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第三十七話

「第三十七話」


「いやぁ~ラッキーだったね。」

「なにが?」


 何が幸運だったのだろうか。

 死体の匂いで埋まった店内は、薄暗く、外から差し込む光だけが二人を包んでいた。


「この段階で文明の武器を見れたことだよ。少し古いけどね。」


 先ほどの男が持っていた武器をエレナが拾い上げる。


「なんだそれ。」

「これは銃と呼ばれる武器だよ。剣よりもリーチがあって、剣よりも訓練が簡単だから戦場では重宝されているんだ。」

「へぇー」

「興味無さそ。」

「剣の方が強いだろ。」


 現に勝って見せた。

 確かに強力ではあった。しかし、手こずるほどではない。

 場数を踏んでいる山賊の方が幾分か厄介だと感じる。


「いや、そんなこともないんだよ。」

「は?」

「この場ではノアの方が勝った。それは紛れもない事実だけど、それは時と場合によって左右される。例えば、これが店内とかの狭い場所でなかったのなら話が違っていたと思うよ。」

「………俺が負けたって?」

「そうだね。開けた場所なら分からなかった。それに、相手は酔っていたし。万全な体制で迎え撃たれたなら分からなかった。」

「だから、ラッキーか。」

「うん。ここで武器を見られたのは幸運でしょ。」

「そうだな。そうかもな。」

「ということで、はい。」


 少々納得がいかないが仕方ない。

 しかし、この銃とか言うやつに関してはエレナの方が詳しい。

 今は正直に従っておこう。


 銃を手渡してくる。


「いらん。」


 確かに、エレナの言う通りかもしれない。

 しかし、これは侮辱に感じる。

 勝った自分がまるで、運が良かったと言わんばかりの行動だ。


「いるんだよ。持っておいて損はないよ。それに、君の剣は強いかもしれないけれど、これを合わせることでもっと強くなれるよ。」

「……分かった。」

「よし。次へ行こうか。」

「次?」

「うん。ここに指揮官らしき人物は居ない。だから、探さなくちゃね。」

「……まさか。」

「そのまさかさ。」


 片っ端から店に突入するするつもりか。

 こいつは売人を卒業して、蛮族へ加入したらしい。

 ついでに殺人の快楽に足を突っ込んだ。


「待て。」

「なんだい?」

「無理があるだろ。もっと考えて行動しろ。」

「頭の固いノアに言われたくはないけど、一理あるね。確かに、この街で指揮官を探すのは骨が折れそうだ。でも、アテがあってね。そこへ行くべきだよ。」


 なんだ。ちゃんとあるじゃないか。

 それを最初に言って欲しい。

 いつも聞かないと教えてくれない癖を何とかし欲しいものである。


「行くぞ。」

「もちろん。」


 店を出る。

 通りの空気を吸うはずだった。

 しかし、そこは安息の地ではなかった。


「止まれ!!!!」


 全員が同じ服装をしている。

 なんだか、警備を連想させる服装だ。

 その服を着た人物たちが、取り囲んでいる。四十人ほどだろうか。

 数えるのも退屈になる。


「貴様ら!!!何をしているのか分かっているのか!!!!」

「ほら、アテが当たった。」

「殺るか?」

「いや、ちょっと待って。」

「聞いているのか!!!!!」

「はいはーい。私が主犯格でーす。」


 突然の行動に驚く。驚いたを通り越して、硬直してしまった。

 何を当然そうな顔でほざいているのだろうか。


「貴様!!捕らえろ!!」

「じゃあ、ノア。別行動で。」

「え、あ、ああ。」


 エレナに背中を押される。

 行けという事らしい。

 逃げ回ることが俺の任務か。


 その場から走り去る。


「あの子供も捕らえろ!!!」


 十人ほどが追いかけてくる。

 流石に逃げられそうもない。先ほど、エレナにもらった銃と言うのが気になっていた。

 ああは言ったが、正直気になっていた。

 新しいおもちゃを貰った貴族の子供のように。


 撃ち方が分からないが、見よう見まねでやってみる。

 店内で扱っていた男のように。


 引き金に指をかけ、相手の方へと向ける。

 そして、一度だけ、指を曲げる。


 バァン!


 大きな音共に、強い衝撃が腕に走る。

 撃ち終わった後も震えるほどに振動が残っている。

 もちろんどこにも命中はしない。

 威嚇になっているのかも分からない。

 撃った後の余韻は剣を振った後の味に似ている。


 それを聞いた兵士たちが急いで物陰へと隠れた。

 訓練されているようだ。マニュアル馬鹿は大変だな。

 その銃を握りしめて、その場を後にする。


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