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ダンジョンの同居人  作者: まる
仲間と
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嵐の前に

嵐の前に





「何故理解せん。われら魔物使いが虐げられるのは、召喚士のせいだという事を」


魔物の里の離反者のまとめ役と思われる人物は、そう言い残すと息絶える。


「はぁ・・。今の時代そんな四方山話を誰が信じる?」


荒い息を整える様に、深く溜息を吐きながら呟く。




四ノ領で新たなる魔物使いの誕生の話を聞き、喜びと不安からニノ領へ向かった。


魔物に乗り、ひたすら先を急ぎ、ニノ領に到着すると魔物の里の存在を知る。


里に近づくと離反者の攻撃が始まるが、ほぼ一対複数での戦いとなる。

離反者を撃破して里の中へ入り、まとめ役に尋問しようとするが、やはり戦いとなり、必要な情報を得る事が出来なかった。




「ねぇ、ちょっと読んで」


戦いの後、魔物使いの里を皆で調べていた所、一緒に行動していた女性から、手紙らしきものを受け取り目を通す。

そこには魔物使いになりたいと言う、子供たちの切なる願いが書かれていた。


「不遇と言われる魔物使いになりたいだなんてね」


女性の少し嬉し困った声を聞きながら、子供たちの言葉に顔を綻ばせる。


「この手紙を読んでさえ、悪夢から覚めなかったと言うのか・・」


離反者たちの行動を思い、深い憐れみの表情を浮かべる。




「おい、来てくれ!」

「どうした」


他の仲間からの声に反応し、まとめ役の家の地下室へと向かう。


「これは!?」


そこにあった物を見た瞬間、目を見開く。

間違いであってくれと願いながら調べる。


「・・悪魔の魔法陣だ。間違いない」

「やっぱりそうか・・」


首を振り最悪の状況である事を告げると、全員の顔に悲壮感が漂う。


「何か手がかりが無いか、手分けして調べてくれ」

「「「おう」」」


すぐさま全員に声を掛ける。そして思わず握りしめた手紙に目を向け、天を仰ぎみる。


「早まらないでくれ、ジュン君、エイプ君、マチ君、ジャニ君、メイ君・・」


愚かな大人たちに振り回された子供たちの身を案じる事しか出来なかった。






二人の少女が、それぞれ大型の狼系の魔物に乗ってやってくる。


「やぁ、早かったね」

「もう、メイが急かすから。冒険者登録から大変だったのよ」

「だってだってです」


軽く溜息を吐いて苦笑いのマチに、メイが拗ねたように答える。


「でも丁度良かったよ」

「どうしたんです?」

「悪い知らせがある」


マチとメイの顔に緊張が走る。

それも一瞬で意味深な笑みを浮かべる。


「エイプとこの町で待ち合わせているんだが、まだ合流出来ていない」

「どういう事? エイプに何かさせた訳?」

「この町の先に開拓者の町がある。そこに獲物が居るらしい情報を掴んだ」

「流石です」


エイプと別れて行動している理由を二人に説明する。


「僕はもう少しこの町で情報を集め、エイプには獲物の確認を頼んだんだ」

「ジュンは慎重過ぎよ。それで?」

「一週間ほど待っているんだけど戻る様子が無く、ギルドの死亡者情報で・・」

「エイプお兄ちゃんの名があったですね」

「そういう事だね」


エイプの死を告げられたのに、どこか平然として答えるメイ。


「じゃあ早速狩りに行くです」

「待ってくれ」

「何よ? 臆病風にでも吹かれたの?」


二人は早く狩りに行きたいのか、ウズウズしているのが丸わかりだった。


「違う。情報を二人と共有しとこうと思って」

「ごめん。そうね」

「で、どんな事があるんですか?」


開拓の町を取り巻く環境を説明する。




「一つの町に、五つの村ね」

「だから提案として、囲い込みをしたいと思っている」

「なる程です。なら私は正面から行くです。譲れないです」

「じゃあ僕は東の村から右回りにしようか」

「なら私は西の村から左回りになるわね」


そのまま席を立って、先を急ごうとする二人に釘を刺す。


「二人ともそんなに焦らないで。

お互いくれぐれも先走らないようにね」

「はいです」

「分かっているわよ」


しかし二人はサッサと行ってしまう。

お互いの顔には早い者勝ちとあった。


駒が動くのを見る様に、二人を平然と見送る。


「やれやれ、こうも簡単に焦らしに乗ってくれるとは思わなかったよ」


エイプの時と同じく呟くと、少し遅れて東の村へと向かう。






『しかし女の子の一発で気を失うなんて・・』

「あのな、オートマトンの一発って強力なんだぞ。

ましてや魔法職の俺が耐えられるか!」


メイド長に介抱され意識を取り戻すと、自分の力の無さをを弁護する。


『では当人が気が付いたので、第一回ジャニ君を守る会を開きます』

「いつからそんな会が出来たんだ?」


メイド長はパチパチと拍手をしている。


『まあまあ。偶には守られる側の立場に立つのも大切だと思うわ』

「その考え方は、とても大切だとは思うんだけど・・」


守る立場から、守られる立場になって、何となく居心地が悪い。


『状況的に昔の仲間が来るのは間違いないのよね?』

「そうだね。彼らが一人で動くとは考えにくい。

別々に動いたとしても、何らかのメッセージは残していると思う」


魔物使いは弱い。

だから複数で動くように訓練されている。


『何とかして先手を打ちたい所よね』

「此処に来るまでに、監視用の魔物を出来るだけばら撒いては来た」


襲われている以上、古株パーティの事など構わず魔物を【召喚】する。


『不意打ちは防げそう?』

「荷車さえ使わなければ何とかなる」

『どういう事かしら?』

「街道では魔物を運搬用に使う事があるから、魔物使いかどうか判断が付かないんだ」

『うわぁ。穴だらけじゃない。どうするのよ?』

「仕方がないから、人間と魔物だけで行動しているモノと絞りこんでいる」


意外にも街道を魔物が通る事が多く、監視が難しい事を吐露する。


『ふーん。それでも不味いじゃない』

「次の手としてスクロールを作ろうと考えている」

『スクロールって巻物でしょ? 何に使うの?』

「勿論【喚起】を準備しておくためだが?」

『【喚起】って何よ?』


ジャニが【召喚】する所は見ていたが、召喚士の話しは殆ど聞いた事が無い。


「話した事・・無かったな。

魔物を呼び出す時、色々な条件で納得して来て貰うのが【召喚】となる」

『それはだいたい分かるわ』

「魔物と先に応えて貰う条件を揃えておいて、呼ぶだけの状態にするのが【喚起】だ」

『うーん、契約待ちと契約済みの違いって感じかしら?』

「そうとも言える。契約済みの状態がスクロールで、魔力を通すだけで来てくれる」


召喚士の勉強をしている時に教わった事を説明する。


『へぇー、便利じゃない。何で今まで使わなかったのよ』

「呼び出す魔物が決まっているから、応用が利かないんだ」

『ふーん。使い所が難しいって事よね』

「ただし戦闘であれば、【召喚】の速さが求められるため有利となる」


左手が無いから、メイド長に紙を押さえて貰いながら、スクロールを完成させていく。






数日後、冒険者ギルドから呼び出しが掛かる。前回の詳細を聞きたいとの事である。


「じゃあ、ちょっくらいってくるよ」

『気を付けてね』


迎えに来たギルドの職員に、製造中の薬を片付けると一言断って、ダンジョンに入り報告しておく。




町に到着すると、ギルド会館では別室に案内され、古株メンバーが待ち構えていた。


「悪いな、呼び立てて」

「いいえ、構いませんよ」

「怪我を押して、わざわざ拠点に戻って何を?」

「一応、再生薬を作ってみようかと準備をしていたんです」

「ほぉ。出来そうなのか?」

「いえいえ、まだ素材を揃えている段階ですね」

「そうか」


簡単な挨拶を済ませると、先の一件に話しが移っていく。


「わざわざ来てもらったのは他でもない。その左腕の件だ」

「聞いています」

「悪いがもう一度最初から話して貰えるか?」

「ええ、構いません」


そう言うと、昔の仲間と似た人物に声を掛けた所、魔物に襲われた事の顛末を話す。


「報告書と一致する。

他に気付いたり思い出した事は?」

「いいえ、その人とは一言も話す暇が無かったので・・、昔の仲間かどうかすら」


エイプには間違いないだろうが、いきなり戦闘になったので確認は出来ていない。


「うん? どういう事だ?」

「その人が昔の仲間かどうか、確認出来た訳ではないのです」

「ふむ」


少し考える素振りを見せると、少し話を変える。


「仲間らしき人物の死に方についてはどうだ?」

「地面に蹲っていたので何とも・・」

「見ていないと?」

「いえ、見たのかもしれませんが、忘れているだけなのかもと」

「そうか。何か思い出したら教えてくれ。今日は悪かったな」

「ええ、分かりました」


前回の報告と変わらず、報告書の確認しただけの様だった。

労をねぎらうと、終了を告げジャニを見送る。


しかし古株メンバーは、報告書に無い物を嗅ぎ取ろうとしていた。


「どう思う?」

「辻褄は合っているし、嘘を言っている様にも見えなかったが」

「何か隠し事はあるだろう」


正直に話している様だが、分からないと言う分が隠し事のように感じる。


「死んだ者の素性は?」

「名前はエイプ。魔物使いでジャニの同郷。本人ならな」

「なりすまし・・か」


先程引っかかった、ジャニが本人と確認していないと言っていた点である。


「ただ俺たちを追って来たらしい」

「俺たちを? どういう事だ」

「俺たちがジャニを調べていたから、逆に足取りを手繰られたらしい」


なりすましなら素性をばらす行為はしない。

少しの間考えるような沈黙がある。


「犯罪者では無く逃亡者。

裏切り者の始末が目的だったのでは?」

「では男は何故死んだ? どの魔物の爪や牙と傷が一致しない」

「失敗者の粛清では?」

「ふむ、仲間がいるのか」

「エイプの同郷で魔物使いは他に三人、うち一人はごく最近だ」


早計ではあるが、今までの話しから考えられる答えを導き出す。


「調査は続け、町や村への被害が無い限りは傍観とする」

「分かった」


冷たいようだが、村々のしきたりと言うのは根深い。

下手をすると逆恨みを買い、思わぬ被害を招きかねないのを知っているからだ。


そして古株メンバーには珍しく、勇者への依頼の存在を忘れていた。






拠点へ戻る途中あちらこちらの地面に何かを書きながら、いつもより時間を掛けて帰る。


『冒険者ギルドは何だって?』

「前回と殆ど同じ事情聴取だったよ」

『ふーん、わざわざ同じこと聞くために呼び出した訳?』

「古株メンバーが待っていたから、何か感ずかれているだろうな」


彼らが単なる確認のために呼び出すはずが無い。

直接見極めようとしたのだろう。


『どうなると思う?』

「正直分からない。

しかし今は魔物使いの方だ」


確実に自分を追いつめてくる者たちの対処を最優先にすべき状況なのだ。


『監視の魔物たちから何か情報は?』

「今の所これと言った物は無いな」


少しの間をおいて、確認するように言葉を発する。


『・・・昔の仲間と戦うの?』

「戦うつもりは無い。言い訳に聞こえるだろうが命を守るためだ」


昔の事をを思い出しているのか苦い顔で、過去の仲間と戦う準備を進めていく。






机の上には、ここ数日で持ち込まれた依頼書の束が積み上げられていた。

依頼書の山から一枚取り目を通しては、別の山へ重ねて行く。


「どれもこれも変わり映えしない依頼ばかりですね、お父様」


肩で切り揃えられた黒に近い紺色の髪と、同色の瞳を持つ女性が溜息を吐く。


「そうかな」


お父様と呼ばれた領王は手元の依頼に目を向けながら答える。


「いつもいつも壊すか倒す依頼ばかりではありませんか」

「そうは言っても勇者への依頼となると、下手な物は受けられんぞ」


分かっていないなと言わんばかりに首を振る。


「偶には落し物探し位の依頼もあってはいいのではありませんか」

「ゆ、勇者がかい?」


勇者が落し物探し?自分の娘のセリフを真に受ける。


「例えばの話しです。が、そういうのもいいですね」

「はははは・・」


娘である姫の言葉に頬を引きつらせ、乾いた笑いをする。


「姫ちゃん姫ちゃん」

「何ですレオ様」


黒い瞳と髪を持った、20歳ぐらいの青年に声を掛けられる。


「だ・か・ら、様はいらないって」

「しかし勇者であるあなたを呼び捨てなど・・」


渋い顔で姫に一言注意をすると、一枚の紙を手渡す。


「そんな事より依頼の紙、落ちてたよ」

「ありがとうございます」


感謝を述べ、依頼に目を向けるとピタリと動きが止まる。


「・・相手を倒さずに、正体を調べるですか?」

「へぇー、今まで聞いた事の無い依頼だね」

「ふむ、そう言えばそうだな」


レオの言葉に領王は、姫の読み上げた依頼の内容に首を傾げる。

一応娘と勇者には内緒だが、依頼書は事前に審査が行われているのだ。


「正体を隠して悪事を働いている可能性がある・・と」


ピクッとレオの耳が動くと、領王が不味いと言う顔をする。


「いや、もしかしたらやむにやまれぬ事情、悲しい過去に縛られている・・か」


ピクピクッとレオが全身で反応する。姫はもう少しで釣れると感じる。

実際の依頼内容にはそんな細かい事は一言たりとも書かれていないが。


「それとも仲間や愛する人を人質に取られ脅されている・・のか」

「姫ちゃん、ちょっと銀氷竜貸してくれないかな?」


彼女は良し釣れた!と、心の中でガッツポーズをする。領王はあーあと肩を落とす。


領王としては、勇者には勇者としての働きを期待している。


彼女は、姫と言う立場では無く、一人の人生を狂わせた者としての責任感から、勇者という枠に縛られる事無く、自由に生きて欲しいと願っているのだ。





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