第四話 晴れ(1)
「もう一度見る必要はないかと思いますが?」
「ダメだ。あん時は急ぎ足でやったんだからどこかに不具合が残ってるかも知れないだろ」
ロボット部、部長の機械兵士と戦ってから次の日、俺と神機楼は研究所に来ていた。
先程の戦闘で見つかった不具合が直っているか見直す為である。
(しかし、いつも俺は肝心なところで甘いなぁ。もっとちゃんと見とくんだった)
零開発室で応急処置的だったプログラムをキッチリ組み直す。
戦闘中はワイヤレスで作業をしたのだが今は有線で接続している。
イヤーアンテナ下部を下にスライドさせ、そこに線を挿す方法と、直接口にくわえてもらう方法があり、今は後者である。実にシュールな光景となっている。
「…………」
目が凄い不満そうだ。
だが無視する。
暫く神機楼の無言の抗議を無視して作業を続けた。
「よし! 終わった」
神機楼がケーブルから口を離す。
「どお?」
数回瞬きをしたのち「問題ないです」
その言葉を聞いてから俺は頭を下げた。
「すまん! お前の目の事を気が付かなかったのは俺の責任だ」
「! ……若は凄く変ですね」
いきなりな言葉に頭を下げたままその頭を床に直撃させるところだった。
「へ、変て……」
彼女を見ると珍しく柔らかな笑みを浮かべている。
「お手伝いロボに頭を下げる人間はそうはいないと思います」
「そうかな?」
「そうだと思うよ」
いきなり後ろから声をかけられビクつく。
「わ! どうやって入ったんですか!?」
後ろにいたのは田中さんだった。
相変わらず傍目には疲れ切っている様に見える。
ストレスが凄いのだろうか?
まぁ、こんな人でもばぁちゃんの一番の部下だったのだから人は見た目じゃない。
「いや、普通に入ったんだけどね。神機楼は気付いていたと思うけど……八雲君が凄く真剣にやってるもんだから声かけずらくって」
「え……神機楼、気付いてた?」
コクっと縦に首を振る。
……マヌケな声を出して驚いたのが凄く恥ずかしい!!
「それで、何か用ですか?」
別に田中さんが悪い訳ではないのだが醜態を晒した気恥ずかしさから、ぶっきらぼうな声になってしまう。
「あぁ、織部君が君を呼んでたよ」
「? 何だろ」
カノンさんが呼び出しとは珍しい。
了解の旨を伝えてからフッと閃く。
「あ、そうだ。プログラムの出来を見てくれませんか?」
「もちろんいいけど、八雲君が作ったなら問題ないと思うよ」
田中さんが見てくれようとキーボードに触ろうとした時に神機楼がそれを制止した。
「結構です。今、若がやってくれましたから」
「だ、そうだよ」
「見て貰った方がいいぞ。何処かに見落としがあるかも--」
神機楼は首を横に振り「だとしても、我がマスターにメンテナンスしてもらったのですから私はそれを信じます」
信じるか……マスターだからではなく、俺を信頼してくれているのだろう。
機械のプログラムではない、明確な意識がある様に思った。
「田中さん、すみません。やっぱり不具合はないと思います」
「ふふ、そうかい。なら僕の出る幕はないね」
田中さんは手をヒラヒラと振りながら出てった。
「お前が信頼してくれているのに俺が自信ないのはダメだよな」
「はい。若は天才ですから」
いつも、天才等と言われるのは嫌いなのだが神機楼に言われると不思議と気にならないのだった。