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フェゴールとファッキンファンタジー  作者: 伊左坂ぐうたら
第2章 死者の国で、アルマゲドン
16/29

受肉と追憶の日々。そして、爆弾。

※警告※

ちょいエロ表現と、作者の妄想が炸裂しております。

耐性のない方はブラウザバックをおススメします。

 アンキモ。

 あんこう鍋が食べたくて、アンコウを釣ろうと頑張ってみたら、衝撃試験用の人体模型が釣れた。

 その時の自分のコイツへの怒りはそこそこあった。なにせ昆布と一緒に引っかかっていたようで、釣り上げるのに往生した。

 昆布をかき分けて、謎の白い物体にライトを照らしたらコイツだったのだ。

 思わず殴ろうとしたが、何故か殴る気になれなかった。

 タギリロンへと迷わず直行し、コンピュータや人体力学その他いろいろの各分野に精通した親方衆ドワーフたちを集め、コイツに命を授けることにした。

 実験はテンポよく進み、成功した。

 目覚めたアイツは、思わぬ生を得たことを非常に喜んでいた。

 そして、アイツは言った。

 『せめて、何かお礼をさせてください』と。

 よって、自分はコイツに名前を授けた。


 アンキモ。

 彼の名前の由来は、そういうオチだった。





 タギリロンへの到着まではまだまだ距離があった。

 なので、ついでとばかりにラムを俺の部屋に連れてきた。

 自主的についてこさせるのが一番平和なのだが、脱兎のごとく逃げるので、直接ラムの手を引いて、自分のベッドの上に投げ込んだ。


「にゃにゃにゃ! にゃにをする気だにゃ」

「儀式と書いてえっちという、それはそれは神聖な行為」

「誰とにゃ?」

「ここにおるではないか」

「ぎにゃー! 断固お断りするにゃ。せめて相手ぐらいは選びたいにゃ」


 ふむ。猫娘のアレルギー反応を見て思う。


 いつもなら、死んだばかりの身体に付喪神が憑りつくだけで、付喪神が自分に寄せている『親愛度MAX』の効果が時間とともに現れる。

 その状態のときに、すかさず『儀式えっち』に持ち込み、神の状態でないと発揮されない自分の遺伝子情報を相手に流し込み、パートナーは付喪神とはいえ『神』認定が行われる。そして、自分の遺伝子情報による各種特性が彼女たちにも適用され、彼女たちはそう簡単には消滅しないようになる。


 ところが、今回の付喪神憑きは魂の状態から行われた。

 自分の時代の頃とは違い、今の神……おっと、転生神に乗っ取られる前の神は、魂を光り輝くモノとして扱っている。正直な話、光り輝く人魂に対して、よく付喪神憑きが出来たものだと感心する。というのも、『憑く』という行為はどちらかと言えば魔性めいている。人魂が光り輝いている時点で神性が宿っており、両者の相性は最悪だ。

 可能性としては、ファンタジー世界あるある七不思議の一つ『ご都合主義』というやつだろう。

 とにかく、”そーなっちゃったもんはしょーがねぇじゃん”ぐらいの軽いノリで、この状況を受け入れるしかなさそうだ。

 純粋な魂の状態からの憑依だけに、付喪神が持つ固有チートまでは発現に至らず、現在のように、やたらと嫌われた状態でのスタートか……。

 シグのときは男嫌いだった前世の記憶と付喪神のラブラブMAX効果がない交ぜになっていて、だいぶ混乱していたが、受け入れてもらうことにより、ラブMAX効果がじわりじわりと効いてきた。現在は、人前では何が何でも拒むが、2人きりだとイヤンイヤンというまったく素直じゃない性格に落ち着いた。


「そうか。仕方ない」

「何がだにゃ?」

「お前の好みじゃないのなら、あきらめるしかあるまい」

「やけに物分かりがイイにゃ。怪しいにゃ」


 ラムが疑いの眼差しを向けている。そのくせ、さっき勢いに任せて半脱ぎさせた肌着を直す素振りがない。死ぬほどイヤなら、疑うまでもなく、サッサと立ち上がり、肌着を直しつつも退室するものだが。


 トントン、とドアをノックする音が響いた。


「シェラか?」

「流石ですわ、お兄様。ノックひとつで私だと分かるなんて」


 アシェラトこと愛称シェラがご機嫌な顔つきで入室してきた。一方、猫の方はシェラを見るや、勢い慌てて走り出し、部屋の隅っこに背中を丸めて震えている。


「何の用事だ。イサカから前もって説明を受けたはずだが?」

「ええ、お兄様がこれから何をなさるかは知っていますわ。ですが、そこのバカ猫が聞き分けがないのでは? と思い、手伝いに来ました」

「はて? 何故、シェラがラムの聞き分けのなさを知っているのだ」


 ラムとは三途の川入口で出会い、シェラとはタイタニック号到着時に出会った。

 ちなみにラムとの出会いは、搭乗口入口でよく見かける、相手にしか解らない意味の描かれたプラカードを人混みの中必死に振り上げていたのを見かけたのが馴れ初め。

 声をかけて、ラムが「アンタが私のご主人様か」どうかを聞いてきたので、その言い方が気にくわない自分が「フェゴール様と呼べ」と呼称変更をさせた。

 残念ながら、まだ認められておらず、お前呼ばわりされている。


「お兄様ならやはり気づきましたか。あのプラカードは私が持たせたのですよ」

「ん? シェラはタイタニック号に乗ってあとから来たはず……ああ、なるほど」

「そうです。この船が一度タギリロンへと乗客を乗せて、再び三途の川へと向かっているときに、私はお兄様とお会いしたのです。バカ猫は私が一度タギリロンに戻るときに初めて会いました。タイタニック号に乗りたそうでいて、誘うと乗ることをかたくなに拒否し、誰かを待っているからの一点張りで話を聞きません。それに何となくですけど、バカ猫からお兄様の気配を感じまして、次の団体の中にお目当ての人が現れるからと説得して、何が何でもプラカードを持たせたのです」

「それはそれは、ご苦労さま。ついでに、ラムが震えている理由が知りたいのだが」

「聞き分けのない子を解らせるには、折檻がつきものですわ」


 とシェラ、微笑みつつもどこからか鎖付きの手錠を取り出してきた。

 すかさずラムに対して投げる。

 ラムが手錠から必死で逃げるが、追尾機能でもあるのか執拗にあとを追ってくる。

 ぐるぐると自分の周りで抵抗していたので、いい加減、うっとうしさを感じた。なので、ラムが自分の前を通り過ぎる瞬間に足払いを決め、哀れラムは派手に転倒して、手錠に捕まり、床の上で力なく横たわった。

 シェラは、今度は叩かれたら皮膚が確実に裂けるであろう極太の鞭を取り出し、床にワザと音を立てて威嚇した。威力が振動となってラムに脅威として伝わった。

 それで前世の記憶を甦らせたのだろう、途端にガクブルと震えだした。

 自分に対し、怯えの眼差しと助けを求める顔つきを示した。


「シェラ、自分のパートナーに暴力行為は許さない」

「お兄様、これは躾ですわ。躾には誉めて伸ばすやり方と痛みを伴うやり方がありますが、このバカ猫の前世は幸いにして奴隷。痛みには慣れているはずですわ。そして、奴隷に正しいことを解らせる方法もこのやり方が望ましいはずですわ」

「~~はず、って解っていてやってないだろ、お前は」

「案ずるよりもまずはやってみることが最善ですわ」


 シェラが鞭を振り始めた。勢いのついた鞭の先端がラムに伸びていく。

 自分はハンドガンを取り出して、鞭の先端を間隔を開けて撃ち、ラムへと向かってくる方向そのものを逸らした。次いでシェラの鞭を持つ手を撃った。今回の銃は、貫通までに至らない威力だが、麻痺させるには充分だった。

 シェラが鞭を落として、「どうして?」と困惑した表情でこちらを向いた。


「シェラ、バアル時代の自分が聞き分けのないお前に対して、ほっぺたを平手打ちしたことがあったね。そのことに対する小さな鬱積が積もり重なって、今、こういう攻撃性にすり替わっているのだとしたら、まず、自分が君に対してきちんと謝らなくてはならないと思っている」

「頭を下げて終わり、ですか? お兄様」

「それじゃあ、納得しないだろう。ここは、”目には目を歯には歯を”の出番だ。今まで、君に対して行った暴力のすべてをぶつけなさい。自分はすべてを耐えきって応えるとしよう」

「それは、最悪の事態がお兄様に降り注いでも恨まない、ということですの?」


 シェラが妖しい瞳を宿しながら、確認をとってくる。

 自分は思わず(え? バアル時代の自分って、そこまでひどいことしたっけ?)と自問自答したが、とんと記憶にないので、「お、おう」と力なく返事した。


「後悔後先絶たずですわ、お兄様」


 一気に野獣のごとき眼差しを向けたシェラが襲いかかった。

 まずベッドの上に押し倒されて、唇を奪われ、いきなりのことに頭の整理が追い付かない自分に何の容赦もなく衣服をはぎ取り、あとは……。


 簡潔にまとめると、いつも自分がパートナー相手にニャンニャンしていることをシェラが逆ニャンニャンして、何の反撃もできぬまま、時間だけが過ぎていきました――――とさ。

 まぁ、せいぜい140センチほどの少女が、180センチの大人を相手にするには若干力が足りず、消化不良気味だったので、中盤からはこちら側のイタズラ心が働いて、いろいろしてたらシェラが折れたので、終盤はノンストップで二人三脚で駆け上がったけどね。

 詳しいことは記せないけど、お互い晴れやかな笑顔で寝そべれたのは良かったのではないか、と。


「そうでした。お兄様、今のうちにこの神秘の水をバカ猫におかけください」


 本当はもう少しまどろんでいたげだったシェラが突然我に返るや、自分にベッドの上にたまった水たまりをラムにかけろと云う。

 その水は、少し前にモナとベネリの手伝いで用いたのと同じ水で、これを使って自分は、ドラゴントゥースを創り出した。となると、ラムにこの水をかけると?


 ラムは、身動きできず、自分とシェラの一部始終を見せつけられて放心状態だった。なので、大した抵抗もなく、少し粘り気が出来はじめた水を嫌がることもなく受け入れた。


「お兄様、サンオイルを全身に塗るのと同じ要領でバカ猫に塗りつけてください」


 言われるままに全身くまなく塗っておいた。

 放心状態なのが幸いし、普通の男の子なら少し気恥ずかしがる部分に触れられてもかすかな反応だけで、遠慮なく塗り終えた。


「今から魔法をかけます。お兄様は離れてくださいまし」


 ドラゴントゥースのときも、神秘の水が姉さんの牙をくまなく浸した後にベネリが魔法を唱えていた。それと同じことなのだろうと、自分はシェラのやろうとしていることに口をはさむことなく見守った。


 案の定、全く同じ魔法(何かしらの光の球のようなモノ)がラムの体内に吸収され、ラムの身体に異変をもたらした。

 具体的には、よりラムの身体が獣人らしくなった、というべきだろうか。

 毛並みが良くなり、ツヤが増し、残念な部分はそのままに肌が急に瑞々しく映えた。敢えて例えるならば、256色までの色使いでしか表現できなかった人肌が、フルカラーになった途端、急に艶めかしくなって、父さん大喜びです! みたいな?


「何なんだ、コレは?」

「受肉です。バカ猫でもお兄様のパートナーである以上、キチンとした身体を授けようと思いました。ですから、お兄様に嫌われることを覚悟で怒らせてでも、この水を授けようと思ったのです」

「んん? 怒らせることとあの水がどう関係するんだ」

「バアル時代のお兄様は、何かに対して怒るにつけ、わたしを使用して怒りを鎮めていましたもの。その時の水でも効果はありますから」


 記憶にないところだが、バアル時代の自分は暴君もいいところだ。


「でもその考えは間違っていました。今の状態のお兄様と創った水の方が段違いですわ」

「そ、そうか」


 眩しさすら覚えるシェラの笑顔に、しどろもどろになったが、無理やり気分を切り替えて、ラムを改めて見直す。

 両手両足を拘束されつつも、つややかさを取り戻した毛並みに対して、毛づくろいをし始める猫獣人にそこはかとないエロスを感じた。やはり、肌に血の気が宿ったことが大きい。


「なぁ、シェラ、聞きたいことがあるんだが」

「何でしょう、お兄様」

「シェラにとって、あまりいい記憶のないバアル時代の自分がかつての力を失ったあの日、シェラはそれでも自分をかばったよな。何故だ?」

「あの日、すべての力を失ったときのお兄様こそが、私のほっぺを叩いて、死を望んでいた気持ちから目を覚ましてくれたお兄様だったからですよ」

「え?」

「バアルには8つの人格がありました。暴力、冷徹、驕り屋、残忍、皮肉屋、カリスマ、戦略家、無です。いつもは暴力、冷徹、驕り屋、残忍、皮肉屋が幅を利かせ、私を含め信者や支配地域の民草にひどいことをしてきました。カリスマは祭りの日だけ、戦略家は戦争のときだけしか出てきませんでした」

「……」

「お兄様は、バアルが寝静まった時にだけしか現れない人格でした。それも、バアルの身体を使いこなせられないようで、私の前に現れるときは霊体の姿でよく現れました。

 いつも起きている状態のバアルに振り回されて泣いている私を慰めてくれました。普通に胸を貸してくれて、髪を撫でてくれました」

「あるとき、皮肉屋がここまで辛く当たっているにもかかわらず、へこたれない私を不思議に思い、私に薬を盛り、その秘密を聞き出しました。

 その時初めて、彼らは自分たちにそれぞれの人格があることを知り、私の苦しみを癒す以外、何の役にも立たない無の存在を疎ましく思い、無を消す計画を立てました」

「その計画をシェラが知ってしまった理由は?」

「皮肉屋が薬が切れかかって朦朧としていた私に教えてくれたのです。勿論、わざとです」

「私は悲しみに暮れ、死を決意しました。お兄様と同じ霊体になって、この場所から離れようと本気で思っていました。

 その日の晩、ナイフを喉に押し当て引こうとしたその時、お兄様が平手打ちを。

 そして、未来を予言してくれました」

「近い将来、奴らには天罰が下る。その時、再び会おう、だったかな?」

「憶えていたんですか、お兄様」

「いや、何となく。ははは、自分が言ったことなのに覚えていないとかダメダメだな」


 頭をかきむしって誤魔化す自分に、シェラが抱き寄せてきた。


「お兄様とこうして肌と肌とを触れ合える様になれたのですもの、全てを望んでは罰が当たりますわ」


 うわー、よくできた妹だー。なでなで。


「でも、これから先の思い出作りはきちんと覚えておいてくださいね」


 うぐっ。イサカと同じことを言いなはる。メモ帳必須やー。なくすと終末が近くなるんやないか?

 思わず胃薬を探したくなる気分をよそに、自分でもないシェラでもない激しい息遣いに思わず振り向いた。


 ラムの様子がおかしい。

 何だか、身体がさらに熱っぽくなったかのようだ。

 死者の世界に流行り病とかあり得ないのだけれども、一応、ラムの額に手を当ててみる。


「ウーーーー、ニャーーーー!」


 著作権的に大丈夫か、その台詞!? というこちらの心配をよそにラムの暴走が始まった。

 両手両足を拘束していた手錠がいきなりバキーーンッ! と音を立てて粉砕したかと思うと、今度は自分にタックルをかましてきた。

 身長差からみぞおちに頭突きが程よく決まり、ラムの勢いと相まって、ベッドの上に押し倒された格好だ。

 アレ、なんかデジャヴが……。ていうか、今さっきまでやってたけどね。


「ダーリン、ウチにも施しをあげるっちゃ」


 ちゃ!

 念願の、待望の、そして禁断のあのセリフが聴けました。

 ありがとうございます。

 心置きなく、望みを叶えてあげました。

2015/04/13 読み進めたときの違和感解消に、加筆修正。

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