回答者・ウィービー家&隣家
どうも。父のお膝の上にメリーです。
これからちょっと真面目な話をしなくてはいけないのですが、
父の涙が止まらない為、
メリー、頭に布をグルグル巻かれてます。
お客様用の花柄シーツ
父の涙と鼻水の落下防止だそうです。
父が干からびてしまうのではないか心配です。
__回答者・ウィービー家&隣家
レイラさんと弟君達は、昼食の準備に行ってしまいました。
川魚の燻製は超しょっぱい版を残して全て没収です。
塩を2倍揉み込んだこれは、細かくほぐして少量をパスタやシチューの味付けにするつもりで作ったのですが、
父がエメリヒさんと母の会話を邪魔しない用に、塊のまま父の口に突っ込まれてます。
「塩分補給できて丁度良いわよね」
喉の渇きが気になります。
「それで?ガントレ子爵がメリーを奪いに来るかもしれないから、メリーは両親の私達を冤罪から守りたくて、
「養女」がどうたらと言いふらしていた。で、いいわね?」
左様にございます。
「都会のことはわからないけど、エメリヒ。姿形が似ているからって娘ですって、無理矢理すぎない?」
「貴族はデビュタント時に肖像画を作ります。18から20才の頃であれば丁度今のメリーと姿形は似ているどころか
本人そのものに見えたでしょう」
「たかだか絵の一枚が証拠になるわけ?」
「証拠に、する。それが貴族のやり方ですよ」
サロンに夫人が押しかけると同時に、
私が滞在させて頂いていた
フォード辺境伯のお屋敷には、ガントレ子爵本人が乗り込んだそうです。
『品評会で優勝した娘は、ガントレ子爵夫人の生き別れの娘である。彼女は今、サロンで実の母と再会した。
よって今後は貴族の娘として育てるので彼女の荷物を渡すように』
辺境伯は私の付き添いで留守なのを
知っていて、でしょうね。
随分と横暴な態度だったそうです。
「辺境伯様は、子爵よりも身分が上なのに、そんな無理が通ると思ったのかしら」
もちろん礼を欠いた訪問です。家宰の方は毅然とお断りになったそうです。
けれど、面会相手は田舎村の村長。
いかに子爵夫人が美しく(過去)そっくりであるか、また社交界では常に話題の中心(賭け事の負債、投資の失敗、
結婚前、後に関わらずの不誠実な男女関係)であり、
今後は貴族の娘として華やかな毎日も約束する、育て親にはもちろんこれまでの養育費を払う、
健やかに育てた村へも感謝の気持ちで礼金を用意するつもりだ。
「あのクソボケジジィ、金に釣られたわね。ちょっと母さんお仕置きしてくる」
「僕ぁ、後日でいいと思うなぁ、村長は謎の下痢と冷気に襲われて、トイレの住人だそうですから。あはは」
「あら、村娘に人気のアレかしら」
レイラと奥様からの二重攻撃かな?
「絶対治療になんか行ってやるもんか!」
あはは。いやいや。
村長は見事に言いくるめられて、私の私物を差し出したそうですよ!
本人の帰りを待たずに子爵は荷物をぶん取ってそそくさと帰ったのに、
おかしいと思わなかったそうですよ!
「受賞者はここぞとばかりに個展を開くから、出品作以外の絵を持参しているとでも思ったのだろうね」
着替えと、村へお土産の香辛料、砂糖が入った箱も!
あとお姉さま方に頼まれた流行本も全巻届いたばかりだったのに!
もちろん村長の小遣いで買い直していただきましたけどね!
「メリー、流行本ってなぁに?」
注文リストによるとオタンビ本?だそうです。豪華な旅行本ですかね?
中身が傷まないように、何重にも包装されていたので、中身は読んでないです。
「…耽美本を持ち帰った子爵と、買い直しさせられた村長。笑えるわ」
家宰と侍女さん達の判断で、買い替えの出来そうな大きな物だけを箱に詰めたそうで、下着や細々とした物は無事でした。
「メリーの私物は厨房に預けていたのじゃないの?」
はい!さすがお母さん!
滞在初日から入り浸りましたからね!
王宮の厨房も民間人は決して入れないのに、王子さまのお計らいで見学を許可していただきました!
サロンでも王妃さまや貴族の奥様達にお菓子やお茶のことを教わって、
…あの変なおばさんが現れるまでは、
とっても、…とっても楽しかったのですよ。
「王宮の厨房はすごいな。メリーのことだから、調理人を質問責めで追い回すぐらいはしてそうだけど」
陽気なおじさ、王子さまが、呼び出した詫びにと。行商人さんが、画家は本業ではなく、料理好きの村娘が描いた絵と紹介されたのを覚えて頂いていたそうです。
「宝石やドレスよりも、メリーにとって嬉しい事よね。よかったわね、メリー」
はい。
おじさ、王子さまには逃亡、脱走の際も手回しをして頂いて
「王子さまはもちろんだけど、行商人さんから貴女の魅力的な所を紹介してくれたから、快適に過ごせたのね。
感謝しなきゃね」
はい!それはもう!
結局すれ違いになってしまったのですが、後で事態を知って、とても心配して何度も何度も謝罪のお手紙も頂いて、申し訳ないです。
「…あなた」
「…ぐすっひくっ。な、何?」
「…これまでは、まだ大丈夫?」
「うん?ひくっ、可哀想なメリー、せっかく楽しかったのに、邪魔されちゃったんだなぁ」
いえいえお父さんっ、
お茶もお菓子もお腹いっぱい食べましたよ(マダム達による餌付け)
毎日新しい料理を教わって(王宮調理人、辺境伯調理人の孫年齢に弱いジジィーズ)
自分では集められなかった食材や器具もお土産に出来て(辺境伯侍女軍団によるバカ村長の酷使の結果)
お馬さんとピクニックして帰って来れましたしね!(盗賊団を強襲ついでに強奪)
「そうか。うんうん。メリーは良い子だなぁ。自慢の村娘だよ」
お父さん、頭の布でぐりぐりはだめです。
メリーの首がもげてしまいますっ
「エメリヒ」
「心臓が止まったらどうにかしますよ」
「頼んだわ」
「ひっく、ぐすん」
「メリー。経緯はよくわかったわ。隠していた事、私達を頼らなかった事、一人で解決しようとした事は
とても残念だけど、これはね、
保護者の、大人の問題よ。貴女の信頼を得られなかった私たちが悪いわ」
そ、そんな事はありません!
メリーが、メリーが悪いです!
「お黙りなさい。メリー・ウィービー。
全てを知った今これからは大人の仕事です。口出しは許しません」
「母さん、あまりメリーを責めないでやってくれないか?」
「黙れ、熊公」
「ひぃぃっ!」
ひぃぃっ!
「ここ数日、メリーはほとんど食事を取っていません。それも気づかないなんて、あなたはメリーの胃袋担当でしょう!」
「ここで父親でしょうと言わないのがウィービー家なのかな。
君は作りはしてもほとんど食べてないだろう?粉屋も金物屋も、やつれている君を心配して僕に一度見てやってくれってさ。
レイラ手製の菓子を一口でやめるだなんて、こりゃ重症だと思ったね」
「メリー、メリーごめんよぉぉ!」
お父さん!そんなっ!そんなっ!
「本当に心配だわぁー。可哀想なメリー・ウィービー。こんなに一人で悩んでやつれちゃって。行商人さんに相談しないとー」
………え?
「いやぁ去年から不安だったのでしょうねー。誰かに相談したかっただろうなー」
………え?
「行商人さんなら貴族のこともお詳しいしねー。常宿にして頂いてるからねー。相談相手には最適よねー」
………え?え?
「ん?どうしたメリー、お前たちも。
行商人がどうかしたか?」
「メリーの『将来』について、行商人さんと、じっくりお話しをする必要があるって話よ。ね、メリー」
「まぁ行商人なら詳しいだろうが、
王都のことなら、両替商が親戚がいたろ?急ぐ話なら、」
「メリーの好きな人が行商人さんだからに決まってるじゃないの」
えぇ!うぇぇぇ⁈
「」
「エメリヒ、心臓マッサージ」
「はいはーい。やっと僕の本職でーす」
お父さん!おお父さぁぁん!
えぇ!うぇぇぇ⁈