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ダンジョンの同居人  作者: まる
仲間と
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ダンジョンの解放

ダンジョンの解放





いつもの様に、各村での御用聞き、町で品物を仕入れ、ギルド会館へと荷を受け取りに行く。


そこで久しぶりにフォールのメンバーと会う。


「よぉ、そっちはどうだい」

「行商は順調なんですけど、薬の方が・・」

「やっぱり売れないか・・」

「ええ、非常用の扱いですね。

折角、中級の薬を作れるようになったのに」

「俺たちも、魔物出てこないから必要ないし」


一番必要とする冒険者が必要としないのだ、売れるはずが無い。


「魔物が出て欲しいとは思わないし、怪我もして欲しいとは思いませんが、魔物ってこんなに出てこないモノなんですかね」

「ん? 巡回してないと直ぐに魔物だらけになるはずなんだが・・」

「それならもう少し魔物を見かけても良いと思うんですがね」

「そういやそうだな・・、ちょっと調べるか」


巡回のお蔭にしては、不自然なほど接敵しない事に何かを感じ調査してみると言ってくれる。


その件の調査は任る事にして、村や町で噂の新人パーティについてやんわりと情報を集める。


「噂で新人パーティが見つかったらしいですが、如何です?」

「・・・逃げた」

「はぁ!? 逃げた?」


不良パーティの一件以降、やっと見つかった冒険者と期待大にしていたはずである。


「専属になると個人やパーティのランクが上がらないって知らなかったみたいでな」

「それは契約違反でしょう」

「うーん、その点説明してなかったみたいで、お咎めなしって事に」

「あらら、ご愁傷様です」


専属は個人や組織に雇われる冒険者の事で、選ばれたという箔が付くのである。

問題は一つの依頼と認識され、ランクが上がらない事である。


「そもそも専属ってのは、引退した冒険者とか高ランカーがなるらしいからな」

「引退した人でもなれるのですか?」

「体力的な衰えでも巡回は可能だし、怪我でも後進の育成は出来るからな」

「なるほど」

「新人パーティの時点で、もう少し注意して説明してくれてればよ・・」


開拓地の冒険者たちの前途は多難のようである。


「まぁ開拓事業ってのも、手探りの部分が多いからな」

「そうみたいですね。

今は生活基盤の整え優先で、あまり開墾も進んでいないようですし」


開拓事業も目標より遅れが出始めている。新たな開拓者が入ってこないらしい。


「何か目玉でもあればいいんだけど」

「特産品とか、果てしない海との物流とかですか」


以前、オウグから聞いた話しを振ってみる。


「そっちは商業ギルドにお任せだな」


まぁ冒険者としては何が売り物となるかなど分かるはずがない。


「冒険者ギルドとしては、どんなのがお望みなんです?」

「そうだな、やっぱりダンジョンが良いか」

「・・・ダンジョンって、そう簡単に見つかるんですか?」


ダンジョンという言葉に、思わず身を固くし、探るように聞いてみる。


「ンな訳あるか。絶対に無理」

「見つければ、ダンジョンのコアを壊して力を得るから少ない?」


あまり深入りしないように注意しながら、ダンジョンについて探っていく。


「それは無いな。

生まれたてのダンジョンなら別だが、ソロでダンジョン攻略は不可能に近い。

ならば長期的に利益を得られるように、保護した方がメリットが大きい」

「ダンジョンを保護するんですか!?」


ダンジョンコアを破壊するどころか、保護されるという話に驚く。


「そうだな、敵対型ダンジョンなら別だが、共存型なら保護される」

「どう違うんですか?」

「簡単に言えば、話し合いに応じるかどうかって所か」

「なるほど・・」


フェブは争いは好まず、話し合いは問題ないだろうと考える。


「ダンジョンは領主管理とはなるが、領主から発見者に結構な報奨金と、毎月使用料みたいのが貰えるのが普通だな」

「へ、へぇー」


ダンジョンは保護され、発見者にはお金が支払われる事実に心が揺れる。


「まぁどうやって運営するとか、情報をどこまで出して、どこまで秘匿するとか細かい事は、ダンジョンコアと関係者で話し合って決める事になるな」

「もし見つけたらどうしたら良いですか」

「うーん、ギルドに報告するしかないだろう」

「そっか・・。よし、素材集めのついでに探してみよう」

「おぉ、よろしく頼むわ」




商業ギルドや冒険者ギルドにも確認したが、ほぼ同じような回答が得られる。


ダンジョンの扱いが全く違うなら、隠れ方に大きな見直しが必要だろう。






大急ぎで仕事を片づけると、ダンジョンに戻り、ダンジョン保護について話し合う。


『はぁ!? ダンジョンは保護されるですって?』

「まぁ条件はあるみたいだけどな」

『じゃあ、今までの苦労は何だったのよ・・』

「俺も話を聞いた時のショックは隠しきれなかった」


フェブ自身の存在に直結する事だけに、ショックが大きいのだろう。


「それでこれからどうすべきか、大急ぎで戻ってきた訳だ」

『どうすべきかって・・、どうするのよ』

「登録しては如何かと存じます」


優秀なメイド長はきっぱりと答えてくれる。


『なんで? 開拓も進んでないし隠れている分には問題ないのよ?』

「一番は人間との共存が可能なのか検証するためです」

「検証・・、本当に共存できるか、搾取する保護ではないかって疑ってるのか」

「その通りです」


人間側にメリットがあるから保護するのであろう。

奴隷の様に扱われるかもしれない。


『上手くいくかしら』

「旧ダンジョンを利用します」

「ふむ、あそこだけがダンジョンの全てにしておくのか」

『転移魔法陣で繋がっているだけだから、最悪切り離せば終わりって事ね』


旧ダンジョンを囮にして、人間たちの対応を見届けるという。


「更に次の転移先の準備を進めます」

『確かにその必要はあるわね』

「今度の移転は長距離を行う事になるけど」

「お任せ下さい」


メイド長の次のダンジョン移転の助言に頷き、お出かけメイドもきっぱりと言い切る。


「そうと決まれば直ぐに動こう」

『了解・・て、まず何すればいいの?』

「まず、お出かけメイドは旅の準備をして。

その間に、護衛用に魔物を【召喚】しておくから」

「畏まりました」

『旧ダンジョンの入り口はどうする?』

「前と同じ大きさ配置で部屋や階段を作って。ただの石造りで良いから」

『了解』

「旧ダンジョンは完全にフェブ様の配下にした方がよろしいかと」

「そうだな。

俺の魔物は全部【送還】するから、どんどん入れ替えてくれ」

『ヒィー、大変じゃないのぉ』

「お手伝い致します」


ダンジョンの解放に向けて、急ピッチに準備が進められていく。




「ギルドに登録は一か月後、お出かけメイドが新しい移転先を見つけてからを目標に」

『それが良いわね』

「畏まりました」

「俺はその間、ダンジョンの価値についてもう少し調べてみる」


閉じられたダンジョンから、開かれたダンジョンへ、大きく変化しようとしていた。


養って貰って楽し過ごす、念願のヒモ生活への大きな分岐点に差し掛かっていると感じる。






二か月後、行商で町へ寄った際、ダンジョンの発見を伝える事にする。


一か月延びたのは、お出かけメイドの移転先到着と、行商のタイミングが合わなかったためである。

慌てても仕方がないと、新旧のダンジョンの整備や、移転先の構想を練って過ごした。




窓口に居るオウグに、極秘で話がしたいと部屋を借りる。


「で、わざわざ部屋でする極秘の話とは?」

「ダンジョンを見つけました」

「!?」


前置き無しで、本題に切り込む。

予想外の事に珍しく、オウグが驚きの表情を浮かべる。


「本当ですか?」

「ダンジョンコアと話をしました。人間との共存を望んでいます」

「分かりました。早速調査いたしましょう」


事の大きさから立ち直ると、直ぐに行動を開始する。


「関係者の選出と召集を行います。

登録まで最重要機密扱いとなります。

各領、各ギルドに通達され、登録が完了するまで、四ノ領内のダンジョン発見は順番待ちとなります」

「どうしてですか?」

「最初の発見者の名乗りと、取り合いを防ぐためです」


ダンジョンは莫大な利益を生み出す可能性を秘めて要るためとの事という。


「しばらく町に留まって頂きますがよろしいですか?」

「うっ・・、それはちょっと。村への納品がありますので」

「そうですか・・。

関係者の選出に時間も掛かりますから、最後の村の納品が終わったらこちらに戻って来て下さい。必ず絶対に、いいですね?」

「わ、分かりました」


普段物静かなオウグから出ている、妙な威圧感に押される形で了承する。




最初の村の配達を終え、森の中を突っ切って隣の村へ入る時、フォールのメンバーとバッタリ会った。


「おまえは、どっから出てくんだよ」

「驚いたのはこっちですよ」

「こっちは村で、お前を待っているはずだったんだけどな」

「待っている? 俺を追い掛けて来たみたいですね」

「みたい、じゃなくて実際に追い掛けて来た」


追い掛けられるという、穏やかならざる状況に思わず聞いてしまう。


「はぁ!? 何でです?」

「知らん。ギルド命令でな」

「はぁ!? 何でです?」

「知らん。心当たりないのか?」


どうやら事情の説明を受けていない様で、同じようなやり取りが繰り返される。


「ありま・・せんと言えるような言えないような気がしないでもないかな・・」

「それはあるという事で良いんだな?」


心当たりの所で、釘を刺されている事を何と言うべきか迷う。


「えーっと・・、うーん・・! そうだ、最重要機密ってやつです」

「はぁ? 最重要・・機密だ? 何偉そうに・・」

「「「!」」」


何を言ってるか分からないというジューラに、気付いた他の三人が耳打ちする。


「ん? ダンジョン発見!?」


目を手で覆い天を仰ぐジャニ。

三人に袋叩きにされるジューラ。




「なるほど、機密のために護衛ね」

「機密機密っていうのもどうかと・・」


ジャニが口を濁し、ジューラは他のメンバーにまた殴られている。


村に入ると、納品の手伝いをしてくれながら、話の続きを聞いてくる


「しかし例の物を良く見つけられたな」

「例の物って・・、それ位ならまぁいいか。

先日例の物の話を聞いて、前々からグレートバーナードたちがおかしな動作をする場所があったので、好きにさせてみたんですよ」


怪しい言い方ではあるが、この位ならと諦めて話をする。


「ほうほう」

「そしたら穴掘り始めて、まさかとは思ったのですが、ダンジョンを掘り当てたと言う訳で」

「おまえんとこの魔物って本当に優秀だな」

「そうですね」


この辺りは、はなっから機密なので、ある程度の嘘を交えても問題ない。


「どっちにしろ俺の話しのお蔭かだな」

「まぁそうとも言えますね。何かの機会に要望があればコアにお願いしてみますよ」


ジューラに変な恩を売られはしたが、助かったのは事実なので借りは返すと伝える。




村を回り終わると、町へ帰る予定だったのだが、連行される形で町へ向かう。

必ず連れてくるようにって言われているとの事だった。


ギルド会館へ直行すると、関係者の招集され、話し合いの場が持たれる。


選出されたのは、町長代理、商業ギルド長代行、冒険ギルド長代行、そしていつものオウグの四名である。


最初に町長代行から話が始まっていく。


「ダンジョンが正式に認定されるまでに、事前承認を行っておく。

管理は領主となるが、特に口出しされる事は無く、発展に尽力してくれればよい」


関係者は各々頷いている。続けてジャニへの報奨金の話となる。


「発見者のジャニ君には、褒賞として主都民権が与えられる。

また一時金として主都に住む家や家財の購入費として200アウレウス、また毎月2アウレウスが生活費として支払われる。」

「!?」


報奨金のあまりの莫大さに凍りつく。下手をすれば下級貴族にではないだろうか。

固まったままのジャニを置いて話が進んでいく。


「商業ギルドとしても特段無い。

ダンジョンによる経済効果や、発生し得る商業に関する全般を取り仕切らせてもらう」


ダンジョンがあるだけで、人や物が集まるから、商業ギルドはウハウハだろう。


「冒険者ギルドは、ダンジョンの保護と運営を行う」


ジャニとフェブにとっては、冒険者ギルドの役割が一番大きい。


最後にオウグからである。


「私は今まで通りあなたとの窓口となります。何かありますか?」


一気に話が進んでしまったが、質疑応答の時間をくれる様だ。


「特にありませんが、一つだけ。

ダンジョンコアの意にそぐわない事をするなら、ダンジョンを放棄するとの事です」


フェブやメイドたちから話の有った、ダンジョンの奴隷化は阻止するよう。


「その辺りはこれから行われるダンジョンコアとの話し合い次第か」


冒険者ギルド長代行が、管理運営者として口を開く。

事前にどのようなことを望んでいるのか聞いておく。


「例えばどのような事が考えられますか?」

「共存とはいえ、ただで保護されるとは考えて貰っては困る。

益となる部分があるから保護するのだ」

「それは分かります」

「こちらは冒険者を送りアイテムを得る。その代りコアへの侵入や破壊は阻止する」


ごく一般的なダンジョンと、同等の事は行わせて貰いたいと言う所だろう。


「ではコアの破壊を盾に、アイテムを強要するような事は?」


ダンジョンの運営方法を、言葉を替えて聞いてみる。


「確かに結果は同じように思えるが、全くの別物だと考えている。

我らは冒険者であって、強盗では無い。その辺は難しい所ではあるな」


冒険者ギルド長代行の言葉を肯定するかの様に、商業ギルド長代行が繋ぐ。


「開拓者も周りから見れば強奪者だ。

身贔屓になるかもしれんが、話し合いが出来るかどうかが違いとだろう。

信じて貰えるかどうかだな」

「分かりました」


自分や身内から奪われるのは許せないが、他者から嬉々として奪う自分を思い浮かべる。


生きていくためには、誰かから奪う必要がある事を噛みしめる。





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