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フェゴールとファッキンファンタジー  作者: 伊左坂ぐうたら
第1章 また来たよ、ファンタジー世界編
3/29

ゴクリッ! 湯けむりまみれの秘湯の奥で美人な2人がにゅふふん♪

※登場人物紹介(その2)

※タイトル詐欺になるかな~~。大してエロくもないし。

 温泉と言えば露天風呂である。異論は認める。

 だが、露天はいいぞぉ、カメラの天敵『湯けむり』が少ないからなぁ。

 全くないとは言えないが、レンズが煙って肝心の部分がガードされる心配が減る。

 自分はハンディカムビデオカメラの状態チェックを済ますと、中腰の姿勢になった。


 違う。マイサンが元気になったとか、そんなのと違う。

 今から『隠密』行動に出るからだ。

 ステルス侵入ゲームやったことないかな? そういうゲームで<ステルス状態>と表現される場合、だいたい中腰になることが多い。

 歩行速度が遅くなるのは欠点だが、何といっても音が立たなくなる。

 これは、覗きに限らず相手の懐を探るミッションではほぼ必須スキルだ。

 なに? 段ボール? 俺は伝説の傭兵じゃねぇから、いらん。

 第一、今から行く場所とは全然場に溶けねぇじゃねぇか。

 え? 誰と話しているのかって? 右脳のリンゴ。やっぱ、アイツも男だねぇ。



 まぁ、それはともかく、次に来た異世界でもまたモナの発見した露天風呂に侵入した。

 そして、自分の建てた温泉施設だから、侵入者警報システムの死角の場所など丸分かりで、危なげなく更衣室を脱し、風呂に入った。

 ……んだが。


「もう、こんなに濡れちゃって……いけないワ」

「ベネリだって、ビショビショじゃないか」


 2人が更衣室の出入り口に一番近い場所で、ワザとらしくいやらしい声まで出して水の掛け合いをして待機しており、視線が合うや手招きされた。


「…………」

「どうしたんだい、隊長」

「ビデオの真似をしてみたんだけど、お気に召さなかったかい?」


 思わず考え込んだ自分に、ベネリとライカが声をかけてきた。


(いや、温泉入っているんだから、濡れていて当たり前か)


 ちなみにライカが言っているビデオとは『激濡れ女○校生ファンタジー、私たち、もうすんごいのっ!』ってタイトルだ。

 その昔、煽りを真に受けて、期待の眼差しと震える手でビデオテープを再生したら、制服姿の女2人が水かけっこしてキャッキャッしてるのが、えんえん20分続いた(収録時間は25分。残り5分はスタッフロール……)。思わずビデオテープを叩き壊しそうになったものの、高い金を払った勿体無さからどこかへと仕舞ってすっかり忘れていたが、まさかライカの手に渡ってわざわざ再現されるとは。そうか、コイツが黒歴史ってぇヤツか。

 だが、ビデオの中身の貧相ななんちゃって女学生モデルと違い、ここにいるベネリとライカのプロポーションスペックはすんげぇ。

 思わず眼福の表情でサムズアップして答えておいた。


 せっかくのカメラが何だか所在なさげだったので、急きょ予定を変更して、プロポーションビデオ作品を撮ることにした。ついでなので、カメラ視線を意識した品をつくる2人を紹介しよう。


 まずはベネリ。前回シグを紹介した際、チラリと名前が出てきたが、元暗殺者ギルドのギルド長にしてメイド長をやってた銀髪褐色のどこにでもよくいるダークエルフである。

 何を言っているのかわからねー……と思われたので説明すると、以前は、前の世界から送られてきたシグやベレッタといった手駒を用いて、普段は世を忍ぶ形でメイド店(確か『メイド長メイちゃんのメイドの置き土産』略して『メイメイ』。自分が妙に詳しいのは行きつけだったから)を営業しつつ、裏ではというか夜になったら当時の暗殺対象だった自分のところに殺し屋兼昼間のメイド従業員を何人か差し向けてきていた。

 彼女にとって誤算だったのは、自分が返り討ちにした殺し屋を次々と転職させて、家に住まわせた&ガードマンも兼ねさせたため、再利用できる手駒がなくなり、それまで彼女が築き上げた立場がクライアント離れにより非常に微妙になったことだろうか。そのため、上に立つ者としてはやってはいけない最後の手段(彼女本人による暗殺)を遂行しようとして、『ミイラ取りがミイラ取りになる』ということわざ通り、異世界での仮住まいであるファッキンガムハウス(元ネタは伏せる)にてメイド長を務めることとなった。


 戦闘力として特記すると、ダークエルフらしく爆発系の魔法や各種デバフ(ステータス値減衰)魔法に秀でている。だが、魔法発動よりも手早く高威力なグレネードランチャーやロケットランチャーの存在を教えて以来、戦闘出撃の際に装備するようになった。

 そういえば、現実世界では武器知識を詳しく知りたいからと軍隊に入って、重火器の扱いと関節技を極めてきたっけな。どうでもいいが、火曜日はベネリから寝技の実習を教わる日だ。彼女曰く『接近戦闘技術をひとつでも習得しておいた方がいざという時に役立つ』とのこと。今のところ、夜のベッドでのプレイ以外に使い道がないんだが、まぁ、訓練は続けている。

 最後に、本当にどうでもいいが、ベネリは自分のことを『隊長』と呼ぶ。呼び名にこだわりがないので好きに呼ばせているが、正直、こんなオッサンのどこに『隊長』と呼ばれる資格があるのか、自分にはわからない。いつか聞いてみようかとも思うが、本人の口から零れたときに納得したほうがいっそう彼女を知るきっかけになる気がしたのでそのままにしてある。


「しかし、あれだね。ダークエルフは何でこんなにおっぱいが大きいのかね」


 そう、ベネリのおっぱいは爆乳である。モナのオトナ形態の魔乳スイカと比べると1段階落ちるがそれでもメロンが2つ、自分の目の前でユッサユサと揺れている。けしからん、実にけしからん。


「隊長、アンタも正直だよな。この話の流れを作っておいて、急におっぱいの話するんだもんな」

「おっぱいは正義! と他のラノベの方も申してます。俺は、間違っていない」


 そうだ、漢の視線でカメラを回すと、必然と行きつくのだよ。あとはお尻だったりパンツの絵柄だったりなラッキースケベを期待するのが、漢。風よ、吹け。湯けむりを払い飛ばせ。



 とヌフフな展開を期待してベネリばかり撮っていたら、背中を思いっきりつままれた。

 一応補足すると、自分、既に入浴中のベネリ&ライカの2人と一緒に湯船の中にいる。イサカは外で待機中で、ついでにシグとベレッタの仕事の出来具合をチェック中だ。

 

 で、背中をつねった彼女の名はライカ。褐色の肌に自分と同じ黒髪が映える情熱の人である。

 フラメンコやタンゴといった社交ダンスとアルコール度数の高い酒をこよなく愛し、目の前の悪を見過ごさない、正義に篤いひとだ。

 ……のだが、彼女もまたベネリのギルドから派遣された暗殺者だった。いや、本人に暗殺者の自覚はなかったな。というのも、自分を【正義】の名の下に断罪せんがために、ズカ系の衣装とも世界的に有名な闘牛士クラスの派手な衣装に身を包み、討伐の名目を語りだしたからだ。

 演説が終わるや否や、愛用のエペによる皆伝クラスの剣術を振るいつつ、【ストライカー】という装填数の多い散弾銃を巧みに扱い、突剣だけではどうしても攻撃手段が単調になる欠点をうまく補った賢い攻め方をしてきたのを思い出す。

 え? どうやって倒したのかと。

 卑怯とよく言われるが、幻像で散弾銃の弾切れを誘引し、突剣だけの攻撃手段になったところを、唯一の超至近距離攻撃手段で絶命させた。対策を立てられていたようでちょいとばかり硬い胸当てが仕込まれていたが、関係なくズブリと心臓を貫通し、決着をつけた。


 ふと、目の前のライカが自分にまぶしい笑顔を向ける。

 自分が手を振って応えると、バスローブで身を包んだライカがどこから取り出したかバラを咥えつつ、その場で艶めかしく踊り始めた。

 裸で身体を揺らしても何とも思わないのだが、布きれ一枚が身体を包むだけで、見えなくなった部分への想像力がかきたてられ、何とも言えない悩ましさを創り出している。

 そんな今でこそ完全な『女』であるライカに、ふと決着直後の出来事を思い出した。


 決着直後、死後硬直によりライカの下半身が急に膨らみ始めた。

 何だか『もっこり』しているように見えたので、おそるおそるズボンを脱がすとご立派なテントが張られていた。そして、ムワッとイカくさい臭いが立ち込めた。死後硬直により本人の意思とは無関係に勝手に射精が起きたからだ。

 ライカは元男だった。だが、女の子に見えてもおかしくない顔立ちをしていた。

 いわゆる男の娘でも通用しそうな美貌なのに、わざわざズカ系である。

 シグやベレッタとは一味違った、深く立ち入ってはいけない心の闇に感心した記憶がある。


 【儀式】合格者として生き返らせる際、自分はその部位を斬り落とし、生前の彼女が望んで止まなかった女の身体へと作り変えた。

 彼女を一目見て『美人だなぁ』と思ったのだ。女の身体が欲しかった気持ちが死の間際の電気信号とともに流れ込んできたのもあって、勝手に肉体改造を行い、どうせなら合体後の楽しみがずーっと続くように身体感覚の仕組み自体の改変にまで及ぶなど、全然遠慮しなかった。

 【儀式】のとき、大変喜ばれたので判断は間違っていなかった。


 ライカは情熱のひとだ。興ののったダンスには相方が必要だ。

 目力のこもった視線でこちらを挑発してくるので、こちらも立ち上がり、挑発に応じた。

 そのくせゆっくりと近づいて少し焦らしたのち、ライカの手を取った。

 どこからともなくBGMが流れてきたので、音楽に合わせて激しくキレッキレッに踊り、最後のポーズまで決めた。フルチンブランブランとバスローブの踊りがさまになるかどうかはともかく、フィナーレの最後はモナに行ったのと同質の濃密なチューで締めくくった。

 どうでもいいが、自分はチューが好きだ。好きな人の数だけチューをするし、目の前の危機を脱するときにもチューをして誤魔化すこともある。

 チョロイン限定だけど、チューって便利だよね。

 ちなみに、自分はチューのことを『キス』とは言わない。これは、パンツのことを『パンティー』と言わないようなものだ。

 なーんかね、恥ずかしいのだよ。


 さて。

 湯あたりか場酔いか不明だが、直後、ライカがグテングテンに顔を真っ赤にして倒れたので、脱衣場まで運んでおいた。そばの休憩室は畳が敷いてあるので、その上に寝かせ、首振りの扇風機からの風が軽く当たるぐらいの配慮はしておいた。

 バスローブ姿の寝姿も様になるライカの頬を軽く撫でておいた。別のところを撫でることも可能だが、健全燃焼したはずの情熱が途端にカッカッカッカと烈火のごとくヒートアップしそうなので、今回は止めておいた。


 休憩室のソファでまったりしているとベネリが缶ビールを渡してきた。2人で数缶ほど飲みながら、夏の甲子園の試合中継を見ていた。

 たまたま自分がその昔お世話になっていた県が映っていた。9回表で最後のバッターが空振り三振し、初戦敗退だった。

 天孫降臨神話が息づき、数多の元神々を受け入れる懐の広い県であるが、その分、他力本願が他の県民よりも強いのだろうか、人間力が弱い。強いて長所を挙げれば持続力スタミナは素晴らしいが、瞬発力パワー不足は解消の糸口が見えない。

 んー。

 何だか自分のことにも通じており、他人事ではないね。


 ライカがまだのぼせていたので、服を着直した後、おぶって温泉施設から出た。





 外ではイサカ・モナ・シグ・ベレッタが般若の顔つきで待ち構えていた。


「なかなか出てくるのが遅いと思えば、ライカの表情が物語っています。フェゴール様、あまり私を失望させないでください」

「お主、今日は月曜日じゃ。ワシとの日じゃ。ルール違反じゃぞ」


 イサカとモナから順に非難された。

 あー、遅い理由をそういう風に受け止められたか。

 日ごろの行いもあるが、おんぶされたライカがのぼせているわ、どこか恍惚としているのも遠因か。

 風呂の中で真面目に踊っただけなんだけどなぁ。

 確かに身体を縦に横に激しく忙しく動かしはしたけど、至って健全なんだがなぁ。


「しかも、お前、昼間っからビールとはいい身分だな。こっちは仕事で忙しいんだぞ」

「ですよぉ。ベネリさんも一緒になってビール飲んでたんですか?

 少しはメイド長らしくビシッと断って、先輩らしさを出してくださいよぉ」


 何だろう、シグとベレッタのふくれっ面が無性に可愛らしい。

 糾弾されている立場でなければ、なでなでしたいところだが、今回は縁がなかった。


 …………うむ。

 かなり立場が弱いな。いつものことだが。


 とりあえず、誠心誠意の土下座を4人の目の前でやって、反省の姿勢をきちんと伝えたあと、4人のリクエストにこたえる形で仕事をすることで赦してもらえた。


 ベネリ?

 珍しくビールだけで酔いつぶれていたので、ライカとともに4人が寝室に運ぶことになった。


 ひとりポツンと残された自分は、少し考えたのち、医療施設の方へと足をのばすことにした。

2014/03/08 読み直した際の違和感を解消。加筆修正。

2014/03/17 漢字の間違いに気づき、修正。

2014/03/24 縦読みで見たときの違和感の解消のため、一部記号を修正。

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