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ダンジョンの同居人  作者: まる
魔物と
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召喚士とは

召喚士とは





ジャニはディズの人間だった頃の話を聞くと、今度は自分の生い立ちを話し始める。


ディズは旅の役に立つと世界の話を少ししてから、召喚士について教え始める。


『では召喚士について教えよう』

「お願いします、先生」

『先生!?』


突然のジャニの変化に、眉をひそめるイメージが伝わってくる。


「一応物を教わる訳だし、先生という事になるだろう?」

『その物言いはどうかと思うが、いいだろう』


物を教わる立場としては、一応精一杯の礼の気持ちを込めたのだが。


『キミの長老が言っていたが、魔物使いと召喚士は似て非なる者。これは正しい。

魔物使いは魔物を目の前で捕獲し仲間とする。

召喚士は遠くから呼び寄せて駒とする。言葉は悪いがこれも正しい。』


魔物使いの夢を持っていた少年に、不快感を与えない様に話す。


『魔物を使役する。この点については似ている。

しかし仲間とするか駒とするか、これは魔物使いと召喚士が全く別物だからだ』

「別物!?」


似ている似ていないでは無く、別物という言葉に驚く。


『魔物使いに【捕獲】された魔物は命尽きるまで従う。

召喚士に【召喚】された魔物は、原則命令が終わると元の場所へ帰ってしまう』

「へー」

『魔物が死んだら普通の魔物と同じだが、術者が死んだ場合はその場で解放される。

これは魔物使いと召喚士どちらも同じ事だ』

「そうなのか」


両方同じという事に感心する。術者を先に倒しても意味が無く、その結果魔物がどういう行動をするか分からないのは、相手としては厄介な話である。


『魔物使いと召喚士を分けるモノ。それは魔法の系統だ』

「魔法の系統?」

『魔法というのは、分けようとすればいくらでも細かく分ける事が出来るし、複雑に絡み合う。同じ効果でも呼び名はまちまちな事があるのがいい例だ』

「そうなのか?」


魔物使いの魔法しか知らないジャニにとっては未知の領域である。


『ファイヤボールという魔法を知っておるか?』

「馬鹿にすんな! 超有名な術じゃねか!」

『重畳』

「やっぱり馬鹿にしてただろう・・」


魂の結晶をジロリと睨むが、涼しい顔を視線を逸らせているのが目に浮かぶ。


『ファイヤボールは系統としては火系魔法に分類される。


地域によって、フレアショット、ボム、火炎弾、火遁の術といった呼び方がある。

逆に同じファイヤボールという呼び方でも、効果の違う場合がある。


火系魔法は、元素魔法、精霊魔法、暗黒魔法、神聖魔法といった魔法の中にも存在し、名前や効果、威力が違ったり、別の効果が付与されるといった場合がある。


発動に有っては、呪文詠唱、巻物、魔法陣など発動媒体の違いもある』

「ちょっ・・」


ファイアボールから始まった魔法談義に頭が真っ白になる。




『魔物使いの魔法についてだが』

「やっとなのか・・」


お構い無しに心行くまで魔法知識をひけらかされ、満足する頃には燃え尽きて居た。


『君の話から推察するに、精神魔法の魅了もしくは支配では無いかと考えられる』

「ぇ!? 魅了?」


思いもかけない話に、疲れ切った思考が甦ってくる。


『人には喜怒哀楽の他に、混乱、躁鬱、狂気、恐怖など様々な感情がある。


魅了はその中の相手を好きになるという感情を最大限引き出す魔法で、支配は忠誠心や服従心を植え付ける魔法だ。


魔物使いの魔法は、魔物特化型精神系魔法と思われる』

「・・・ふーん」


確かに言われればと思い当たる節がある。

しかしそれでは説明のつかない事がある。


「じゃあ【強化】と【合成】はどうなんだ?」

『【強化】と【合成】か・・、これも推測にすぎないが』


【強化】と【合成】は魅了や精神支配でどうにかなるモノとは思えない。

しかし何らかの回答を持っているようである。


『【蠱毒の術】を応用した魔法では無いかと思われる』

「・・【蠱毒の術】?」

『うむ。【蠱毒の術】とは、密閉された空間に百を超えるの毒虫を飼育し、共食いさせる事で、生き残った一匹に途方もない毒や能力を宿らせるという古代にあった儀式の事だ』

「それと何が関係・・する?」


なんとなく理解している自分と、受け入れられない自分がそこにいた。


『【強化】とは仲間同士を共食いさせる強制レベリング、【合成】は特定のレベルに達した者同士の共食いによる強制クラスアップと考えられる』

「嘘だ! ならあのロバモドキは」


純粋に仲間を強くしたいと思っていたのに無理やりの共食い。

推測に過ぎないと言った。クラスアップならロバモドキは出来ないだろう。


『そうだな、違うな。すまない。

実際にロバモドキを見た訳では無いので情報が不足していたようだ。

では今度は召喚士について話をしよう』

「あぁ・・、そうだな」


嘘だという言葉を受け入れ、魔物使いの話から離れる。


ジャニの言うロバモドキの姿から、普通に存在する魔物の可能性は黙っておく。




『【召喚】に類する魔法は何種類かある。


何処かに居る何かを呼び寄せ使役するのが【喚起】。

何処に何があり、どういった方法で命令を聞かせるのかを事前に知っておく必要がある。


信仰や捧げ物によって天使や悪魔の来臨を願い求める【請願】。

高い信仰心による祈りや生贄が必要になる。

これは神官や呪術師と呼ばれる職業が専門としている。


死者の霊を呼び寄せる【降霊】、呼び寄せた霊体を何かに宿らせる【憑依】。

霊と交信できる場所や方法を事前に知っておく必要がある。

これは死霊術師といった職業が専門だ。


何処かに居る何かを呼び寄せるのが【召喚】。

どういった場所にどの様な物があるか事前に知っておく必要がある』

「【喚起】と【召喚】違いがよく分からん」

『【喚起】は命令待ちの状態、【召喚】は自分に従うかどうか確認中の状態だ』

「ふむふむ」


初めて聞く【召喚】の話しに興味が尽きない。


「じゃ【喚起】と【召喚】が召喚魔法で、これらを使える物が召喚士なのか?」

『そういう理解で良い。


召喚魔法を別の言葉にすれば、対価契約型引き寄せ魔法という事になるか。

送り返す【送還】が出来るのは、魔物のいた場所との何らかの繋がりが残っているためだ。


専門ではないが【請願】、【降霊・憑依】が可能な理由でもある』

「へぇー」

『万能な様に思っているかもしれないが、そう簡単なの物では無い』

「違うのか?」


召喚士の技の深さに感心するが、釘を刺される。


『知識として蓄えておくと言うのはかなり難しい。

そして何より知識の元となる情報の、正確さと詳細さが求められる。

専門職があるのもこのためだ』

「と言うと?」

『自宅のテーブルの上にある花瓶と指定するのと、何処かの何かと言う指定で同じものが【召喚】出来ると思うか?』

「そりゃ無理に決まってる」


ふと悪い事を思い付く。


「はっきり見たものなら、いくらでも盗り放題じゃん」

『さっきのはあくまでも例だ。

さっきも言ったように【召喚】は、こちらの呼びかけに相手が応えて成立する』

「ちぇっ、残念だ」


世の中そう甘くも出来ていない。ふと違和感を感じで聞いてみる。


「待てよ、相手にどうやって応じて貰うんだ?」

『ほう。これから話そうとする事に先に気付くとはな』

「・・・」


先んじて気が付いた事を褒める。あまり褒められた気がしなかったが。


『何故、召喚士が魔物を召喚出来るのか? 

言葉を替えれば魔物が召喚士の呼びかけに応じるのは何故か? 

それは召喚に見合う対価があるからだ』

「対価?」

『対価とは分かりやすく言えば、魔物が自分の呼びかけに応じるなら、魔物が欲しいモノを差し出す、という事だ』

「餌で釣るという事だな」

『・・そうとも言える』


身も蓋もない言い方に、やや憮然とした感じで返す。


『例えば【請願】には、神霊や天使への信仰心と祈りが必要とされる。

悪魔は生贄や、最悪自分の魂が必要とされる。


これは何らかの対価を渡す行為とも取れるし、行為自体が対価とも言える。

対価と言うのであれば、釣り合っていれば代わりの物で済むかもしれない。


信仰心と祈り、もしくは生贄の代わりは何になるのか、もしくは対価そのものは何に代えられるのかが分かれば【請願】に応じるだろう。


但し効率が非常に悪く、相応の知識も必要になってくる』

「なるほど・・、じゃあ【喚起】の場合は?」


何となく理解する。では対価が限定される場合はどうなるか疑問に思う。


『【喚起】は逆なのだ。本来は圧倒的な力の差を示す事で【召喚】し、命令に従わせる。

【召喚】が難しい場合が多いため、鍵となる手順や準備を事前に用意しておくのだ』

「ふーん・・」


既に誰にでも可能な状態だから、鍵を準備するというのが対価という事なのだろう。


『存在を魔力に依存するモノは容易だ。魔力を渡してやれば従う。

但し同じ魔力を好むモノでも死霊は別だ。死者との間を繋ぐための方法が必要となる』

「知識と魔力があれば大抵は何とかなるって事だな」


今までの話を一言で纏めてみると、理解が正しいとお墨付きを貰う。


『その理解で良い。対象となるモノの必要を魔力で代用できる方法を探す、これが本来の召喚士としての在り方だ。』




召喚士についての大括りの後は踏み込んだ話をする。


『冒険者にランクがある事を知っているか?』

「もちろん知ってるぞ」


冒険者には基本SランクからFといったランク分けが存在する。


『では魔物も危険度に応じたランクがあるのは?』

「知ってる。冒険者と魔物のランクが大体等しいんだろ」


冒険者と魔物のランクは等しいとされるが、安全を考えるならパーティが推奨される。


『召喚士にもランクやグレードといった物がある』

「へぇー」

『ランクは、下級、上級、最上級と別れており、どのランクの魔物を【召喚】出来るかとなる。

目安として下級がEやFランク、上級がDからBランク、最上級がAランク以上となる。


グレードは、下位、上位、最上位と別れている。

下位は一種一匹もしくは一群を、上位は複数種複数匹もしくは複数群を【召喚】出来る。

最上位は召喚の際に何らかの能力付与が出来る』

「能力付与?」

『攻撃力強化や防御力強化、異常耐性、属性耐性などを与える事が出来る』

「すげーな」


最上位故に少ないのだろうが突拍子も無い事に、驚きを通り越して感心してしまう。


『最上級や最上位に成るためには何が必要だと思う?』

「必要な物ねぇ・・、分からん」


肩を竦めると、正直に分からない事を伝える。


『正直は美徳ではあるが少しは考えたまえ。

答えは既に教えてある』

「えっ!? そうなのか」


今までの話の中で答えがあると言われて動揺する。


『『知識として蓄えておくと言うのはかなり難しい。

そして何より正確さと詳細さが求められる。』が正解だ』

「聞いた聞いた! ・・様な気がする」

『まぁ良い』


慌てて誤魔化そうとするが、後半の方は声が小さくなる。

仕方がないやつと言った感じが伝わってくる。


『先にも話したが【召喚】には、魔力はもとより正確な知識が求められる。

しかし一個人が得られる情報というものは限りがある。

世界中を旅して色々な魔物を見て回るには一生は非常に短い』

「そりゃそうだ」

『召喚士は仲間と情報を共有し合う事にした。

口伝や書物といった物だが、それにしても限界はある』

「でも貰えるならそれに越した事は無いだろう」


一人の人間に出来る事は微々たる物である。

限界があるとはいえ、それでも十分だろう。


『更に正確に早く共有出来るように魔法を研究し、開発した』

「魔法の開発?」

『そう。最初に自分の得た情報を自動的かつ正確に記憶し思い起こせるようにした。

これを【書庫】という。自動故に一度起動すれば、後は勝手にやってくれる。


次に仲間同士を魔力のネットワークで繋いでその情報をやり取り出来るようにした。

これが召喚士の奥義であり【共有】と言う』

「なっ!? 一体どうやって?」

『グレードの高い召喚士は、【召喚】した魔物と意識だけで無く、更に深い部分まで繋がる事が出来る。

その技術を応用し特定の仲間と深い繋がりを持たせる事に成功したのだ』

「特定ってのは?」

『【召喚】の原則は呼びかけに応じるという事だ。

魔力のネットワークに参加する事も同様に意思表示が必要となる。

【召喚】した魔物からも既に呼びかけに応じたとして情報を得る事が出来る。』

「なるほど」


情報が重要であるのは分かるが、好き勝手に情報を得られるのは大きな問題である。

しかし本人の意思が必須という事ならプライバシーは保護される。


『ここで大きな問題が存在する・・。キミの事だ』

「問題? 俺?」

『キミの話からすると残念だが召喚士はもう居まい。

キミは情報を誰からも受ける事は出来ない。』

「えっ!? えっ? ディズからは? 魔物たちから貰えばいいんだろ?」

『魂の結晶は、特殊な鉱石にカテゴリされる。

鉱石など意思が無い物は【召喚】出来ない。


魔物たちからは、当然これから先、取れるだけ情報は取るべきだ。


しかしその上で、今まで蓄積された技術、情報などは失われたという事だ』

「そっか・・」


最上級や最上位の知識よりも、唯一人の召喚士という事を改めて実感する。


『しかし私が出来る限りの知識を伝授する』

「そっか・・、じゃあよろしく」

『うむ』


ここでジャニが【召喚】を試してみれば、ディズが固定観念を捨て【召喚】をさせていれば、違う未来があったかもしれない。






ジャニはディズから召喚士の知識、技術を学びながら旅を続ける。


まずは【書庫】の魔法を学び起動する。

特に変わった事は無いが、情報は思い出すと言うより、引き出す感じで正確だった。


旅は適当な魔物を【召喚】する事でかなり楽に進める事が出来た。

実際に教わった通りに、里の近くに居た魔物を【召喚】してみると簡単に成功してしまう。


【召喚】した魔物を使って周囲を確認すると、直ぐに街道を見つけ近くの村へ辿り着く。

そこから大きな町へ向かい、大体の位置関係を把握する。


そして里からできるだけ離れる様に進路を取る。




より多くの場所をゆっくりと見て周り、魔物だけでは無く、野獣や草木すべてを見て周る。

ディズは教わるだけの知識では無く、実際の体験や経験をする事、些細な事の積み重ねがより知識を深め、【召喚】の訓練になると言う。






その様な旅が6カ月程続いたある日の事-


『そろそろ頃合いか・・』


何気ないお互いの会話の空白にディズがポツリと呟く。


「あっ!? なんだって?」

『うむ、殆ど教える事が無くなったと言ったのだ』

「本当かよ・・」

『この6カ月、わしがみっちり扱いたからの』

「あぁ・・」


ディズの笑い声に引きっつった笑みを浮かべる。


『教えられる最後の事をしてしまおうと思ってな』

「まだあんのかよ・・」

『これで最後だ』


スパルタの日々を思い起こし遠い目をすると、最後だと慰めにもならない慰めをする。


「で何をさせるんだ」

『実は一つ嘘をついていた』

「ほぉう!?」


嘘という事に、ピクッと反応する。


『召喚士の知識を【共有】する方法がある』

「・・俺が怠けるから黙ってたとか?」

『それも多分にあるが、以前のおぬしでは出来なかったからだ』


怠ける事を肯定しつつも、未熟だった事をはっきりと言う。


「ちぇっ、で何をすれば良いんだ?」

『簡単な事だ』

「本当かよ」

『うむ・・、わたしを壊せば良い』

「・・はぁ!?」


余りの事に思わずディズの入った皮袋を見つめるジャニ。


「いったい何を言って・?」

『どの様な方法でも良い。わたしを壊せと言っているのだ』


何を言われているのか理解できない。

壊せと同じ事を繰り返す。

何故と問い返せば、ただ壊せを返す。


一人と一つの旅が終わろうとしていた。





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