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ダンジョンの同居人  作者: まる
ダンジョンと
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ダンジョン強化作戦

ダンジョン強化作戦





冒険者になるという建前で外出する前に、ダンジョンの強化計画を行う。


「第一回ダンジョン強化会議を始めます。

まずはどういう風にダンジョンを大きくしていきたいですか?」


たった二人で会議も何もないのだが、とりあえず希望を募る事にする。


『はい!』

「どうぞ。フェブさん」


元気よく返事をして、手を挙げる姿のイメージが伝えられる。


『分かりません!』

「分からないのなら手を挙げないように・・」


何処で覚えたのか聞いてみたいやり取りをする。


『仕方がないじゃ無い。初めての事なんだし・・』

「誰しもみんな初心者なんだが?」


何となく指を銜えて拗ねるイメージが伝わってくる。


『出来た人が言うのよねぇ、誰もが初心者だからとか』

「いや俺もダンジョンに関しては初心者なんだが、何か出来ない理由でもあるのか?」


他には大きくなっているダンジョンがある以上、ヒントの様な物はあるはずなのだ。


『ズバリ、DPが足りない』

「つまりDPがあればやりたい事はあるという事か?」


やりたい事があっても、限られたDPの範囲だと、何から手を付けて良いのか分から無いという事だろう。


『まぁ、大きくするのが目的だし、。一応ダンジョンの特性とかお勉強してるのよ』

「タイプ情報ってなんだ?」


いきなり降って湧いた、ダンジョン特性という言葉を聞き返す。


『フフフッ、ダンジョンを大きくしていくとして、一番大きいのが階層で、それを重ねて行く思っているでしょう?』

「そうだが・・、違うのか?」

『ぶっぶーっ、違います。一番大きいのはダンジョンでーす』

「はぁ? ダンジョンってどういう意味だ?」


以前の説明では、部屋や階層の他は、自然の環境を丸ごとは聞いた事がある。

ダンジョンとはどういう意味だろうか。


『ダンジョン丸々一つって言うのがありまーす。

特性が揃えられた階層が10階層、魔物付きで、サブコアもある優れモノです』


ババーン、どうだと言った感じで説明してくる。


「えらく簡単な物があるんだな。何でそれしないんだ?」

『DPが半端じゃなからにきまってるでしょうに。

仮に地道に100年で拡張していけば同じものが出来るとして、1億DPとするでしょ。

丸々一つの購入のDPはその10倍掛かるんだよね』


実際はもう少しお安いんだけど、と付けてしてくる。


「・・誰がそんなもん買うんだ?」

『さぁ? コア同士の情報交換が無いから何とも言えないわね。

ワタシにとっては、ダンジョン作りのお手本みたいな感じになっているのよね』

「お手本?」

『丸ごとダンジョンには特性があって、大きく分けて魔物系と環境系があるのよ』

「へぇー」


ダンジョンの特性という、聞きなれない言葉に興味を惹かれる。


『魔物なら同種系、例えばスライム系だけの魔物、環境なら迷宮だけと言った感じね』

「何かメリットあるのか?」

『魔物系と認識されると、特典としてその系統の魔物の購入DPが安くなったり、上位種やレア種が出易くなるのよ』

「出易くなるって・・、魔物も宝箱なのか?」


魔物がお金の様に、宝箱から出てくる様子を想像してしまう。


『違うわよ。購入してダンジョンに出るタイミングで、上位種やレア種に変化するの』

「なるほど。環境系の場合は?」

『複数の階層を全て迷宮にする事で認識されるわ。特典としては同じ環境の階層が割安になる事と、その環境にあった魔物が安く購入出来る上に、レア種も出易くなるわね』

「ふむふむ。若干、環境系の方がお得か」


もし凝り性な性格のダンジョンコアがあれば、なんともハマりそうな特典である。


『で、魔物系と環境系が揃った時・・』

「揃うと何か特典があるのか?」

『サブコアがプレゼントされるわ』

「ほぉ! それは凄いな。

そうか、それで一括りの丸ごとダンジョンと同じ結果になるんだ。

それじゃ、他のダンジョンは同じ様な階層に統一されている事が多くなるんだな」

『うーん、どうかしら? 個々のダンジョンコアの性格にもよるけど、特典目当てでダンジョン作成はあまりしないと思うわ』

「それもそうか」


ダンジョン拡大のご褒美が、ご褒美目当ての拡大では本末転倒なのだろう。


「その中で自分でなりたいダンジョンがあるんだろう?」

『・・・うん、まぁね』

「何だそうならそうと言ってくれれば協力したんだぞ。でどんなのが良い?」

『・・・ぜ、全部』

「・・・は? もう一回行ってくれるかな? よく聞き取れなかったみたいだ」


頭の中に直接響く声に、敢えて耳に手を当てて聞こうとする。


『だから全部やりたい、持ってみたいの。全部の魔物ちゃん見てみたいのよ』

「・・俺が幾つかアイデアを出してみるな」

『無視しないでちょうだい。お友達でいっぱいにしたいのよ』


やり方の分からないコア向けのお手本なのだろうが、魔物をお友達って考えて、それも沢山とか言うダンジョンコアの事は、当然考慮されてはいないだろう。


結果、いっぺんにドンと用意したいが、DPが足りないという事になる。


「分かった分かった、悪かったよ」

『分かればいいのよ分かれば。フンだ!』


すっかりへそを曲げてしまったようである。仕方なく話を進めて行く。


「俺が考えているのは、どんな風に作るとはちょっと違う」

『・・はぁ? どういう事よ』


いきなりダンジョン作りの方向性が変わり驚いたようだ。


「キミも迷っていた様に、ダンジョンとは多種多様だ」

『そうなのよ、だからいっぱい悩むのよね』

「そして限りあるDPという資産が足枷になる」

『そうそう、分かる? 分かってくれる?』


ちょっとウザっと思ったが口にせず、スルーして話を進める。


「なので方向性は一先ず置いておいて必要な部分から作って行こうと思う。

ある意味でキミが言っていた色々なダンジョンの組み合わせ、普通のダンジョンという事に落ち付く事になるって訳だね」

『どういう事よ?』


フェブは自分の言っていた、普通のダンジョンになるという言葉に訝しむ。


「さっきの丸ごとダンジョンの様に、テーマや方向性を持っている訳では無くて、キミを守るために適したダンジョンにする」

『でもそれは普通って事でしょ? あぁ、だから普通のダンジョンなのね』

「そう言う事だ。俺の考えに意見を頼む」

『良いわよ』


普通のダンジョンを作るのに、普通じゃない作り方をする事を話す。


「まず必要な部分や区画を割り出す。部分ごとや区画ごとに必要な階層を用意するんだ」

『確かに普通の事よね』


ジャニの行おうとしている事は普通なのだが、何処か違和感を感じる。


「今必要と思っているのは四つの区画だ」

『ふむふむ』

「まず第一にキミの区画だ」

『ありがとう、とっても嬉しいわ』

「第二にキミの区画を守るための区画になる」

『うんうん』


ダンジョンの要であり急所でもあるフェブの部屋と、その部屋を守る場所は必須だ。


「第三にダンジョンを大きくするための区画」

『? どういう事?』

「簡単に言えばDPを稼ぐための場所だ」

『・・・まだ稼ぐつもりなの? ダメ人間になっちゃうわよ』

「当たり前だ。DPはいくらあっても足りないんだからな」


何をするにも先立つものは必要である。何と言われようともこの区画には力が入る。


『宝くじに当たって、大金手に入れて、逆に身を持ち崩した人いるのよ?』


宝くじの話しとか、身を持ち崩した人の話を知っているのか不思議だが、あえて無視。


「第四に居住区。俺の居場所な訳だ」

『当然よ。最高級の仕様にしましょうね。あっ、最初でもいいのよ?』

「まずはフェブの家をきちんとしないとな」


念願のベッドと風呂である。最初にという魅惑の言葉に、鋼の意思で断る。


『うーん、何となくすっきりしないのが分かったわ』

「分かったのか? 是非教えてくれ」


フェブは、自分たちがモヤモヤしている理由が分かった様だ。


『ダンジョンは区画なんて考え無いの。自分を守るため、自分を強くするために好きなように大きくするだけ』

「まあ、それが普通だよな」


此処までは他のダンジョンと同じ事だろう。


『ダンジョンは大きくするのは同じでも、ワタシとあなたの二つのダンジョンを同時に作ろうとしているのよ』

「・・あぁ、そっか。お互いがお互いのダンジョンを作っているからか」


一つのダンジョンを、お互いの事を考えながら大きくしている事が違和感なのだろう。


「二人で作って行けば、そういう事もあるって事だな」

『そういう事ね』


誰かと相談する事で、新しい考え方が生まれる。

お互いの考えを出し合いながら、自分たちのダンジョンを強化していく。


二人の間に自然と微笑ましい雰囲気が生まれる。




ある程度、やる事の方向性が決まると、細かく話を詰めていく事にする。


「第一のフェブの部屋の強化について」

『パチパチパチ』


何を差し置いても、優先的に行おうとしてくれる。フェブから拍手が湧く。


「やはり物理的に外と繋がっているのは避けたい。外から出来るだけ離したいんだ」

『なるほど、アイデアとしては?』

「今、出来るのはこの部屋の出来る限り深い場所だな。そうすれば偶然穴を開けられる事は無くなると思っている」


他の場所へ移動する手段がない以上、出来る限り地中深くが適当だろう。


『了解。もう直ぐ作っちゃう?』

「待て待て。一通りアイデアを出して、問題なければ取り掛かろう」

『そうね、そうしましょう』


自分の新しい場所を考えて、ワクワクしているのだろう。


「次がフェブの部屋を守るために階層を用意しておきたい。出来れば二つ」

『二つも!? 嬉しい。お友達が増える』

「正直二つだって少ないぐらいだ」


自分を守るための階層が増えるというより、お友達が増える事の方が嬉しいようだ。


『まぁ、魔物はあとあと購入するとしましょう』

「魔物は俺が呼ぶ。緊急時に大量購入出来るようにDPは残しておきたい」

『まぁ! ありがとう』


魔物はジャニが用意してくれると言う。タダより高い物も無いのだが。


『ならバンバン階層作って欲しいわ』

「・・作ってみて、こうしたい、ああしたいが出てくるだろう? それにどのくらい魔物を呼べるかも分かっていないから」

『そっか・・。でも楽しみね』


階層はどんな感じなのか、魔物の【召喚】はどのくらい可能なのか、実際にやってみなければ分からない部分がある事を説明する。


「どんな階層にしたいか、二つ分ほど候補を考えておいてくれ」

『はーい』


ここは自分のやってみたい、持ってみたいというダンジョンにしてやろうと考える。


「こんなもんだな。良ければ取り掛かりたいんだが?」

『はぁ!? 何言っているのかしら? あなたの部屋が済んでないわよ?』

「俺の部屋? そんなのは物のついで構わない」


普通の町にある宿屋の一室を思い浮かべていたので、深く考えてはいなかった。


「精々、この部屋に二つほど部屋を付ける事ぐらいだ」

『じゃあDPの稼ぎ場は?』

「外と出入りできる部屋を、この部屋の奥に作ればそれでいいよ」

『あなた自分の事なのよ? もう少し真剣に取り組みなさい』

「そう言われても・・本当におまけみたいなもんだしなぁ」


他人の事には人一倍熱心な癖に、自分の事に関しては淡白な事が許せない様だ。


『いいわ。あなたの部屋はワタシが用意してあげる。折角の機会だから』

「それはどうも・・」


何と言うか、とても地雷を踏んでしまったような気がする。


『まずあなたの部屋はどんな感じにしたい?』

「寝る場所と、風呂があればいいや」

『ふむふむ。DPを稼ぐ部屋は?』

「この部屋の奥にそこそこの大きさの部屋があればいい」

『・・・分かったわ。任せておいて』


余りの投げやりさに、何と言うかどす黒いオーラがにじみ出てくる。


「わ、分かったお任せするよ・・」

『ええ。是非お受けするわ』


ここは黙って従うのが得策と判断する。この判断が裏目に出るかもしれない。


『さっそくダンジョンの工事を始めましょう』

「もう始めるのか? 大丈夫か?」

『あなたがそれを言う訳?

頭で考えるだけじゃ良くないわ。ある程度形にしてみましょう』

「はい・・。そのように」


お互いに初めてのダンジョン拡張である。

色々抜けはあるだろうし、やってみなければ分からない事もあるだろう。


『初めてなんだし、失敗してもいいつもりで。当然DPはそっち持ちよね』

「なっ!? ちょっと待て・・」

『い・い・わ・ね?』

「・・・はい」


理不尽さを感じるが、自分の事のを棚に上げていたため強く出られない。


『まず何から始めましょうか?』

「もちろんフェブの新しい部屋からだ」

『了解よ。出来るだけ深くに作ればいいのよね?』

「ちょっと待ってくれ」

『ん? どうしたの?』


地面に手を付き土の精霊を【召喚】し、地下の状況を確認する。


「この地下なら特に問題は無いようだ。出来るだけ深くに作ってくれ」

『分かったわ。大きさもこの部屋と同じくらいでいいの? 飾り付けとかも自由?』

「あぁ、好きに作ってくれて構わない」


自分の部屋を作るにあたっての条件を確認してくる。


『それじゃ・・出来るだけ深く、これくらいの大きさで、こんな感じにと。

はい、出来たわよ』

「ふーん、特に変化は無いんだな」

『当たり前でしょ。直接ここにに影響する訳ないでしょう』


初めて部屋が追加されたが、見える訳でも無く変化が分からず感動出来ない。


『次は守りの階層かしら?』

「いや、上から順に、居住区、DPの部屋、守りの階層で作って行こう」

『うふふ。腕が鳴るわ』


ダンジョンコアらしい仕事が出来る事で張り切っている。


『まずは居住区ね。どんなのがお望みかしら?』

「じゃあ君に向かって右側が寝る所で、左側が風呂なんかでどうかな?」

『はぁ? 大きさは? リビングは無いの? この部屋はどうするのかしら?』

「えっ!? あっ、その、えっと・・」


改めて指摘されると何も考えていなかったため、咄嗟に答えられず動揺してしまう。


そもそも自分の部屋など持った事は無い。それを見逃すほど敵は甘くは無かった。


『フフッ、いいわ。ゆーっくり確認しながらいきましょう』

「ッ・・」


今や完全に立場が逆転し、いいようにあしらわれてしまう。

何とか打開策をと考えるが、次々と質問を畳み込まれて思うようにいかない。


『まずこの部屋はどうするつもり?』

「色々外とのやり取りがあるので、しばらくこのままで・・」

『居住区は三つの部屋で良いわね?』

「えーっと、三つ・・と申しますと?」

『風呂やトイレ、洗濯場の部屋、台所とリビングの部屋、書斎とベッドの部屋よ』


もうしょうのない子ね、っと言わんばかりに首を振るイメージが伝わってくる。


「えっ!? そんな・・」

『い・い・わ・ね』

「・・はい、それでお願いします」

『配置はどうするの? 大きさは?』

「そうですね、大きさはこの部屋位で良いかと・・」


宿屋にある部屋の大きさをイメージして答える。


『はぁ? 台所とリビングなのに小さいでしょが。もう少し考えなさい』

「あっ、すみません」


一人暮らしなんかした事が無いのにと思いながら、フェブにコッテリと絞られつつ、ダンジョンの拡張が進んでいくのだった。


残念なん事に今回の増設に関して言えば、イニシアティブを取る事無く終了する。




そして良いように改築を勧められ、完成の時に驚く事になる。





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