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第五十八話

「第五十八話」


 ガン!!


 鈍い音。

 それは床に俺の頭が当たった音であった。

 エレナに頭を押さえつけられている。


「痛って!!何する!?」

「意外にまずいかもね。」

「あ?」


 エレナの真剣な顔に困惑する。

 文句を言おうとしたが、やめておいた。


 バァン!!

 バァン!!

 バァン!!


 馬車にいくつかの穴が空く。

 音に驚いた馬が足を止める。馬車が道の真ん中で止まってしまう。

 遮蔽物が何もない道の真ん中。開けた場所で輝く武器。

 そう銃である。


 その音は銃の発砲であった。

 待ち伏せか?

 どうして?


 様々な憶測が頭の中で飛び交う。


「おい!仮面!!」

「主任君!!止めるな!!行くんだ!!」

「分かった!!」


 慌てて、顔を出した主任が脂汗をまき散らしながら、手綱を握る。


 馬車は再び走り始める。

 全速力で。

 馬もこの環境から逃げたいようだった。


 馬車がひっくり返る。

 馬に弾が当たってしまったようだ。

 その場に倒れてしまう。


 運転席から主任が逃げてくる。

 今まで見たことが無い焦り顔を張り付けて。


「おい!!話が違うぞ!!」

「違わないさ。これでも、計画性を持っているからね。」

「これも計画なのか!?」

「いや、ノアに倣って行き当たりばったりな方法が良いかなと思って。」

「……じゃあ、完全に奇襲されるじゃねぇか。」

「まずいね。囲まれてる。二十人ってとこかな。全員が銃を持っていることを考えると、ノアでは分が悪い。」

「俺なら行けるぞ。」

「やめておいた方が良いね。向こうは手練れみたいだ。正確な場所が分からない。それに、止まっている今に発砲してこないってことは出てきたところを撃ち殺せる技術があるってことだよ。剣では不利だ。少し、策を考えなくてはね。」


 珍しい。エレナがここまで評するなんて。

 相手はそんなにやばい奴らなのだろうか。


 少しの考える時間。

 確かに、発砲するまで近くに居るとは分からなかった。

 気配を消す技術。殺しのプロ。

 傭兵の街ならではのアクシデントか。


「まだか!?」

「主任君は?」

「………」

「あるんだ。」

「……何も言ってないだろ。」

「いや、丁度私も同じことを提案しようと思ってた。それが最も良い名案だと思っているのだけど、どうかな?」

「………誰がやる?」

「それはもちろん。」


 エレナと主任は顔を見合わせる。

 笑顔なエレナを見て察したようだ。

 主任が青ざめる。


「ちょっ!ま、まて!お、お、おれ」

「『結界・重力』」


 地面を凹まし、砂煙を起こす。

 これで目くらましをしたわけだ。

 砂埃が太陽を飲み込まんとする勢いで広がる。


 エレナは俺の首根っこを掴んだ。


「では!」

「ほ、ほんきか!?」

「もち!」


 エレナは主任にガッツポーズをしてその場から立ち去る。


「『結界・重力』」


 体が浮かぶ。

 砂煙で、辺りが見えない中で、俺たちは空を飛んだ。

 ソリアンから受け取った箱を抱いて。


「囮作戦!」

「悪魔だな。」


 そのまま、街へと降りていく。

 器用なものだ。


 ようやく地面へと足を付けることが出来た。

 なんだか安心する。

 両足が長時間浮いているなんて経験はなかったために、地面があることが当たり前に安心する。


「さて、仕事にとりかかろうか。」

「主任はどうする。」

「後で迎えに行こう。死体でなければね。」

「……」

「そんな顔で見つめないでよ。我慢できなくなるでしょ?」

「ふざけたこと言うな。」

「分かった。大丈夫だよ。彼は生きて帰れると思うよ。まぁ、彼の言動次第ではあると思うけど。」

「なぜ?」

「彼はリストに入ってないと思うから。」

「リスト?」

「うん。恐らくだけど、彼はただの御者程度に思われてる。私たちとは関係ないね。」

「???」

「うーん……そうだ。ソリアンの家に入ったのは私たちだけでしょ。」

「ああ。そう言うことか。」


 ソリアンの家の段階で見張られていたのか。

 それで、俺たちが狙われた。

 主任の顔は見られていない。それで、主任を置いて行ったのか。


 思えば、ソリアンは誰かの侵入を快く思っていなかった。

 外敵から身を守る。そんな言動が初めに見られた。

 命を狙われていたんだろうか。

 なら最初から言って欲しい。


「不思議な顔をするね。」

「ソリアンは狙われてるのか?」

「そうだなぁ……なんて説明すれば良いのか分からないから、一旦セレニス家に行こうか。そこである程度分かると思うよ。」

「分かった。」


 街の中心へと向かう。

 セレニス家は大きな屋敷を所有しているそうだ。

 奴らも街の中でおっぱじめるほどイカれていないようだ。殺意を感じない。


 顔を見られた以上、箱を渡したところで帰り道に襲われるだろう。

 箱の中身は武器としか聞いていないが、最新式の武器なんだろうか。人を殺してまで奪いたい武器。

 少々気になる。


「箱は開けちゃダメだよ。」

「……なんでだ。」

「ソリアンの最高傑作だからね。それを無粋な感情で汚すのは良くない。」

「……分かった。」

「うん。分かってないね。」

「………」


 開けたくて仕方がない。

 こいつの言い分は正しいのだろう。でも、そんなことよりも好奇心を優先したい。

 でも、それを許さないエレナ。


 箱を俺から強奪し、抱えた。

 誰も見ていないのだから良いだろうに。

 本当に良く分からない。


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