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宿屋のメリー告白大作戦  作者: ミツキ
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回答者・カルロ&ダニエル


どうも。メリーのお父さんがやっと

目を覚ましてくれましたよ!


カルロ君、ダニエル君。お水を下さいっ


「はい、ダニエル。パス」

「はい、お姉ちゃん、一気!」


はっ、ングングングぷはっ。

違いますっ、お父さんにお水を!


「ダニエル、その紐だ!」

「任せて兄ちゃん!それっ!」


ーーバシャァァァ!!


え!なぜ屋根から桶が?

お父さんが溺れてしまいます!

うきゃぁ!うほぅ!


タオルを、タオルを、

へ?どーして全部繋がってるのですかぁ??




_回答者・カルロ&ダニエル



「…ねぇカルロ、ダニエル。無理矢理イタズラをしかけなくていいのよ?」


「家族経営にありがちな役割分担ですよ母さん」

「僕らは姉ちゃんの体力を削ぐために産まれたんだ!」

「あら大変。じゃぁ勝てるようにたくさん食べて大きくならなくちゃねぇ」


私はメリー。ただいまエメリヒさんの肩に担がれ中。

くすん。



「アンジェラさん、連れてきたよ」

「ご苦労様、ロバートは起きた?」

「一瞬目が覚めたけど、同時に水と

落ちてきた桶で頭を打って夢にお戻りだよ」


お父さんは心臓が止まったかと思いましたが、気絶しただけのようでした。

何度か目が覚めたのですが、その度に


「メリーが好きなのは行商人さん。

1番はお父さんじゃなくなったのよ」


とお母さんが耳元で呟いてしまうので

中々意識が戻らず、

お母さんはエメリヒさんに「邪魔です」とリビングに追われてしまい、


私は、お父さんを拭こうとして走って

水に滑って転んで着地した先が、

お父さんのお腹の上だったので…

「ほんと邪魔」と引き離されてしまいました。


「じゃぁ僕は一度家に戻るから。

何かあったら呼んで下さい」

「ありがとう。レイラにも伝えて」

「はい、お邪魔しました。バニラ、カカオ、お前達は家でご飯だよ」

「にゃ!」「なう!」

「はいはい、スープ入りがいいのね」


ありがとうございましたエメリヒさん。

猫語すんなり伝わってますよ。


レイラは我が家のご飯を作り終わった後、

ジェイムズさんの畑へ行ってしまったとか。


「さぁ、少し遅れてしまったけど

ご飯をいただきましょう。メリー、

せっかく作っていただいたのだから、

残してはいけませんよ」


昼食のメニュー

茹で潰した大量の芋、茹でた大量の豆。

大皿に置かれたイノシシのモモ肉ハムがどーん。


素材と塩の味を存分に楽しめる品揃え


「…兄ちゃん、聞いたことはあったけどさ…一般的な家庭料理って…」

「これが普通だよ。三食同じ。

肉がスープになるか、芋が固パンになるかの違いだそうだ」


村だけでなく、隣町でも食卓の内容は似たり寄ったりですね。


「うちもね、親の代まで宿で出す食事は、芋、豆、肉が基本で、夜にだけシチューを出していたのだけど、

カルロは知ってるわよね」


「お父さんがまだ姉さんぐらいの年で家の手伝いをしていた頃、泊まり客がうちのシチューを食べながら『ありがたい、やっと人間の食い物が食べられた』と泣いたのがきっかけだっけ?」

「泣いた?その人はそれまで何を食べていたの?隣町のお店が閉まっていたの?」


そのお客様は、山の向こうからの旅人さんだったのですよ。

ここは山に囲まれた辺境ですからね、

他国から山を超えて来られた方々に

とっては数ヶ月ぶりの人里になるのです。


「あの人もね、最初は何を大袈裟なと

思ったそうなの。ダニエルの言う通り、距離はあるけれど、隣町まで行けば美味しいお店もあるからね。

でも、お父さんは逆に考えたの」


__あの山を超えて来る客がいるなら、逆もいたよな。

__俺の宿を最後に、あいつらはこれから朝昼晩とマズイ保存食しか食えないのか。


「それで、『俺は美味い飯を作らんといかん!』っと家出同然に飛び出した

修行先にいたのがお母さんでーす」


か、可愛いです。お母さん!

拍手ですよ弟君たち!


「それでな、ダニエル。脱線しそうだから戻すけど、母さんを嫁にして

宿を継いだ父さんは、美味い飯と酒を出す宿にするために努力したんだよ」


「最初は苦労したけどねぇ。割高になってしまうし、山越えのお客様には好評でも、村で唯一お酒を出す酒場としては、村の人からは非難されたわ」


食事を出す店は、宿から客が出て来なくなった。営業妨害だ!と言って、

親戚ぐるみでうちに野菜や肉を下ろさないように、営業妨害したそうです。

意味がわかりません。


「メリーに苦労させてしまったわ。

貴女がうちに来た頃は、まだおかみさん達に嫌われていたから」


「僕この前、ケビンさんの婆ちゃんに

『後ろに立たないで!』って泣きながら走り去られたんだけど」

「そうだね。あと僕らを見つけると

必ず馬から降りて、僕らが通り過ぎるまで待っているけど、この村だけだから気をつけように」


あの頃は、お馬さん達と『感動の再会ごっこ』が流行ってまして。


悪い魔女に馬に変身させられてしまった王子さまと、兄を探して三千里の妹。


長い旅の果てに再会した兄妹。


お互い駆け寄るが、あと一歩のところで躊躇う。


『妹、か?』

『兄さん?兄さんなの?』


そして熱い抱擁!


までが定番ネタでした。皆さん演技派でいらっしゃいましたよ。


「そうね、暴走した馬の持ち主が

偶然私たちに嫌がらせした人達だった

だけよねぇ」


「僕はこれから、お姉ちゃんの友達になってくれたレイラさんを尊敬しなきゃ」

「早まるな。筋書きを書いたのはどうせあの兄妹だ」




__そういえば。

あの頃、怒られた記憶がありません。


教会の節約した食事で育った私は胃が小さく、量が食べられずにいて。

せっかくの料理を残してしまっても、

お父さんはゆっくり好きなものを探そうなと笑って。


動物と話せると知った時だけです。

お父さんが私に恐い顔をしたのは。


両親が忙しい時間は、宿の裏に作った畑が私の遊び場で。

私はお友達になった鳥さんとお話しをしていました。

小さな子が動物に話かけているだけと

こそこそと犬や鳥と話しをする私を

最初は微笑ましく見ていた両親でしたが、


__もう、雪が降ったの?

__積もっちゃうと大変だったね。


冬にはまだ早い時期に何故雪の話しをしているのか。

心の端に留めた、小さな私の呟き。


__お父さん、馬車が来たよ。お客様は4人だって。


三人組の客が、後で合流するからと四人分の部屋を求めた時あたりで


両親は私に「動物と話ができるのか」と初めて聞きました。


教会の人達のように、怒鳴られる。

__気味が悪い__頭のおかしい子だよ__何かに取り憑かれてるんだ


また、教会に戻されてしまう。


動物の話なんてわからない、

勝手に自分から話しかけて遊んでいただけと嘘を言っても遅いのだ。

きっとまた失敗していたのだ。


恐い顔をしたお父さんは、私のスカートに手をかけて一気に脱がせると、

私の腕を掴んで、歩き出したのです。



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