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ダンジョンの同居人  作者: まる
魔物と
22/40

冒険者ギルドにて

冒険者ギルドにて





年の頃なら12〜13歳程、いくら高く見積もっても成人していないであろう男女がギルドの扉を開けて入って来る。

二人は辺りを見回すと頷き合って窓口の方へ向かって歩き出す。下を向いて何か資料を整理している女性職員に声をかける。


「お忙しいところすみません」

「はい、なんでしょうか?」

「冒険者について教えていただきたいのですが?」

「冒険者? あぁ! もしかして・・」

「「えっ!?」」

「何でもない、何でもないの」


慌てた様子で手を降り、営業スマイルを振りまいて対応する。

彼女は冒険者という言葉と年の頃から察して、教会のシスターから頼まれている子供たちであるとの思いに至ったのである。


「冒険者について聞きたいんだっけ?」

「はいそうです!」

「じゃあ付いてきてもらえるかしら」


いくらなんでも話がスムーズすぎる展開に顔を見合わせる二人。

笑顔で促すと近くにいた職員に、しばらく業務の代わりを頼むと、奥にある部屋へ二人を伴って入っていった。


「まずお名前を聞いてもいいかしら?」

「あぁ。 申し訳ありません。ジュンといいます」

「マチです」

「ジュンくんとマチちゃんね。

じゃあ冒険者について説明するわね。固くならずに聞いてくれればいいから」


ガチガチに緊張したジュンとマチに声をかけると、冒険者について話し始める。

まさに冒険者とは?から始まって冒険者の最後に至るまで話して聞かせる。

色々と詰め込み過ぎて、二人の頭はパンク寸前になる程である。


「質問というか、確認をしたいのですがよろしいですか?」

「ん? 何か分からないことがあった?」


だがジュンはその中で、今の自分たちに最も重要な言葉を聞き逃さず確認をする。


「職業の選択について・・です」

「職業の選択? どんなことかしら?」

「冒険者登録する際、職業を選択するという事でしたが、なりたい職業を選べるのでしょうか?」

「あぁ、その事ね」


彼らがどのような職業に就きたいか知っている受付嬢は納得する。


「昔は好き勝手に自分の職業を名乗れた様だけど、他の人とパーティを組む際に問題が出てきたの。

そのためギルドでは予防策として適正職の提示する仕組みを作ったの」

「適正職とは就ける職業という事でしょうか?」


念のため、適正職という言葉の意味を確認する。


「そう。その人の才能に沿った職業がある程度示される様にして、その中から自分の成りたい職業を選択するという形ね」

「好きな職業に付く事は出来ないという事ですか?」


自分が目指す職業に就けないかもしれないという不安にさらに質問をする。


「食べては寝てが大好きな人が、私は剣士ですって言われて安心できる?」

「無理ですね・・」

「じゃあ・・例えばずっと剣の訓練をしていた人に、魔術師の職業が出来ると思う?」

「難しいと思います」


彼の質問に自分で答えにたどり着けるよう質問で返す。


「そうよね。余程の才能に恵まれていない限りは難しい。でも少しずつでも両方を訓練していればどちらか、もしかしたら両方出てくるかもしれない」

「なりたい職業の訓練に打ち込めば、その職業が出てくる可能性が高くなると」

「才能に沿ったという事だから絶対とは言えないけど、概ねその通りの解釈でいいと思うわ」

「なるほど・・、ありがとうございます」

「いいえ、どういたしまして」


自分たちがどうすれば希望の職業に就けるのかが分かったのは大きな収穫である。

魔物使いという職業を調べ、それにあった訓練を行っていく事は重要だろう。


「今日はだいぶ話し込んだから、そろそろお開きにしてもいいかしら?」

「すみません。お時間を取らせてしまって」

「いいのよ。この続きとか質問とかあれば次回の機会にしましょう」


次回もある事をハッキリ告げられる事は、彼らの期待感を更に高める事になる。


「分かりました。今日は色々ありがとうございました」

「ありがとうございました」

「どういたしまして」


二人は自分たちのために、かなり時間を割いてくれた職員に深く感謝して帰路に着く。


対応した職員はギルドマスターへ、今日の事をかなりご機嫌で報告に向かう。

普段は荒っぽい冒険者たちの態度に辟易しながらも、笑顔を絶やさず対応していた日々に、子供たちの礼儀正しさと初々しさで、かなり心が洗われたようである。




五人はローテーションを決め、誰もが必ず一回は冒険者ギルドへ行く様にしていた。


またギルドの職員たちは教えることが少なくなると、冒険者たちの武勇伝や失敗談なども話してくれるようになった。


時折、冒険者が持ち込んだ魔物を解体して使える部位を取り出す作業を見せてくれた。

年上組は顔面蒼白で体験をするが、一番年下のメイだけは何故か涎を垂らして嬉々として見ていた様である。


長くギルドに通えば怪我や深手を負って帰って来る者、顔見知りになった冒険者が帰ってこない事をも経験する。






それらを乗り越えて一か月ほど通い詰めていたある日、念願の魔物使いについて話を聞ける事になる。


「マチちゃん、ジャニくん。そろそろあなたたちの成りたい職業、魔物使いについて教えようと思うんだけど心の準備はいいかしら?」

「「っ!? はい、お願いします!」」


にこやか笑顔を浮かべそう切り出す女性職員に、突然の事で驚きを隠せない二人。

それでもしっかりと頷き返事をする。


「まず魔物使いという職業についてどのくらい知っているかしら?」

「うーん、魔物を仲間にして戦わせる職業って位しか・・」

「そうね・・、その程度です」

「概ね合っているわね」


自分たちが知っていることなど無いに等しい。あやふやになっている知識を隠したり嘘をついても何の得にもならないので、恥じる事無く殆ど知らない事を告げる。


「魔物を使うという意味では、卵や小さい頃から育てる狩人。これはペットに近いおまけの様なものね、必ず必要というわけではないから」

「そうなんですか」


他の職業であっても魔物を使うという意外な一面に気付かされる。


「狩人の派生と言うのかな・・、ブリーダーなんかもあるわね。これは育てるだけじゃなく交配させ繁殖させるの」

「へー、なるほど」


全く聞いたことがない職業に感心するジャニ。


「じゃあ竜騎士もそうですか?」

「そうね。竜騎士だけでは無いけれど、高い知性を持った魔物と心を通わせることで仲間になって貰う事は出来るわ」


思わず聞いてしまうマチに笑顔で答える。そして話がある程度進むと二人に質問をする。


「じゃあ魔物使いというのはどういう職業だと思う?」

「魔物を使うだけならほかの職業でもできるし・・」

「でも魔物を使うけど魔物使いではなく・・」


魔物使いの前提である魔物を仲間とするという事が、ほかの職業でも出来るなら魔物使いとは何なのか悩む二人に回答を示す。


「魔物使いという職業は、今まで出てきた職業とは明らかに違います」

「「・・はい」」


魔物使いの核心に迫ろうとしているのが分かるのか表情に緊張が見て取れる。


「魔物使いは・・魔法系の職業です。なるためには魔法を使う才能が必要となります」

「「えっ!?」」


突然の告白に驚きの声を上げる。


魔法を使う才能がいる。


あまりの言葉に愕然とする。


「ほかの職業と違って偶然卵や子供を手に入れたり、心を通わせるのではなく、魔法を使って従わせるのが魔物使いです」

「「・・・」」

「ただ魔法を使うだけでは従わすことが出来ません。

自分より強いという事を示す必要があります。

戦闘などである程度弱り、叶わないと思わせる事でより魔法の効果が得られます」


魔法の才能、魔物との戦闘。その言葉にショックが隠しきれない。


「大丈夫かしら?」

「「・・はい」」


彼らを心配する声に返事は返す。自分たちの見込みの甘さをはっきりと知ったのだ。


「今日はもう無理そうだから、一旦教会の方へ戻ったら?」

「はい・・」

「・・そうします」


普段の礼儀正しい彼らからは考えられない事だが、碌にお礼も挨拶も出来ずに席を立つとギルドを出て行った。


(まぁ仕方がないわね・・。でもこっちの壁で止まる事になるとは)


ギルドマスターや職員たちは、ジャニたちがギルドに通い続けることで見るであろう知るであろう現実に立ち向かう事を期待している。


期待された通りの躓き石を、五人という仲間の結束の故か何とか乗り越えて来た。


しかし実際の夢に立ちはだかる魔法という壁を前にして、彼らは立ち止まったのである。






ジャニとマチの二人が失意の状況で孤児院に戻ると、あまりの落ち込みにほかの三人だけでなくシスターも心配する。

ギルドであった事を説明すると、話の分からなかったメイを除く二人は一様にガッカリする。


「魔法の才能と、戦闘の必要性かい・・・」

「うん」

「これが現実かしらね・・」

「流石にまいったな、これは・・」


いきなりの突き付けられた現実に四人は解決策を見いだせない。


戦闘に関しては、何とか訓練のしようもあるが、魔法はどうにもならない。


魔法の才能とは言え、訓練次第では能力の高さはどうであれで身に付けることは出来る、訓練さえできる環境であれば。


魔物使いと言う職業があまり聞かれないのも、この辺りに起因するのかもしれない。


「うん、これ以上シスターたちにお願いするのも・・」

「うん」

「そうね・・」

「だめ・・、だよなぁ」


子供たちでさえ労働力の一つとされる孤児院では、ギルドへ行く事でさえ厳しい。

いくら理解をしてくれるシスターとはいえ、これ以上頼るのは無理と考える。


「となれば、狩人とかブリーダーの道を選ぶか・・」

「うん」

「魔物使いとは少し違うけどね・・」

「選べるだけまだましか・・」


シスターはメイに事の次第を分かりやすく話をしながら、自分の方をチラチラと見る子供たちの視線に気付いてもあえて何も言わなかった。

彼らのためを思えばこそと、心の中でギルド職員の対応に感謝していた。


「そうだ、まだ話の続きがありそうなんだよね?」

「うん」

「そういえば今日の所はって感じだった」

「多分だけど・・頭の中がゴチャゴチャでよく聞いていなかったわ」


本当に様々な感情が入り混じって、全く耳に入っていかなかったのだろう。


「なら最後まで話を聞いてみよう。それからまた考えないか?」

「うん」

「そうね・・」

「分かった・・」


次にギルドで聞ける話はどんな事なのか、皆の胸の中に重苦しい気持ちを抱えたまま、それぞれの仕事へ戻って行った。






数日後、ジュンとジャニの二人がギルドを訪れる。

もしかしたらもう来ないかもと思っていた彼らの来訪に驚きながらも、にこやかに話の続きをする。


「この間の続きからでいいのかしら?」

「はい、お願いします」

「この間は、魔法の才能と、戦闘の必要性についてまで話したわね?」

「はい」


ジャニに前回の話を確認し、二人にそこから話を始める事の了承を得る。


「魔物使いは不遇職と言われているわ」

「不遇職!?」


聞きなれない言葉に首を傾げる二人。


「不遇職とはほかの職業と比べて、働きに対して評価が低い、もしくはその能力を必要とされていない職業の事よ」

「なんでだろう? あんなに強いのに」


ジャニの疑問を余所に、魔物使いが不遇職と呼ばれる所以を話の続きをする。


「魔物使いは魔法系の職業、総じて体力的な面でかなりのハンデがあるわ。

加えて魔物の前に立ち戦闘をしなくてはいけない。

これは、現実的にかなり厳しい事なの」

「「・・はい」」


魔物を捕まえるまでの前段階の厳しさは納得するしかない。


「となれば安全性を取り、自分よりかなりレベルの低い魔物しか従えることが出来ない。これはレベリングをするのに効率が悪い。そして食事に類する物を必要とする」

「「・・・」」


従っている魔物は自分より弱く、食事を与えなくてはならない。

これではペットと変わりない。あまりの事に言葉を失う二人。さらに話は進んでいく。


「当たり前だけど、パーティを組んだメンバーが持ち主より弱い魔物しかいない。だったら普通に狩人か、可能なら魔術師をメンバーに入れると思わない?」

「・・そうかもしれません」

「魔物を手に入れるのは相応の危険が伴う。

その上パーティからは必要とされない。

経費も余計に掛かる。

これが不遇職と言われる主な理由ね。魔物使いについては以上よ」

「「・・・・」」


ギルド職員には悪意はない。

それどころか、職業を真剣に考える子供たちに好意すら持っている。

故に例え夢破れる事になったとしても、彼女の持てる知識のすべてを伝えたのである。

前回に続いてのあまりの事に言葉を失うが、ジャニは言葉を絞り出す。


「魔物使いになる訓練の方法を教えて下さい」

「!? 話を聞いてた?」

「正直辛そうだし怖そうです。でもなるならないは別にその職業の訓練をするのは悪いことじゃないと思うんです」

「・・そうだね、ジャニ」


魔物使いになる事を十分に理解しているとは思えないが、確かに彼の言う通り準備をする事は、この先どのような道を進むにしても無駄ではない。

実は受付嬢、今までの話の中で魔物使いのメリットの話を敢えてしていないのである。


「・・そう分かったわ。あなたたちの決心は揺るがないのね」


彼らの決意はまだまだ幼いものではあるけれど、一人前の大人として扱う事にした。


「魔物使いについて、より深く学ぶ方法があります」

「本当ですか?」

「嘘は付きません、本当です。魔物使いが集まって出来た里が存在します」

「えっ!?」


全く想像もしていなかった事に顔を見合わせる二人に、彼らの真剣さに応えるために用意されていた最後の鍵をウィンクと一緒に提示する彼女であった。





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