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第九話 大会開始

「人が多いですね」

 オートマキナ当日。

 会場となるドームでは、人がごったがえしている。

「ロボットにはいろいろな技術が使われているからそのパーツの会社や販売の会社なんかが出場の為に来てるし、オートマキナ自体もは迫力が合って人気だからなぁ」

 人混みでも神機楼は目立つ。

 背が高いし、ロボットとはいえ美人だからな。

 Sw型は皆、整った顔をしているが高名な造形師作った機体は相当な値段になる。

 神機楼も製作者は分からないが美しい作りだ。

「? どうかしましたか?」

「いいや。何でもない。部長を探さないと……」

 会場での待ち合わせの筈が全く居ない。

「押さないで下サイ! 開始までには、はいれますカラ!」

 スーツを着た薄い紫がかった髪をサイドポニーにしているSw型が人員整理をしている。

 建設現場や道路誘導などは機械兵士の警備の特化が担当するが、人の居る会場整理はお手伝いロボットが担当する。

「ひとまず中に入りますか?」

 一応会場のチケットは貰ってあるので中で待った方が賢明かもしれない。

「そうだな。携帯も繋がんないし……」

 出場者入り口に向かうとなにやら騒がしい。

「…………………………………………」

「不審者です」

「あぁ……」

 入り口で止められているのはどう見ても不審者だった。

 全身黒ずくめ。マスクに黒のサングラス。目深に被った帽子。

 そして何か喋っているようだが小さくて全く聞こえない声。挙動不審な態度。

 こうまで頭のてっぺんから足の先まで不審者な人物は見たことがない。

 俺は中に入りたいのだが件の人物が警備の担当のサイドポニーのSw型と揉めて入り口を塞いでいるのでどうしようもない。

「なんだか、自分は出場者だと言っているようです」

 流石、神機楼。俺の知りたい情報を的確に教えてくれる。

「かかわり合いになりたくないなぁ」

 しばらくサイドポニーとやりあっていたが不審者は幽霊のようにすーっと中に入っていった。

「本当に出場者だった。あんな変態と当たる可能性があるのか……」

 頭痛くなってきた。

「私が今のうちに消して来ましょうか?」

 神機楼なら本当にやりかねん。

 俺は苦笑と共に慎んで断った。

 遮る者が居なくなったので俺達も入ろうと入り口に近づくと、サイドポニーの彼女に行く手を遮られる。

「?」

 素早く神機楼が前に出て俺を隠す。

 護衛として素晴らしい対応だと思う。

 けど今は戦闘が在るわけではないし、警備の彼女は敵な訳ではないので俺より断然背の高い神機楼の脇下から顔を出して何の用かを聞いた。

「えーと? さっきのみたいに変な格好はしてないつもりだけど?」

 サイドポニーの彼女は腰に手を当てて呆れた様に言った。

「ここは、出場者用の入り口デス! 一般のパンピーは並んでくだサイ! アホ!」

 えぇー。何故人が多いところはお手伝いロボなのか? それは人の様に丁寧で怒らず、人間味のある暖かい対応が出来るためだ。

 彼女は一体?

 後、神機楼の普段の無表情から相手を視線で凍てつかせるかの様な無表情になってる!

 つまり怒ってます!!

「一体何なのですか? 貴女は……。メイドロボの本懐は人の役に立つこと。それを何ですか! 貴女のその態度は」

 お前も結構他人の事言えないと思うとは口に出したりはしない。

 ここはおれは成り行きに任せる事にした。

「本当の事を言ったまでデース! だってお手伝いロボを連れてるヤツが出場者な訳ありまセン。タコ!」

サ イドポニーの彼女ニヤニヤと小馬鹿にしたように笑っている。

「た、タコ? 意味がわかりません。とにかく若は正式な出場者。そこを退きなさい! 退かないなら力ずくで排除します」

 終始、無表情の神機楼と小馬鹿にした態度を崩さないサイドポニーの彼女。

 ってそろそろ静観出来ない状況になってきた。

 神機楼なんか今にも剣を抜きそうだ。

「タイム! 待ってよ。君も警備の担当なら出場者のデータ位持ってるはずだ。照合してみてよ。俺は神倉八雲」

 サイドポニーの彼女は俺の言葉を聞くとスッと横に避けた。

「?」

 再びクスクス笑いながら彼女はこう言ったのだった。

「もちろん知ってますヨ。メイドロボなんかで出場する物好きと少し遊んでみたかっただけデス! どーぞ、とぉていいデス!」

 うわぁ……。最新型かもしれん。

「死になさい」

 斬りかかろうとする神機楼を止めて、中にヨロヨロと入った。

 疲れた。

 ひじょーに疲れた。

 中も外程ではないが混雑している。

 当然オートマキナ出場者なのたが会場に運び入れられるのは機械兵士ばかりだ。

「あ、電話だ」

 表示には部長となっている。

「今どこですか! あんたが出てくれって言ったんでしょ」

 向こうからは少し焦った声音で返事がきた。

「す、すまん。道が混んでて。一応、一般的な装備は会場に運び込んである。好きに使ってくれて構わない。出来うる限り俺も早く行くから」

 後に残るのは通話を終えた音がむなしく響いた。

「言いたい事だけ言って切った……」

 神機楼は? と探すと隅のペースに置かれた段ボールの近くにいる。

「この荷物みたいですね」

 俺も近づくと確かに種々な物が有るみたいだ。

「へー凄いな。なんか全部試したくなるよな」

「装備しきれないと思います」

 いや、分かってるけどさ、なんて言うか男のロマン的な事を分かって欲しかったのが……

 無理か。神機楼も女の子だしね。

 なんて神機楼と遊んでいると開始時刻が近いとアナウンスが流れた。

「これはどうでしょう?」

 神機楼が持ち上げたのはトピカが持っていたのと同じガトリングだ。

「う~ん。それは弾をすぐに使い切っちゃうからな。これは?」

 俺が出したのは中型のビームライフルだ。

 これならある程度は取り回しはきくし、なにより弾の心配がいらない。

 ビーム系の兵器は熱が溜まると使えないが明確な弾切れがないぶん使いやすい。

「どう?」

「……………………わかりました」

 ? 今の間は何なんだろう。

『神倉八雲選手。五番ステージで試合です』

「お! 出番だね。行こうか、神機楼」

 神機楼は 縦に首を振った。



「若」

 最初、神機楼が何に反応したのか分からなかった。

 ステージは光が凄い 。

 対戦相手が暫く見えないが視界が開けて目に入ったものは……。

 入り口にいた不審者だった。

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