第三百七話
「第三百七話」
・ガイア視点
「陥落と言ったがね、それには少々の語弊が含まれるかもしれない。」
「博識ぶらなくていい。早くしろ。」
ノアが急かす様に言った。
もう動きたくてうずうずしているらしい。
「最終目的を『万能』エレナの討伐と位置付ける。第一段階として、セリディアンを落とす。ヴァルモンドは軍事的に言えば圧倒的だ。この場に集まった六人では何ともならない。それに、スポンサーである管理人は急いでほしいらしい。」
「ヴァルモンドまで落とせると?」
アイアンは懐疑的だった。
彼女としても信用ならない人物が突拍子のない話を始め、アキ意外見たことのない面子で混乱していることだろう。
「勿論。この作戦の副産物は戦争の終結だ。」
「なんで管理人はそんなことを望んでいるの?神ってのはそういうのに、興味がないと思ってた。百年くらい無視していたんでしょう?」
管理人のことを知っているのか。
アキがしゃべったな。
「デブ……管理人は案外気にしてる。この戦争の発端について、なんらなら罪悪感すら抱いてる。」
「じゃあ」
「なんで今更?それは簡単さ。実験が終焉を迎えたからさ。もし、この惑星が破壊されても問題ない。彼は既に答えを得ている。」
「……?」
「分からなくてもいい。どうせ、理解できないさ。『万能』討伐に当たって、面倒なのがヴァルモンドの軍事だ。エヴァンシール、フィオレンツァ、カーディス、君らには対人戦闘を任せたい。わたしらが『万能』に専念できるように。」
「………」
「おいおい、信じて欲しいもんだ。」
「……分かった。」
「しかしだ。君、ドールさんにはこっちに協力してほしい。」
「エレナさん?」
「ああ。このチームがまとまるには信頼に足るリーダーが必要不可欠なんだ。それを君には任せたい。」
「は?」
アイアンは「あなたが指揮するんじゃないの?」って顔で見つめてくる。
「いろいろと都合があるんだ。こっちにも。」
「……?」
「その沈黙はイエスと受け取ろう。セリディアンとの交渉は考えなくていい。交友関係を築いた方が良いんだろうけれど、今は時間が無い。荒っぽい方法で行こう。」
「どんな?」
「セリディアンは三つの貴族が、いや元貴族が切り盛りしている。ルミナリエ家、アルカナム家、グランツヴェル家。この三家を潰し、時間を稼ぐ。その道中で、軍隊を崩壊させ、彼らから抵抗する術を奪う。」
「セリディアンは?あいつらが長だろう。」
「セリディアンは十年ほど表に出てきていない。三家が切り盛りし、セリディアンは酒でも飲んでいるんじゃないか?」
「ご立派なことで。」
「セリディアンを落とした後に、すぐ【フロストホロウ】、【ピロニス】から軍隊を送って欲しい。ヴァルモンドに攻撃を開始する。その間に『万能』を討ち、ゲームセットだ。」
「概要はそれだけ?」
「ざっくりし過ぎかな?」
「大分。」
「それは失礼。」
「まぁ、良い。あんたらの戦闘力は?」
「ノアさんが一番。二番がアキ、三番にわたし。」
「シヴァだったか。お前は?」
「………」
「あっそ。」
アイアンは頭をぽりぽりと掻き、口を開く。
「ノアとあんたは遊撃。」
あんたはとはわたしのことであろう。
「シヴァ、ルフェル、アキは私と来なさい。」
「「「………」」」
「アルヴィンさんに話をし次第動く。」
アイアンはアキの腕を引っ張って外に出て行った。
アキの体調を医者に診せた方が良いと思ったのに。
「き、君たち」
場に気圧されていた医者がようやっと声を出した。
「患者が控えてる。で、出て行ってくれんか?」
「ああ。これは失礼。外で待つとしようか。」
四人で外気浴をしに行った。
シヴァはブツブツと文句を垂れ、ルフェルはシヴァを睨む。
ノアはまっすぐ前だけ見て歩く。まるで興味が無いみたいに。
良いね。最高のメンバーじゃないか。
「俺は殺さないぞ。」
階段を下っているときに、ノアが後ろから言ってきた。
「分かってる。」
『万能』をではなく、セリディアンで他の軍人をという意味だろう。
逆に躊躇なく人を惨殺していたのなら驚きを通り越して、人違いを疑うだろう。
「ノアさんは騒ぎを起こして、人をひきつければいい。その間にわたしが仕事をするよ。」
「できれば、お前も殺すな。」
「言っていなかった?わたしは殺人を犯したことが無いんだ。こんなことで手を汚すわけにはいかない。」
「そいつは安心だ。」
ノアの安堵した表情を見て、おかしくなって少し笑った。
「なぜ、笑う。」
「なんでだろう。生後五日の君には分からないか。」
「舐めるな。空気を読んで見せただろう。」
「自分は大人だって?」
「ああ。不十分か?」
「そうだねぇ……背丈が足りないかな。」
「外見を気にしてるお前の方がよっぽど子供っぽいぞ。」
「これは一本取られた。お菓子食べる?」
「くれ。」
「子供じゃん。」
エントランスを抜け、外に出ると
「遅い。」
電話を終えたのか、疲れ切った顔のアキと腕を組んだアイアンが立っていた。
「シヴァさん。拗ねていないで協力してもらおうか。」
「………」
「ほら、あのお姉さんに挨拶しなさい。」
「黙れ。」
「おお怖。」
「子供に好かれる大人って魅力的だよな。」
横からノアが皮肉を言ってくる。
「かっこいい?」
「ああ。阿呆面が残念だ。」
「じゃあ、手はず通りに。」
アイアンの言葉と同時に視界が変わる。




