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ダンジョンの同居人  作者: まる
仲間と
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新たな召喚

新たな召喚





ダンジョンに繋がる自分の部屋で、のんびりとした時間を過ごしていると、頭に声が響く。


『ねぇ、少しは働くとかしたら?』

「えっ!? なんで?」


働く事を勧める言葉に、働く事がおかしいと言わんばかりの発言である。


「色々あったんだし、しばらくはゆっくりさせて欲しいんだけど?」

『ゆっくりにも程があるんじゃない?』


今や殆どの仕事を他の人に丸投げで、自分だけ悠々自適では文句の一つも出るだろう。


『ん? ちょっと待って。フォールのメンバーが、ワタシと話したいって来てる』

「それなら話聞いて来れば」


面倒な話が終わるぞと、内心ほくそ笑みながら追い立てる。


『後でこの話はきっちり方を付けましょう』

「はいはい」


二つ返事で聞き流し、口煩くなったなーと思っていると、直ぐに会話が戻ってくる。


『大変よ。西の村で行方不明の子供がいるみたい』

「なっ!」


突然の事に椅子を蹴り飛ばし立ち上がる。


『偶然、ダンジョンに話し合いに来ている事にしてあるから』

「直ぐに行くって伝えて」

『了解』


なんやかんや言いながら働かなくても、問題があれば誰よりも先に動くジャニをフェブは信頼している。






時は10年前にまで遡る‐




開拓の町は、ダンジョンの発表と共に、ダンジョンの街となった。

多くの人、物が入って来て、各ギルドも大きくなっていた。


冒険者ギルドでも、ギルド長代行が正式にギルド長に昇格して取り仕切っていた。


ダンジョン解放から三か月、人数制限もあってやっと一回目の目玉アイテムに到達が果たされ、問題の洗い出しを行っていた。




「先日、とうとうダンジョンの最深部に到着し、目玉アイテムを入手した訳だが、問題はあったかね?」

「人数制限に関して、かなりのクレームがあります」


ダンジョンの施設利用の対価として、人数制限を設けられている。


「他には?」

「階層も30層で、魔物のレベルも調整されており、初級者から中級者冒険者向けと定着しています。

目玉アイテムを必要とする人が雇った上級者もおりますが」


ダンジョンが冒険者に認識されれば、後は人伝手にどんどん情報は広がっていく。


「入った者たちからは?」

「よほど無茶をしなければ死亡する事はありません。

魔石や素材も入手可能ですし、DPの余裕もあるとの事で、アイテムのリポップを早い期間で行ってくれています。

更に好意なのかもしれませんが、階層ボスドロップ、階層アイテムの他に、隠しアイテムが用意されていて非常に好評です。ただ・・」

「ただ・・、何かね?」

「これだけ好条件に対して、人数制限が厳しすぎると」


冒頭の人数制限の問題に戻ってくる。


「ダンジョンの施設利用の対価だ。早い者勝ちも当然のルールだろうに」

「それはダンジョンには入れればとなります。

外で待たされる冒険者としては、指をくわえて見ているしか無い訳で」

「ふむ。ダンジョンコアや、ジャニと相談してみてくれ」

「畏まりました」






冒険者ギルドは、ジャニを捕まえられず、ダンジョンコアに相談する。

その後、ジャニとフェブは問題点について話し合いをする。


『人数制限の撤廃だって。どうする?』


外で待っている冒険者たちから、不公平との訴えがあると陳情があった事を伝える。


「そもそも、ダンジョンの宿や風呂を利用する際の条件だった訳だろう」

『確かそうだったわね』

「その施設を使えない不公平さをどうするか、ギルドにハッキリさせよう」

「それだけでは、ギルドの得にしかなりません」


ジャニとフェブの話に、メイド長が割り込んでくる。


「施設を使うのか使わないのかハッキリさせるべきかと」

『なるほど、最もだわ』

「使う場合には、どのような対価が支払われるかも確認しておこう」


更にと付け加え、人数制限をなくした場合の問題も上げる。


「人数制限の撤廃に伴い、鍵があるとはいえコアの魔法陣を守り切れるのかと言う心配もあります」

「確かにその心配もあるな」


人数制限の撤廃によるダンジョンの安全性の低下を、どう考えているか問い質す事にする。




ギルドからの議題を検討した後、ダンジョン側の問題を整理し対策を考える。


『リポップをかなりのハイペースでやったから、DPの消費がかなり多かったわ』

「初めての事だからな。バランスが悪かったか」


初めての共存ダンジョンの有り方という事で、DP度外視でやってみたのだ。


「人数制限の撤廃の対価として、ダンジョンの活動期と休眠期を認めさせては如何でしょうか?」

『活動期と休眠期?』

「なるほど。流石はメイド長、ナイスなアイデアだ」

『二人で納得してないで説明プリーズね』


実は一番活動期と休眠期を知っているのは、フェブの筈なのだが。


「活動期と休眠期というのは、その名の通りダンジョンが活発かどうかで、一番の違いは、ダンジョンボスが居るか居ないかなんだ。

一番詳しいはずなのが、フェブ、キミの筈なんだけど?」

『・・あぁ、そんなのあったわね。

でもそれは自然発生型ダンジョンでしょ?』



自然発生型ダンジョンは、魔力溜りがあるダンジョンの事で、ダンジョンコアの代わりに、不定期にダンジョンボスが生まれ、ダンジョンを統括する。

ダンジョンボスが居ると、魔物が強くなり、魔石や素材の質が向上するメリットがある。



『ワタシの様なコア型ダンジョンはそうはいかないでしょ?』

「そこでアイテムのある間を活動期、アイテムが無い状態を休眠期とします」

『ほぉ、面白いわね』


早い者勝ちの時期と、じっくり成長向けの時期を用意するアイデアである。


「正確には、休眠期でDPを稼いで、活動期で還元といった感じかな」

『休眠期に冒険者来るのかしら?』

「レベリング目的では来ると思うよ」


初心者から中級者向けと定着しているのだから、レベリングでも需要はあるだろう。


『そっか。ギルドとこれで取引してみますか』


共存ダンジョンとして試行錯誤の段階なのだ、双方の調整は必要であろう。


「その上で、施設の利用の対価を要求するのがベストかと」


ダンジョンのメイド長は何処までも厳しかった。




フェブと冒険者ギルドとの運営会議で調整を行い、二期制の導入と人数制限の撤廃で大まかな合意となる。

施設利用に関しては、高級宿として金銭解決し、賃貸料という事で折半し様子見となる。






その間にもジャニが主都で孤児院のために奔走するが、大きな転機が訪れる。


幾つかの問題を纏めて解決する方法をオウグに相談すると、町長代理、冒険者ギルドの秘書、オウグと集まった席に呼び出される。


「ダンジョンの町近郊で持ち上がっている問題解決の妙案があると聞いているが?」


町長代理からまず口を開き、今回の集会の趣旨を確認する。


「まず私から。フォールのパーティが専属をやめたい旨の申し出がありました」


冒険者ギルドの秘書から、現在の問題を提示する。


「それは何故かね?」

「ダンジョンの町となり、冒険者が増えた事が大きな要因です」


ダンジョンのお蔭で冒険者が増え、専属の冒険者の必要が無くなりつつあるのだ。


「同様にそれぞれの開拓村での格差が生まれ、当初の目的からかなり外れています」

「どういう事かね?」


質問に対して、オウグが開拓村の現状について説明する。


「ダンジョンに近い、東、南東、南の村は急激に発展し、元から住んでいた住民は用地の転売や別の仕事に就き、開拓に携わるのを辞めています。

西や南西の村の住民だけが、開拓を続けている状況です」


ダンジョンフィーバーに沸いたツケが、巡り巡って戻って来ているのだ。

流石にこの状況は、開拓事業中止になりかねない事態になっている。


「これらの問題を解決する方法を、ジャニ君が持っていると言うのだね」

「いや解決する程の大きな話では無くてですね・・」


オウグに話したのは、あくまでもの孤児院の子供たちをどうにかする方法として提案したのだが、その内容がいたく気に入り此処まで大事になってしまった。




ジャニは最初に開拓の続いている、西もしくは南西の村を借りたいと切り出す。

そしてその村で孤児院の子供たちを受け入れ、村にかかわる仕事を教えて欲しい。

フォールのパーティを、ダンジョン施設の利用対価として、村の専属パーティとしたい。

そしてフォールのパーティをそのまま、孤児たちの冒険者訓練の教官としたい。


これらを纏めて一つの案としたのである。


孤児院の子供たちを村で受け入れ、開拓、農耕、狩り、冒険者の訓練を行い、そのまま住んでも良いし、開拓者や冒険者として出て行っても良い。


「つまり、職業訓練村を作りたいという事です」


事前に知っていたオウグでさえ、改めて聞いても驚くばかりである。


「冒険者ギルドは、前向きに検討したいと考えます」

「むぅ、直ぐに町長に相談してみよう」


何のデメリットも無い冒険者ギルドは、すぐさまその話に乗り、町長代行もこのまま開拓事業が流れるよりは一考に値すると判断したようだ。


これが可能なのは、開拓事業と言う下地があったからである。

一から始めようとするれば、人材、金策、場所などあらゆる面で不可能だった。






しばらくして、開拓事業の大幅変更が認めら、開拓兼孤児対策事業となる。


西と南西の村の住民を丁寧に説得して、開拓に携わりながら指導に当たって貰う事となる。

フォールのパーティは冒険者の教官として、孤児たちを訓練する事になる。


紆余曲折あったがほぼ受け入れられ、職業訓練の村として再スタートする。




ジャニは更に次の一手を打っていた。


職業訓練村には、魔法職が居らず、魔法の訓練が出来ないのだ。


彼の伝手を使って二か所に、職業訓練村を作った事を手紙にしたためて送る。

中には召喚士と魔物使いのクラスを作りたいと、きっちりと明記して。


最初に手紙を受け取ったディズ姫は、目を見開き直ぐに行動に移す。


主だった召喚士に手紙の内容を伝え、選抜した召喚士を送る。

領王は村の趣旨にいたく興味を示し、金銭的支援と五ノ領の参加を申し出る。




手紙は六ノ領の魔物使いたちにも届けられ、候補者を募り直ぐに送り出す。




瞬く間に魔法職による、魔法訓練と召喚士、魔物使いのクラスが出来上がる。






そしてダンジョンの活動期と休眠期という仕組み、職業訓練村の建設から10年‐




地域の急激な変化が一段落すると、様々な要望が上がってくる。


『孤児以外にも、村への受け入れをって、冒険者ギルドから言われている訳ね』

「村を出た冒険者たちは優秀らしくてな」


いきなり冒険者としてデビューよりは、下積みを経験した者の方がかなり使えるのだ。

何人か冒険者として村を出ているが、依頼の達成率も高く、死亡報告もまだ無い。


『どうするのよ?』

「本来は開拓をしながらの訓練だからって断ってる」


冒険者ギルドとしては、開拓と冒険者の訓練の分離を望んでいるのだ。

町としては、原則は開拓兼孤児対策事業である以上、その要望は受け入れられない。

ジャニとしても同意見である。


「それに職業訓練村としてまだ10年だ。問題はこれから起きてくるだろうし、何でもかんでも受け入れていく訳にはいかないから」

『それもそうね』






そして、今まさに全く別の所から問題が発生したのである。


子供の行方不明となった西の村に着くと、関係者から事情を聞いて行く。



ノバと言う15歳の成人したばかりの少年が、二晩戻らなかったという。


彼は日々の訓練もまじめに取り組み、村の住民や後輩たちにも慕われていた。

後輩を連れての森の探索のための、事前調査を目的として出掛けたのである。


直ぐにフォールのメンバーを中心に、総出で探索隊が組織され調査がされる。


魔物使いによる追跡で、大体の居なくなった場所が特定され、魔法職により魔力の痕跡があり、召喚士が召喚の残滓を感じ取る。




ジャニは全員に意見を求めながら、状況を整理する。


「あの場所に、ノバ君が居たのは間違いないのですか?」

「正確には、あそこでノバ君の臭いが途切れている」


魔物使いの追跡で、行方不明のノバの臭いが途切れている場所を示す。


「魔力の残滓は【召喚】の魔法の物で間違いないですか?」

「100パーセントと言う訳では無いが、魔力溜りや攻撃魔法の痕跡は無かった」


その場に長く留まる様な魔力では無いため、魔力溜り以外という事らしい。


「そもそも人間を【召喚】するのは不可能では?」

「【召喚】に応じれば可能かもしれませんが、ノバ君がどんな対価が必要かまでは・・」


例えランダム召喚だとしても、対価に本人が了承しなければ【召喚】は成立しない。

ただ逆に彼が了承すれば、どの様な対価であっても【召喚】出来てしまう可能性はある。




それ以外の方法が、ジャニには一つだけ思い当たる事があった。

すぐさまディズ姫と勇者レオの所へ向かう


状況と事情を説明すると、二人は顔を見合わせ頷き合う。

そしてディズ姫が、ジャニの考えを肯定する。


「お話を伺う限り、間違いないと思われます」

「やはり・・」




とんぼ返りで、職業訓練村に戻ると関係者に事態の説明を行う。

念のため、ジューラとフォールのメンバー他、冒険者の卵たちに探索を依頼する。




そして、ダンジョンへと戻ってくる。


『それでノバっていう人間は見つかりそうなの?』


事情を知らないフェブが、慌てて戻ってきたジャニに問いかける。


「ノバ君は何らかの事件に巻き込まれた可能性が高い」

『・・えっ!?』


ジャニの言葉に思わず聞き返してしまう。彼のセリフから解決していない事が伺えるのに、ダンジョンに戻って来ているからだ。

ジャニは、フェブに自分自身に言い聞かせる様に説明する。


「魔物使いから、ノバ君の臭いが唐突に消えて、追跡が出来ない状態であるとの報告だ」

『ふむふむ』

「魔法職から、間違いなく魔力の残滓があると、召喚士から【召喚】であろうとの報告」

『・・はぁ!? ノバって子、【召喚】されたの?』

「その可能性が高い」

『一体誰が? 何処に? というか人間って【召喚】出来るものなの?』


フェブの驚きも当然で、人間を召喚する事は、現時点では不可能である。


「それを可能にする手段が、一つだけ存在する。・・異世界だ」

『そうなんだ。・・ぇ!? 異世界?』


へぇー納得という頷くイメージの後、ダンジョン全体と錯覚する程、凍りついた感覚がジャニを襲う。


「ノバ君は、たぶん異世界に強制【召喚】された」






一つの物語、人とダンジョンの物語が終わりを迎える。


そして新しい物語が始まりを迎えようとしていた。





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