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フェゴールとファッキンファンタジー  作者: 伊左坂ぐうたら
第2章 死者の国で、アルマゲドン
19/29

vs カーリー

※忘れたころに連載再開です。3か月もほったらかしにしてすみません。

 カーリーと向かい合ってみる。

 ガンをつけられたと思ったのか、向こうは雄叫びとともに威嚇してきた。

 どこからため込んでいたのかと思うほどの大声に、ウィンとベレッタが委縮して、尻餅をついた。


「おーい、そこの龍娘。チト悪いが、ここの2人を戦闘区域外に避難させてくれ」


 すこし惰眠をむさぼっている風に見えなくもないバトルレオタードの姉ちゃんに声をかけてみた。 

 起こされたことに対して、少し不満のある表情だった。

 そのことに対してはすまないとは思うが、こっちもヒマじゃない。

 身振り手振りでこちらをアピールし、龍娘を誘導した。


「戦……い?」

「まぁ、そうだな」

「手伝……う?」

「ありゃ、そりゃあ助かるわ。よろしくな」

「頑張る」


 不意に声をかけられたというのに、戦闘態勢に興味を持たれて、物は試しとばかりに頼ってみたら仲間になってくれた。

 龍娘が手持ちのバスターソードで身構えて、早速、カーリーをけん制し始めた。


「神聖な……」


 真剣であるはずの剣戟のやり取り中のカーリーが、突如、セリフを切った。

 珍しいこともある。いつもなら、バッサリと言い切る女神なんだが。


「フェゴールよ」

「何だろうか、カーリー」

「お前の日常は、いつも”こう”なのか?」

「”こう”とは?」

「貴様はいつからナンパキャラになった?」

「いやいやいや、カーリーさん、誤解でんがな。自分は基本的に、現実世界の生きている人間の女の子には嫌われているから」

「生きている?」

「生きている子に相手だと声をかける以前の雰囲気で大抵の子は逃げますね。稀に耐性がある子がいるんですが、それが彼女たち。で、今の彼女たちは死んだ直後に神族の仲間入りをさせたから、アンデッドではなくて、女神候補生。今回はイサカが女神化待ち」

「いっぺんにまくし立てるな」

「おや、カーリーは脳筋キャラだったか? コイツは失礼」

「お前の言葉は時々よくわからないが、バカにしたのは分かる。例だ、取っておけ」


 とか言いつつ、龍娘のガードで防がれた分以外の腕(4本)がギュンッと伸びて、片手剣が迫ってきた。


「にゃにゃにゃ、ピンチのときのヒロインにゃ」


 さっそうと登場するラム。そして、サブマシンガンを構え……案の定、弾が出てこなかった。


「おいおい、弾込めせんで発砲できるか。聡子、ラムにもう少し銃のことを教えておいてくれ」

「了解です、マスター」

「にゃー、おぼえとれよ~~、”あいるびーばっく”にゃー」


 ”私は必ず戻ってくる”をわざわざ英語化とか、なにこの猫、こわい。

 まぁ、それはともかく、現状把握。


◆龍娘、6本の腕からの攻防に押され気味。


「ベネリ、ライカ、メリジェーヌに加勢してくれ」

「そのメリジェーヌさんとは、あの子のことなんだろうね」

「ハッ、アイツのセンスにしてはマシなネーミングな方だぜ」


 ベネリとライカが走りながら通り抜ける際、こちらに聞かせているのか2人だけの会話かわからない声を拾った。

 うむ。とっさのネーミングとしては悪くないのでは? 本家がどんな子だったかは忘れたが、半人半龍だったのは確かなはず。

 龍娘は2人の加入で、初めこそはぎこちなかったが、すぐに動きがよくなった。


◆聡子とラムは勉強中。


 ラムはやや出来の悪い猫娘だ。だからこそ、聡子の教師魂が発動し、”いかにわかり易く教え、頭に入れるか”に、聡子がやる気を出している。

 あんな聡子さん、ワタシ、観たことないよ。

 正直、ラムの加入の微妙さを感じないことはなかったが、聡子と組ませることで真価を発揮した。

 付喪神は、いい仕事をする。この戦闘のあと、お礼をしておくか。


◆イサカは大人しく観察している。


 エルザ&エイミアの監視が必要ないぐらいだ。

 ……と思ったら、何かブツブツ言っていて、その都度、2人の天使が自分を見て、納得したり、残念な顔をしている。

 相変わらずよく見ているなぁ。

 平時だったら、イサカがリーダーシップをとって、自分が切り込み隊長をしている。

 経験不足からくる指揮統率力のまとまりのなさは、実感するところ。

 イサカに手助けを求めたいところだが、シェラが黙ってはいまい。


◆後方支援組、各種ポーションを作成中。


 と言っても、作るのはウィンだけ。ベレッタとシグは護衛。カムとチェスターがウィンの手伝いに右往左往している。

 カムとチェスターは、長いこと扱いを決めかねていた。

 能力がメイン8人と比べ、劣るとは言わないが、差はあった。

 その差は、平時はともかく、こういった非常時には使い勝手が微妙で、こちらの期待に添えられない時がままあった。

 何度かそういう気まずい出来事のあと、ある日の夕食後、2人は万能型の支援側に回ることを宣言した。

 その後は、働かないベネリの穴を埋めるべくイサカやベレッタとシグのもと、メイド業に精を出し、聡子やウィンの捜索&創作活動のサポートで成果を出した。

 そうやってみんなから認められて、はじめて自分は自分以外立ち入り禁止としていた武器保管庫への立ち入りを2人に認めた。

 最近、所帯が増えたので、パートナーズに回す武器の選定や試射、掃除が追いつかないなー、と思っていたところだった。

 元々が武器の付喪神だったので、これらの扱いにこちらが怒鳴ることはなかった。

 選定と試射に限り、カムは「ほぼ本能ッス」とか言いながら、こちらの要望を叶えてくれる。

 掃除以外は筋が良かった。

 掃除が何でダメかというと、色気を含んだ声でよがり始めるからだ。

 チェスター曰く「マスターの掃除はエロい」とのこと。

 師匠モナは、初めての銃基本操作のときに「銃は女の肌だと思い、丁寧に扱え」と教えたが、それが巡り巡ってこんなことになろうとは……。

 よって、掃除のときだけは残念だが追い出すことにした。放置して床に変なシミでもつけられちゃあ困るしな。断腸の思いだ。

 あと、カムとチェスターはメイン8人と比べると、影が薄いので「隠密」のスキルの授業を受けさせた。

 現在、シグを斥候に用いているが、前回の門番戦での情報収集にてとっさに身体が動いてしまう点を踏まえ、冷静さに今ひとつだったので、彼女たちに斥候のプロを目指してもらうことにする。

 この方面では、チェスターの筋が良かった。


◆モナ、スナイピングポイントまで移動中。


 ただっぴろいだけの起伏もないエリアに、スナイピングに最適な場所があるかと訊かれたら、「モナなら答えを見つける」としか言えない。

 かつて”雪原の雌豹”として、居住区への侵入を図るならず者を駆逐していったモナだ。自分にはない経験値がモナを行動に駆り立てるのだろう。

 そっとしておいとくが吉だ。


 とまぁ、こんなところだろう。

 パートナーズを動かしたら、あら不思議、自分に心の余裕ができた。

 以前だったら、何でもかんでも自分一人で背負ってたからねぇ。

 一人で身体に甚大な被害を負って、そのたびにみんなに怒られた。

 「もっと私たちを頼れ、頼られて喜んでいるほど私たちは弱くないから」と。


 実際、そうだったので、自分は聡子とラムの護衛兼対物ライフルでベネリたちの援護に回ることに。

 6本の腕のうち、1本の持つ剣と手を対物ライフルの破壊的な威力でダメにしておいた。


「この卑怯者めが、ひとりでは何にもできないのか!」

「ひとりで6本の腕と向かい合う勇気はないな。

 みんなと一緒に困難と立ち向かう。これが自分の戦いのスタイルだ」


 言われたから言い返した。

 心なしか武闘派のパートナーズが自分の発言に力を得て、へばりつつあったスタミナが意志の力で盛り返したようだ。





「にゃにゃーん! わたちは帰ってきたのにゃ」


 ベルフェゴール式銃システムを理解したラムが、早速、自分のもとに駆け寄ってきた。


「さぁ、早くブチュッとするにゃ」


 要は、チューである。実は、このチューこそが”弾込め”になる。

 以前の世界では、ベッドの上での行為で”弾込め”をしていたが、それだと弾が過剰に余るとの指摘があり、自分は抵抗したが多勢に無勢で、泣く泣くシステムをチューに切り替えた。

 これだと、一回のチューで約1000発しかストックされないが、大人数に素早く補給出来るのが強みと云えば強みか。


「押し倒したら、残弾数が10億なのになぁ」

「そんなことをしたら、どっちも疲れるにゃ。何よりも不謹慎にゃ」


 おっしゃる通りです。しゃあーないので、チューしました。普通にチューしてもつまらないので、ガリッとひっかき攻撃が来るまでチューーーーしておきました。

 解放された直後、息継ぎでへばってる猫娘、かわいかったです。


「残弾数は1万だ。100を切ったら、迷わずこっち来いよ」

「合点だにゃー。わたちを敵に回したことを後悔させたるにゃー」


 どこかのレイダーみたくサブマシンガンを天に掲げて、カーリーのところへと駆けていきました。そして、両手のサブマシンガンを一斉射撃させて、一番効果の高かった顔に集中して弾を浴びせています。

 カーリーからすれば、途切れない豆鉄砲をずっと浴びてうっとうしいのでしょう。

 時々威嚇して、尻込みさせようと目論むも、ラムの場合、「ヘンな顔にゃー」と笑っている余裕すらあります。なかなかに頼もしい性格です。


「隙……あり」


 龍娘がラムに気を取られて疎かになった胸元へ、バスターソードを突き刺しました。

 姉さん(アジ・ダハーカ)の骨が材料になっているバスターソードの貫通力はなかなかのもので、カーリーの装着している衣服のような鎧を易々と切り裂き、背中まで貫きました。


「しくじ……った」


 どうやら、バスターソードでの攻撃で心臓を狙えなかった模様。しかし、身体を貫通させる攻撃により、カーリーは大きく怯み、攻撃の姿勢が、剣を盾にして攻撃してくる相手の隙を窺うという守りに転じました。今までのカーリーにはない弱りっぷりです。


 と、どこからか発射音が響き、弾丸がカーリーの額を貫きました。

 カーリーの意識が、真下の4人に釘付けになった瞬間を狙った一瞬でした。

 もちろん、モナの手腕によるものです。


「むむむ……無念」


 額から受けた甚大なダメージを必死に耐えようとするカーリーだったが、今度は真下の4人が、気もそぞろな両手両足に容赦なくダメージを与え続け、そのうち、カーリーは意識を失って前のめりに倒れた。


「やったのにゃ。勝ったのにゃ。にゃははははは!(バババババッ)」


 自分の気持ちを代弁するかのように、誰よりも早く勝利宣言を行うラム。

 気持ちはわかるが、サブマシンガンを撃ちまくるのは良くない。もうちょっと大人になれ。


「おい、マジかよ。だって、バトルジャンキーの女神だろ。ハハッ、信じらんねー」

「みんなと力を合わせた上での勝利です。勝てないはずがありません」

「おいおい、優等生ライカ、そんな事よりも祝杯の用意してくれよ」

「まったく、早速酒ですか? これで良ければ」


 と、ライカが小さな革袋を渡しています。

 封を解いて、中身を確認したベネリが「うまい、ウィスキーだ」と褒めていました。

 ライカの酒好きも相当な気がしますね。


「今回はポーションの出番がなかったですねぇ、ますたー」

「むしろ、それで良かったと思うよ。それを使うときって、大体ロクでもねぇし」

「ううっ、張り切って作ったのに報われないなんて悲しいわ。ドラゴンフルーツ味、試飲させたかった」


 また変わったもんを作るなぁ、このエルフ女は。

 まぁ、せっかく作ったのだったら、味見させてみるか。

 今回の功労者にして、ドラゴントゥースのメリジェーヌにでも。

 というワケで、飲ませてみた。


「……甘い」

「そうですのよ。ドラゴンフルーツは一般的には味がしないと言いますけれど、それは流通の段階で未熟なのが出回るから……」


 ウィン曰くキチンと熟成させたドラゴンフルーツは甘く、それをきちんと感じ取ったメリジェーヌは確かな舌を持つ優れた子という認識だそうな。

 そういうのなら、と、飲みかけのスタミナポーションを回し飲みしてみた。

 そこまでの甘さは感じられなかった。きっと疲れていないからだろう。


「間接……キスした。お嫁に……行く」


 メリジェーヌのいきなりな発言に、思わずポーションを吹き出す自分。

 今どき、間接とはいえキスしたことになっただけで、ここまで展開するとか昭和か。いや、明治か。それ以前か。


「ほほぉ、何やら楽しそうなことになっているようじゃの」


 途中まで、しっぽを振ってくる子犬のようだったモナが、メリジェーヌの爆弾発言を受けて、空気をこわばらせた。


「恒例のビンタ祭りじゃ」にゃ」ですぅ」お前、いい加減にしろよ」その忠告、無駄だと思いません?」

「トップを務めるのはアタシだね」


 トップバッターのベネリからはじまり、モナ、平手打ちじゃなくて爪で引っ掻くラム、真似してグーで殴ってきたベレッタ、踵落としをかますシグ、自己治癒力の進行を遅らせる毒薬を飲ませるウィン、ライカは今回はパス、最初の紅葉平手はヌルイと思ったのかチョークスリーパーかますベネリ、魔乳モードに変身して、幸せ窒息死を図るモナ、心肺停止の蘇生とお仕置きを兼ねた電気ショックでムリヤリ起こす聡子、メインパートナーズの容赦ないお仕置きに腰が引けたのか、アワアワ言いながら「ぺし」と腰の引けた平手のカム、転じてゼロ距離からウィンチェスターM1897をぶっ放すチェスター。


 お前ら、全然『ビンタ祭り』じゃねーぞ、ゴルァ。





 気絶から立ち直ったカーリーは、自分が負けたことを渋々認めた。

 認めなければ、カーリーが今まで受けた傷を治さない、と彼女に伝えたことが大きく響いたようだ。

 神性状態のカーリーは、いわば精神を肉体化して立ちふさがった。そして、その肉体が大怪我を負ったということは、精神状態にもいろいろな傷が出来たということであり、現時点では正気を保っていることができるが、やがて治していない傷口が広がるにつれ、精神状態に支障が出てくる。

 どういうことかというと、自分が何者かであることを忘れることからはじまり、どういう意味があって強大な力を持っているのかの意義を失い、ひたすら力任せにすべてを壊すモノにへと堕天するということだ。

 いや、カーリーたちの世界で言えば、羅刹化であろうか。

 今まで旦那のシヴァに歯向かう者たちと戦うという大義名分のもと暴れていられたのが、ヘタをすれば、旦那自身の手によってその命を奪われるかもしれないという状態に陥る。

 バトルジャンキーのカーリーにとっては、戦いこそが生活のすべてである。

 そんな状態は真っ平御免だよね? という説得を聡子に任せて交渉した結果、カーリーはイサカの女神化を承認した。


 すかさず、ひっさびさの【メシアライザー】を用いて、場の全員の体力を全快させた。

 神性状態のカーリーの傷がたちまち癒えて、そのことに驚くカーリー。


「こんな力を隠し持っているとか、お前はどこまで底が見えないんだ」

「あそこなら簡単なんだがな」


 つい、うっかりどこかの落語の師匠みたくポロリをさせてみた。

 カーリーは「キャーッ」と今どきの女子高生でも上げないようなうぶな反応を見せて、ドロンッと煙に溶け込むように消えていった。


「いつも言っていますよね。私たちのマスターである以上、尊厳を保ちなさい、と」

「おお、お帰り、イサ……カ?」


 いつもの声に振り向いてみると、目の錯覚なのか、腕を6本も生やしたイサカがそこにいた。

 途端にはじまるビンタのラッシュ祭り。

 女神化されているから力加減がセーブされているけれど、一度のビンタが6回連続でパパンッとくるよ。

 まるで「手袋」を逆さ読みさせられた時の罰ゲームだよ。

 うん、「ろくぶて」とか、リアルに喰らうと何の罰ゲームだ、って話だよね。


 ……おあとがよろしいようで。

※職業柄、12月のクリスマス、1月の正月が大変忙しいので、次の更新は相当遅れると思います。気長に待ってもらえるとうれしいなー、と思います。

 目処は2月のバレンタインでしょうか。ではでは、これにて御免。<(_ _)>

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