行くと、いきなり変な事を言い出し始める。


『お手伝いさんが欲しい!』

「はぁ!? いきなりなんだ?」


お手伝いさん?ダンジョンは基本コアによって管理され掃除も換気も必要ない。


『お手伝いさんが、欲しいのよ』

「欲しいのは分かったが、何で欲しいんだ?」

『・・・やる事が無くて暇だから』

「暇ってなぁ」


本来ダンジョンコアは一人で全てを行うため、暇とか言ってられないはずだが、居住者が居る事でどうもその感覚がおかしくなっているようだ。


フェブは暇と言っているが、ジャニが不在で寂しかったのが本音なのだ。


『せっかく町に行ったんだから、お土産にお手伝いさん雇って来てよ』

「そんな金あるか! DPでお手伝いさん出せばいいだろう」

『DPは殆どあなたの物でしょ』


お手伝いさんと言うか、オートマトンやゴーレム、ホムンクルスといったモノは、DPで交換出来るが、高い知性や性能を求めるとかなりの額になるという。


「じゃあ頑張って貯めろ」

『少しは分けてくれても・・。いいんじゃないかしら?』


斜め下からの、下手な甘え視線を感じる。


しばらく不毛な会話が続くが、お互い楽しんでいる様子である。






当初の目的からかなり脱線したが、村で得た情報を話す。


『へぇー、町では無くて村だった訳なのね』

「あぁ、そういう事だ。でも有力な情報は結構得られたぞ」



此処から北西の村は開拓村であり、道なりに北西へ二日ほどで町に着く。

その町が開拓の拠点で、町の周囲に5か所ほど同じような村が点在している。

町からは北へ10日ほど街道を進むと、ヨナミの町に着くとの事だ。



『ヨナミの町? 変わった名前ね』

「変わった名前か・・。このプロティア大陸は八つの領があるのは知ってるか?」

『うーん、知らないわ』


首を振るイメージが伝わってくる。じゃあ、と大陸について説明する。



プロティア大陸は大きなドーナツ型をしており、八等分した一つ一つを領と呼び、神が人と初めて降り立った場所を一ノ領と呼び、右回りに八ノ領まであり、一ノ領へ戻る。


領のほぼ真ん中にあるのが主都である。

主都同士は、光りの道の上に作られた、大環状道と呼ばれる街道で繋がっている。


主都から20日程の距離の東西南北に市と呼ばれる大きな町がある。

市のネーミングは安易で、例えば一番近い市は、四ノ領南の市、略してヨナ市である。


市から10日程の距離の東西南北に町がある。ヨナミの町がこれの一つに当たる

町のネーミングは、四ノ領南の市南ヨンナンミナミの町、略してヨナミの町であり、町の名前が分かれば自分の場所が分かる様になっている。



『ふーん』

「こんな説明で良いか?」

『うん、正直どうでもいい感じ?』

「・・・」


説明させておいて、その感想は無いだろうと思うが口には出さない。煩くなるから。



「農地拡大が目的で、開墾中。しばらくは小麦に絞り、今後は特産品を考えるらしい。

切り出した木材はそのまま村の開拓や、町の拡大で使用すると言っていた」

『こっちの方へは開墾してきそうなの?』


どんどん切り開くのであれば、四日と言う距離も安心は出来ない。


「確証はないが、しばらくは町の方向へ開墾すると言っていたから問題は無いだろう」

『先ずは一安心かしら』


ほぉっと息を吐く様に言うと、難しい顔をして否であることを告げる。


「そう安心はしてられない」

『えっ!? どうして?』


開拓者たちはしばらくはこちらに来ないのに、何か問題があるのだろうか。


「開拓者たちが、和やかだった」

『ん? 良い事じゃないの』

「確かに村は柵で覆われていたが、開拓という事は、周囲の野獣や魔物と接触する危険が増すはずだ。

ピリピリとした雰囲気を受けそうな物だが、そんな感じはほとんど受けなかった」

『それが何か問題になるの?』


開拓村では、野獣や魔物対策として寝ずの番すらいる場合がある。


「村人たちが野獣や魔物に対処出来る程、戦闘に長けている様には見えなかった。

それなのに村の近くでは野獣や魔物は見かけていない」

『えっ!? それって・・』


開拓に危険となる野獣や魔物が居ない。これがどういう意味を表すのか。


「村長にも確認したが、定期的に冒険者が回って来て、周辺の調査や討伐をしている」

『あらー』


冒険者の巡回。

村人たちには非常に有難いだろうが、ジャニとフェブにとって不味い状況である。


「もしこの付近に住んでいると分かり、村とも繋がりが出来れば・・」

『出来れば?』


途中で切られた言葉に、唾を飲み込むイメージが伝わってくる。


「四日の距離でも巡回範囲になるかもしれん」

『それはそれは、困った事になるわね』


冒険者が目の前を通る。正に最悪の状況である。フェブは以外にものほほんとしている。


「なぁ、なんか落ち着いてないか?」

『そうかしら?』


ジャニはこの問題をどうにか解決しないと、ダンジョンの存在がバレてしまうと心配しているのに、どうもフェブとの間に温度差を感じる。


「冒険者が来るんだぞ?」

『ねぇ、ワタシは思うのよ。ジャニ、あなたが居れば大丈夫だって』

「何を言っているんだ?」


訝しむジャニに、何時までもニコニコとした気持ちが伝わってくる。


フェブにとっては無事に帰ってきて、言葉を交わせた事が何より嬉しいのだ。





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