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第六十二話

「第六十二話」


「今からギルドを本格的に壊滅しに行くよ。」

「ギルド……?なんだそれ。」


 主任は初めて聞いた単語に懐疑的な反応を示す。

 首を傾げ、面白い顔をしている。

 決して悪口ではない。


「主任君は良いよ。君は宿で休んでいるか、また囮作戦の要になるかの二択になりそうだから。」

「……よし、何か追加で注文しよう。そして、トイレに行ってくる。」

「うん。それが良い。」


 主任は立ち上がり、早歩きでどこかへ行った。

 逃げるという表現は適切ではない。戦力的撤退とでも言うべきか。

 その足取りは誰が声を掛けても止まることはないだろう。


「さぁ。面白くなるよ。」

「ああ。そうだな。」


 正直全然動き足りなかった。

 もっと働き甲斐のある獲物を見つけないと。


「ギルドには拠点が無いからね。それぞれの組織を潰していくしかない。」

「最初は?」

「おそらくソリアン邸に今夜忍び込むだろうグループから殺ろう。さっき、私たちが戦ったのと同じグループだよ。単純な銃撃戦だね。結界師は一人も居ないと思うけど、ヴァルモンド家がどれだけ本気なのか分からない以上迂闊に断言できないね。」

「分かった。」

「今回のギルド参加組織は三つ。いや、四つかな。一つ目は、最初のグループ、カメレオンだ。」

「なんだその趣味の悪い名前は。」

「創始者が精神異常者なんじゃない?」


 良かったじゃないか。お友達が居て。

 そう言いたかった。


「カメレオンはどこでも姿を溶け込ませる。そして、周囲に同調して誰の色にでも染まる、傭兵集団だよ。彼らは、報酬と言うよりも、名声が欲しい感じかな。ヴァルモンド家お墨付きのね。」

「次は?」

「次は、オクト。つまりは、タコだね。」

「なんで全部動物なんだ?」

「知らなーい。名前なんかどうでもよかったんじゃない?」

「……続けろ。」

「オクトは今回のギルドで最も人員が多い組織だよ。リーダーを頭として、その下に八人の幹部が控えてる。そして、それぞれの幹部に百人ほどの人員がついている。だから、八百人ほどが在籍している。でも、それぞれの足には役割があってね。今回のギルド参加は、二つの足だ。」

「じゃあ、えぇっと……」


 指を数えて、人数を計算しようとする。

 それを見て、エレナがくすっと笑い、俺の指を掴んでピースさせた。


 そうか。二百人か。


「やっぱり、数字から教えた方が良いかな。」

「黙れ。ちょっと困惑しただけだ。次は即答できる。」

「ふーん。」

「次は。」

「そうだった。最後は、名前の無い一人の青年だよ。みんな放浪者と呼んでる。」

「一人?」

「そう。一人で金のある方向を嗅ぎつけて、仕事を淡々とこなす。たった一人だけど、一組織に匹敵する実力を持ってる。」

「それって」

「そう。恐らく、結界師だ。彼が一番厄介だと思う。だから、最後に選んだ。」

「最後?四つ目は?」

「それは、“ヨトヘイム”で遭遇したじゃん。」


 なるほど、そうか。

 “ヨトヘイム”で馬車を貸し切りにしていたヴァルモンドの軍隊は、ソリアンの銃を目的としていたのか。

 それなら、ヴァルモンドは人員をこちらに送れなかったことになる。


「そろそろ時間だ。行こうか。」

「ああ。」


 立ち上がる。

 そして、エレナは幾らかのお金を机に置き、その店を去った。

 主任への細やかな礼のつもりだろう。


 馬車が無いため、これまた徒歩である。

 これを不便であると考えてしまう自分は、己の足に我儘をぶつけている子供であろうか。

 しかし、不便であることには変わりないと思ってしまう。


 息を吹けば白い空気が顔を覆う。

 たった数時間前には上着を脱ぎたいと思うほどの温度であったが、今はそんな暖かみは遠出をしてしまっている。

 暗い道を小さな明かりで照らしながら、影を伸ばす二人の背中。


 影を侵食しきれていない明かりは、暗闇の餌食になっている。


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