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第四話

「第四話」


「よく食べるね。」

「……」


 血だらけの服でその辺をうろつくことができなかったので、この服装でも入れるお店をエレナが探した。

 その結果。街はずれと言っても良いくらいの場所に丁度よさげな店を発見した。

 この店は、名前がない。というのも、看板が確認できなかった。だから、名前を知ることが出来なかった。

 単純に看板を失っただけかもしれない。


 しかし、中は人であふれていた。

 ほとんどが傭兵や盗賊のような野蛮を絵にかいたような人物ばかりだ。

 取り締まる役柄がいないと世の中こうなる。


 汚い店内とは別に料理はうまい。

 俺目線だと。

 エレナはこういう店に慣れていないのか、遠慮している。


「食べないのか?」

「私?そうだねぇ…今は、ノアの顔見るのに忙しいから。」

「貰うぞコレ。」

「どうぞ。」


 ここ数日何も食べていなかったので、かなり空腹だった。

 餓死寸前だったので、どんどん入っていく。

 限界まで詰め込んでおかないと損する。


「これからもよろしくね。」

「?」

「なぁに不思議な顔して。」

「なんだ。これからって。」

「これからはこれからだよ。文字だけじゃなくて、言葉まで理解できないの?」

「……」


 無言で食事を進める。

 力がある程度戻れば、こいつを殺して大金が手に入る。

 その金で今後は無理せずに生活ができる。

 これさえあれば……。


「君に私は殺せないよ。」

「……」

「あら?図星?」

「なんだ。気づいていたのか。」

「おぉ。認めるんだ。否定するかと思ったのに。」

「ああ。この距離でやりあえば確実に勝てるからな。」

「もう……可愛いな。」

「あ?」

「他の力量を正しく分析できていない証拠だよ。だから、可愛い。」

「あ!?」

「しょうがないな。あとで、手合わせしてあげる。その剣と私の素手。どっちが勝つかなぁ?」

「やってやるよ。」

「ふふふ。良いね。じゃあ、何を賭ける?」

「俺はお前の持ってる金が欲しい。」

「じゃあ、私は君の護衛続行を望むよ。」


 うまく話しに乗せられた感があったが、こんな言いぐさを許せるわけがなかった。

 確かに子供じみている発想かもしれないが、自分なりにプライドがあった。

 この剣を握った日から誰にも負けないと言う絶対的なプライド。

 このプライドが折れたときは、剣が折れるなんて可愛いものじゃなく、積み重ねが無くなる気がするから俺は負けない。


「怖い怖い。そんな目で見つめないでよ。」

「絶対に勝つ。」

「もう。昔の自分を見ているみたいだよ。」

「お前、」

「エレナ。」

「ちっ!エレナだってガキみたいなもんだろ。実際そんなに年齢変わんねぇだろ。」

「えぇ!うれしいこと言うね!!」

「は?」

「いくつに見えるの!?」

「知らん。」

「教えてよ。大体で良いからさ!」

「……にじゅう。」

「うわぁ~。ノアは年上にモテるでしょ?」

「ほんとはいくつなんだよ。」

「だから。女性に年齢を聞かないの。」

「なんでこの話を広げたんだ?」


 なんなんだ。こいつは。

 飄々としていてつかめない。

 表情が見れないから、より何を考えているのか分からない。


「良い?相棒として、嫌なことは把握してほしいの。」

「年齢がアウトなら、その理由は?」

「この話はここまで!もっと楽しい話しようよ~。」


 今の感情を表すのならうざいだ。

 これほど現状完璧な言葉はない。

 まさに今思いついたかのようにぴったりだ。


 こんな奴が相棒?

 冗談は仮面だけにしてほしい。


「おい!ねぇちゃん。」


 ドン!

 机を勢いよく叩く大男が居た。

 ふらふらと歩き、顔が赤い。

 早い話が酔っ払いだ。


「こんなガキじゃ楽しめないだろ??」

「そうでもないよ。ノアと二人は楽しい。」

「おいおい!そんなはずないぜ?俺たちと飲めば、もっと楽しいからよぉ。」


 エレナに顔を近づけて、匂いを嗅ぐように鼻息を荒くする。


「やっぱりこの仮面は女だぜ!!」

「マジかよ…。」

「はい!俺の勝ち!!」

「今日は運がよかったのになぁ…。」


 この大男の仲間と思われる連中が賭けをしていたようだ。

 エレナが女か男か。

 確かに酒が回り、距離があれば性別を判断するのは難しい。

 こいつはどうやって対処するのか、見ものだな。


「ふふふ。」

「お?俺に興味あんの?」

「君ね。今は、鏡と言う物があるのだよ。」

「それがどうしたんだよ。」

「もう少し身なりを整えた方が良い。そして、風呂に入りなさい。汚いし臭い。」

「なっ!」


 思わず、飲み物を吹き出してしまった。

 かわすのではなく、ドストレートに殴り込みやがった。

 しかも、大男は顔をさらに赤くしキレている。


「てめぇ、この女。俺の誘いを断るだと?」

「もちろん。私にはノアが居るからね。」

「このガキのどこが良いんだよ。」

「君みたいに下品じゃないところかな?」

「良い度胸だよ!!」


 大男はエレナの胸倉を掴もうとした。

 その瞬間。剣を振り上げ、伸びた腕を切り落とす。

 その圧倒的な速度と切れ味に相手は理解が追いつかない。

 腕が地面に落ちた音を聞いてようやく、攻撃を実感したらしい。


「うわぁあああああ!!!」


 地面に倒れ込み、なくなった腕を抱えるように這いつくばる。

 奥の仲間も気が付いたようで剣を取り、こちらに向かってくる。


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