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宿屋のメリー告白大作戦  作者: ミツキ
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回答者・医師エメリヒ、妹レイラ


どうも、幼児のメリーです。


アタマ痛い、アタマ痛いよぅ。


_回答者・医師エメリヒ、妹レイラ


「レイラ。気持ちはわかるけどね、

頭を連続強打したとこなんだから、

こめかみを拳でグリグリはやめてあげなさい」


痛いよぅ、痛いよぅ。


「メリー、君も幼児退行してないで少しは抵抗しなさい」


レイラの顔が怖いよぅ、痛いよぅ。


「なんですって!」

「あぁもう、うちの村は面倒臭い女の子しかいないのはどうしてだ」



~~後頭部のたんこぶ冷やし中~~



「ふんっ、大げさな。舐めときゃ治るわよ」

「メリー、舌をしまいなさい。

猫さん達もそうなの?って僕を見ないで」


うぅ、まだジンジンします。



「お帰りレイラ。首尾はどうだい?」


「ちょろいわよ。村長会議だって嘘ついて隣町で飲んでるのをバラされてもいいのかって脅してやったわ」


ぁぁ!いつか使おうと思ってたのに。


「ふっ、メリーも口止めしてたみたいだけどね、村営費ちょろまかして家の柵を新調した件よりこちらが勝ったわ」


むぅ。奥さんが留守の日に未亡人のキャリーさん宅にお泊まりした件を使うべきでした。


「村長の弱味を2人揃って握り合うのはやめなさい。レイラ、本題を」




「兄さんが睨んだ通り、原因はあの絵ね。

品評会で入賞した絵は王宮に飾られてから半年後に、オークションにかけられるのは兄さんもご存知でしょう?」


「あぁ、賞金の半分は孤児院経営に使うんだろ?それまでは王妃さまのサロンに飾るだっけ?箔が付くしなぁ」


「パトロンがついてない無名の芸術家は注目されたそうよ」


芸術家じゃありませんよ。

常連の行商人さんが、秋の村を見てみたいなって言ってくれたから描いただけですよ。


「そうね、王家御用達の商人と知らずにね」


「それにしたって、商人がパトロンで出品できないだろ?」


「王子さまが絵を気に入ってね。王族枠で出してしまったのよ。

参加者には主催の王妃さまから褒賞の品を頂けるから、それを村娘に渡してあげなさいとご好意でね」


まさかの入賞。

入賞者には王妃さまのサロンでお披露目の義務、もとい栄誉が与えられる。


商人さんは地方に行商中だったために、王子さま自ら村の領主さまと連絡をお取りになり、

出品したことすら知らない私と村長さんは、あれよあれよという間に王都。


45歳の王子さまは陽気なお髭のおじちゃんでした。

『すまんなぁ呼びつけて!ドレスや何やらは私が用意してやるから、

まぁうまい茶でも飲んでってくれや』



「で、サロンで大注目。あたし達は見慣れたこのギラギラした髪と目が珍しいんだとさ」



都会評=朝日に透かしたハチミツのように光り輝く金髪

田舎評=麦畑に同化する迷彩色


「んでこの目玉。普段は灰色混じりの薄らぼけた水色だけど、

興奮すると真っ青になるでしょ?」


「うん。村の住人なら、メリーの目が青い時は近づかない、そのまま目印だけど。あぁ、確かに珍しいね」


「てか。別に緊張しても目の色は変わらないわよね。あんた何に興奮したの?」


お借りしたお手洗いがそれは見事な水洗便所で。

痛いです!グリグリ痛いですよぅ。


「あぁ面倒臭い!簡単に経緯だけ並べるわよ!」


・サロンで話題になった娘の親は私だと名乗りをあげる者がいた。

・没落貴族のガントレ子爵夫人。

・幼い頃に誘拐されたとのこと。

・娘の描いた絵の所有権は自分にある。


「うわ。露骨な金目当て」


「鼻で笑いたいけどね。若い時の肖像画を持参したそうよ」


「変な話だ。メリーはご両親と出会う前は赤ん坊の頃から教会だろ?

孤児院を運営する教会は王都から近い。そんなに目立つ赤ん坊なら、さらわれたにしてもすぐ見つかるだろ」


…見つけたくない赤ん坊だったのでしょう。

夫人はガントレ子爵と結婚されて10年も経ってないそうで

10代のうちに産んでしまった不義の子なんでしょうね。


「横暴とはいえ、相手は貴族。

メリーよく帰ってこれたな」


それはもう、


絵は元々、お髭の王子さまにお供えするつもりで奉納したものだから、

所有権はお髭の王子さまのものですと押し切り、


「お供えも奉納も間違えてるよ」


帰路は村長と二手に分かれて。

私は馬で単身、街道を回避し峠を越え、


「村娘の限界を越えてないかい」


追っ手は待ち伏せたうえで、レイラさん特製の即効下剤(強)をそれぞれ口にネジ込み、


「レイラ、レイラ。お兄ちゃん知らないんだけど」

「村娘たちから大人気」

「聞きたくなかった!」


ちょっと人前に出られたくなった方々達の着替えを谷に捨てて、

追っ手の方々が乗っていたお馬さんを勧誘し、


途中の草原でピクニックしてきましたよ!


「最後だけほのぼのしてもね!

どこから突っ込めばいいんだ!」


「あら。じゃぁその時のお馬さんなのね。宿屋が『貸し馬車始めました』って斬新だと思ってたのよ」


はい。余生はのんびり過ごしたい派の4頭はお家にお招きし、

まだまだ若いぜ暴れるぜの3頭は

「鎧萌え」だそうで、砦の兵士さんとお見合いして貰っていただきました。


「馬は安いものじゃないからな、砦で買い取ってもらって馬車を仕立てたのかい?」


いえいえそんな。

こちらから押しかけておいてそんな。

困っていたらお馬さんが教えてくれてですね。

追っ手の方々は

あまりよろしくない仕事をしていたそうなので

それではと、兵士さん達と隠れ家を心置きなく強襲しましたはい。


結果。お馬さん達は押収品として無事兵舎預かりとなり、

私はたまたま、

偶然持っていた武器類(乙女を追いかけて怖い思いをさせた人達の落し物)を

買い取っていただきまして。


麓の町で馬車を仕立て、

途中の街道で村長さんを拾って


みんな仲良く帰ってこれました!


「なるほど!わかったわ!入賞したのに手ぶらで帰るわけにいかないしね!馬車をお土産にしたわけだ。ふふふ。

お主も芸が細かいのう」


ふふふ。自分、多芸ですから。



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