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フェゴールとファッキンファンタジー  作者: 伊左坂ぐうたら
第2章 死者の国で、アルマゲドン
15/29

妹アシェラト、ゲートキーパーの2人、そしてぬこ。

 アシェラト。

 またの名を、地母神アシェラト。

 人類が生まれる以前から存在し、豊穣神バールとともに大地を愛で、生物の生育を見守る慈愛の女神。

 古代人ははるか昔から存在するこの女神をまるで母親のように敬愛するが、自分から見れば、カワイイ妹で妻だった。過去形になるのは、豊穣神バールの頃の話だからだ。

 今は、全盛期の力のほとんどを失った、枯れた悪魔ベルフェゴールなので、アシェラトとは釣り合わないのだ。


「そんなことはないと思います」


 アシェラトは、そんな自分に昔と変わらない無償の微笑みを向けた。


「そういえば以前、聡子に身体を譲った時も、その慈愛の笑顔だったな」

「漂う雰囲気から、お兄様の関係者だと分かりましたもの」

「? 立場が逆だったら、自分はアシェラトだと察知できるだろうか?」

「出来ますよ、お兄様なら」

「そのこころは?」

「愛は不滅ですもの」


 なんか可愛いことを言いつつ、ニコッと微笑むので、久しぶりにじゃれ合った。



「うぉっほん!」


 じゃれ合うついでに、アクシデントでも装っておっぱいでも触ろうかなとしていたら、天使2人から咳き込まれた。邪魔が入ったとも言う。

 すこし名残惜しいが、アシェラトの手から離れて、天使2人の紹介を行う。


 まずは、燃え盛る赤い髪の天使から。

 彼女の名は、エルザ。天使階級は、9階級第6位パワー。

 剣術が得意で、特に滑空時の落下推進力を用いた突撃攻撃を良く好む傾向がある。その分、攻撃手段がワンパターン化する欠点が出てくるが、姉の魔法攻撃によるフォローで相手の余裕(または反撃手段)をなくし、脇の甘さを見つけ次第、容赦なく特攻するスタイルで勝利を重ねてきた。


「今までだったらそれでよかったが、銃相手には苦労したろう?」

「あんなモノで攻撃するとか卑怯だ」

「戦いに正当とかそんなものはない。自分は、ゼロに等しい攻撃力を向上させるために『銃』をパートナーに選び、2人3脚でここまで生き残れた。お前さんの剣と一緒で、付き合いの長い攻撃手段だ。罵詈雑言を大人しく受け入れるいわれはない」

「そうですわ。赤い髪の天使さん。悔しかったら、私たちの国で技術を磨くことをおススメしますわ。あなたに機械人オートマータへの抵抗がなければ、銃攻撃相手に突破口を見出す手段を閃く機会もあるかもしれないですわよ?」


 自分の反論に、アシェラトがフォローに回る。目と目が合って、笑顔が返ってくる。

 可愛いので、頭を撫でておいた。気持ちの良さそうな顔が愛おしい。

 押したお――――欲望に負けそうになったその瞬間、純粋な殺意が背中越しに向けられた。


機械人オートマータ?」


 エルザが聞きなれない言葉をいぶかしんだ。


「百聞は一見に如かず、だ。アンキモを呼んできてくれ」


 ヒマにしていると殺気しか寄越さない万能執事に仕事を与えた。

 イサカは聡子と連絡を取り、聡子が船内アナウンスを行う。


「呼んだか? 旦那」


 しばらくして、自分の近くの壁面がせり上がったかと思いきや、真っ白な人型のアンドロイドがやってきた。


「ファンタジー世界の住人が、機械人オートマータを知らないから見せるために、な」

「ああ、なるほどな。」


 アンキモ。パッとした見た目は車の衝撃テストで用いられる人形だ。だが、しゃべることができ、関節周りはスムーズに動くし、ちょっとしたマジックも使える。魔法ではなく、奇術の方のマジックだ。

 実際、じーっと見つめるエルザの視点を指先で開いた掌に誘導し、閉じた掌が再び開くと一輪のバラが姿を現した。驚くエルザの髪にバラをさしておどけている様は微笑ましいものがある。


「我々とあまり変わらないんだな」

「ところがどっこい、そうじゃねぇさ。タギリロン特有の日進月歩技術のたまものよぉ」

「どういうことだ?」

「俺は生前、ひたすら強い衝撃を浴びてデータを取られるだけだった。すっかりくたびれて、瞬く間に壊れたらそのまま廃棄されるだけ、という虚しい人生だった。

 ここへ旦那に連れて来られて、生前の見た目はそのままに身体の内部のすみずみを最新のパーツに入れ替えてもらってはじめて、俺は、ここの国の住人に笑顔で迎えられたよ」

「へぇ、悪魔のクセに優しいんだな、アンタ」

「フッ、悪魔の優しさには裏がある。つい最近、お前らも経験しただろうが」

「うっ!」


 エルザが軽はずみな口約束に顔をしかめた。


 あの誓いの言葉を忘れない。

 『何でもします』という魔法の言葉。

 命を助けて救世主になった自分が天使たちに課したのは、たった一つの命令。


『ファッキンガムハウス正門の門衛をお願いしたい』


 命じたときの、特にエルザのマヌケ面は印象的だった。

 てっきりエロエロ~んな命令だと思っていたのだろう。

 ホッとした表情のあと、大して何も考えず、了承してくれた。

 てっきり賢そうな姉の方が反対するかと思ったのだが、姉も命令に応じた。

 姉曰く、操り人形にされる以前の仕事が、たびたび問題提起していたエンカウント戦闘時のほころびの穴から、天界行きをもくろむ輩からの侵入を阻むためのゲートキーパーだったようだ。

 よって、慣れた仕事ということもあり、断る理由がないことが応じた理由になる。

 その瞬間、天使2人の所有権が転生神から自分へと移った。

 あっさりと権利が移行したあたり、転生神にとって彼女たちは必要ないモノ扱いだったのだろう。

 だが、自分は違う。

 手に入れたものはたとえ役立たずと言われたシロモノであっても、長く大切に使う。これが癒し系の美人なお姉さん天使と、爽やかスポーティーな健康少女の天使2人である。

 手放す理由が見当たらない。手放す気はさらさない。

 末永いお付き合いになるだろう。

 天使エルザ的には悪夢だったかもしれないが。


 さて、紹介の続きをすすめよう。

 次は、青い髪の温和な雰囲気を醸し出すお姉さん天使、エイミアである。

 槍術に秀で、さらには魔法を使う。

 死の天使イサカ情報によると、攻撃・回復・守護魔法なんでもござれの万能天使だそうな。

 ちなみに、天使階級は9階級第5位ヴァーチャー。

 位の数が少ないほど立場が上になる天使の階級から示せば、さすがは姉といったところか。

 問題は、全力以上の力を出し惜しみすることなく使用するからか、終盤ガス欠で弱る。いや、弱るならまだしも、衰弱死しそうな勢いで弱っていく。

 何が彼女にそんな力の使い方を強要させるのかは不明だが、このお姉さんの当面の目標は『力の制御方法を身につけること』だな。

 ああ、そうそう。

 最も大切なことを思い出した。

 エイミアは、口元まで耳を近付けなければわからない声の持ち主である。

 一番大切なことは、『ハッキリとモノが伝わるようになる』声を身につけることだわ。



「旦那ぁ」


 エルザ&エイミアの紹介ですっかり影の薄くなったアンキモが自分を呼ぶ。


「ああ、立ちんぼさせて悪かったと思う。持ち場に戻って、任務を全うしてきてくれ」

「合点だぁ。旦那ぁ、国についたら、あの宿屋で久しぶりにメシ食いましょうや」

「ああ、水連さんの安心亭だったよな?」

「アレ? どこかで聞いたような宿屋名ですね」

「前の世界での宿屋名は『ばぁばの安心亭』だった。

 タギリロンでは老人は強制的に若返る仕様なんだ。自分の今までの殻を破らせるためのアレコレが豊富だけに、老化状態では心身ともに出来ることもできない。それは、もったいないじゃないか」

「フェゴール様が足を運ぶということは……」

「その通り。若返ったあの婆さん、結構な和服美人だ。昔は繁盛した、という理由に納得した」

「また、皆さんで宿泊するのもいいですね」


 イサカの問いかけに、他のパートナーズが軒並み賛成に回った。

 見習い2人はもとより、新規加入ほやほやの天使2人もちゃっかり挙手している。


「コイツを放っておくといろいろ危険だから、あたしも当然行くにゃ」


 猫獣人が長い沈黙からようやく解放されたかのように大きな伸びをした後、胸を張ってそう答えた。

 胸の張りのなさは幼女モナといいとこ勝負で、つい『胸は何処だ?』と言わんばかりに、触ってしまい、思いっきり引っ掻かれた。

 この猫獣人、爪がかなり鋭く固いので、引っ掻かれた顔がメチャクチャ痛い。

 自称奴隷の割には、そっち方面の反応がウブだ。未経験のまま死んだか。


 彼女の名はラム。愛銃・イングラムが認めた新しいパートナーである。

 ちなみにイングラムとは、大ざっぱに言えば拳銃の形をしたサブマシンガンで、わずか数秒足らずの間にたくさんの弾をばらまくことができる。そのため、激しい反動から命中精度はあまり期待できないが、最悪足止めには充分すぎる役割を果たし、運よく標的に当たれば、たちどころに蜂の巣にするほどの火力はある。

 そんな銃が、よりによって猫獣人を認めた。ラムは、これからはイングラムを携帯し、他のパートナーズ同様、ゆくゆくは他の銃を扱い、自分のかわりにとどめを刺す役割を担う立場にならなくてはならない。しかし、ファンタジー世界の生き物に銃である。

 やれんことはないが、訓練させるのに一苦労しそうだ。

 まぁ、訓練のしがいがあると考えなおせば、教えがいもあるとみるべきか。


 どうでもいいが、彼女の名はラムである。

 ラムといえば、アレだ。


「はい、ラムちゃん。アレ言って。だっちゃ」

「だっにゃ」

「違う違う、だっちゃ」

「だっにゃ」

「だっちゃ」

「だっにゃ」

「だっにゃ」

「だっにゃ」


 チィィ。引っかかる気配がしない。


「何がしたいんだか、さっぱりわからない」

「ますたーは、『自分が諸星あ○るポジションならば、ラムちゃんの口調はもちろんアレ』とか言ってたですぅ。何のことだかわからないですけれど」


 さらに試してみたが、なしのつぶてだった。

 妥協案として、虎縞柄のビキニ姿を強要した。これは気に入ってくれた。

 ネコ科同士のつながりだろうか。


 とりあえず、今回の自己紹介はここまで!

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