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ダンジョンの同居人  作者: まる
仲間と
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召喚士

召喚士





魔法陣とスクロールによる【喚起】での連続攻撃を物ともしない。


手加減する余裕が無く、殺してしまう事が分かっていての攻撃だった。


しかも相手はこれだけの攻撃を受けても、ウキウキと次を待っている様子。


自分一人ではどうにもならない状況。

胸に右手を当て、自分の中のもう一人の存在、ディズに語りかける。

生き延びるために、力を貸してくれと。


自分の飛び抜けた召喚士として能力は、ディズの力のお蔭と思っている。


深く息を吐き出し、覚悟を決め目を開く。

縛っていた左腕の戒めを解く。




レオはウキウキしていた。


今までの依頼は、いつも準備万端で直ぐに終わってしまった。


ビックリ箱の様に、次から次へと色々な物が出てくる。

今回の依頼は倒してはいけないとの事とはいえ驚きを隠せない。


しかも覚悟を決めた表情や態度から、最後の大技を仕掛けてくるのは確実だろう。


ジャニの左腕が前に突き出される。


「へっ!? お前、左腕あったの?」


よくよく観察すれば、不自然さに気づきそうな物であるが、そちらは鈍いのかもしれない。


スクロールが魔力の供給を受け輝き、10体を超える上位種の魔物が【喚起】される。


「なるほど。スクロールって訳か!」


一体一体を確実に葬っていくと、ディズ姫が詠唱するものと似た言葉が、ジャニから紡がれる。

目の前に浮かび上がる巨大な魔法陣にも、どこか似通っていた。


「うん!? ちょっと待て・・」

「−の湿地。カイザースライム。オーバードライブ付与。【召喚】!」


スクロールによる一斉【喚起】は、詠唱の時間を稼ぐための物だった。


「待て待て待て、お前・・」


小山程の金色に輝くスライムが現れる。




カイザースライムは、その名の示す様にスライム系の最上位種の一つであり、物理防御、魔法防御、核の強度、再生力、捕食力などあらゆる面で優れている。


付与されたオーバードライブは、【召喚】されている間、種族レベルを最大にする。


一人では到底できない、ディズの助力があってすら成功する保証は無かった。


しかし代償は大きく、魔力の過供給と超回復は気力や体力を削り取り、【召喚】成功の手応えと同時に気を失ってしまう。




「召喚士だろう・・って、そこでぶっ倒れるか!」


ジャニが倒れると同時に、カイザースライムが【召喚】される。


詳細な情報は分からなくても、金色に輝くスライムからは圧倒的な存在感があった。


「・・これはヤバくないか?」


スクロールによって呼び出された魔物を、全て片付けるとスライムと対峙する。





ディズ姫、フォール、古株、オウグは立っている方の人影に走り寄る。


「何てことしてくれたんですか! 調査対象を倒してしまうなんて。

それにこのカイザースライムは、どっから持って来たんですか!」


一人立っていたレオに、ディズ姫は文句をまくし立てる。


「姫ちゃん、姫ちゃん、落ち着いて。俺は殺ってない。無実だ」


明らかに疑いの目を向けてくるディズ姫に無実を訴える。


「カイザースライムはあいつが【召喚】して、へばってぶっ倒れているだけ」

「【召喚】って、召喚士!? そんな情報は何処からありませんでした」

「そう、あいつ召喚士・・だと思う」

「思うって・・、もし本当なら素晴らしい事なのですが」


召喚士の冤罪が晴れ、普通に暮らせるようになってはいるが、まだまだ数は少ない。

知られていない才能ある若者が、仲間に加わる事は喜ばしい限りだ。


「命令の前にぶっ倒れたから動かないとは思うけど、あいつを起こして、早い所【送還】させた方が良い」

「その様ですね」


カイザースライムの動きに注視しながら、ジャニを助け起こす。


しばらくすると目を覚ますが、見知った顔、見知らぬかをに囲まれて混乱する。


「えっ!? えっ!?」


代表してオウグが声を掛ける。


「安心して下さい、大丈夫ですから。まずはあの魔物を【送還】して下さい」

「えっ!? なんで? どうして?」


状況が全く分からず、激しく混乱をして何も出来ないジャニへ、ディズ姫の一喝が落ちる。


「良いから早く!」

「っ!? はい!」


ディズ姫の怒りの表情と声に驚き、死ぬ思いをして【召喚】した魔物に一度も命令する事無く【送還】してしまう。


姫ちゃんって怒ると怖えーと、何処からか声がするが無視して話し掛けられる。


「こんな場所ではなんですから、一度町へ戻りましょう」


先程とは打って変わった笑顔と優しげな声に、ジャニは頷くしか出来なかった。






町に戻ると、別室で待っていた魔物使いと合流し大所帯となった所で、もう一度状況を整理するためにお互いが説明を行う。




六ノ領から来たと言う魔物使いたちから話が始まる。


「君たちの居た里では、ある儀式が行われていた。心当たりは無いかな?」

「ある儀式ですか・・。知っているのは『成人の儀』位ですが」


儀式と呼ばれて思いつくのは、それ位だった。


「まとめ役、長老と呼ばれていたと思うが、家の地下で行われていたのではないかな?」

「えぇ、その通りです」


その儀式にはある魔法陣が使用されており、召喚士に殺意を抱かせる様に仕向ける、洗脳するための術である事が告げられる。


ディズ姫が声には出さないが、眉をひそめ不快感を表している。


「洗脳ですか・・。でも昔の仲間を殺した事には変わりませんね」


皆の豹変には納得の出来る回答ではあるが、自分のした事に変わりは無い。

殆どの人が痛ましい出来事に顔を曇らせる。




続いて五ノ領から来たと言うディズ姫の話となる。


「冒険者ギルド経由で、あなたが何者であるかを調べるための依頼がありました」

「調べる・・。まぁ言わんとしている事は分かります」


誤解が解けたとはいえ、隠し事をしていた身としては苦笑するしかない。


「レオ様・・うちの勇者が行き過ぎたようです。申し訳ありません」

「いえ、そんな・・。頭を上げて下さい」


姫と呼ばれる人物が素直に頭を下げた事に、両手を振って恐縮する。


「姫ちゃん。行き過ぎって、俺が全部悪いみたいじゃん」

「いきなり切りつける人がありますか。

話し合い出来るものも出来なくなります」


怒られて拗ねてはいるが、全く気にしている様子は無い。




全ての話し合いが終わると、冒険者ギルドはやむを得ない事情として、ジャニが咎めを受ける事は無いという事が伝えられた。


魔物使いたちは、何かあれば力になると言葉を残して、自分たちの拠点に帰って行く。


ディズ姫とレオは、自分たちの城へ帰らなかった。

それどころかディズ姫に至っては、ニコニコと手を取って離れなかった。


「あのディズ姫様? お帰りにならないのですか?」

「ジャニ殿。あなたは召喚士の才能があると聞いております」


レオから戦いのあらましを聞いて、稀有な存在であると認識していた。


「まだまだ召喚士は少なく、是非わが領内でその能力を如何なく発揮して頂きたく」

「お言葉ですが、俺の能力なんて微々たる物です」

「ご謙遜を・・」

「本当です」


ディズ姫の言葉を遮って、借り物の力、自分の中に居るディズという存在を告げる。


「ディズ! 今の話が確かなら、初代ディズ様に間違いありません」


感極まったのか、滂沱の如く涙を流す。


「直ぐにわが領へ。出来うる限り最高の神官や霊媒師を用意します」

「いや、ちょ、ちょっと待って・・」

「そして必ずや初代ディズ様をお迎え致します」

「お迎えって、一体何をするつもりですか」


肩をポンと叩くレオを見ると、首を振り顔には諦めろと書いてあった


「少々お待ち下さい、ディズ姫様」


オウグから声が掛かる。


「何でしょう? こちらはなすべき事が多くあり時間があまり取れませんが」

「ジャニにつきましては、こちらもはいどうぞと手放せない理由があります」


二人の間で、突如見えない火花が散らされる。


「四ノ領内で新たなダンジョンが見つかり、ジャニは重要なポストに居ます」

「召喚士の未来のためには些末な問題です」


当の本人は完全に蚊帳の外に置かれてしまっている。




静かな戦いの結末は、まずジャニは引っ越しやダンジョン解放を行う事。

ディズ姫は一旦自分の領に戻って報告し、今後について話し合ってくるとなった。




奇しくも自分たち望む形になった、冒険者ギルドだけがホクホクであったという。






一人話から置いてかれたジャニは、ダンジョンコアに結果を伝えるよう、その後は召喚士の能力をフルに使って、主都で新しい拠点の手続きをするよう頼まれる。




「無事に帰って来るとは、なんと空気の読めない男なのでしょうか」

『本当ねー。折角、特殊部隊を準備して、待っていたというのに』

「無事に帰ってきて責められるってどういう事かな? 特殊部隊って何かな?」


非難と物騒な言葉に凹みながらも、いつもと変わらない風景に笑みが零れる。


そして本題であるダンジョンの解放について話をする事が出来る。


「ダンジョン解放の準備はどう?」

『準備って言うけど、こっちは何もやる事は無いわ』


確かに第一のダンジョンは何時でも切り離せる。


「そっか、冒険者ギルドと商業ギルドの話し合い待ちだったけ」

『あれ以降、音沙汰無いのよ』

「今回の一件で、一気にダンジョン解放になると思う」

『話しを纏められない人間たちの愚かさ故な訳じゃない』


呆れたているというイメージのフェブに、ここ数日あった出来事を話して聞かせる。


『数日で人間が、どっと押し寄せる様になるのね』

「その前に冒険者ギルドの秘書との調整はあると思うけど」


ダンジョン解放については、ジャニの不在の時間について話し合う。


『さっきも言ったように、第一ダンジョンはワタシの自由裁量で変更するわね?』

「うん、それで良いと思う」

『もし第二のダンジョンに入って・・』

「生きて出たらダンジョンを切り離した方が良いかもね」

「それがよろしいかと」


殆どは冒険者ギルドに管理運営を任せ、緊急時の対応だけ決めて置く。




ダンジョンの話しが一段落すると、ジャニ自身の話しについてとなる。


『四人の魔物使いの件は、無罪放免と言った所かしら?』


人殺しと言う言葉は避けた。

しかしフェブとしては、ダンジョンを守るために人を殺す事と何が違うのか不思議に思う。


「その代り召喚士として、厄介事が舞い込みそうだけど」


ふとこれから起こるかもしれない騒動を考えて、フェブに頼んでみる。


「ちょうど良いかな。特殊部隊を貸して欲しいんだけど」

『何に使うの?』

「召喚士の姫様の所から、無事に帰ってこれる保証が無いから」


感情に振り回され気味な姫様の事だ。何が起こるか分から無い。


「奪還準備という事ですね」

「いやそうまで物騒な話じゃなくて、五ノ領の調査をお願い出来ればと」

『なるほどね。最初の任務は主都の調査、可能なら拠点の設営をしましょうか』

「畏まりました。直ぐに手筈を」


第三のダンジョンが四ノ領と五ノ領の境にあるのだから、五ノ領の調査はやっておくに越した事は無い。


すぐさまフェブ特殊部隊が、まず四ノ領の主都に向けて出発する。

最初に主都のジャニの自宅とダンジョンを繋ぎ、その後五ノ領へという順で行動する。


特殊部隊はお出かけメイドを隊長とした10名の部隊で、どれだけDP注ぎ込んだんだと言うほど高性能さが伺えるメンバーだった。


いくら使ったとの問いかけに、まだ残ってるとしか答えてはくれなかった。




馬系の魔物を【召喚】し、薬作りの拠点の入り口を塞ぐ。

そのまま主都へ向かい、途中で特殊部隊を追い抜きながら先を急ぐ。


主都の商業ギルドで新しい拠点の契約を済ませ、特殊部隊とすれ違い開拓の町と帰る。


オウグも事が事だけに、急いで戻って来てくれた事に感謝し、薬作りの拠点の契約をする。


そのまま主都の拠点を整えると断ると席を立ち、特殊部隊と合流する。

全員で主都の自宅に向かい、地下室にダンジョンの自室部分を移させ繋いで貰う。

主都の自宅は人が住んでいる様に家財で埋め、ダンジョンに戻ってくる。


特殊部隊はそのまま第三のダンジョンから、五ノ領の調査へ再出発する。






「おかしい・・。絶対におかしい」

『何がおかしいの?』

「凄く働いている気がする」

『気のせい、だと思うわ』」


働かない、ヒモの生活を望むジャニにとって、非常に慌ただしい日々を過ごしていた。


「先行投資です。後はのんべんだらりと過ごして下さい」

「むぅ・・、それもそうか」


メイド長が自らお茶を入れ、ジャニに手渡す。


『いやいや、今までが働かなさ過ぎだったと思うわ。

メイド長も甘やかさないの』

「申し訳ございません。

ディズ姫がそろそろいらっしゃるのではないかと思いまして」


メイド長は感じていたのだ。五ノ領の姫君の足音が傍まで来ているのを。


嫌な言葉にジャニは飲んでいたお茶を吹き出しむせ返る。


『あっ! なるほど。今だけの休息なのね』

「休息は誰にでも必要かと。

休息が甘ければ甘い程、後は地獄となります」


してやったりと言ったメイド長の表情に、満足気に頷くイメージが伝わってくる。




その言葉通り数日後、ディズ姫が大人数を引き連れてジャニの所へ訪れる。





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