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第三百六話

「第三百六話」


・ガイア視点


 清潔な病室に似合う、泥臭い軍人と血を吹き出した軍人擬き、そして喧嘩でもおっぱじめようかと思われる子供二人。

 丸い回転椅子に座った医者は目を見開き、瞬時に行われた数々の現象に驚いている。


「かはっ……ごほっ……」


 『権利』の『権限』を持つアキが息を吹き返した。


「アキ!!」


 名前は確か、アイアン・ドールだったか。床に転がったアキの頭を抱きかかえて、ゆっくりと息をさせるように介抱する。

 安堵の表情を浮かべる彼女を目の前に少年二人はいがみ合いを一時中断した。


「ノアさん。診察は終わりで良いかな。」

「ああ。」


 めくっていた服を降ろし、聴診器を持って放心した医者から離れる。


「では、お医者様、次の患者であるアキさんをお願いしますよ。」

「え?あ、ああ。」

「さて、計画について話そうか。『白紙』、『権利』、『旅行』、『死神』。この場に居る四人で『万能』を葬り去る手はずを整える。」


「あのデブがそう言ったのか。」


 シヴァが剣を持ったルフェルを押して聞いた。


「管理人殿は我々に協力してほしいと申し付けた。『白紙』ノア、『死神』ガイア、『権利』アキはこれに了承済みだ。君はどうする。」

「………聞くだけ聞いてやる。そんなことよりも……アキはどうしてこうなった。」

「さてね。わたしは状況を見ていなかった。だから、知らない。」

「しらを切るんじゃねぇ。知ってるはずだ。」

「対処法を知っているだけだ。他は知らない。」

「あんたが……俺を子供だと見くびり、見下すなら協力しない。徒歩で行け。」


 その鋭い眼光は、およそ子供のものとは思えない。強い意志を感じる。

 あのデブはどこまでこの少年をこじらせたのだろうか。


 まぁ、でもモルモットに情報を与えてラボを乱すような真似はできないな。


「では、部外者は出ていき給え。仕方ない。ルフェルさん、君はどうだ。」

「は?俺?」

「三人では心もとない。後でアイアン・ドールさんにも問うが、まずは君からだ。」

「………何をするかによるだろ。」

「そりゃあそうだ。アイアン・ドール。君は?」

「私は参加する。」

「よろしい。では退出願おう。」


 ドアを指さし、シヴァを見つめた。


「俺は用済みかよ。」

「……?

 参加してくれないんだろう?強要はしない。」

「管理人……あのデブはあんたを贔屓するんだな。」


 ああ。そう言うことか。

 親が育児放棄をするように、教師が別の子供に目を見張るように。

 嫉妬しているのか。彼は。


 管理人が自分だけを気にかけてくれる。自分は特別で祝福された存在なんだと信じ切っていたのか。誇り高き信奉者とでも言うべきか。

 神の寵愛を受け、加護を受けたと勘違いをしたばかりに、恐らくは他の生物を下界の有象無象のように思い、考え、見下した。


「厨二病極まれりだな。」

「あ?」

「一つ言っておこう。我々は特別じゃない。」


 シヴァの髪が逆立つ。


「この場に居る『権限』を持っていない人物たちと対等であり、友人であり、仲間だ。格差などありえない。」

「………」

「例えば、わたしには医術が無い。先ほどお医者様だと形容したが、それは茶化したわけでもなければ、馬鹿にしているわけでもない。彼はわたしより遥かに優れた人物であると思ったから尊敬の念を込めてそう呼んだ。」


 照れくさそうに医者がそっぽを向く。


「例えば、わたしには信念が無い。アイアン・ドールさんのようにどこかの誰かの、顔も知らない誰かのために命を張り、前線に立ち、仲間の死体の上を歩くような根性や精神力がない。故に、彼女も尊敬している。」


 アイアンはアキを介抱するのに必死であまり話を聞いていなかった。


「例えば、わたしには」

「やめろ。」


 ルフェルを例に出そうとした時に、シヴァは憤慨した様子でわたしを睨んだ。


「俺が……このゴミ共と一緒?いや、それ以下だと断定したのか。」

「ええ。事実でしょう。」

「この……神も知らねぇような!!ゴミ共と!?」

「こいつッ!」


 ルフェルがシヴァの肩を掴もうとした瞬間に消えた。

 その場から、足音もなく消えたのだ。


『旅行に行きたい?どこへ行く。』


「こんな真似ができるかよ。この場に居る猿共によぉ!!!」

「超常現象を起こせるからと言って、誰よりも優れているわけじゃない。力をひけらかし、自分が他者より優れていると思い込みたいのならそうしなさい。しかし、この場に居る誰もが君よりも何かしらの分野で勝っていることを忘れるな。」

「っ!!」


 次にアキが消えた。


「な!?」


 アイアンが抱えていたはずの人間が消えたことにより、驚きを隠せなかった。


「君は特別じゃない。寵愛を受け、管理人に選ばれたわけじゃない。」


 次に医者が消える。


「じゃあ、てめぇは何様のつもりなんだ。管理人とこそこそやって、他の『権限』よりも勝った気でいる、てめぇはなんなんだ。」

「………」

「答えろ。タボがッ!!」

「わたしは、ただのモルモットだ。他の何でもない。」

「………」

「わたしは役割を全うする。」

「………」

「強要はしない。嫌ならその扉から消えてもらって構わない。」

「………」


 シヴァはベッドを蹴とばし、消えた三人が元の場所に帰って来る。


「ちっ……」

「話を始めろ。」


 壁に寄り掛かったノアが声を出す。

 そちらを見ると


「なんだ。空気を読んで何もしなかったんだ。」

「何も言ってないよ。」

「顔に書いてあった。」

「それはどうも。」


「手始めにセリディアンを陥落させる。」


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