第七話 トピカ(2)
MP-003 トピカのマスターは一個人ではなく組織だ。
アメリカのレーダー管制室が彼女のマスターになる。
トピカは日本とアメリカを行き来しているのだが少し前に日本に来た際に良く知った、しかしいないハズの反応を感知した。
現在トピカは適当なビルの屋上で町の景色をぼんやり見ていた。
神機楼を追撃しようと思っていたが生憎と見失っていた。
「あ、出てきました。……逃げている感じではありませんわね。コピーは看破できませんが、その潔さには敬意を表しますわ」
一人呟くと緩慢な動作でビルから下りて行くのだった。
普通では見ない豪奢な金のロールを揺らし、ドレスぽい服装の女が現れる。
「さぁ! 決着をつけましょう」
神機楼は既に大剣を正眼に構えている。
「今度は負けません」
場所はあの廃工場。
「ミッション再スタート!」
三度の先制攻撃。
「馬鹿の一つ覚え、ですわ!」
やはり、トピカは簡単に避け……れなかった。
「!! これは!?」
「ふっ!」
トピカは後ろに下がろうとした際、急に足を取られ、神機楼の一撃を銃身で受ける。
「くっ、これは一体?」
「多分だけど。アイツは特殊な能力があるんだて思う」
いつも立って俺の側に控えている神機楼を話しが長くなるから、と椅子に座らせて作戦会議を開いていた。
「今になって思い出すんだけど、死角からの攻撃を見もしないで避けて、しかも足元にも結構色々な物が散乱してた。神機楼も足下を確認しながら動いていたよな?」
「はい。あの場所は確かに足場が悪いかと」
俺はノートパソコンに作ったプログラムを見せた。
「ジャミングですね」
「うん。奴の特殊な能力は多分……
「貴女の強さはレーダー機能だ!」
神機楼と鍔ぜり合い合う、トピカ。
「それが分かったからと言って何が出来ますの? ジャミングは持って数分ですわ! この程度、直ぐに解析出来ますのもの!!」
純粋な力では神機楼の方が上らしく、徐々に中腰になるトピカ。
「このっ!」
トピカの足払いを避ける為にジャンプする神機楼。その隙に距離を取ったトピカの瞳には怒りが宿っている。
「レーダー機能が優れているのなら、待っていれば必ず来ると思ってた」
「罠を張ったと言う訳ですか。私の慢心は認めましょう。しかし勝つの私ですわ!!」
右手を虚空に突き出す。
現れたのは重装備機械兵士の装備の一つである、ガトリングが出てきた。
「んな!!」
盲点だった。神機楼が固有空間に一つしか武器を持っていないからってアイツが一つとは限らない。
「消えなさい!!」
ガトリングの回転が最初はゆっくり。段々早くなって豪雨の様な弾丸がこちらに向かって降り注ぐ。
「わわっ!」
「回避!!」
神機楼が俺を抱えて物陰に身を隠す。
「どうしましょう?」
「う~ん」
辺りには絶え間無く弾丸が当たる音がする。
スマホを見るとジャミングを解析されるまでの時間が表示されている。
時間は数分しか残っていない。
「作戦通り行く。でも……神機楼、お前は危険度が上がってしまったけど大丈夫か?」
「任せてください。今度は若を危険な目には合わせません!!」
いつもより力強い言葉で頷く神機楼。
「よし。いくぞ!」
「イエス!」
俺は切り札を取り出した。
対機械兵士用のチャフ煙弾だ。
「せりゃ!!」
トピカに向かって投げる。
「こんな物!!」
弾丸はチャフ煙弾を正確に打ち抜く。
「! ケホっ、ケホっ」
そこに神機楼が飛び込む。
「まだですわ!!」
両手で構えていたガトリングを左手に持ち、右手に例のビーム拳銃を出して来た。
段幕がいっそう酷くなる。
たが、神機楼の疾走は止まらない。
「そこです」
神機楼の大剣はトピカのイヤーアンテナに当たる。
「その程度では終わりませんわ」
大きく後退する神機楼。
自ずと銃火は神機楼を追う。
「終わりですよ」
「なんです「もらったぁぁ!」
「!?」
俺は後ろからトピカに近付きイヤーアンテナのスロットにコードを挿した。
コードには持って来たノートパソコンに繋がっている。
トピカは大きく目を開け驚いている。
「こっ、これはハッキング?」
ヘナヘナと座り込むトピカ。
「直接、ウイルスを私に流すとは……」
「やったぜ!! 神機楼!!」
「お見事です。若」
神機楼のメイド服は煤などで汚れてはいたが、今度は赤はない。
MP-003 トピカとの戦いはこうして終わったのだった。