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ダンジョンの同居人  作者: まる
魔物と
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別れと出会い

別れと出会い





何故と壊せの応酬がしばらく続いた後、一人と一つは黙り込んでしまう。

一人は何故壊せと言うのか目的が分からない。

一つは壊せ以外言わず目的を語ろうとしない。


「なぁ、何で壊さなきゃいけないんだ?」

『壊せばいい。それだけだ』

「壊すと言えば、理由を話してくれるのか」

『必ず壊すと約束するなら』


まず壊すという意思表示が必要らしい。

それならば嘘でも壊すと言えばいいかと考える。


「分かったよ、壊してやる」

『・・そうか』


胸元の皮袋から魂の結晶を取り出す。


「どうしたらいいんだ?」

『石を叩き付けるでも、魔物に噛み砕かせるでも良い。

ただその後にやって欲しい事がある』

「後に? やって欲しい事?」


前であれば何かすべき事があるのは分かる。しかし後と言うのはどういう事か。


『私を【召喚】するのだ』

「なっ!?」

『魂の結晶の破壊は、魂の解放となる。

私を【召喚】する事で知識を【共有】出来る』

「【召喚】ってどういう事だよ」

『魂を捕まえる事は容易では無い。

ならば此処に留まれば良い』

「っ! 地に縛られし霊か」


その場所に強い思いを残して死んだ者の魂は、その場に縛られ続け悪霊となる事がある。

知識は残るだろう。だがディズの意識は消えてしまう可能性がある。


「なら【降霊】でも、【憑依】でも・・」

『どちらも縛られし霊には難しい』

「どういう事だ?」

『何かに縛られていては降りる事も、憑く事も出来ない。

出来なくも無いが、それ相応の知識と技術が必要になる』

「なら【召喚】だって無理だろう!」

「此処から動かないという条件と、対価が揃えば可能だ」

「くっ!」


自分のために死霊となる。旅の仲間を死霊にする。

これが自分のために出来る最善と考えるディズの思惑だった。


そんな事受け入れられるはずが無い。

ふと魔物たちの【強化】や【合成】の話が頭をよぎる。


「出来るかそんな事!」

『(やはり無理か・・)』


この少年は優しい。

この方法を受け入れられ無いと分かっていた。

だから用意していた切り札を使う事にする。


『ではやり易い様にしてやろう』

「あぁっ!?」


これ以上何を言い出すのか、怒りに返事が荒くなる。


『キミが魔物使いになれなかった本当の理由を教えよう』

「・・えっ!?」


何を今更と言葉を発する前に、話をどんどん進めて行く。


『私が傍に居たからだ、私の力がキミに影響を及ぼした』

「お前何言って・・」

『キミから仲間と里と魔物使いを奪ったのは・・、私だ』

「っ!」


魂の結晶を見つめる目が冷たくなる。

黙って魂の結晶を持った手が振り上げられる。


『(そうだ、それでいい)』


ディズはジャニを優しいと言った。

ジャニもディズの優しさを知っていた。

自分を見捨てる事が出来た。

黙っていれば良い事を話した。

自分のために犠牲になろうとした。

ディズが肉体を持っていれば、一発殴っていただろう。


「われは願う。魂の結晶を望む時に破壊したまえ・・」

『(むっ!? これは・・【請願】? 破壊を願うのか・・、可能か?)』


幾ら自分のすべての知識を叩きこんだとはいえ、いきなり神や天使、魔族への【請願】が成功するとは思えない。


更に別の詠唱を行う。


「我呼び声に応えよ、寄る辺なき魂よ・・

『(何!? 【憑依】? 

何故、一体何処に【憑依】を?)』


何をしようとしているのか、意図が読めず困惑する。

そこに詠唱が完了する。


魂の結晶を自分の胸に持って行き強く押し付ける。

【請願】が聞き届けられ砕ける。


「宿れ魂。わが肉体に! 【憑依】!」

『自分に憑依だと! 馬鹿者! 一つの肉体に二つの魂は宿れ・・』


ディズよりジャニの方が馬鹿は上だったようだ。


ディズの意識が消え、ジャニも気を失い倒れる。


辺りは静寂に包まれる。




『(クックッ・・ワッハッハッ、何という事だ。

大馬鹿者のする事は、時として常識をひっくり返すものだ)』


ジャニの体は目を開けていない。倒れたままの状態だ。


『(こんな事になるとは・・。誰も想像出来なかっただろう)』


ジャニが目を開ける。「っ!」と頭を振り体を起こす。


「ディズ!? ディズ! おい何処だ、返事をしろ!」

『(声が届かない? ならば後は気付いてくれれば)』


自分の体をあちこち撫でたり叩いたり、目の届く所は何度も目をやる。


「くっそ! 何処だ・・。

待てよ、ちゃんと何処かに【憑依】されているなら」


【憑依】は、霊に特化した【召喚】である。

もし何処かにディズが居るなら、ディズの意識があるなら。


「【共有】ディズ!」

『(良くやった! 無論承認だ!)』


突如あふれる知識が頭の中に流れ込む。

消える事無くしっかりと焼きついて行く。


「ディズ! 居るんだな!」


大量に押し寄せる情報に、眩暈と痛む頭を押さえながら自分の胸を見る。

もし【憑依】に失敗して悪霊と化しているなら、【共有】はされない。


『(もちろん)』




ジャニのために自分が悪霊になっても、その場所に留まろうという思い。

ディズのために自分の体を居場所にしようとするジャニの思い。

ジャニもディズも共にお互いのためにという強い気持ち。

拙い【請願】の技術であっても、誰かに届けさせるだけの思い。


一つの奇跡が此処に起こった。


ディズがジャニの守護霊となった瞬間だった。




その後も、ジャニは何とかしてディズとコンタクトを取ろうとするが反応が得られない。


【共有】出来た以上、確かに意識は存在はする。

自分の肉体を【憑依】の対象にしたが、確実に憑依が出来ているかが分からない。


不安を打ち消す様に、拳でノックする様に胸を叩き、少し上を向き目を閉じる。

確かに居るであろうディズに「行くか」と声を掛け歩き出す。

聞こえないと分かっていても『(あぁ行こう)』とジャニへ返事をするディズ。





― 自分の傍にいるであろうディズに意識を向けながら旅をする。


一人の旅を始めて三か月が過ぎるた頃、新たな出会いが生まれる。 -






ジャニは街道を外れて、薄暗い深い森の中をすり抜ける様に進む。


木々の間から時折見える空には一匹の鳥が優雅に飛んでいる。

朝からずっと飛び続けている事、常にジャニの周囲を旋回している事を除けば、

特におかしなことは無い。


ジャニの前方からはズッズッズっと何かが這うような音がする。

更に左右後方からカサッカサッと落ち葉を踏みしめる様な音が着いてくる。


ジャニは特段気にした様子も無く道なき道をゆく。

ふと上を向き尋ねる。


「町は見えるかい?」

(グゥ)


頭の中に声が聞こえる。

少し落ち込んだ感覚と、否定的な鳴き声だ。


「今日も野宿決定、寝床を探すか・・」


軽く溜息を吐くと、左右を見て声を掛ける。


「キミたちはそのまま警戒お願いできる?」

(グルル)


警戒をお願いし、好意的な感覚を受け取る。


周囲を見渡しながらしばらく進むと、少し急な坂になった丘の麓の部分に、小さな洞穴を見つける。

何やら動物の巣の様である。


「悪いけど、此処見てくれる?」


すると前方を這っていた音が戻ってくる。


目の前に優に20キュビット(960cm)はありそうな蛇が現れ、そのまま洞穴の方へ向く。


(ッツ)

「そっか、一応中見てくれるかな?」


否定的な感覚を受けた後、追加でお願いすると応えるかの様に、そのまま中に入っていく。


(ッツ)

「ありがとう戻ってきていいよ」


入って直ぐに反応があり、出てくるように言うとそのまま出てくる。


「じゃあ悪いけど、キミも警戒お願いするね」

(シャッ)


蛇にも警戒をお願いすると、今度は上を向き声を掛ける。


「戻って来てくれる?」


直ぐに周囲を旋回していた翼長6キュビット(288cm)程の鳥が戻ってくる。


「そろそろ暗くなるからね。【送還かえ】っていいよ」


そう声を掛けると鳥は一鳴きして煙の様にフッと消えてしまう。

今度は右の掌を上に向け詠唱する。掌を中心に直径1キュビット(48cm)の魔法陣が生まれる。


「‐の洞窟。スモールバット一群れ。魔力代謝変換を付与・・【召喚】」


最上位の【召喚】で、周囲から魔力を摂取し、食事の代わりにする能力を付与する。


魔法陣から翼長2パルム(16cm)位の蝙蝠が50匹程が次々と現れ、周囲の木々に止まる。


「悪いけど夜の間警戒をお願いできる?」

(キキ)


了解の様な感覚と鳴き声を受けると周囲へ飛び去って行く。


「さてと」


一言つぶやくと、同じように魔法陣を生み出し、ウィル・オ・ウィスプを呼び、それを灯りに洞穴に入っていく。

洞穴は屈んで入る程の大きさで、10歩も進めば行き止まりである。


「(一晩には丁度いいな)」


一人頷くと、ウィル・オ・ウィスプをそのまま残し外へ出て夕食の準備をする。


土の精霊に竃を作って貰う。

背負い袋から鍋を出し竃の上に乗せると、水の精霊に鍋に水を入れて貰う。

火の精霊にお湯を沸かして貰う。

お湯が沸くと、干し肉とスープの素、乾パンを入れ粥のようなを作る。


「そろそろ普通の食事がしたい・・」


食事が終わると、水の精霊に頼んで鍋を洗い、余熱のある竃に置いて乾かす。

ざっと片付けが終わり、洞穴の奥に座り、デザートに干し果物でも食べようかとした時・・



‐ドクッ!‐



「なっ!?」


ウィル・オ・ウィスプもブワッと一瞬大きく明るくなる。

まるで大地の鼓動し、全身で受け止めた様な感じであった。


おかしい、絶対におかしい。

急いで外へ飛び出す。


召喚した魔物との接続は切れていない。

つまり生きている。

また魔物たちから何の連絡もない。

さっきの鼓動の様なものを感じていないという事だ。


「(どういう事だ?)」


外へ出ると竃も洞穴に入ったままの状態で残っている。


「みんなおかしな所無いかい?」

(グゥ)

(ッツ)

(キィ)


直ぐに否定的な感覚と鳴き声が返って来る。

やはり何も感じなかった様だ。

洞穴を背に両手で短剣を持ち、周囲に目を配り警戒すると同時に魔物を呼ぶ。


「周囲を警戒しながら戻って来てくれるかい」

(ガゥ)

(シャッ)

(キキ)


念のため魔物たちに感じ出来ない存在を危惧しての事である。

しばらくして全ての魔物が戻るが、何も感じていない様で警戒を解く。


「ありがとう。じゃ持ち場に戻ってくれる」

(ガゥ)

(シャッ)

(キキ)


短剣を鞘に戻しながら魔物たちに命令する。


「(さっきのあれは何だったんだろう。

どうやら洞穴付近だけの様だったけど・・)」


いろいろ考えながら洞穴に入り、先ほど落としていた干し果実を拾い上げる。


「なっ!?」


ふと見上げた先にある物に驚く。


「どうして・・」


余りの事に頭が混乱する。「いや・・待て・・なんで・・?」と頭を抱える。


確かにさっきまで行き止まりだったはずの場所に、明らかに人工的に作られた、人ひとり優に立てるだけのスペースが出来ているのだ。

しかも更にその先は下り階段が繋がっている。


「いったいこれは・・?」


ハッとして一旦洞穴から出る事にする。

先程の鼓動の様なものはこの洞穴からだったため、自分と傍に居た魔物しか感知出来なかったと考えに至る。

ではこれは何なのか? 全く分からないが危険と判断する。


詠唱し始める。目の前に5キュビット(240cm)程の魔法陣が描かれる。

更に詠唱を追加すると、魔法陣が3倍ほどの大きさになる。


「‐の迷宮。メタルタイガー。魔力代謝変換を付与・・【召喚】」


全長が6キュビット(288cm)程ある金属ぽい虎が現れる。

続いてもう一体召喚する。

ほぼ同じ大きさの白い光を纏うシェルレオを召喚する。

メタルタイガーは姿通りに物理防御に優れ、シェルレオは常に対魔法障壁を身に纏った魔物である。

これから先の不測の事態に備えさせるために、ランクの高い魔物を【召喚】する。


魔物を先頭に洞穴に入る。二体にはキツキツだが何とか奥まで進む。


「悪いけど先に進んでくれる」

((ウム))


メタルタイガーとシェルレオを先に階段を下りさせる。

戦闘状態になる事は無い様だ。


「何かある?」

((ヘヤ、イシ))


このクラスの魔物は、ほどほどの知性があり、割と意思疎通が出来る。

直ぐに応答があるも、強い警戒感は伝わってこない。


「部屋と石がある・・。

行って見るしかないか」


短剣を抜き一本を口に咥え、もう一本を左手に逆手で持つ。

右手には背負い袋から取り出した炸裂玉を持つ。


炸裂玉とは大音響と閃光により、相手から逃げるための魔物使い必須のアイテムである。


ゆっくりと階段を下りて行く。






ワタシはダンジョンコア。名前はまだ無い。


目が覚めた? 気が付いた? 時にはワタシは此処に存在した。

ワタシが何者で、何をすべきなのかを知っていた。


ワタシはダンジョンコアで、ダンジョンを大きくする事。それが使命。




邪魔する者たちの存在を知る。


ダンジョンを大きくするためにはDPと呼ばれる物が必要である。

DPを一番もたらすのが邪魔する者たちを倒す事。

邪魔者する者たちを倒すのにDPを使えばいい事。


矛盾がある事に気が付かなかった。それが当たり前と思っていたから。




最初に見えたのは、四角い部屋だった。

大きさは横幅、高さ、奥行き共に10キュビット(480cm)程で、壁や天井、床が光りを放ち部屋全体を照らしている。


ワタシ自身を見ることが出来ないが、台座の様な物に安置されているみたい。




ダンジョンを大きくするという目的のため、一つの壁の真ん中に階段を作ってみた。


その瞬間ワタシは寒気を感じた。

比喩では無く、本当に風が入ってきたのだ。


ダンジョンを大きくしただけでは空気は動かない。

あるとすれば・・、外の世界と通じたという事。


ワタシは非常に焦った。

何の準備もしていない。

どういう場所に繋がったのかも分からない。


一つだけ理解した。

邪魔者たちが直ぐに来て、ワタシは破壊されるという事に。


裏付ける様に、猫の魔物が二体侵入して来る。


『あー、いい子いい子』


何となく可愛らしくて、傍に来て欲しくて呼んでみた。


二体の魔物は周囲をキョロキョロと見回すと階段の方を向く。

直ぐに三体目として人間と呼ばれる魔物が侵入して来る。

人間は先の二体と同じ様にキョロキョロすると一歩ワタシに近づいて来た。


『あらあら、いらっしゃい』


人間と呼ばれる魔物は、一瞬驚いた後、ニヤリと恐ろしい笑みを浮かべる。

さっきの猫ちゃんとは違い、人間は一歩近づいて来た。


『いい子ね。怖くないから、傍にいらっしゃい』


壊されると分かっていても、人間と言う魔物に声を掛ける。

すると驚いた事に、その人間は、ワタシに尋ねてくる。


「この声は君かい?」


ワタシの言っている事が聞こえると思わず、黙り込んでしまった。

急に声が聞こえなくなって、何を思ったのか一歩近づいて来る。


『初めまして。人間さん? かしらね』


すると猫ちゃんが二体、階段を昇ると撃退された事になり、人間は階段の所まで下がる。


『あらぁ? どうして下がっちゃうの?』


一体何が起きたのか、何をしようとするのか分からず混乱する。


「いきなり魔物をけしかけたから、驚かせたかと思って」

『ありがとう。でも大丈夫よ』


どうやらいきなり攻撃したり、壊す事はしないと言いたいみたい。

ワタシも、まだまだおしゃべりを楽しみたいから嬉しい。


「この声は君かい?」

『どの声の事かわからないけど。そうね、多分ワタシよ』


ワタシとの会話が間違いないか確認してくる。


「俺の名前はジャニ。

さっきも言ったけど、キミと争うつもりは無いんだ。

出来れば君の名前を教えて欲しい」


人間はニヤリと笑うと、頷いて自己紹介を勝手に始めてくる。


『争うって・・、まぁいいわ。名前は無いのよ』


ワタシは少し迷い、正直に話す事にした。


「じゃあ、君は何者なんだい?」


人間は眉をひそめ、何か考える素振りをすると聞いてくる。

ワタシは少しだけ考え、素性がバレれば壊されるけど、正直に答えようと思った。


『ダンジョンコア・・らしいわ』

「えっ!?」


人間が今まで一番驚いた顔をする。




これがワタシ(ダンジョン)を守ってくれるはず?となる人間との出会いだった。





お読みいただきありがとうございます。

ここまでが最初書きだした主人公のバックボーンで、一話へと繋がります。

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