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ダンジョンの同居人  作者: まる
仲間と
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ギルドとの会合

ギルドとの会合





四ノ領の主都から開拓の町へ向かい続け、ひとつ前に位置する町。


「やれやれ、やっと獲物の喉元にたどり着いたね」

「うん」


暗い茶色の瞳と、同じ色の髪を後ろに撫でつけた青年が声を掛ける。


「もう一週間もすれば、獲物とご対面となるんだけど・・」

「うん?」


言葉に詰まる青年に、黄色がかった茶色い瞳と同じ色の髪の青年が首を傾げる。


「開拓の町でダンジョンが見つかったと大騒ぎになってる」

「うん?」


人で賑わっていても、匂いを辿る事は容易なのに何を気にしているのだろう。


「そこでエイプには悪いけど、先に行って狩りの場所を調べて欲しい。

僕の方はもう少し獲物の情報を集めてから、そっちへ向かうよ」

「うん」


魔物使いにとって、事前準備は何よりも大切であると叩き込まれている。

人の目の前で、流石に人を殺める事は極力避けるべきだ。


翌日、別れて行動する際にエイプと呼ばれた青年に声を掛ける。


「開拓の町の周辺には、開拓村が幾つかあるらしい。そっちにも注意してくれ」

「うん」


獲物の巣穴を間違えれば、こちらが後ろ首を狙われる事になる。




エイプがの後姿を見送りながら、もう一人の青年が呟く。


「エイプには悪いけど、上手くぶつかってくれれば力量が測れる。

まぁ狩られてしまったなら、それまでの獲物だったと諦めて貰おう」


まるで仲間でさえ、準備のための手段であるかの様子だ。


踵を返し、情報を求めて冒険者ギルドへ向かう表情には、何の感情も浮かんでいない。






町の代表者たちとの会合が終わって、一週間ほどたったある日、冒険者ギルドからの使者が薬作りの拠点に訪れる。


「私が今回のダンジョン運営を一任されております」


冒険者ギルド長代行の秘書と、自己紹介するちょっと怖い雰囲気の女性のお供に、フォールのパーティが付いてきていた。


「よろしくお願いします。早速ダンジョンに向かいますか? それとも・・」

「是非、ダンジョンに」


リーダーのジューラに目配せすると、仕方ないという風に肩を竦める。




ダンジョンに到着すると、前回と同じ様に外で待たせ直ぐに戻る。


「前回の代表者のための用意した歓迎の部屋が残っていますが使いますか?」

「歓迎の部屋ですか?」

「ええ、お聞きになっていませんか?」

「いえ特には・・」


冒険ギルド長代行から、運営だけの話を聞いたのだろう。


「風呂と休憩と食事が出来ます」

「っ!? いいえ結構です。直ぐに話し合いを」


一瞬、それらの誘惑に負けそうになったようだが、秘書は鋼の意思で断る。


「俺たちは使って良いのか?」

「構いませんよ」

「あなたたち護衛の仕事は?」


フォールのメンバーの利用する気満々に、秘書から非難の声が上がる。


「侵入者がなければ、安全だと思います」

「し、しかし・・」


ダンジョンを信頼していないと、取られかねない状況に言葉を濁す。


「冒険者だって休息は必要ですよ。拠点でも休息が有りませんでしたし」

「メンバー半々なら問題ねぇよな」

「・・分かりました」


ジャニとジューラの説得に秘書が折れ、フォールのメンバーが入浴と休息する。


「ではダンジョンコアとの話し合いをしますが、前回にも説明したのですが、コアは念話と言って、頭に直接言葉が響きます。

こちらは声を出さなくてもコアには聞こえますが、声に出した方が相手に確実に伝わります」

「分かりました。始めて下さい」

「ダンジョンコア、念話を始めてくれ」


前回と同様に秘書の頭の中に声が響き始める。


『はじめまして。ワタシがこのダンジョンのコアよ。聞こえてる?』

「!?」


突然頭に響くと、頭を押さえ顔を顰める。


「驚きましたが、大丈夫です。聞こえています」

『じゃあ早速話を始めましょう』


まず秘書が冒険者ギルドの要望をと口火を切る。


「ダンジョンコアであるあなたを守るために、やって頂きたい事があります」

『何かしら?』

「この部屋を冒険者ギルドで使用させて下さい。

ダンジョンコアある部屋もしくは階層の前にも一部屋お願いします。

あと目玉アイテムの部屋を用意して下さい。

それからギルドの部屋同士を移動できるような仕組みを用意して下さい」

『他の共有ダンジョンでもそういう事してるの?』

「・・いいえ」


他のダンジョンとの比較が出た事に驚いた様子で答える。


『なら理由は?』

「他のダンジョンコアは自分で自分の部屋まで守るとの事でした。

その場合はダンジョンの外にギルドの場所を用意していました」

『その回答なら、あなたたちが居ないと私を壊す侵入者が要るという事ね?』

「っ!? そういう不心得者がいないとは言い切れません」


そこまでしないとダンジョンを守れないと言っている様なものだ。

ダンジョンに要望を通す強気の態度が裏目に出ている。


「君はまだ弱い。守ってもらった方が確実だと思う」

『ふーん、そう言うならいいわよ』


ジャニのフォローを、ダンジョンコアがあっさりと受け入れてしまう。

人間の協力者の存在が状況を左右するのに、非常に大きい物であることを痛感する。


『歓迎の部屋は潰していいのよね?』

「えっ!?」


今の反応からこのまま残されて、利用できると思ったのだろう。


『守ってもらうためとはいえ、そこまでする必要はある訳?』

「・・いいえ、ありません」


先程からフォールのメンバーの入浴後のさっぱりした姿や、食事をしているだろう部屋からの匂いに釣られまくっていた。


「この施設を利用させてもらう事は出来ませんか?」

『ワタシのメリットは?』


このダンジョンの売りの一つとでも考えていたのだろう。


「・・特にはありません」

「潰すのはいつでも出来るから、他の事を先に片付けたらどうだ」

『いいわ。この件は後回しにして、先に進めましょう』


協力者のジャニは主都に飛ばすと聞いているが、懐柔すべきだったのではと思い始める。


「分かりました。これからはフォールのパーティにダンジョンへ入ってもらいます」

『どうぞご自由に』




フォールのメンバーが準備して、ダンジョンに挑むが最初から躓いてしまう。


「こりゃ俺たちには無理だ」

「何故ですか?」

「メンバーに盗賊はいねぇんだよ」

「なっ!?」


最初の扉のノブをガチャガチャと回すが、一向に扉が開く様子は無い。


「ダンジョンコア、どうにかなりませんか?」

『・・・何言ってるの? 守りを弱くしてどうするのよ』

「言い分は理解できますが、盗賊の居ないパーティもいます。せめて最初ぐらいは・・」

『最初? この先は扉の通路よ。扉の先には1000グラドゥス(800m)の下り坂に、100近い鍵付きの扉があるわよ』

「なっ!? なんでそんなに」

『次の部屋の準備のため時間稼ぎに決まっているじゃない』


冒険者たちは当然ある罠と思い文句を言わない。

魔物の時間湧きや毒などの罠が無いだけでも、かなり優しい部類だろう。


「何とかなりませんか?」


いきなりジャニに振り向き、ダンジョンの改造を依頼してくる。


「うーん、この部屋と同じ大きさの部屋と通路の組み合わせに変更できるか?」

『坂だから階段も混じるわよ』

「構わない。扉は中の魔物を、すべて倒すと開く仕組みで」


倒された魔物はDPに還元されるので、幾ら倒されても問題無い。


「あれ? 湿地帯のトラップそのままだよな」

『そうね、きっと文句出るわよ』

「何処かの部屋に、解き方を記しておけるか?」

『出来るわ。中間ぐらいに書いておけばいい?』

「そうしてくれ」


ダンジョンの変更に取り掛かり、しばらく声が聞こえなくなる。


『変更出来たわよ。

ただし魔物はまだいないけどね』

「えっ!? もう変更できたのですか?」


こんな短時間でダンジョンの改装が出来るとは思わなかった様だ。


『ほら後ろにも魔法陣出来ているでしょ。ワタシの前の部屋との移動用よ』

「なっ!?」


慌てて後ろを振り返ると、確かに魔法陣が輝いていた。


『言っとくけど、殆ど私の部屋への直通だから、しっかり管理してね』

「もちろんです」


この魔方陣の管理は、間違いなく冒険者ギルドの威信にかかわってくる。


「ダンジョンコア、悪いけどダンジョンの変更、ひとつ頼み忘れてたんだけど」

『何かしら?』

「最初の扉だけ、最高難度の鍵に変更してくれ」

『分かったわ』


ジャニが先ほどの変更に、とんでもない追加を要求する。


「なっ!?」


余りの出来事に驚きの声を上げるが、止める間もなく扉が消える。


「なんで最高難度の鍵なんか・・。

誰も入れないじゃないですか」

「それで鍵は冒険者ギルド管理で」

「あっ!?」

『なるほどそういう事ね』


ダンジョンにはいる冒険者を、ギルドが規制出来る様にしたのだ。


『あなた手を出して』

「はい」


秘書が手を出すと、その上に一枚の金属製のプレートが現れる。


『この扉の開け方は、そのプレートを持って、壁に手をついて、プレートに書かれた文字を読み上げる事よ』

「分かりました」


プレートを手にしたまま、壁に手を付き、プレートに書かれた文字を読む。

すると壁に扉が浮かび上がる。手を放すと扉は消えてしまう。


『これでいいかしら?』

「あぁ、予想以上だけど問題無い」


ダンジョンコアの仕事に、満足そうに頷く。


『次はどうする? ダンジョンに入る? 下のギルドの部屋に行く?』

「先に下の部屋へ行きましょう。

フォールの皆さんは、この魔方陣を守って下さい」

「分かった」


フォールのパーティを残して、魔法陣に乗ると同じ様な部屋に出る。


『ここが下側のギルドの部屋ね。

もう一つの魔法陣がワタシの所に繋がっている。

最初の最高難易度の扉と同じ仕組みで、魔法陣が起動するわ。

扉の先は昇りの螺旋階段で、目玉アイテムの部屋に繋がっているわ』

「分かりました。

では最初の部屋へ戻りましょう」

『もう良いのかしら?』

「ええ、今の所出来る事はありませんから」


とんぼ返りで最初の部屋へ戻り、フォールのパーティにダンジョンに入るよう指示する。


「お待たせしました。ダンジョンに魔物を配置は出来ますか」

『もう適当に魔物を配置してるわよ』

「では直ぐにダンジョンに入って下さい」

「了解。何処までもしくは何時まで潜るんだ?」


ダンジョンに潜る深さや時間を確認する。


「頼みがあるんだけど、いいかな?」

「何でしょうか?」

「さっき変更した部分の次の場所が、湿地帯になっているんだけど、念のためそこまで行って欲しい」

「なるほど、確実に湿地帯まで行ける事を確認するのですね」

「そういう事です」


変更箇所が問題無いかの確認を、今回の探索で行う事となる。


「了解了解。結構な距離みたいだから時間かかるかもしれないぞ」

「もし身体的な問題があれば、直ぐに撤退して構いません」

「じゃあ体力の続く限り、湿地帯まで向かうという事で」


距離から言えば、50近い部屋数がある事になる。


『最初だから、ヒントをあげるわ』

「ん? 何をだ?」

『湿地帯までの部屋の魔物は、時間が経つと復活する仕組みよ』

「それはありがたい助言だ。戻る体力を考えとかないとな」


そういうと、再び浮かび上がった扉を開けてダンジョンに入っていく。


『残った人で残りの案件片付けましょ』

「そうですね。この歓迎の部屋の利用の件ですが・・」

『条件を呑んでもらえば使用を認めるわ』

「どの様な条件でしょう?」


ギルド側からメリットを提示出来ないのだから、コアの方の条件を聞く方が良い。


『ダンジョンに入る人数を制限して。例えばベッド数を上限にするとか』

「ベッド数ですか・・・」


聞けばベッド数は18個あるという。平均4パーティ、悪くない数である。


「その条件で構いません」

『あと掃除、洗濯、炊事はそっちでやってよね。

特に食事はDP削る事になるから』

「分かっています。浴場が使えれば、後はこちらで何とかします」


それこそ一財産に匹敵する魔道式の大浴場があれば、後は何とでもなる。


『じゃあその施設は好きに使っていいわ』

「有難うございます」

『あと何か話す事あったかしら?』


ジャニの方に何かある?と視線を向ける感じが伝わってくると、首を振って答える。

秘書から、ダンジョン解放の話が確認される。


「ダンジョンは何時から冒険者の受け入れが可能ですか?」

『いつからでもいいわよ。そっちの準備が出来次第で構わないわ』

「では近日中という事で」

『えぇ!? 大丈夫? 商業ギルドと打ち合わせ済んでるの?』


近日中という言葉に驚く。ジャニの引っ越しも含めそう簡単では無いはず。


「打ち合わせですか? 商業ギルドと?」

『宿とか、村とかの方は準備いいの?』


寝耳に水と言った感じで聞き返してきたため、商業ギルドの準備の話をする。


「その辺りは町に戻って詳細を確認してみます」

『仲良くやってちょうだいね』

「ご配慮感謝します」


ふとギルドの部屋ががらんどうなのが気になる。


『冒険者ギルドの部屋は空っぽだけど大丈夫なの?』

「そちらは直ぐにでも荷物を運びこみますので」

『ならいいわ』


冒険者ギルドと一通り話し合いが終わり、最終確認をする。


『他に何かある?』

「冒険者の受け入れは確認しますが、町の専属パーティは先んじてダンジョンに入ってもよろしいですか?」

『それは構わないけど・・』

「何か問題でも?」

『専属パーティが頑張り過ぎて、他の冒険者が来るころにはDPが無くなって、アイテム出せなくても責任は取れないわよ?』

「その辺は上手くやる様に伝えます」


どうも冒険者ギルドが、先走りしている様に感じてしまう。


「あと・・」

『何かしら?』

「出来れは、お風呂を使わせて頂ければ」

『どうぞ。食事も用意しようか?』

「お願いします」


秘書が風呂場の方へ消えると、念話をカットしてジャニとだけ話す。


『(何となくうまくいってないみたいね)』

「(ちょっと商業ギルドの方に探りいれてみる)よ」


フォールがダンジョンから、秘書が風呂から出てくるのを待ちながら話を纏めていく。





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