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ダンジョンの同居人  作者: まる
ダンジョンと
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結果を確かめよう

結果を確かめよう





完全に手綱を握られた、第一回ダンジョン改造が完了する。


フェブの新しい部屋から逆に出口まで辿って行く形で、各部屋を見ながら回る。

回り始める前の最初の部屋、新しいフェブの部屋からつまずく。


「これはどういう事かな?」

『素敵な部屋でしょう』


一番最初に作ったフェブの部屋に訪れているが、大変な事になっていた。

元々あった部屋の幅、高さ、奥行きが二倍の20キュビット(960cm)となり、四倍ほどの大きさになっている。


「部屋の模様替えオプションに、こんなのがあるなんて聞いてないぞ」

『別に隠してた訳じゃ無いのよ? 特に聞かれなかったし、好きに作っていいって言われてたから、ペラペラっと見ていたらね』


部屋一面に水晶が乱立し、壁、天井、床からの灯りで、神秘的な光景が目の前に広がる。

そして一つの壁の中央に扉と、ちょうど反対側の位置の床に魔法陣がある。


「確かに好きに作れと言ったしなぁ。

まぁこれはこれでダンジョンコアとして、恰好が付く部屋らしくて良いか」

『良かったわ』


自分のお気に入りの部屋を褒められてご満悦の様子だ。




良しと気合を入れ直し、次の部屋へ移動する。


壁の中央にある扉を開けると、高さ20キュビット(960cm)程の昇りの螺旋階段があった。

この扉、部屋から出る時は何の問題が無いが、入る時には謎かけに答えないと鍵が開かない仕掛けになっている。


更には螺旋階段にもトラップが仕掛けられている。

上の階で解除しなければ、降りる階段では無く、永遠に上へと迷い登るトラップが発動する仕組みだ。




螺旋階段の先には扉があり、入る側からは隠し扉となっている。


隠し扉と並ぶようにダミーの扉があり、こちらが上行きのトラップである。


扉を開けるとその先には幅、高さ、奥行き10キュビット(480cm)の、普通の石壁で出来た小さな部屋へと繋がっている。

この部屋は将来的にサブコアを置ければとの考えからだ。


この部屋に入るための扉には仕掛けがあり、入る時は鍵では無く、パズルを解くタイプの仕掛けになっており、解けると扉が現れる。




扉の先は、上から二つ目のコア守衛階層で、フェブの希望で石造りの迷宮としてある。

位置としてはフェブの部屋のすぐ上の階層となる。


この迷宮は定期的に壁が動き、迷路が変わる仕組みで、迷宮の隅に上の階層と繋ぐ、転移魔法陣が設置されている。


実はこの部屋と対角の隅に、サブコア用の部屋があったりするのだが、後に壁が動くのを待てば、外壁に沿ってその部屋に行けるという裏ルートが発見されたりする。




転移魔法陣で上の階層に向かうと、コア守衛階層の森林と草原が広がっている。

ここもフェブの希望で、動物たちの階層が欲しいとの希望に沿っている。


階層の周囲には切り立った崖で囲まれており、崖の一か所に7キュビット(336cm)程の高さの穴が開いていて、僅かに傾斜した1000グラドゥス(800m)の距離の上り坂に繋がっている。

この通路も上の階層でトラップを解除しないと、永遠に続く九十九折の下り坂になる仕組みとなっている。


位置としてはコア守衛階層として最初の階層となり、比較的浅い場所に存在する。


どちらのコア守備階層も、まだジャニによる魔物の【召喚】は行われていない。




坂の先にあるのが、DP稼ぎのために用意された部屋である。


【召喚】する予定の魔物の習性から、湿地帯が欲しかったため、湿地帯オプションが使えるサイズの部屋として、縦横200キュビット(96m)程の大きさとなっている。


一つの壁の片方の端には下の階層からの坂が繋がり、一方の端には扉が付いていた。

扉の先には1000グラドゥス(800m)の上り坂であるが、100近い鍵付きの扉が備えられている。




鍵付きの100の扉の先にあるのが、元々のダンジョンコアの部屋である。

最後の扉をくぐると向かい側の壁に、外と繋がる階段、そして洞穴へと至る。




元ダンジョンコアの部屋の左右の壁にも扉が付けられている。


一方には風呂、トイレ、洗面洗濯場の部屋となっており、一方には台所、リビング、寝室へと繋がる。


「出来れば、一人が入れる小さいヤツをお願いしたような・・。沸かすの大変だしって」

『そうよ、ちゃんと出来ているでしょう』

「あほか。10人は入れるような大きさの風呂になってるじゃないか!」

『魔道式だから労力は掛からないのよ?』


一人が入れる湯船をお願いしたのに、何故か魔道式の大浴場の様な有様になっている。



魔道式とは、アイテムや魔法陣などで、ほぼ永久的に使用できる魔法の仕組みの事だ。



「火の精霊を呼べば薪もいらないし、煙もほとんど出ないって言っておいたよな?

食材もその都度出して貰うから良いっていたよな?」

『ええ、聞いていたわよ』

「じゃあ何で大金持ちしか持ってい無い様な、魔道式のコンロや冷凍冷却庫が付いているんだ?」

『食材余ったら勿体ないでしょ? それに便利だと思うの』


野営で料理は慣れているので、竃ぐらいあればと思っていたら、最新の魔道式の台所になっている。


「リビングは20キュビット(960m)の大きさでもまぁいい。なんで寝室がこんなに大きんだ?」

『書斎と兼用だからよ』

「だからってリビングと同じ大きさはいらないだろう」

『そうかしら? ワタシに感謝するわよ?』

「感謝? どうして?」


寝室は大きいから良いと言う訳では無い。人によって違うし、感謝するとはどういう事か。


『新しいワタシの部屋から、順繰り来た訳よね』

「あぁ、そうだな」

『どうやって戻るの? 今のコースを毎回繰り返したいかしら?』

「あっ!? 考えてなかった・・」

『ホッホッホッ。絨毯を捲ってみるといいわ』


嫌に高飛車な笑い声を出すと、寝室に敷いてある絨毯を剥がすように言う。


「えっ!? 魔法陣?」

『新しいワタシの部屋にあった魔法陣と繋がっているのよ』

「へぇー、良く思い付いたな」

『ねっ、感謝したくなるでしょう』


最初に見た新しいフェブの部屋に魔法陣は、何処と何処に繋がっているのかと疑問には思っていたが、予想外にも自分の部屋と繋がっていたのだ。


「うん、とても感謝するよ。ありがとう」

『フフッ。どういたしまして』


実の所、念話が出来るんだから、フェブの部屋に行かなくてもいいんじゃね、と思っていたが、ネチネチと恨み事を言われるのが目に見えていたので黙って感謝が本音である。


ジャニのそれぞれの部屋に必要な調理器具や食器、家具などの物品を出して貰う。




ジャニの部屋が完了すると、フェブの移動を行う。


『じゃあ、移動するわね』

「あぁ。直ぐに追いかけるから」


言うが早いかフェブ、ダンジョンコアが台座ごと消える。

なるほど新しい部屋には台座が無かったが、コアと台座がセットならと納得する。


直ぐに魔法陣で、新しいコアの部屋へ向う。

部屋の中央に、前の部屋と変わらず台座に安置されたフェブを見つける。


「問題ないか? あと残りのDPは?」

『ええ、まったく問題ないわ。まぁDPは殆ど使っちゃったけど』


ちなみにどの部屋や階層が一番DPが掛かったか、聞いてみたい誘惑はねじ伏せた。


「そっか、じゃあ魔物を【召喚】してくる」

『かわいいのをお願いするわね』


虎と獅子をかわいいと明言しているのだから、何を【召喚】しても大丈夫だろう。


再び自分の部屋へ戻り、フェブにDP稼ぎ部屋へのすべての扉の解放を頼む。


「DP稼ぎ部屋への通路の扉を解放してくれ」


全ての扉の鍵が違うものが取り付けられており、開けるのはフェブが行うため鍵は無い。

鍵開けのスキルを持って地道に開けても構わないが。

将来的に、扉一個一個にトラップを仕掛ける事も考えている。


『了解』


鍵の開く音が聞こえ、扉が次々と開いて行く。




DP稼ぎの部屋、湿地帯に着く。


この湿地帯には濡れなくて済む場所が何か所かあり、それを決められた順番に歩く事で、次の九十九折の坂トラップが解除されるようになっている。


その濡れなくても済む場所の一つに立って呼びかける。


「フェブ、左右の壁に20個の一番短い昇り階段を作ってくれ」

『20個!? ・・どれだけ稼ぐつもりなのかしら?』


出入りするだけで稼げるのだ、20個の階段ならどれだけ稼げるか。

溜息と諦めの声がすると、左右の壁に昇り階段を作る。


階段が出来るたのを見届けると、そこまで濡れずに済む場所が無いため、やむを得ずズボッズボッっと湿地の中を階段の前まで歩く。


階段を昇り、人ひとりが優に立てるスペースの目の前にある土壁に触る。

土の精霊を【召喚】する。


「頼みがあるんだ。階段を二個一組で繋いでくれないかな。通路は階段と同じ大きさで、ちょっと長めに」

(ウム)


蟻系のモンスターで出入りのDPを稼ぎながらとも考えたが、外までの距離が長くなり、手間な事が多くなったため精霊の力を使って一気に作ってしまう。


ボコッと目の前の土壁が消え、10グラドゥス(8m)程の通路が出来る。

その先は折れ曲がり隣の階段からの通路と繋がる。


左右の壁で計10個の通路が完成すると、ダンジョンの外に向かう。




呪文を詠唱し始める。目の前に5キュビット(240cm)程の魔法陣が生まれる。

更に詠唱を追加して、魔法陣が2倍ほどの大きさになる。


「‐の沼。マザースライム一群れ。魔力代謝変換を付与・・【召喚】!」


魔法陣から噴水の様な物が立ち昇り、周囲に1キュビット(48cm)程の300匹近い、灰色のスライムが雨の様に降ってくる。

更に目の前には10倍の大きさで、ハートの形の核を持つスライムが現れる。


スライムは通常、魔力が集まった所から自然発生するか、自分の核を分裂する事で仲間を増やしていく。

【召喚】したマザースライムは、体内に核を一個から複数個作る事が出来るスライムで、自分の子供の様にスライムを生み出す事が出来るのだ。



「じゃあ悪いけど付いて来てくれる」

(・・・!)


好意的な感覚を受け取ると、スライムの行列を引き連れて先ほどの湿地帯へと戻る。

洞窟では、ギュウギュウになってしまったが、スライムは核が通れば、何処にでも出入り出来るので何とか通り抜ける。




「この場所を好きに使っていいから。ただお願いがあって子供たちに、あっちとこっちを一列になってグルグル回って貰いたいんだ」

(・・・!)


子スライムたちが半分に分かれれ、通路を順々に回るように大きな輪になって出たり入ったりし始める。


(・・?)

「うん、バッチリだよ」


こんな感じみたいな感覚があり、問題無い事を伝える。


「フェブそっちはどう?」

『・・・侵入と撃退のメッセージがすごい事になってる。DPも着実に貯まり始めたわ』

「それは何よりだ」


嬉しい悲鳴の中に、ちょっとだけ恨みがましい声が混じっている。


「だけどここからが問題だから」

『そうなの?』

「初めてダンジョンの中で魔物を【召喚】する。実際どう認識されるか・・」




コア守備階層の魔物たち。

外で【召喚】してから中に連れて入る事は、現実的にも物理的にも無理がある。

となれば各階層での【召喚】をするしかない。


『敵と認識されるか、術者の一部となるかって事よね』

「そうだ」


ダンジョンがDPで用意した魔物以外は侵入者となるのだが、侵入者の魔法としてみなされた場合は新たな侵入者とはならない。


ダンジョンの外で【召喚】した魔物は、明らかに侵入として認識されていた。


「着いたぞ。じゃぁ【召喚】するから」

『どうぞ』


マザースライムに一時停止させ、侵入と撃退のメッセージとDPのカウントを止める。

片っ端から、知識にある森林や草原の魔物たちを、群れ単位で【召喚】していく。


「どうだ? 結構な数を【召喚】したんだが」

『ダメね。メッセージも無いし、DPも増えて行かないわ』

「そっか・・、侵入者の追加では無く魔法の結果として認識されたか」


結局の所、ダンジョンの外から入ってくれば、【召喚】された魔物も侵入者として判断され、ダンジョンの中で【召喚】された魔物は、召喚士の魔法の結果と判断される様だ。


『どうも、そうみたいね』

「まぁそうそう上手くいかないって事だ」


侵入者は一時間の滞在で1DPで得られるので、長期的に見れば塵も積もればと、居るだけでかなり稼げるはずだったのだ。


「じゃあ次の階層に行くぞ」

『よろしく』




ジャニは次の階層に行く間に、別の事を考えていた。

自分の両手を見ながら、手を握ったり開いたりする。


「(おかしい。何でこんなに【召喚】したのに、体に問題が出ないんだ? 魔力も尽きない。いやそもそもこんなに多種多数の【召喚】が出来る物なのか?)」




フェブも内心では同じような事を考えていた。


『(召喚士って何なのかしら? こんなに【召喚】して問題無いの?

まさか体に負担を掛ける様な事をしてるんじゃ無いでしょうね!?)』


当初から自分への気遣いを知っているため、無理をしているのではないかと心配する。




迷宮の階層では、無理を承知でやってみる事にする。


「迷宮にあった魔物を【召喚】出来るか試してみるぞ」

『了解・・』


ジャニの試すという言葉に、無理をしているという、さっきの思いが湧きあがる。


「-の迷宮。ミノタウロス。魔力代謝変換を付与・・【召喚】!」


迷宮の定番の魔物を【召喚】する。目の前にミノタウロスが現れる。


「ふむ、成功したな」

『あなた何て魔物を【召喚】するのよ!』


ミノタウロスは迷宮の定番の魔物ではあるが、迷宮の番人と言われるほど上位種であり、簡単に【召喚】出来る魔物ではない。


「まぁ呼べたんだから良いだろう。どんどん【召喚】するぞ」

『もういいわ・・。好きにして頂戴』


何度目になるか分からない溜息、と諦めの声が聞こえてくる。


言葉通り次々に迷宮の定番であるミノタウロスを始め、サイクプロス、タイタン、オーガといった魔物たちを【召喚】する。


「どうだ?」

『凄いわね・・、感心するわ』

「そうじゃなくて、メッセージとDPだよ」

『あぁ、そっちね・・。ダメだわ、どちらも無い』


念のため、メッセージの有無やDPの増加を確認してみる。


「そっかやはり駄目だったか・・。仕方ないな」

『あれだけ稼げば問題ないでしょうに・・』


まだ稼ごうとする姿に対して、苦笑いのイメージが伝わってくる。


じゃあ稼ぎ再スタートと言わんばかりに、マザースライムに連絡して巡回を再開する。

フェブの方にもメッセージとDPが上がっている事を確認する。




フェブはこれだけの【召喚】を見て納得する。


『(これが最上位の召喚士の力。ジャニの実力、才能って訳なのね)』




ジャニは全く逆の事を考えていた。


「(明らかにおかしい。俺に才能があったとしても、あんな上位種が簡単に呼べるはずが無い。

魔力が足りるとは思えなかったのに。魔力は一気に減っている様だが、直ぐに戻っている感じがする。そんなことあり得るのか・・。

ましてやあれだけの数を続けて【召喚】するなんて・・)」


目を瞑り、昔の事を思い出す。


「(考えられるのは、あの時の【憑依】か・・。ディズ、例え俺の存在が消える事になっても、あの時の決断の後悔は無いよ)」


誰かに責任を押し付けたり、恨みを言う事は無い。

ただ自分で選択した以上、自分の責任であると言い聞かせる。




「さてフェブの所へ戻って今後の事を話し合うか・・」



誰に言うでも無くひとり呟くと、新しいダンジョンコアの部屋へ足を向ける。





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