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第三十二話

「第三十二話」


・ノア視点



「ここは………?」

「やぁ。初めましてかな。正確には違うんだけれど。」


 真っ暗な空間。

 光を遮断し、視界はどこまでを映しているのか分からない。

 一歩先がどうなっているのか見当もつかない。

 下手に動くことはできない。


「誰だ。」


 近くには誰も居ない。

 それなのに、声だけが脳内に響いているようだ。


「お口が悪いね。もう少し、礼儀を重んじた方が良い。ああ、できないのか。僕のせいで。」

「誰だ。答えろ。」

「分かっているよ。すぐに答えてあげる。僕と君の仲だからね。」


 急に体が現れる。

 透明だったのもに色が入ったように。


 太っていると純粋に言っても良いのだろうか。

 それとも、この体は見せかけだけの人形のような物なんだろうか。

 人間と言う感じがまるでない。

 仮に勝負になってもおそらく勝てない。

 威圧は感じないのに、敗北感が俺の中にある。

 一体何なんだろうか。


「僕は、管理人と呼ばれる存在さ。」

「は……?」


 管理人。名前ではないだろう。

 これが名前だとすると、親は相当にこいつのことが嫌いらしい。


「あ!イメージしにくいよね。ごめんごめん。神様ってところかな。一番イメージしやすいのは。」

「神?」

「ああ。しまった。君には信仰心が無いんだった。ちょっと待って、剣の王様!どう?」

「アホの王様だろ。」

「うん。それでいいや。」


 あきらめたようにそう言った。

 役職は何でも良いらしい。

 俺が納得すれば。


「なんだ。ここ。」

「ああ。それは説明できない。君と僕は契約を結んでいるからね。契約を果たすまで、君には説明できない。」

「あ?」

「ここでは、脅しや、暴力は通用しない。そんな言葉使いはご法度だ。君がここへ来てしまった理由は、隣の彼女に聞くと良い。」


 隣を見るが、誰も居ない。

 ここには俺一人だ。


「そういう意味じゃないよ。まぁ、そのうち分かる。じゃあね。ガンバ。」

「おい!」




 手を伸ばすと、誰かに掴まれた。

 なんだか、安心する手の形。


「やった。ノアの手ゲット。」


 否。腹立つ奴であった。

 普段通りの室内。山賊の小屋に居たはずだ。

 それが、どうしてここに居るのか。

 山賊を全員殺して、どうしても、エレナを殺したくなって、その後の記憶がない。

 そうだ。エレナに負けたんだ。それで、気絶でもしたのか。


「なんでここに居る。」

「運んできたんだよ。私が一人で。大変だったな~、お礼の言葉をくれてもいいんだよ?」

「飯だ。」

「え?」

「腹が減った。」

「あ、はい、そうですか。じゃあ、お店にでも行こうか。まだ、早いけどやってるお店はあるでしょ。」


 何か夢のようなものを見ていたはずだが、思い出せない。

 何か、聞くことがあったはずだ。誰かに、でも、それがなんであったか。誰に問うべきなのか。

 全く思い出せない。


 外へ出る。

 まだ、街が起き上がっていない。

 つまり、朝の少し前であった。


 道に人は少なく、お店も良い匂いに満ちていない。

 開店準備中だ。


「どこに行こうか。私のおすすめは………ここかな。」


 宿屋から少し歩いたところに、お店がある。

 大抵のお店には行ったが、ここは初見だった。

 店に入る。


 適当にエレナが料理を頼んだ。

 少しの間、話すこととなる。


「大変だったね~。」

「………」


 鮮明にすべてを覚えている。

 なんの説明もいらない。でも、一つ確かめたいことがあった。


「おい。」

「なんだい?」

「お前、何した。」

「エレナって呼んでくれないの?」

「呼ばん。質問に答えろ。」

「分かった。薬を飲ませたんだ。痺れるやつを。」

「なんでだ。」

「ノアの戦力を見たかったから。」


 戦力?普段から無茶ぶりに応えているだろう。

 何を確認しておく必要があるのだろう。


「分からない。って顔をしているね。一から説明するから。」

「早くしろ。」

「はいはい。じゃあ、まず第一の疑問。どうして、ノアはそんなに強いの?」

「は?」

「だって、おかしいよ。純粋な戦闘能力だけ見たら、私はこんなに強い人物を知らない。それに、特別な訓練を受けた訳じゃない。どういうこと?」

「知らん。」

「だろうね。だから知りたかった。第二に、ノアの倫理観や考え方を知りたかった。その歳で延々、人を殺し続けているんだ。頭の中がどうなっているのか知りたくてね。」


 料理が運ばれてくる。

 それを口に運びながら、エレナの話を聞く。


「第三に、限界値を知りたかった。ノアはいつも怪我がないから、傷つくとどうなるのか知りたかった。でも、今回は軽率な行動だった。ごめんなさい。」


 深々と頭を下げる。

 ちょっと気分が良い。


「それで、何が分かった。」

「ノアのことは全然分からなかったよ。どれも、理由に欠ける。だから無駄になってしまった。ごめん。私が悪かった。」


 今日はやけに素直だな。

 いつもこれくらいならば、楽で良いのに。


「あと、結界ってなんだ。」

「ああ。それね。説明しようと思ってたんだ。お詫びと言ってはなんだけどね。」


 ついにこいつの秘密を知れるらしい。

 やっとかと思うと同時に、どうでもよくなっている自分が居る。

 もうこいつに勝とうなんて思わないからだ。


 今回の件で迷惑を掛けたと思っているからじゃない。純粋に、こいつと共に行動すれば、飯にもありつけるし、仕事もある。

 以前みたいに、仕事にがぶりつくように生活しなくても良い。

 はっきり言えば楽だ。


 しかも、この方が自分には合っていると感じる。

 エレナが自分の秘密を暴露するということは、今回の件で俺を扱いきれないと思ったからだろうか。

 捨てられる。

 この言葉が自分の中に出てきた。


 以前にはなかった心境だ。

 俺は何かを取り戻すことが出来ているのだろうか。


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