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ダンジョンの同居人  作者: まる
仲間と
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ダンジョンとの会合

ダンジョンとの会合





古株パーティと、フォールのパーティを護衛に、関係者はダンジョンへと向かう。


一人暮らしのためベッドなどないが、薬作りの拠点でも一泊する。


ダンジョンと自分の生活のためにも、この会合はぜひとも成功させたい。




「いやはやダンジョンへの旅の途中で、風呂に入れるとはな」

「まったくだ。

ここがジャニ君の薬作りの家か」


町長代理と商業ギルド代行は、嬉しそうに話してくる。


「申し訳ありません、生憎ベッドは皆様の分が無く」

「それはやむを得まい。雨風凌げるだけでもマシだ」


ジャニの言葉に、冒険者ギルド長代行が気にするなと返してくる。


「しかし意外なところで役に立ちましたね」

「意外と言うところに棘を感じますが・・」


ジャニの薬が売れない事を指しての、オウグの言葉に苦笑いする。


「俺たちもご相伴しちまってよかったのか?」

「今日は此処で一泊の予定だし良いんじゃないか」


旅慣れない人たちも居たため、行程はゆっくりとしたものとなり、三日目の昼に拠点に着く事で入浴の時間に余裕が持てていた。

グレートバーナードたちの力をフルに使って、水汲みを行ったおかげでもある。




食事についても保存食と思っていた一行を驚かせることになる。


拠点には台所があるし、保存食ではあるが日常使う物も多くあるため、まともな食事となったのである。


「温かい食事と酒、旅の途中とは思えんな」

「まったく。此処にジャニ君の家があるお蔭か」


先と同じ感想をする町長代理と商業ギルド長代行。


「俺たちもご馳走になって悪いな」

「手伝って貰ったし、護衛の立場上酒はどうか分かんないけど」


遠慮するような事を言ってても、かなりの速さ量を腹に収めて行く冒険者たち。


「かかった費用は必要経費として後で支払う」

「町へ戻ったら忘れずに請求して下さい」

「・・お願いします」


冒険者ギルド長代行とオウグの苦笑いに、最もだと頷かせてもらう。






ゆっくりした行程で、本来四日の所を六日掛けてダンジョンに到着する。


ダンジョンを目前に、ジャニが到着を告げるため先に入り、みんなには待機して貰う。

しばらくすると戻って来て道案内をしながら、フェブの言葉を伝える。


「ダンジョンコアから、『遠路はるばるお疲れでしょう。歓迎します』との事です」

「それはそれは」


緊張した表情の中に、全員の笑顔がこぼれる。


階段を降りると、20キュビット(960cm)程のガランとした石造りの部屋に出る。

三つの壁には扉が取り付けられており、階段を背に左側の扉を開ける。

そこには石造りの部屋に沿う様に通路があり、向かい側には二つの扉がある。


「えっと、手前側の扉がベッド兼休憩室、奥が浴場になっています。

まずは旅の疲れを癒して下さいとの事です」

「「「!?」」」


手前の扉を開けると、大きめの三段ベッドが三つ左右の壁にあり、部屋の真ん中は大きめの机とイスがいくつか用意されていた。


奥の扉を開けると、脱衣所があり大浴場とはきの壁と扉で仕切られていた。


「いやはや偉い歓迎ムードですな」


お言葉に甘えますかと、冒険者に目配せし半分ずつ休憩と入浴をする。

全員が入浴し終わり、一息つくとジャニが口を開く。


「では皆様お待たせしました。

ダンジョンコアとの話し合いに行きましょう」


全員が緊張した面持ちで頷くと席を立って案内に従う。


最初の部屋に戻り、階段を背に右側の扉を開ける。


「「「これは!?」」」


そこには10名ほどのメイドが居り、料理が所狭しと並べられていた。


これらは、当初は単なる石造りの部屋一つだったのだが、拠点での喜び具合から、戸締りの振りで地下からフェブに連絡、急遽準備して貰った物だ。




「これからダンジョンコアとの話をしますが、コアは念話と言って、頭に直接言葉が響きます。

こちらは声を出さなくてもコアには聞こえますが、お互い声に出した方がスムーズかと思われます。

よろしいですか?」


お互いに目配せして、頷き合う。町長代理が声を発する。


「承知した。では会談を進めて貰おう」

「ダンジョンコア、みんなに念話を始めてくれ」


すると全員の頭の中に声が響き始める。

何があるか分からないため、名前は明かさない事は事前に話し合っておいた。


『はじめまして。ワタシがこのダンジョンのコアよ。聞こえてるかしら?』

「「「!?」」」


突然の声に驚きの表情を浮かべ、顔を見合わせ聞こえている事を確認する。


「あぁ、驚いたが全員聞こえている」

『それは良かったわ。

早速話し合いをしたい所だけど、お腹も空いているでしょうから少し食事をしてからにしましょう』

「食事をしながらでも構わないか」

『そっちが良ければ、こちらは全然構わないわ』


もしかして毒を警戒しているのかと思い、ジャニは率先して食べ始める。

それを見たフォールのメンバーも頷いて食べ始める。


「ん!? うめぇ」

「リーダー、少しは静かに食えねのか」


ジューラはメンバーにに窘められるが、全員バクバクと食べていた。

それを横目に選出された関係者が、ダンジョンコアに話しかける。


「では食事をしながら話を進めさせてもらおう」

『どうぞ』


まずは町長代理が話し始める。


「あなたは人間と共存の意思があるという事で良いのか」

『もちろん』

「要望はあるか」

『可能な限り静かに暮らしたいわね』


その言葉に冒険者ギルド長代行が声を掛けてくる。


「何の益も無く、ダンジョンを保護する理由は無い」

『その点は理解しているわ』


ダンジョンの存在を知らせた時点で、静かな生活はあり得ない。


「こちらは冒険者を送り、アイテムを得る。

その代りコアには一切近づかせない」

『侵入者とアイテムの関係については知ってる?』

「知っている。

冒険者を倒す事でアイテムを得るダンジョンポイントを得ると」

『冒険者に手を出さず、アイテムだけ取られたらDPが尽きるわ』


アイテムの搾取を行った場合の状態を確認する。


「それは冒険者の自己責任だ」

『冒険者を倒しても良いと?』

「無論だ」


冒険者としてダンジョンに挑むことは、命を懸けるという事だろう。


『でも強い冒険者ばかり寄越されても結果は同じよ?』

「共存が可能となった場合、ダンジョンランクを設定し、冒険者の制限をする」

『分かったわ。

それで良いけど、DPが枯渇したら回復まで何も出来ないわ』

「承知している」


もう一度DPの枯渇に関して、釘を刺しておく。


続いて商業ギルド長代行が口を開く。


「一つ確認と言うか、お願いがあるのですが」

『何かしら?』

「こちらから欲しいアイテム、必要なアイテムを用意して頂く事は可能ですか」

『物にもよるけど可能よ。用意する理由はあるのかしら?』

「このダンジョンの目玉として、そういう物を用意して頂ければと考えています」

『そう言う事ね。ダンジョンコアの代わりとして可能な限り用意するわ』


最良案を出した商業ギルド長代行を、冒険者ギルド長代行は忌々しそうに見る。

ダンジョンに入る目的があれば、無益なDP消費は避けられるだろう。


「これで話し合いが一段落したと思いますが、そちらから何かありますか?」


雰囲気を変えるために、オウグがダンジョンコアに声を掛ける。


『そうね、一つだけ・・、いえ一つ半かしら』

「どのような事でしょうか?」


殆ど意見を発しなかった、ダンジョンコアからの要望に全員耳を傾ける。


『このダンジョンは、ジャニと共にあるわ』

「どういう事ですか?」

『ワタシが誤って外の世界と繋がった時、最初に現れたのは彼よ。

彼はワタシを脅すでも壊す事もしなかった』

「ふむ、契約者・・、いや協力者という事か」


商業ギルド長代行が、顎に手を当て考える仕草をする。


『故にこのダンジョンは、ジャニと共にあるのよ』

「これからは領主の管理であり、冒険者ギルドの保護となる」


冒険者ギルド長代行が、再度確認するように言う。


『人間同士の取り決めなど、どうでも良い事よ。

ただこのダンジョンは、ジャニと一心同体であるという事を理解してくれれば』

「一応は理解しておこう」

『それで良いわ。

後ジャニの事は秘密で、これが残り半分の部分ね』

「その方が良いな」


町長代理が、協力者の存在を隠すべきと判断する。


後はお互いに歓談しながら食事を楽しんで過ごし、翌日町へと帰って行く。






町ではフェブのダンジョンが、新たな共存ダンジョンと認定される。


町では開拓事業にダンジョン設備計画が追加される。




それはジャニの身の振り方を大きく変える事を、拠点に赴いたオウグに告げられる。


魔物たちによって、拠点に誰かが近づくのを知り、生活しているフリをして待つ。


「珍しいですね、オウグさんから来られるなんて」

「いらっしゃって良かった。

素材集めに出られた居たらと心配しました」

「最近ドタバタしてましたからね」

「ダンジョンが見つかってあれだけで済んだのは行幸ですよ」

「今回はどのようなご用件ですか?」


この家が建ってから、一度も着た事の無いオウグが来れば、ただ事ではあるまい。


「あなたの発見したダンジョンは、正式に共存ダンジョンと認定されました」

「そうですか。これで保護されますね」

「はい。後ほど冒険者ギルドから、運営について使者が来ると思います」

「俺にですか?」

「ダンジョンへの道案内ですがね」

「あぁ、なるほど」


そしてオウグは居住まいを直すと、商業ギルドとしての来訪の理由を話す。


「商業ギルドは、冒険者受入れの準備を急ピッチで進めています」

「そうですか」

「あなたの拠点は、ダンジョン攻略の拠点の村となります」

「はぁ!? ちょっと待って・・」


ジャニの驚き口を挟もうとするのを手で制し、オウグは話を続けて行く。


「東、南東、南の村には、宿屋などが建設中です。

此処までの道の整備も開始され、薬師を招き、薬作りを強化します。

多くの人の流入に伴い、物流も解消されていくでしょう」


オウグの話を聞いて行くうちに、何を言わんとしているのか分かってくる。


「・・・俺はお役御免ですか?」

「そうなります」


あっさりとジャニの考えを肯定する。


「・・理由は?」

「建前は先ほど述べたとおりです。

本音は・・協力者のあなたが邪魔なのでしょう」


グッと握った手に力を籠め、歯を食いしばる表情をする。

どうやら冒険者ギルドが、協力者の横やりを危惧し、遠ざけたいのだろう。


「あなたの本意・・では無いのですね」

「所詮雇われの身分ですから」


町のやり方に、納得が言っていないのが見え見えである。


「分かりました。主都に引っ越す事にします」

「・・よろしいのですか?」


すんなりと受け入れたジャニに戸惑いを覚える。


「魔物って、割と足速いですからね」


何時もでも戻れると遠まわしに告げると、そうでしたねと微笑むオウグ。


「此処を商業ギルドに売り払う事になると思いますが、金額とかは?」

「一時金として100アウレウス、毎月1アウレウスが支払われます」


トータル的な金額の多さに驚きながらも、釣り上げてみる。


「引っ越し先の家の購入代金は、そちら持ちで良いのですよね?」

「そうですね。当然でしょう」


一時金がありながらも、家の購入代金をギルドに請求されて呑んでしまう。


「ずいぶんと気前がいいのですね」

「気持ちよく去って頂くための必要経費と考えて頂ければ」


簡単に町の本音をバラすオウグに苦笑いする。

余程腹に据えかねていたのだろう。


「ずいぶんと簡単に本音を言われるんですね」

「あくまでも私の考えですから」


あくまでも個人の考えや意見であると断っておく事で責任回避する。


「引っ越しに当たり、一つだけ条件があります」

「何でしょうか」

「引っ越し先が決まってから、此処を売り払います」

「それはそうですね。希望はありますか」

「少し広めで、そう地下室が欲しいですね」

「商業ギルドの伝手で、最良の物件を探しましょう」


お互い何というか、悪い笑顔を浮かべて頷き合っていた。




『ふーん、薬作りの拠点売り払って、主都に引っ越しちゃうんだ』

「仕方ないだろう、あそこまで話が出来上がってたら」


フェブとメイドの階層にある屋敷の一つでお茶をしながら話をする。


『良かったの?』

「これで拠点に居なくちゃいけない問題が無くなった」

『あぁ、ダンジョンに入りびたりでも、誰の目も気にしなくて良いのね』

「アイテムを売り捌けるとも思っている」


ニッっと悪い笑顔を浮かべる。フェブは何となく言ってしまう。


『・・お主も悪よのぉ』


その言葉と視線をサラッと聞き流す。


お金に困れば主都でアイテムの横流し、内心ウハウハである。


「新居が決まったら、お出かけメイド借りて行くぞ」

『主都の家とダンジョンを繋ぐのね。

拠点の地下の部屋はどうする?』


部屋としては、フェブとメイドの階層に、ジャニの部屋を作ればいいのだから、潰しても問題無いはずである。


「引っ越しが完了したら、そのまま直ぐに移動させてくれ」

『・・薬作り続けるのかしら?』

「そこは・・、追々考えるよ」


殆ど使われずに不要となった錬金術の部屋が、あまりにも不憫である。






引っ越しの準備を進める内に、ふと思いついた事を聞く。


「なぁ、あっちこっちに転移魔法陣準備したら凄くないか?」

『凄いって、何が?』

「人とか物の輸送がさ便利になって稼げるんじゃないかと」

『うーん、どうかしらねぇ』

「どうしてだ?」

『どちらも一度に沢山とか大きい物とかは出来ないしね』

「少人数か少量、もしくは複数回か・・」


転移する条件を考えると、利用範囲が狭められてしまう気がする。


「物であればDPで出せるので十分かと。

人の場合は犯罪の可能性もあります」

『そもそも協力者って言うのが、ほとんど例が無いから厄介事に巻き込まれるわね』

「まぁそれもそうだな」


メイド長の意見をフェブが補足し、納得してしまう。


この瞬間、莫大な利益を生み出す金の卵が黙殺される事となった。





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