表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンの同居人  作者: まる
仲間と
37/40

告白

告白





ギルド会館の別室に、オウグ、フォールのパーティ、古株のパーティが揃っていた。


ジャニが殺したと言う三人の魔物使いの件で、事前の話し合いである。


「今回の魔物使いの三人を殺したことについてだが、先のエイプの一件も含まれる」


古株のリーダーが話し始める。


「詳細は本人が来てからとなるが、何か気付いた事は?」


まず初めにオウグが口を開く。


「特に大きな変化は見られませんでした。事後は酷く憔悴していましたが・・」


続けてジューラが話しをする。


「身贔屓じゃねぇけど、あいつが喜んで人殺しをするとは思えねぇ」

「主観や推論は必要無い。事実のみだ」


古株のメンバーがピシャリとジューラを黙らせ、他のメンバーが繋ぐ。


「エイプの時は嘘をついている様子は無かったが、何かを隠している様子はあった」

「数少ない魔物使いが四人も、ジャニを探していた理由がそこだろう」


先の話し合いから自分たちの考えを伝えると、ジャニの到着を告げられる。


「では本人から直接話を聞くとしよう」




ジャニは冒険者ギルドに呼び出され、直ぐにギルド会館へ向かうと別室へと通される。


誰とも目を合わせる事無く、うつろな表情である。

しかしフェブと話した事は単に冗談で、逃げ隠れするつもりは全くなかった。


「今回のそもそもの原因は何だ?」


単刀直入に古株パーティのリーダーが切り出す。


「・・・俺が召喚士だからです」

「召喚士? 冒険者登録していないはず」

「昔に冒険者登録しようとした事があって・・」


何故自分が召喚士が、適正職である事を知っているか説明する。


「その召喚士と、今回の件は何の関係がある?」

「・・? 召喚士何です・・あぁ」


里での話では、召喚士の事は秘匿されていた事を思い出す。


「昔話をしても良いですか?」

「今回の一件に関する事なら」




ジャニはこの町に来ることになった経緯を話す。


自分が殺した四人とは同じ孤児院で、魔物使いになる事を夢見ていた事。

魔物使いの里の存在を知り、訓練を受けた事。

召喚士がこの世の悪で、魔物使いたちだけが殺すことが出来る事。

自分の適正職が召喚士しか無く、仲間たちに殺されそうになった事。

命からがら逃げて逃げて、この町に辿り着いた事。



「これで全部です」

「お前が何か隠していると思っていたが、召喚士であるという事か?」

「他に何があるんです?」


古株パーティからの確認の質問に、さも当然と質問で返す。


その場にいる全員が視線を合わせる。オウグとフォールの面々は憐れむ表情である。


古株パーティのリーダーは、責任を持つものと自覚し話し始める。


「ジャニ。酷な話をする」

「何だって聞きますよ」


裁かれる事を期待していたのかもしれない。


「召喚士は、普通に存在し暮らしている」

「そうでしょうね」


領王が召喚士の危険を秘匿しているのだから当たり前だろう。


「領王様の一人に、召喚士の姫様が居る」

「そうです・・か?」


言葉の意味が理解できずに、初めて古株パーティのリーダーと目を合わせる。


「何の冗談です?」

「召喚士は、邪悪な存在では無い。

召喚士だけでは無く、他の職も使う人間の心根の問題だ」


細かくは説明されない。

既に頭では納得し、心が受けきれない。


「何を言っている!」


ジャニはいきなり立ち上がり怒りを露わにするが、誰の目からも泣いている様に見えた。


「まだ理解出来ないのか?」

「はっ・・ははは」


その一言に、から笑をするジャニを、一同見守るしかない。


「俺は何で殺される事になった?」

「里の事だ。知らん」


自分が殺される理由を求めるが、冷たくあしらわれる。


「俺は逃げ隠れる必要が無かったのか?」

「無駄な努力だった」


誰かに相談出来れば、庇護を求められたかもしれない。


「俺はみんなを殺す必要が無かったのか?」

「分からんな」

「ははは・・」


再び笑が始まる。

そんなジャニに厳しい一言が突き刺さる。


「これが事実で現実だ」


から笑は止まる事無く、そのまま激しい慟哭へと変わっていく。






『ジャニは大丈夫かしら?』

「逃げるより裁かれる方を選んだ、馬鹿の事でしょうか?」


ジャニに対して厳しい物言いをする。


『そう、その大馬鹿者よ』

「さあ? フェブ様のお慈悲を袖にした者の末路までは」


自分の創造主を蔑にされて、かなりご立腹な様子である。


『まあまあ、許してあげなさい』


フォローを入れる自分に、何故ワタシが部下に気を使うのだろうとも思う。


「襲われたのは事実ですから、余程の事が無ければ大丈夫でしょう」

『まっ、それならいいかしら』


勝てば官軍、生き残った者が真実を作る世の中だ。例え捏造だろうと。


「但し、召喚士の事を話した場合は別ですが」

『・・えっ!?』


召喚士が世の悪であるのならば、追う理由が正当化されてしまう。


『・・・話すかしら?』

「大馬鹿ですから、どうでしょう」

『ここまで来れば何とか出来ると思うんだけど・・』


最悪、第一、第二のダンジョンを切り捨てる事で、追跡を躱し逃げ延びる事は可能だ。


「全く別件ですが、ご提案があります」

『へぇ!? 何かしら?』


ジャニの心配の話など、どうでもいいかの様に話題を変える。


「今の所、外出できるメイドが一人だけです」

『その通りね』


基本はダンジョンの移動を正確に行うためだから、一人で十分と考えている。


「もしジャニ様が居なくなれば、心もとないと言わざろう得ません」

『ま、まぁそうよね』


あっさりとジャニが居なくなるという、メイド長に戦慄を覚える。


「あれでも、かなりの戦力があった事は事実です」

『あれでもって、ちょっと酷くないかしら?』


もしかしてジャニは、自分に隠れて、メイド長に酷い事をしていたのだろうか。


「戦闘力、索敵能力、隠密性などが高い、外出部隊を準備しておくべきかと」

『部隊って大げさでしょう。しかも外出・・なんて?』


途中でメイド長の真意に気付く。この娘ったら照れ屋さんと微笑ましく思う。


『・・詳しく』

「畏まりました」


ダンジョンではダンジョンで、悪巧みが始められる。






魂の抜け殻の様になったジャニを気遣いながらも見送ると、誰かにでは無く尋ねる。


「どう思う?」

「言葉もありませんな」

「いくら里のしきたりとはいえなぁ」


オウグやジューラの言葉にフォールのメンバーが頷く。


「多分、あいつの真実なんだろう」


部外者が立ち入れる問題では無い。事実の確認は必要だろうが。




ノックの音がして、職員が来訪者を告げる。全員が顔を見合わせ首を振る。


「構わん、通せ」


しばらくして、男女合わせて10名が別室に入って来る。


「初めまして。六ノ領を拠点とする魔物使いです」

「!?」


今まさに話をしていた件の魔物使いたちが目の前に現れる。


「こちらの五名の魔物使いが居ると聞いてきました」


彼らは僅かな手がかりを集め、何とかここまでたどり着いたと事情を説明する。


「彼らは今どこにいますか?」


その言葉に全員が沈黙で答える。


「・・・!? まさか!」


魔物使いたちが顔を見合わせ、既に犯罪に手を染めてしまったのではと考える。


「何があったかお聞きしても?」


古株パーティのリーダーが代表して、ジャニと一連の話を語って聞かせる。


「もう少し、もう少し早く来れていれば・・」


仲間同士の殺し合いと言う結末に、各々深い悲しみに包まれる。


「今回の一件で何か知っている事は?」


魔物使いたちのリーダーらしき人物が、苦々しげに知っている事を話す。


「魔物使いの一部に、自分たちの不遇を召喚士のせいにする者が居ました」

「はぁ? 過去のしかもあれ冤罪だった話だろう」


思わずジューラが口を挟むが、皆の視線が黙って聞けと言っていた。


「その者達は、魔物使いたちの思想を一つにするため、禁忌を冒し離反しました」

「禁忌とは?」


里の方にあったしきたりの禁忌では無く、魔物使い本来の禁忌であろう。


「人間に魔物使いの力を使う事。

悪魔の儀式、すなわち洗脳であり、人間に対する強制従属化です」

「なっ!?」

「召喚士は悪の存在で、殺す事が出来るのは魔物使いだけであると刷り込む事で、共通の敵を作りつつ、魔物使いの意味を見出そうとしました」


ジャニの昔の仲間たちは、召喚士を殺すように洗脳されていた。

これが真実。全てのピースが出揃い、これで一連の出来事が一つに繋がる。


重苦しい雰囲気ではあるが皆は知っていた。


何処にでもある話だと。


それが身近の知り合いで起こってしまっただけなのである。




沈黙の中再びノックされ、来訪者がある事を告げる。


「随分と客の多い日だ」


全員に来訪者の入室を確認すると、溜息と共に許可をする。

入ってきた人物が女性だった事と、身なりと美しさの場違いに全員が唖然とする。


「皆様、初めまして。五ノ領の領主の娘です。ディズとお呼び下さい」

「そのディズ姫がどのような用件で?」


不遜とも取れる対応にも、さして気にした様子は無く話をする。


「要件は・・、そちらからの依頼の件です」

「!?」


古株パーティの面々が顔を見合わせ、他の参加者は首を振る。


それぞれの違った態度に、彼女は「おや?」と首を傾げる、と同時に轟音と激震が建物を襲う。


「「「なっ!?」」」

「もう、待つ様に言っておいたのに。どうしてあの方は大人しく出来ないのでしょう!」


彼女の発言に、古株パーティのリーダーが問い質す。


「何が起こっているか分かるか?」

「多分、レオ様・・は勇者ですが、ターゲットと接触したかと」


勇者たちへの依頼は、既にこちらで完了したばかりで伝わりようが無い。


「ちっ! ディズ姫、依頼はキャンセルだ」

「え? えっ!? ど、どちらにせよ、レオ様を止めに行かないと」


主だったものが慌てて、ジャニと勇者レオを探しに飛び出していく。






城門をくぐり町を出ると、草原にクレーターが出来ていた。


「これか!? さっきの音と揺れの原因は」

「しかしどうやったこんな風になるんだ?」


各々が口にする言葉に、ディズ姫は内心、勇者様だろうなーと確信していた。


クレーターの先には小山程の大きさの虹色に輝くスライムが居た。


「おいおい。なんだありゃ?」

「カイザースライムですね。目に見えない大陸にしか居ないはずなんですが」


スライムを挟んで二人の人影を見る。片方は地に倒れ伏している。


「あぁ!? 倒してしまったら依頼達成になりません」

「今そこ!? そこじゃないよね、大切な事は!」


この姫様は、大概の性格を持っている様である。






少し時を遡る。




フラフラっと町を出た所で、20歳位の黒い髪と黒い瞳の青年に声を掛けられる。


「俺はレオって言うんだけどさ、ジャニってやつ知らない?」

「ジャニは俺ですが・・、人違いでは?」

「ありゃりゃ、そっか・・」


いきなり剣を抜き切りつける。皮一枚と言う技量を見せつけられる。


「ッ!?」


思わず飛び去り、右腕で短剣を構える。


「うーん、反応も動きも今一。短剣の構えもほとんど素人同然か・・」

「いきなり何なんです、あなたは?」


自分の考えにニヤニヤしている姿は、別の意味で危ない人だ。


「加えて正体不明とくれば・・、やっぱ訳ありだよな」


全く人の話を聞かないならと、思考にどっぷり浸かっている間に逃げ出す。


「悪いがお前の事を聞かせて・・って、おい、逃げるな!」


話しの途中で居なくなった事に気付いて文句を言う。

追い掛けようと走り出だそうとすると、その前にジャニが立ち止まる。

うん?とたたらを踏むとジャニの傍に、人の二倍近い大きさの猿が突然現れる。


「なっ!? 一体何処から現れた?」




「(あいつ何者だ?)」


高い剣技を持っている。魔物使いではないが時期的に無関係ではないだろう。


辺りを見回し、自分が事前に描いておいた魔法陣へ一目散に走りだす。

パワーコングを【喚起】すると、すぐに別の魔法陣へ移動する。




「何でこんな所に、こんな魔物が居るんだ?」


パワーコングを一刀両断にすると、トカゲの様な魔物が足元に襲い掛かる。

跳んで攻撃を躱しながら首を刎ねた所へ、ツバメの様な魔物が向かってくる。


「ちょっ!?」


レオの周囲に放電が起こり、魔物を迎撃する。




「(なっ、何が起きた?)」


レオは転がるように地面に降り立つと、全身を蟻の魔物に覆い尽くされる。

振り払うのは不可能と判断したのか、自分ごと炎で周囲を焼き尽くす。


「(魔法なのか!? これじゃ魔法陣も詠唱も間に合わない!)」


後ろ手に隠している左腕に握っているスクロールに魔力を込め【喚起】する。




「何だこの魔物たちは? あいつが何かしてるのか?」


流石にこれだけの種類の魔物に連続攻撃を受ければ、嫌でも原因が分かる。


「えっ!? 血色の・・オーガだと?」


全ての魔物を倒した後、目の前には普通のオーガより二回りは大きい血色のオーガが居た。


全身の闘気を高めつつ、剣に魔力を込め、血色のオーガの頭上へと跳躍する。

全ての力を剣の振り抜きに合わせて解放する。




閃光と轟音と衝撃の後には、クレーターだけが残されていた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ