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ダンジョンの同居人  作者: まる
ダンジョンと
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不思議な部屋の喋る石

不思議な部屋の喋る石





旅のある日、ジャニは一晩を求めた洞穴で謎の雰囲気を感じ階段を見つける。


階段を降りると壁や床、天井自体から光を放つ不思議な部屋に出る。


そこには自分をダンジョンコアだという、喋る石が待っていた。




「ダンジョン・・コア?」

『そうね』

「えっと・・ダンジョンのコア? 最深部にあるはずのコア? 魂の結晶じゃなくて?」

『何か引っかかる物言いだけど・・。ご想像通りのダンジョンコアよ』


思わず最深部という部分を強調してしまう。そして魂の結晶について質問される。


『ん? 魂の結晶?って、一体何かしら?』

「えっ!? あぁ、魂の結晶っていうのは・・、人間を圧縮して石にした物かな」


魂の結晶に近いニュアンスを分かりやすく伝える

本来の過程も、出来上がる物も全くの別物なのだが。


『まぁ! 何それ!? とっても怖い物なのね』

「えっ・・そうかな?」

『自分が潰れていく所って、あまり想像出来ないものね』


ジャニは、魔法で石に変化していく姿を、ダンジョンコアは物理的に潰して固める姿を、お互いが思い描いているモノの違いには、大きな隔たりがあったりする。


「うーん・・、どうだろう?」


首を傾げて、ポツリと呟く。


『まぁ、そうよね。楽しいおしゃべりもここまでね』

「何が?」


少し諦めた感じの声が聞こえる。


『じゃあ、もうそろそろワタシを壊す?』

「・・はぁ? 何を言ってるんだ」

『何をって、ワタシを壊すのでしょう?』

「何でだ? 壊すつもりはないぞ」


ダンジョンコアは、何で壊さないのか分からないらしい。


『ダンジョンコアっていうのは、物凄い力を秘めているのよ』

「そうらしいな」

『あなたはワタシを見つけたんだら、どうとでも出来るのよ?』

「ふーん?」


どうもダンジョンコアの言わんとしている事が分からない。


『ダンジョンコアそのものは無力なの。壊せば莫大な力が手に入るのよ?』

「うーん、それはさっき聞いたから分かるのだが・・」

『そういうものなのよ。だからワタシを壊すんでしょ』

「・・さっぱり意味が分からん」


何となくだが、あんぐりと口を開けるイメージが伝わってくる。


『あなた・・、皆に馬鹿って言われないかしら?』

「昔からそう言われる。とても不思議だ」


ダンジョンコアは、ハァと溜息を吐くともう一度説明する。


『いいかしら? ダンジョンコアを壊せば力が手に入る。これは摂理なの。

だから誰しもダンジョンコアを見つければ壊すのよ』


お分かりと言う感じで、出来の悪い弟に噛み砕くように話してくる。

ふと孤児院を卒業していった姉たちは、皆こんな感じだったなーと遠い目をする。


「誤解がある様だから言っておくぞ」

『なにかしら?』

「人を傷付けたり、物を壊す事に躊躇いはある・・。

しかし敵意を向けるなら容赦しないし、むざむざ殺されてやるつもりも無い」


グッと奥歯を噛みしめ、絞り出す言葉に、ビックっといった感じが返って来る。


「あとなダンジョンコアの力がどういう物か知らない。よって欲しいとは思わない」

『はぁ・・、何て事かしら』


一転して元の雰囲気に戻ったジャニの答えに、ダンジョンコアは驚きを隠せない。


『ダンジョンコア撃破のメリットを知らないってことよね?

いい? 莫大な経験値による急激なレベルアップ、それに伴う攻撃力、防御力、魔力、生命力といったものの大幅アップ、そしてスキルや祝福を得る事だって出来るのよ』

「なる程良い事を聞きました」

『あらあら。失敗しちゃったかしら・・』


あっさりとアドバンテージをバラすコアを見て、こいつの方が馬鹿じゃないかと思う。

それでも嬉しそうなイメージが伝わってくる。


辺りを見渡して話を続ける。


「しかし力と言ってもなぁ・・。此処が最深部だろう。他に部屋とかは?」

『後ろの階段だけね・・』


少し馬鹿にしたように、ハンッと鼻で笑い肩を竦める。

するとダンジョンコアは、何とか自分が凄い存在である事をアピールしようと、空回りを始める。


『ちょっと今、馬鹿にしたみたいね。 いや絶対馬鹿にしたわね。

ワタシはね、ついさっき生まれたばかりなの。生まれたての赤ん坊が、侵入者を倒せる訳無いでしょ。だけど素質はあるのよ。ワタシの未来を信じて欲しいわ』

「直ぐに壊されるのにか?」

『そうよ。美人薄命って言葉を知っているかしら? 短命こそが美しさの証明。生まれたばかりの輝かんばかりの肌。 どう、この透・明・感』


もうダンジョンコア本人も、何を言っているのか分からないのではないかと思う。

ハァハァハァと息を切らせながらも、何とか話をしてくる。


「分かった分かった。で、ダンジョンコア様は何がしたいんだ?」

『様はいらないわ。ダンジョンを大きくする事よ』


少し鼻息荒く、何を当たり前の事をという感じである。


「どうやって?」

『どうやってって、ダンジョンポイントを使うのよ』


何やら新しい単語が出てきたので尋ねてみる。


「そのダンジョンポイントと言うのは何だ?」

『ダンジョンポイント、略してDPというのだけど、侵入者を撃退すると貰えて、部屋とかアイテムとかと交換できる物なのよ』


落ち着きを取り戻したのだろう、にこやかに説明をしてくれる。

さっきからの話の流れで、おかしな所があるように思えるのでちょっと聞いてみる。


「質問いいかな」

『どうぞどうぞ』


やはり嬉しそうなイメージが伝わってくる。もしかして会話が嬉しいのだろうか。


「ダンジョンを大きくするDPは侵入者を倒すと手に入る。じゃあその侵入者はどうやって倒すんだ?」

『DPで交換できる物には、トラップや魔物もあるのよ』


絶対こいつ分かってないな、と思いながら問いかける。

何となく昔、魔物使いになる事で、同じようなやり取りがあった事を思い出す。


「じゃあトラップや魔物と交換出来るDPはどうやって手に入れる?」

『あら? 説明しなかったかしら? 侵入者を倒す事ね』


ダンジョンコアは、何で同じ事を繰り返して聞いてくるんだろう?やっぱりお馬鹿じゃないかしらと心配になる。


「侵入者を倒すとDPが手に入る。DPでトラップや魔物と交換する。トラップや魔物で侵入者を倒す。間違いないな?」

『その通りね』

「じゃあ、なんで俺は倒れていない?」

『だからそのDPがないから・・でしょ?』


あれ・・?なんで・・?とブツブツ呟いている。


「やっと分かったか?」


ダンジョンコアには、侵入者を倒すDPが無かったという矛盾に気付く。


『あれれ・・、ワタシって・・?』

「今の話を聞く限りでは手が無い。詰んでるって事だ。

さっき自分でも、無力だから壊されるって騒いでたのを忘れたのか?」


他のダンジョンではそんな事は無い。とすればこのダンジョンコアは自分の能力を使いこなせていないと思われる。


『じゃぁ・・ワタシ・えっと・・』

「落ち着け。まずは良く自分の能力を見てみろ」

『はーい・・』


最初から自分には生き延びるすべが無かったと、呆然とするダンジョンコアに、能力のチェックを勧める。


するとしばらくして明るい声が聞こえてくる。


『分かったわ! 長く生きるとDPが貰えるのよ!』

「どういう事だ?」

『一年生きると一万ポイント。二年で二万ポイント、以降一年毎に倍々でポイントが貰える。しかも十年、百年といった区切りで更にボーナスもあり』

「つまり若い時は外に出ないで勉強しなさいって事だよな」

『!? まぁ、その通り・・かな?』

「まぁ若い内ほど尖がって無茶して大怪我するんだよ」

『ぶぅ・・』


だんだん最初の頃の威勢の良さが無くなり、少し拗ねた感じが伝わってくる。


『そんなに言わなくたっていいでしょ。ふんっだ』

「えっ!?」


終いには逆切れするような始末である。


『だって階段作るした脳が無いんだから! 仕方ないじゃない分からないんだから!』

「いや・・、何もそこまで・・」

『いいわよいいわよ。こんなバカ、スパッとやっちゃいなさいよ』

「待て待て待て! ちょっと待て、やっちゃいなさいじゃ無いから」


悪い方に開き直ってしまったようだ。


「早まるな、落ち着け。いやお互い落ち着こう。深呼吸だ」

『ぶぅぅぅぅ。すーぅ。ぶぅぅぅぅ。すーぅ』


頬を膨らませての深呼吸音に苦笑いするが、落ち着いてきたのを確認する。


「ふぅ。落ち着いたか?」

『むふぅぅ。もう大丈夫よ』


お互い冷静に、現状を把握して行く事にする。


「状況を整理しよう。まず君はダンジョンコアで、ダンジョンを大きくするのが目的で間違いない?」

『その通りね』

「ダンジョンを大きくするにはDPが必要で、DPは侵入者を倒さなくてはならない」

『そうね。後は長期間の存在する、生き延びるって事ね』

「DPの入手には他の方法は無い? どんな細かい事でもいいから」

『分かったわ。ちょっと調べてみるから待ってて』


ダンジョンコアの目的と目的達成のために、DPの入手方法を確認してもらう。


『んー、いくつかあるみたいだわ』

「全部教えてくれるか?」

『分かったわ。まず侵入者からDPを得る方法にいくつかパターンがあるわ。


一つ目は侵入者そのものを倒す。殺すという事になるかしら。

二つ目は侵入者が長期滞在すると僅かだけどDPを得られる。

三つ目は侵入者をダンジョンから追い出す、もしくは出て行くとDPを得られる


こんな所かしらね』

「へぇー、DPを得られる理由って分かる? 一つ目は分かるから大丈夫」


流石に倒す、殺すの意味を事細かに聞く必要は無いし、聞きたくも無い。


『うーんと、


二つ目はダンジョンの罠に掛かっていると認識されてのボーナス。

三つ目はダンジョンを守ったと認識されてのボーナス。


って事みたい』

「なるほど」

『それから侵入者関連で言えば、倒された魔物は購入DPにちょこっと加算されて戻るけど、一度発動したら終わりのトラップは、使い捨てみたいね』

「鍵とかのトラップはどっち?」

『開錠されても時間が経つと再び鍵が掛かるようね。壊されても自動的に修復みたいよ』


少しの間考え込む。

笑みの零れる口元を手で隠すようにして考える・・。


「(これは使えるかも)」


ダンジョンコアも静かに待つ。


「ねぇ、キミはどうしたい?」

『えっ!? どうしたいってのは?』


突然の言葉に驚くイメージが伝わってくる。静かにゆっくりと聞き始める。


「キミはこの先どうしたいのかって事?」

『言っている言葉の意味が、良く分からないんだけど?』


壊されるか、見逃されるか分からない状況では答えようが無いのだろう。


「じゃあ俺の方から君に尋ねるね」

『どうぞどうぞ』


ジャニの口から出てきたのは、やはりショッキングな事だった。


「壊されたい?」

『ッ!?』

「今の現状では君は何も出来ない。この状況を受け入れ、諦め、もういい。何もかも要らないと言うなら、俺は君を壊してあげる」

『・・・』


ダンジョンコアは、おしゃべりで忘れていたが、改めて壊される事を言われる。

そして更には次の言葉に驚かされる。


「それとも・・、生きたい?」

『えっ!?』


生きる。此処でそんな事が選択肢が出てくるとは思いもしなかった。


「この先どうなるか分からないけど、少なくても穴は塞いであげられる」

『あっ! なるほど』


穴を塞いでくれれば少しは生き延びられるかも。その可能性に喜びつつ、自分の壊される末路をも考える。


『でも力は欲しい・・んじゃないのかしら?』

「それはキミが俺の行動に対する考えだろう」

『えっ!?』

「もう一度聞く。キミ自身はどうしたい?」


自分はダンジョンコアで、ダンジョンを大きくして、でも力を求めて壊されて、色々な事が浮かんでは消えて何が何だか分からなくなる。


更にジャニの言葉が重ねられる。


「ダンジョンコアの役割があるからとか、俺が居るからと言うのは関係ない。

キミ自身どうしたいのか教えて欲しい」


少し、ほんの少し間が開いて答えが返ってくる。


『・・分からないわ』

「分からない?」


ダンジョンコアとして生まれて、それ以外に自分には何があるのか本当に分からない。


『・・うん。決して誤魔化している訳でも、馬鹿にしている訳でもないのよ。

本当に分からないの。

気が付いたら此処に有って、ダンジョンを大きくするという役割を与えられて。

それ以外何もわからず、何も与えられず、何も知らずに生まれた。

正直何がしたいかなんて答えようが無いのよ・・』


ダンジョンコアの溜息と独白を聞く。自分には何も無い、そう心が叫んでいるようだった。


「じゃあ、とりあえず長生きしてみる?」

『・・えっ!?』

「長生きしてみて、自分のあり方とか目標とか探してみる?」

『・・いいの?』


自分は生きていける、存在できる。思わず喜びつつも尋ねてしまう。


「出会った最初に言ったけど、君と争うつもりは無いんだ」

『確かに・・。そう言っていたわね』


ジャニの頭には、何故かクスクスと笑いが零れてくる。

涙も流れているようなイメージが浮かぶが気のせいだろう。気のせいに決まっている。


お互いが打ち解けた所で、思い切って、ある頼みをしてみる事にする。


「物は相談なんだが」

『何かしら?』

「君が少しでも長生き出来るように・・、俺を此処に住まわせてくれないか?」

『・・・・はい?』


突然の言葉に理解が追い付かないのか、呆然としたイメージが伝わってくる。


『どういう意味なのかしら?』

「文字通りそのままなんだが・・。穴を塞ぐくらいならサービスでもいいが、それだけで長く生きられるとは考え難い」

『それは・・、そうね』


順序立てて、現状の改善方法を伝える事にする。


「野獣や魔物が、また穴を掘ってしまうかもしれない。

人間たちが何か気が付く事があるかもしれない」

『うん、当然よね』

「俺の魔物を使えは周囲を警戒出来るし、相手にもよるけど近づけば倒す事も出来る。

町へ行って情報を集めたり、ちょっとした嘘や金を渡す事で、近づかないようにする事が出来る・・かもしれない」

『なるほど』


だんだんと、こちらが言おうとしている事が分かってきたようだ。


「そうすれば、少しは生存率が上がると思うんだ」

『確かにその通りかもね』


ドクンドクンっと胸が高鳴るような感じが伝わってくる。見逃してもらえるだけじゃなく、長く存在出来る事も相まって興奮して来ているのだろう。


「正直この先はどうなるか分から無い。だから取り敢えずという事で」

『とりあえずという事でね』


ダンジョンコアは考える。これ以上の高望みが出来ようか。


「期限はキミが、キミ自身の目的を見つけるまで」

『よろしくお願いするわ』


彼は脅す事も、壊す事もが出来たのに、それをしないと言う。

そして一緒にこのダンジョンで過ごしてくれると言う。それが何よりも嬉しい。




ジャニは召喚士として長い逃亡の旅から、ダンジョンと言う仮初の場所を見つける。

仲間から分かれて一年が過ぎ去り16歳になっていた。





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